孫家一門の住まう邸に帰った頃には、日がとっぷりと暮れていた。
義母との交わりは、いつも必要以上に身体の底が燃え盛る。贅沢な悩みかもしれないが、それで疲労も格段に大きかった。
私室に入り、腰のものを刀掛けにもどす。まともに飯を食う気にもならないから、あとは適当に酒でも飲んで夜を過ごすつもりだった。
「誰でもいいから、酒を用意してくれるか。食い物は、なんでも構わん」
椅子に身体を深く預け、孫策は部屋の外に向けて言葉を発した。この時間なら大抵誰かが控えているし、自分が帰ったことは伝達されているはずだった。
「はい、すぐに」
小さいが、返事をする声が聴こえた。
どうせなら、退屈しのぎに祭か粋怜を誘うべきだったか。宿老連中はみんな酒が強い。羽目を外しすぎてひどい目に遭うこともあったが、二人にも大人の了見は一応ある。
人の気配がする。子供時代から褒められることの多い直感だ。どうでもいい場面で働くこともあるし、戦に出ると特に役立つ。これだけは、冥琳にもない自分だけの武器だった。
目的のものが来るまで、しばし眼を閉じた。
西涼での戦。長い旅路になるだけに、武功をあげるだけでは物足りないという思いがあった。都には、一度訪れたことがあるくらいか。その時の栄華すら、いまの洛陽には欠けている。
「そこで待て。動いたら、命はないと思うのだな」
扉の外。わざとらしい脅しに、動きのあった気配がぴたりと止まる。
ゆっくりと近づき、孫策は扉に手をかけた。気配の正体。酒器を載せた盆を両手で持ち、女が足をふるわせている。孫家一門を象徴する、明るい色をした髪。そして、義母から継承したきれいな碧眼には、薄っすらと涙が浮かんでいた。
「あ、あの、兄上……?」
「こんな状態で扉を開けて、酒をこぼしたらどうする。だから、待てと言った」
女の、蓮華の声がまだふるえている。
奪うように盆を受け取り、孫策は部屋の卓上に据えた。俯いたまま立ち尽くす妹を、手招きする。それでやっと、泣きそうだった顔に笑顔の華が咲いた。
「どうぞ、兄上。お疲れだと思い、人肌にあたためて参りました」
「ありがたくいただこう。んっ、くっ、ふう……。こうして、かわいい妹に酌をしてもらえると、どんな酒でも極上の味になる」
「ご、ご冗談を。ですがその、お言葉は嬉しく思います」
空になった杯。卓に置くと、すかさず蓮華が酒を注いでくれる。
血のつながらない妹。普通であれば、この権が孫家の嫡子となるべきではあったのだ。
隣に座る妹が、控えめに視線を送ってくる。育ての父は優しい人だったが、義母と一緒になって自分を嫡男としてしまったのだから、ある意味狂いに狂っていたのだと思う。
あるいは、あの義母と長く時を過ごしていると、誰でもおかしくなってしまうものなのか。酒を舌の上で転がし、気の向くままに蓮華と手を重ねた。
繊細で、あたたかな手だ。揚州から望む大海を想起させる碧眼。そこに点在する自分の影が、なんだか鬱陶しいとさえ思えてくる。
「あの、あっ……。そ、そちらがお望みなのでしたら、遠慮なく申し付けてくださればよかったのに」
「なにか勘違いしているな、おまえは。城郭に帰ってから、つい先程まで母御のところで足止めを食らっていた。わかるだろう、その意味が」
「か、母さまと? あう、あっ、は、はい……」
ちょっと残念そうに、蓮華ため息を洩らす。
賊軍掃討の帰りに冥琳を抱き、それから義母にあれだけ搾り取られたのだ。そんな状態に追い討ちをかけるように、いまは酒まで入っている。これでまだ勃つものなら、自分はほとんど化け物ではないか。
「あの、戦はいかがだったのです、兄上? 日頃鍛えていた騎馬隊の力、存分に試してこられたのでしょうか」
「ン……。あれは戦と呼べるようなものではなかった、はっきり申せばな。弱い獲物を相手に、無惨な狩りを粛々と行った。ただ、それだけのことなのだよ」
たとえ冥琳の手勢による火計がなくとも、百騎だけで十二分に包囲殲滅することのできる相手だった。
末端の黄巾賊でも、もう少しまともな反発をしてみせる。それだけ、今回の賊徒は格下の敵だったのだ。
「兄上は、ご自身が思っておられるよりも、ずっとお強い。満足のいく相手とそうそう巡り会えないのは、当然といえば当然です」
「ははっ。身内であるおまえに持ち上げられて、俺はどう喜べばいい」
蓮華がほほえむ。ふとした瞬間に見せる表情は、義母よりよほど母らしかった。
自分のようなどこの馬の骨とも知れない男を兄と慕い、心から尽くしてくれている。そんな妹のことを好きになるな、と言う方がどう考えても無理があった。
自分だけ飲んでいるのもつまらないから、蓮華にも杯を渡す。ひとつしかないものだから、どうしても回し飲みをすることになる。そんな恥ずかしさがあるせいか、蓮華は注いである酒をひと息で飲み干す。
「今度、都からの要請で、遥々涼州まで足を運ぶことになった。俺は母御と戦をやりに行くが、おまえは居残りだ。悪いが、雷火の小言の相手をしてやってくれ」
「涼州へ? そんな、できれば私もご一緒に」
「わがままを言ってくれるなよ、蓮華。これも、孫家が大きくなるために必要なことだ。涼州には、ただ戦だけをやりに行くのではない。片田舎にいては見つからない人材との出会いが、道中であるかもしれないのだ。同時に、おまえもここで人をよく集めておけ。政務にあたる才能を見抜く力は、俺にはあまりない。だから、そちらはおまえに任せたいのだ、蓮華」
「むぅ……。そうやって、私を除け者にされるのですね、兄上は。もういいです。みんなが留守にしている間、寂しくなった私は……」
蓮華がいきなり席を立つ。量としてはかなり少ないが、勢いよく摂取したせいで酒が回りはじめているのかもしれなかった。
あの義母があって、この子がある。普段は鳴りを潜めているだけで、激情を受け継いでいるのが蓮華だった。
なにを考えているのか、蓮華が卓の下にしゃがみ込んだ。二本の腕。伸びてきたかと思うと、服の中から萎れた男根が引っ張りだされてしまう。
「私が不義密通をしたってよろしいのですよね、兄上は。どうせ半年は放ったらかしにされるんです。その間に、なにがあったって……」
男根の反応が鈍い。それが余計に妹の機嫌を損ねたのか、いつもなら絶対にしないような力で、寝た子を無理やり叩き起こそうとする。
想像していた以上のへその曲げ方だ。たぶん、義母と散々身体を重ねてきたことが、蓮華の中に引っかかりとなっているのだろう。ほんとうに、愛らしい妹だった。
「おっ、勃った」
馬鹿馬鹿しいことだが、勃起した下腹部のものに対し、感嘆の声を洩らしてしまう。
わが愚息ながら、いい根性をしていると孫策は思った。まだ底の底には達していない。それに多少休みを取ったおかげで、気力は充実してきている。
「この不埒な肉棒が、んむっ、んっ、れろっ……、いけないのです。それに兄上はお優しいから、誰にだって。はむっ、むぐっ……。れろれろ……。ちゅう、はっ、ちゅぅうう♡」
がさがさと物音を立てながら、蓮華が勃起したものを旨そうにしゃぶる。
普段淑やかな妹であろうと、孫家一門に流れる血に抗うことなどできはしない。一度火がついてしまえば、あとは獲物をひたすらに求める雌になる。
なだめるように蓮華の美しい髪を指ですく。腰より先まで伸びた長髪。手入れは大変なのだろうが、褒めてやると蓮華は特上の笑顔を見せてくれる。そんなところは、小さな時から変わっていなかった。
「不肖の兄だ。これほどまでにおまえと不釣り合いな男も、世の中にいないのかもしれないな」
「ふえっ……。な、なにを仰せになるのですか、兄上。私こそ、くだらないことに腹を立ててしまう小さな女なのです。で、ですから、んあぅ……♡」
「ははっ。むしろ、それで均衡が取れているとでも言うつもりか?」
「むぐっ、ぐっ……♡ ふへっ、んっ、んむっ、もごっ、れちょぉ……♡」
優しく撫でていた蓮華の頭を使い、男根に快楽を与えていく。
脳内が興奮で麻痺してきているせいか、こんな扱いを受けても蓮華は喜んで奉仕をしてくれる。絡みつく舌。唾液が熱っている。
「はうっ、んっ、はあっ……♡ あ、兄上のおちんちん、大きすぎて窒息させられてしまいそう。んっ……♡ いかがでしょうか、たまにはこんな余興も」
「悪くはないが、手入れで苦労することになっても、責任は取ってやらないぞ」
「平気です。兄上に汚されたと思えば、ああっ、なんだって……♡」
美しい髪に包まれて、男根が醜悪な涎を垂らす。
さらさらとした感触。蓮華の自慢の髪を汚していると思うと、それだけで気分が高まった。手のひらでは味わうことのできない快楽だった。喘ぐ鈴口からこぼれた我慢汁が、細い糸のような髪に絡みつく。
これは、あとで風呂に付き合うべきなのかもしれないな、と孫策は快楽に浮かされる中思っていた。
「ぐちゅぐちゅって、すごいです。うふふっ。私の髪でされるの、そんなに気に入ってくださったのですか、兄上」
「ああ、最高の気分だよ、蓮華。どうせなら、このまま射精してしまいたいくらいだ。許してもらえるかな、妹御?」
「あ、兄上のものでしたら、いくらでも。汚してください、隅々まで。私はだめな妹なのです。兄上がお相手をしてくださるからって、こんなに乱れてしまって、んっ、はうっ……♡」
蓮華の手が、ゆっくりと大きく上下する。
商売女がするような、がさつな手つきではない。動きの端々から愛情を感じてしまえるせいで、どうしても達するのが早くなる。もはや数えてすらいなかったが、この日何度目かの限界が再びすぐ近くにやってきていた。
「いって、射精してください、兄上♡ 雄々しくて逞しいおちんちんが、かっこよくびくって跳ねるところ、妹に見せて♡」
「ははっ。そんなおねだりの仕方、いったい誰から教わったのだ」
髪で巻いた男根を扱きつつ、蓮華が亀頭に頬ずりをする。
かわいい妹にこうまでされて、誰が我慢していられる。ちょっと腰が浮きそうになるくらいの快感だった。爆ぜる。飛び出した精液が、蓮華の整った顔にぶちまけられた。
「ん、ひっ……♡ はふっ、はーっ、んっ。いい匂いがします、兄上の。大好きなせーえきの匂い。とっても濃くて、ずっと嗅いでいたくなる♡」
蓮華による手コキは止まらない。
爆発のそばにあった髪の状態はひどいもので、ぷりっとした白濁の塊が構わず絡んでしまっている。それをさらに染み込ませるように指でこねているのだから、蓮華の執心は筋金入りだった。
「あっ、すごい♡ 兄上の精液が、まだこんなに……っ♡ はじめはお疲れのご様子だったのに、素敵です。兄上、んっ、あむっ、ちゅっ……♡」
好き放題暴れていた亀頭が、いきなり口内で甘やかされる。
残滓があることなど許さない。蓮華の吸い上げはなかなかに強烈で、男根の萎れる隙がない。
「もう一回。ねっ、もう一回いいでしょう兄上? お腹いっぱいになるまで、味わいたいのです。兄上の、んっ……。濃厚な精液……♡」
口もとをべったりと汚した蓮華が、無邪気な笑顔を向けてくる。
兄として、このくらいで音を上げるわけにはいかなかった。孫策の長い一日は、まだ終わりを迎えることはない。