※この作品はR-18です。

虎となりて   作:KKS

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兄妹の契り(七乃)

 洛陽に帰還した孫策は、戦塵を洗い流す暇もなく美羽の邸宅に招かれていた。

 少々異臭を放つ軍装を身にまとったまま、掃除の行き届いた廊下を歩く。向こうがいいというのだから、自分から気を遣う意味はないと思った。それに、これは名誉の汚れなのである。

 南陽袁家に武功を挙げさせるために、孫家の将兵は命を張ったのだ。名門の主導権を握ろうとする従姉の鼻っ柱に一発いれる、という目的は十分に達成した。そのことがわかっているから、美羽は自分の顔をいち早く見たいと言っているのだ、と孫策は思うことにしていた。

 

「やっぱりすごいんだねー、お金持ちの家って。孫家が滞在させてもらってるお邸もそれなりだと思ってたけど、こっちを見ちゃうとなー」

「はしたない真似はするなよ、尚香。俺たちは、堂々と胸を張っていればそれでいいんだ」

「はーい、兄さま」

 

 宅内を彩る調度品に目を奪われかける妹をたしなめ、美羽に仕える侍女のあとを黙って追った。

 連れていけばなにかの足しにはなる、といって義母がつけたのが小蓮なのである。

 確かに、妹と美羽は年もそう離れていないだろうから、いい話し相手になるのかもしれなかった。それに、小蓮をあの嗜好の歪んだ側近にぶつけてみるのも、悪くない考えのようにも思えてくる。

 反対からやってきた文官らしき男が、わざわざ立ち止まってこちらの姿を観察している。

 袁家の臣の眼に、自分たちの姿はどう映っているのだろうか。礼儀知らずの薄汚い田舎者。あるいは、血に餓えたけものなのか。

 小蓮が、かすかなふくらみしかない胸を懸命に張っている。そんな妹と一緒に、男の横を何事もなく通り過ぎていった。

 美羽の居室にまもなく到着する、と振り返った侍女が教えてくれた。

 扉を開けてすぐに、特有の甘い香りを鼻に感じた。椅子に座っている美羽とぴたりと視線が合う。丈の長い着物の裾。器用に捌いて小走りに駆ける姿は、さすがに名門の令嬢だった。

 

「おお。待っておったぞ、一刀よ。して、隣のちびっこいのは何者かえ?」

「むむっ? もう、失礼しちゃうなあ。そっちだって、シャオに負けないくらい、いろいろとぺったんこじゃない」

「なにおぅ!? ぐぬぬ……、ちびっこい上に失敬なやつめ」

 

 小蓮が余裕の笑みを浮かべる。対照的に、美羽は牙を向いて威嚇の態勢をとっていた。

 

「まあまあお嬢様、下々の嫉妬の相手はそのくらいに。というか孫策さんって、小さい女の子を連れて歩くのが趣味なんですか?」

「趣味とかそういう話ではなく、この尚香は私の妹なのです、張勲殿。何卒、よろしくしてやってくだされば」

「ふうん。あなたも大概、猫を被るのがお上手なようで。それにしても、妹さんとはちっとも似ていないんですねえ。やっぱり、そのへんの女の子を拐かしてこられたのでは?」

 

 張勲からの口撃が続く。

 親密さを見せびらかすように、小蓮が腕を絡めて抱きついてくる。それがまた気に入らなかったのか、美羽はかわいらしく頬をふくらませていた。

 

「この子とは、血の繋がりがないのです。孫家にとって、私は拾い子のようなものでして」

「あら? もしかして私、あんまりふれてはいけない部分にふれてしまったり?」

「えへへっ。そんなことないから気にしなくていいよ、お姉さん。実の兄妹じゃないから、シャオも気兼ねなく兄さまと子作りできるんだし♡」

「うっわ……。やっぱりそっちの趣味があるんじゃないですか、孫策さん」

 

 最後の部分、張勲だけに聴こえるように、小蓮がささやいた。

 密着がさらに強くなる。薄手の服の向こうにある、妹のなだらかなふくらみ。その中でも突起の主張はやはり図抜けており、こりこりとした感触が腕に伝わってくるのだ。

 

「うむむっ……。こうなれば、妾も……!」

 

 いじらしい対抗心だ。

 勝ち誇る小蓮に負けじと、美羽が反対側から果敢に突撃をしかけてくる。両手に花、とまではいかない光景なのかもしれないが、戦帰りの疲労がいくらか吹き飛ぶだけの喜びはある。

 

「決めたぞ、七乃。今日より妾は、この一刀を兄と仰ぐことにしたのじゃ。なっ、いいであろ?」

「ええー? んー、お嬢様がそうしたいと仰るのであれば、私は無理に止めたりはしませんけど、孫策さん……?」

 

 小さな暴君の決め事を、この側近はすべて受けとめるつもりでいるらしい。

 腕を引きよせたまま、美羽はいたずらを成功させた達成感に浸っている。逆に機嫌を斜めにした小蓮に半身を占拠されているから、美羽の頭を撫でてやることもいまは無理だ。

 

「ふふん。これほどの栄誉、無碍に断る愚か者ではあるまい。のう、(あに)さま?」

「ン……。美羽殿と兄弟の契を結べること、もちろん嬉しく思います。これよりは、いま以上に」

「うむうむ。して兄さま、堅苦しい言葉遣いはそろそろやめにしてくれんかの? 七乃もいい加減観念して、兄さまに真名を預けぬか」

「はーい。お嬢様からのご命令ですので、仕方なく真名を許して差し上げますね、孫策さん。あっ、というかもう面倒なので、私も一刀さんって呼ばせてもらうことにします。当然、拒否する権利なんてありませんので」

「いいだろう、七乃。美羽も、改めてよろしく頼む」

「うむっ。兄さまのそういう素直なところ、妾は好ましく思っておるぞよ。しかし、なんじゃな……」

 

 それまで上機嫌にしていた美羽が、ちょっと顔をしかめてこちらを見上げている。

 正直、心当たりはいくらでもある。上質な絹のような美羽の柔肌。その頬の部分に、自分の運んできた汚れがかすかに付着してしまっているのだ。

 そのことに気がついたのか、七乃がじっとりと粘つくような視線を飛ばしてくる。おのれの真名の行方よりも、美羽の清潔さが損なわれることに対する不満のほうが遥かに大きいのだろう。

 

「風呂じゃ。兄さまのためにすぐに湯を用意せよ、七乃。……そっちのちびっ子も、ついでに入っていくであろ?」

「むっ……。ちびっ子発言には納得できないけど、お風呂はありがたく使わせてもらおうかな。私は孫家の末っ子で、名前は尚香。あなたも(にい)さまの妹になるんだったら、小蓮って呼んでもいいよ。あっ。その場合、シャオがお姉ちゃんってことになるのか」

「ええと、小蓮……じゃったな? はっきりと申しておいてやるが、背も胸も妾のほうが大きいのだから、小蓮が下になるのが当たり前ではないか。のう、兄さま?」

「はあ……!? いいじゃない。そっちがその気なら、この場で白黒つけてあげるんだから。ほら、兄さまー?」

 

 どちらもかなりの負けず嫌いのようである。

 言うまでもなく、闘争の決着は風呂場にまで持ち越されることとなった。

 

 

 競うように裸になって駆け出していった小蓮と美羽を見送ると、必然的に七乃と二人きりになった。

 肌を見せることに対する抵抗はそれほどないようで、するすると軍服を模した衣服を脱いでいく。

 かたちのいい乳房が並んでこちらを向いている。こうして見ると案外肉づきは悪くないようで、七乃自身の不思議な雰囲気と相まって、ほかにはない魅力を生み出しているのだ。

 

「それで、なんですけど」

 

 言葉を発するのと同時に、七乃が背中から抱きついてきた。腋の下から両腕を差し込み、片手ですかさず首を狙ってくる。意外と俊敏な動きもできるのだな、と孫策は感心しているくらいだった。

 ほとんど、わざと隙を見せたようなものなのである。

 恋と比べて考えれば、力には雲泥の差がある。本気になれば簡単に振りほどけるし、この程度でどうにかなるような鍛え方はしてきていなかった。

 それに、七乃は人を殺し慣れていない。首の締め加減だけで評価するなら、単体での力はそのへんの雑兵と大して変わらないと孫策は思う。

 

「一刀さん。あなたにどんな目的があるにせよ、お嬢様を泣かせたら絶対に許しませんから。そうなったら、毒でも人でもなんでも使って、あなたをこの地上から抹殺してみせます。逃げ切れるだなんて、決して思わないでくださいね」

「それで構わない。俺が美羽に仇なす存在だと確信した時には、躊躇なく刃を向ければいいさ。孫家の男として、死ぬ覚悟はいつでもできている」

「ふうん。ほんと、おかしな人。こうして私に脅されているのに、恥ずかしいくらい硬くしているんですから、ここ。とびきりの変態さんなんですね、あなたって」

「ははっ。人間、素直に生きるべきだと言っていただろう、美羽のやつも」

「むっ……。一刀さんの、そういうところが気に入らないって言ってるんじゃないですか、私は。はむっ、んっ、ちゅっ、んむっ……」

 

 眉根を寄せて不機嫌さをあらわにする七乃と、熱くなった唇を合わせる。

 かたちはともあれ、多少は認めてもらうことができたのだろうか。繊細そうな五本の指が勃起した男根に絡む。男慣れしている動きではなかったが、それなりに知識だけはあるようだ。

 

「下衆な勘繰りはしないでくださいね。んむっ……。袁家のご主君に側仕えする身として、これでも準備だけはしてきたんです。美羽さまが、かわいーい女の子でしたので、こっちの技は不要になりましたけど」

「おおーい。兄さまも七乃も、なにを二人でちんたらやっておるのじゃ。妾と小蓮だけで湯浴みをしても、さっぱり意味がないではないか」

「はーい! すぐに参りますから、ちょっとだけお待ちくださいね、お嬢様。……もう。おちんちんびくって反応させて返事するだなんて、はしたないお兄さまなんですから。一刀さん。念押ししておきますけど、さっきの約束、忘れないでくださいね?」

 

 言いながら、七乃の指が雁首のくぼみを甘くくすぐる。耳の裏側に吹きかけられる吐息。生々しさを感じさせる風が、心の中で燻る揺らめきを強く煽り立てる。

 名残惜しいが、美羽たちをこれ以上待たせるわけにもいかなかった。

 手技によって盛大に勃ちあがった自分のモノに視線を落とす。赤黒い亀頭の先。早くも我慢汁が滲みはじめていて、姿を醜悪に変化させていた。

 

「わかっているとも。ほら、行くぞ七乃」

「へっ……? ちょ、ちょっと気を許したからって、変なところをさわらないでくださいってば! んっ、んあっ……♡」

 

 景気づけに七乃の尻をまさぐりながら、孫策は美羽たちの待つ風呂場に向かった。




長くなりそうなのでお風呂であれやこれやは次回に持ち越しです。
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