与えられた部屋に通された桂花は、とあるものと緊迫の対面を果たしていた。
四角い箱が机の上に鎮座している。嫌な汗。見ているだけで滴ってくるのは、どうしてなのだろうか。
紆余曲折を経て、運命はいい方向に転がってきたはずだった。
憧れの人のもとを去ることにはなったが、ついに理想のご主人様と出会えたのだ。思い返してみると、一刀さまは最初から際立つ存在感を放っていた人だった。ただ、当時の自分は曹操に出仕することだけを目標にしていて、そもそも男自体を毛嫌いしているという事情もあったから、一刀さまに対しことごとく無礼な態度をとってしまった。
普通なら、そんな女をいつまでも気にかけたりはしない。冥琳殿を筆頭に一刀さまには多くの女性がいて、欲望のはけ口に困ることなどないはずなのである。
梨晏と旅していたおかげで、たまたま紡げた縁だった。
どこまでも続く草原のごとく寛大な心。そこに時折見せる執着心と狂気が加わり、一刀さまという英雄の姿をつくりあげている。
狂っているばかりではいけない。けれども、平坦なだけの人間に乱世を斬り裂くことなどできはしない。少し話してみて、一刀さまの御母上はやはり傑物だと思わされた。
衝動的に動いているようでいて、大殿さまの眼は常に天下のことを見据えている。そんな御方が後継者として選び、心血を注いで鍛え上げてきたのが一刀さまなのだ。乱世の中で、孫家はこれからどこまでも伸びていける。軍師としてその一翼を担えるのだから、これほどやりがいのあることはない、と桂花には思えた。
「よ、よし、開けるわよ、桂花。大丈夫。ご主人様を信じてさえいれば、きっと大丈夫」
これまでのことが、壮大な前フリであるはずがない。もしそうだとしたら、毒でもなんでも呷って死んでやる、という勢いで桂花は箱の蓋に指をかけた。
自分で唾を飲む音がやけに大きく聞こえる。意を決して蓋を取り払うと、中には革製と思わしき赤い輪っかがひとつあるだけだった。
「ふっ、ふふっ……。そうよ、これが空箱であるはずがないじゃない。というか、これって……?」
輪っかを手に取り、観察してみる。
調整用の穴が開いていて、大きさを変化させられるようだった。手首にするには少し余る。だとしたら、これの用途とは。
「ああ、ちょうどよかった。いまから散歩にでかけるぞ、桂花」
「へっ? あ、あの、ご主人様?」
「見てわからないのか? それは、おまえのために誂えた首輪なのだよ。メス犬らしく、さっさと服を脱いで支度を整えろ。言っただろう、桂花には追って沙汰をくだすと」
「わ、わんわんっ!」
一刀さまから浴びせられた言葉に、心臓が飛び跳ねた。
夜に行う秘密の散歩。自分ははしたない飼い犬であり、この首輪は一刀さまの所有物であることを示すためのものだったのである。
うまく服を脱ぐことができない。異様な昂揚感のせいで、指がふるえているせいだった。それに、扉を開け放った状態で、一刀さまが自分のことを凝視しているのである。
徹底的に辱められるのだと思った。胸も陰部も、隠すことなど許されない。肌をさらすごとに息を荒くし、桂花は襲い来る目眩に耐えていた。
ぎこちない手つきで自ら首輪を装着する。つけ心地はこれで悪くなく、一刀さまが特別に誂えてくださったものなのだ、という実感が強く湧いた。
「靴だけは許す。こちらにきてみろ、桂花」
「んっ……。は、はい、ご主人様。あむっ、んっ、んんっ……♡」
深い口づけ。その間に一刀さまは首輪に紐を通していて、メス犬としての姿が着実にできあがっていく。
すでに、腹の奥が熱くなっていた。最高のご主人様。尊厳もなにもかも、この人に壊されたい。そんな歪な情動が、心の底から這い上がってくるようだった。
一刀さまに引かれて、邸の中を歩く。これだけでも、かなりの緊張感があることは確かだった。孫家にも男の武官はいる。こんな格好で下碑た視線を向けられたら、自分はどうなってしまうのだろうか。想像するだけでも、おそろしかった。
「ああ、冥琳。少しでてくるから、戸締まりはしてくれるなよ」
「ほう? これはまた、いい趣味をしているではないか。こちらの意味でも特異な掘り出し物だったようだな、荀家のご令嬢は」
「ひっ……♡ んっ、んあっ……」
冥琳殿の突き刺すような視線が心地よかった。
少しざらついた生地の手袋をした指に、甘く勃起した乳首を摘まれる。そのまま何度かすり潰すようにかわいがると、冥琳殿は怜悧な笑みを浮かべて言い放った。
「夜の都は、それほど治安のよい場所ではないのでな。悪徳役人に見咎められぬよう、精々気をつけることだ」
「はははっ。俺はただ、飼い犬の散歩をしにいくだけなのだぞ、冥琳? それのどこに、咎めを受ける要素がある」
「まあいいさ。それではな、桂花殿も」
「んあっ、お゙っ……♡」
きつくいじめられていた乳首が、ぱっと離される。
興奮を抑えることなどできるはずがなかった。秘部は早くも濡れに濡れていて、床を汚さないようにするので必死なのである。
そこからは、誰とも出会うことなく門までたどり着いた。
夜の街にはほとんど明かりもついていない。一刀さまは篝火を片手に、散歩に繰り出した。
†
風が直に肌を撫でる。
ただ歩いているだけのはずなのに、どうして一歩がこんなにも重いのだろうか。
小石を踏みしめる音。それにちょっとした物音ですら、いまは異様なくらいの緊張感を生む。
いくらか進んだところで、一刀さまが立ち止まった。
「これで目隠しでもしておくといい、桂花。見え方が変われば、多少は緊張がやわらぐのではないかな」
「しょ、承知いたしました、ご主人様」
「犬らしい返事をしないか。ここにいるおまえは、一匹のけだものなのだぞ。二本の足で立たせてやっているだけ、ありがたく思うのだな」
「わ、わんっ……♡」
布で目隠しをすると、ほんのりと明るかった視界が完全に闇で包まれた。
なにも見えないというのは、これほどまでにおそろしいことなのか。周囲に注意を払うことすら、自分ではできなくなっている。もしどこかに人がいたとしても、気がつくことはもう不可能なのだ。
「はあっ、はっ……」
「このくらいのことで、いちいち呼吸を早くするな、メス犬」
「わ、わふっ、ご主人様」
一刀さまの気が赴くままに、どこまでも歩いた。
どれだけ進み、どちらの方角に向かっているのかすら、把握はできていない。都の中心部に行けば、この時間でも見廻りの衛兵がいる。それに、賊徒まがいの連中だって、路地裏には潜んでいるかもしれないのだ。
「ああ、これはどうも。日中は時間がなく、いまになって飼い犬の散歩をしているのです。夜道は危険ですから、そちらさまもどうかお気をつけて」
いきなり立ち止まったかと思うと、一刀さまがそんなことを口走った。
眼の前に、誰かがいる。からかわれているだけなのかもしれないが、確証を得られないから緊張だけが高まっていくのだ。
息を潜めて、どうにかその場をやり過ごそうとした。顔も知らない誰かに、恥ずかしい部分をすべて見られた可能性がある。そう考えただけでも、ぞくぞくとした痺れが全身を駆け巡った。
「あ、あの、ご主人様……?」
「ああ。いまのは、衛兵を取り仕切る中でもとびきり薄汚い男でな。細い女に眼がないという噂だから、そこの角でさっそくチンポをしごいているのかもしれん。ははっ。メス犬の身で人さまのオカズになれたこと、栄誉に思えよ」
「わ、わふっ……」
様々な感情が、胸の中をぐるぐると回る。
性根の腐った男に、自分の裸体を自慰の対象として使われる。これ以上に、最低で最悪なことなどありはしなかった。
一刀さまの声はどこまでも冷たく、抑揚がなかった。
ちょっと歩いただけでも、これなのだ。下手をすれば、たむろする男の中に放り込まれて、穴という穴を犯される。そういう恐怖を、桂花は感じていた。
おかしなくらい呼吸が乱れる。股の間がじくじくと熱く、どうにかなってしまいそうだった。
「わかっているとは思うが、あれは嘘だ。大事なおまえの身体を、蛆虫の好きになどさせてやるものか」
「あうっ、んっ……♡ ご、ご主人様……ぁ」
一刀さまの大きな手のひらに、頭を撫でられている感触がある。
ひどい仕打ちをされているはずなのに、それ以上に感じる愛があるからすべてを許容してしまう。それに、こんな変態の欲望を叶えてくれている時点で、一刀さまは唯一無二のご主人様だった。
「このあたりで、ひと休みしていこう。おまえも、用を足したくなってきたのではないか?」
「わふっ……。と、というかここって……」
目隠しがほどかれる。
眼が慣れていないせいで視界がはっきりしないが、門構えにはどことなく見覚えがある。
言いながら、一刀さまがごそごそと逸物を取り出していた。どうやら、本気でこの場で用を足していくつもりでいるらしい。
「主人の世話をしろ、桂花。できるな?」
「わ、んっ……。んれっ、んっ、るっ……♡」
隆々とそそり立つ男根。下から見上げられるように、桂花はその場でかがんだ。
静まり返る曹家の門前で、新たなご主人様に心からの忠義を誓う。傍目には狂気の沙汰なのかもしれないが、これが自分にできることだった。
少し匂いのある先端を口に含み、必死になって頭をふった。
夜風で身体が冷えたせいか、意識するほど股に向かって水位があがってくる。けれども、いまは一刀さまをすっきりさせることが最優先事項なのだ。
太い幹を手でしごく。気持ちよくできているのか、一刀さまに褒められた。苦みのある汁が、男根の先から分泌されている。興奮が最高潮に達すると、男はそこから子種を放つのだ。その程度のことは、情報として理解していた。
「あまり音を立ててしゃぶるなよ、桂花。この格好で曹家の番犬に気づかれると、さすがに面倒なことになる」
「んちゅっ、むっ、むむぐっ……♡ れっ、んれっ、んじゅずっ……♡」
声を潜めて言う一刀さまに、首を振って返事をする。
敬愛する主君に対する奉仕というのは、これほどまでに身体を昂らせてくれるものなのか。愛液があふれてとまらない。メス犬である自分は、一刀さまのチンポを口にするだけでも、淫らに腰をヘコつかせてしまっている。
「そろそろ、いくぞ。すべて受け止めてくれるな、桂花?」
「わんっ♡ あんっ、んわっ……♡」
脈打つ男根に精を吐き出させようと、最後の力を振り絞った。
全身を巡る血が熱くなっている。口の中で一刀さまの先端がふくらみ、爆ぜるような感覚があった。
「桂花。くっ、んっ……」
「んお゙っ、んぅ……♡ んくっ、んくっ……。んっ、ひゃっ……♡」
射精の勢いがすごすぎたせいで、途中で男根が口腔からずるりと抜け落ちた。それでも濁流はとまらず、白い粘液が身体中に降り注ぐ。
あたたかい。最愛の人の匂いに包まれて、興奮は限界まで高まっている。一刀さまも悦びは大きいようで、普段見られないくらい呼吸が荒くなっていた。
「続きだ。まだまだ、汚してやる」
「あんっ♡ ご主人様のおしっこ、すごっ、んあっ……♡」
粘つく精液に続いて、黄色く濁る小水を頭からかけられた。
こんな姿にされて幸せだと感じているのだから、大概自分はどうかしている。それもかつて憧れた人の眠るそばで乱れに乱れているのだから、変態度合いは天井を軽く越えているのではないか。
「はははっ。おまえは最高のメス犬だな、桂花。これだけ辱められても、まだ笑えるか」
「わ、わんっ……♡ ご主人様のくださる愛なら、どんなかたちだって私は受け止めてみせます。ああっ、ふうぅうう、んっ……♡」
「おまえの我慢も、そろそろ限界なのではないか。犬らしく、そこの柱にでもしてみてはどうかな? きっと、いい思い出になる」
霞がかった思考のまま、ふらつく足の片方をどうにか持ち上げた。
一刀さまが身体を支えてくれている。それで、思い切ってなにもかもをぶちまけることができた。
「んあ゙っ、ああっ……♡ でる、でちゃう♡ 曹操さまのお屋敷に向かって、はしたないメス犬おしっこ癖になる♡ んあっ、んっ……♡ おしっこしながらイクっ。おまんこ気持ちよすぎて、頭全部馬鹿になる……っ♡」
じょぼじょぼ、と流れ出す小水が地面で跳ねて淫らな音を立てた。
気づかないうちに相当な量を溜め込んでしまっていたのか、粗相はいつまでも終わらなかった。柱には、くっきりと小水をぶっかけた跡ができあがってしまっている。
朝になれば、間違いなく誰かに気づかれる。まさか自分がしたものだとは思われないだろうが、それでも狂おしいほどの快楽が頭のてっぺんまで駆け上がった。
「いぐっ、お゙っ……♡ これっ、これだめっ。はあ゙っ、はーっ♡ いくのとまらない♡ んあっ、あっ♡ わんちゃんの格好しながら、曹操さまのお屋敷におしっこかけるの、さいっこう……♡」
さようなら、曹操さま。
あなたへの思いを乗り越えて、桂花は一刀さまのもとで懸命に生き抜いてみせます。だから……。
「お゙ーっ、んっ……♡ 一刀さま、すきですっ、一刀さまぁ……♡」
全身を紅潮させて、桂花は腹の中にある思いをぶちまけた。
生まれ変わった自分に幸あれ。大いなる一歩を踏み出した桂花は、無敵だった。