こんなに必死になって足を動かしたのは、いつぶりなのかわからなかった。
前後に腕を振るう。息が荒れる。
舗装されていない地面の感触。ごつごつとしている。たまに飛び出た石があると、子供のように跳躍して避けた。
普通に駆けているたけだったら、絶対にこうはなっていないはずだ、と
縋りつこうとするならず者を振り切り、城門を飛び出した。原野に流れる風。いつもより、ずっと清々しく感じられたのはどうしてなのか。
隣を見ようとして、顔を背けた。
身体が熱い。それはたぶん、全力で駆けているからではなかった。なにぶん経験不足な自分でも、そのくらいは理解できる。
唇に残ったかすかな記憶。渾身の一撃を素手で受け止められただけではなく、なし崩しにはじめてさえ奪われた。なのに、嫌悪感がほとんどない。それだけ、自分は完敗を喫したということなのだろう。
本気で応戦していれば、あのくらいの人数はひとりでもどうにかなった。面倒にはなったのだろうが、浪々の身だからさしたるしがらみもない。それなのに、自分は必死に逃げることを選んだ。男に、選ばされてしまった。
思考がぐるぐると目まぐるしく回る。この男は、いったい何者なのか。それに自分の胸は、どうしてこんなにも早鐘を打っているのか。
風の中に叫びを放つ。隣にいるはずの二人がなにも言ってくれないせいで、余計に気恥ずかしくなった。
「もう、このあたりでいいだろう。おい、起きろ猫耳女。いつまでも失神しているのなら、原野に捨て置くぞ」
「はひっ……? んっ、うあっ……!」
男の声で、梨晏はようやく足を止めた。
短い逃避行の最中に、どうやら荀彧は気を失っていたらしい。そもそも、極度の男嫌いなのだから、あんな風に抱き上げられて我慢していられるはずがなかったのだ。理由なんて知らない。あるいは、はじめからそんなもの自体ないのかもしれなかった。
大勢の悪党に囲まれそうなところを、電撃的に助け出された。そのうえ、女であれば一度くらいされてみたいと思う格好でなのである。
「うーん……? やっぱり、気のせいじゃないよねえ」
手の甲で額を拭う。汗まみれになって走り回った自分と、男の腕の中でのびる荀彧とを見比べてみる。
状況だけ切り取ってみれば、どう考えても羨ましいくらいだった。
「ちょ、ちょっと。いい加減に私を離しなさいよ、この色情魔! ひっ……。ま、まさか、こっちの意識がないのをいいことに、あれやこれや、口では言えないようなことをしてくれたんじゃないでしょうね……っ!?」
「するか、そのようなこと。第一、俺の用があるのは、おまえではなくもうひとりの女のほうだ。断言しておくぞ、猫耳女。おまえを拾い上げてやったのは、成り行き上仕方なくやっただけのことだ」
「ぐ、ぐぬぬ。猫耳女、猫耳女って、人のことをどこまでも舐め腐ってくれるじゃない、この人攫いもどき! ふんっ。あ、あんたなんかに恩着せがましくされなくったって、こっちはこっちでどうにかするわよ。でしょう、太史慈?」
いつもの荀彧ならば、ここまで簡単にやり込められることはなかったのだろう。ただ、いまは状況が状況であり、自分自身の力でならず者をどうにかできなかった時点で、荀彧は負けている。それは、覆しようのない事実だった。
縋りつくような眼差し。苦笑を浮かべ、梨晏はちょっと荀彧から目線を外す。
正直に言って、自分と荀彧とのつながりは、さして大きいものではなかったのである。立ち寄った先の陳留で途方に暮れているところに出逢い、不憫だから洛陽まで同行することを決めた。
旅をする中で、なにかおもしろそうなことが起きればそれでいい。国の統制は乱れ、各地では腐った役人による搾取が横行している。そんな世の中だからこそ、主君選びが大切になってくる。
「え、えーっと、私は……その」
「ちょ、ちょっと、どうしてそこで口籠るのよ。私は、曹操さまにどうしてもお会いする必要があるの。高潔で美しく、そして厳粛なあのお方こそが、乱れた世を征されるべき英傑足り得るのでしょう。その道中をこんな変質者に邪魔されたくなんて私は……、って!? アンタ、いまお尻を触ったわよね!? くうぅ……。私に興味がないふりをしておきながら、やっぱり脳みその代わりに精液が詰まっているんでしょう、変態! いいからこのぉ、離せ、離しなさいよ……ぉ!」
荀彧が必死の抵抗をみせている。
だが、あんな細腕で殴りつけたところで、男の体幹を崩せるはずがない。そのことは、仕合った自分が一番よく知っている。
「あ、あいたっ。い、いきなりなにしてくれるのよ、アンタ……」
「離せと言われたから、離してやったまでだ。それにしても、よく回る口を持っているのだな、猫耳女。ははっ。おかげさまでおまえにも、多少興味が向いてきた」
「うぐぐ……。この荀彧さまに楯突いたこと、絶対にいつか後悔させてやるんだから。覚悟しておきなさい、このド外道……!」
「いいだろう。期待しているぞ、荀彧。俺は孫策、字は伯符だ。洛陽には、こちらも外せない野暮用があってな。尻に触れた駄賃として、警固くらいしてやってもいい」
「孫策? 孫策っていうと、まさかあの江東の虎の……?」
「えっ? えっ? 荀彧のその反応、お兄さんって意外と有名人だったりするの?」
荀彧は由緒ある名士の家の出で、各地に独自の情報網を持っているらしい。
江東の虎の名前だけは、さすがに耳にしたことがある。
とんでもなく剣の腕がたち、大将自ら敵を屠ることが常だから、いつからかそう呼ばれるようになったのだという。
孫家は、洛陽から少し距離のある揚州に地盤がある。淀んだ空気から遠ざかっているという意味では、悪くないことだと梨晏は思った。
「養子の身でありながら、嫡子とされていることにさしたる反発もない。どんな人物なのかと思っていたのだけれど、それがこんな下劣な人間だったとはね。心底、呆れたわ」
「くくっ。先程から、ひどい言われようをしているではないか、孫策。命じてさえくれれば、荀彧殿の軽口、しばらく塞いでやってもよいのだぞ?」
「あまり脅かしてやるなよ、周瑜。俺などより、おまえのほうが余程悪趣味ではないか」
「そうでもないさ。家中において、私ほど至極真っ当な人間がほかにいるか?
なあ、孫策?」
荀彧の顔がまたしても青くなっている。
周瑜と呼ばれた女は眼つきが鋭く、油断のならない相手のように思えた。長い黒髪がきれいで、引き締まってはいるが出るところは出ている肉体が見事だった。身体つきには自信があるほうだったが、堂々とした立ち姿には圧倒されるものがある。
女としての充実。それとも、よき主君とのつながりが、周瑜にこれだけの威風を纏わせているのか。
「んっ……。あのさ、お兄さん」
ようやく、声をかけることができた。
まだ、孫策には名前すら知ってもらえていないのである。胸の鼓動は相変わらず早いままだ。清々しいくらい透き通った双眸が自分のほうを向く。それだけで顔が熱くなってしまうのだから、自分はまだまだ子供だと思わされた。
「名前、まだ教えてなかったから。私は太史慈、字は子義だよ。さっきの闘い、すっごく身体が熱くなった。こんなに強い男の人が、いるんだって思い知らされた。それで、その……」
「おまえに勝利した褒美、まだもらい受けていなかったな。約定に従い、一晩好きにさせてもらおうか、太史慈」
「へっ……? うあっ、えっ、ちょ……っ」
孫策の放つ気が明らかに変化する。仕合っていた時と同じか、あるいはそれ以上の闘気だった。
身体が瞬時に硬直してしまう。獰猛なけものが牙を剥き、獲物を狙っている。弱い自分に、抗うことなどできるはずがない。それに武人として、一度交わした約束を破っていいはずがなかった。
迫ろうとする孫策の前に、荀彧が立ちはだかった。横柄なところがあっても、思いやりが少しもないわけではない。そうした変な部分があるから、自分は荀彧のことをおもしろいと感じているのかもしれなかった。
「ちょっと。それ本気で言ってるわけ、アンタ? 太史慈だって疲弊しているんだし、そもそも場所をわきまえなさいよね。あり得ないでしょ、いまここでなんて」
「どいていろ、雌。これは、俺と太史慈との問題だ」
「ひあっ……。えっ……? あっ、うあっ……」
孫策が冷たく言い放ち、荀彧の頬を平手打ちにする。
自分の行く道の邪魔をすることなど許さない。あまり強い力ではなかったはずだが、想定外の仕打ちだったのか荀彧は唖然となって動けないでいる。
草を踏みつける音が異様なくらい大きく聴こえた。犯される。そんな暗い思いが、腹の奥底から湧いてくる。
思い描いていたようなはじめてになど、なるはずがない。これもすべて自分が撒いた種であり、誰を恨むことなどできなかった。
「いまのうちに、飯の支度でもしていることだ。しばらく話しかけてくれるなよ、周瑜」
「まったく、おまえという奴は。まあいい、仕方がないから主命として従ってやろう」
そんな気はしていたが、孫策は場所を移す気など少しもないようだった。
周瑜と荀彧のいる目と鼻の先。しかも、食事の支度をしているその前で、自分は処女を失うことになる。
緊張のせいで声がでない。後ずさった背中が、近くにあった木にぶつかる。孫策が、そっと手を握ってきた。
「真名を教えてもらおうか、太史慈。俺は一刀。おまえのすべてを、いまよりもらい受ける男だ」
「んっ、ごくっ……。り、梨晏。私の真名は梨晏だよ、一刀」
孫策、もとい一刀の声には、深く沈み込むようなおそろしさがあった。
唇が触れる。一度目ほどの荒々しさはないように思えた。
輪郭、それに粘膜のあたたかさをゆっくりと確かめる。呼吸をどうしていいのかわからないのが難点だったが、普通ではないくらいの心地よさに包まれた。
「そんなに緊張して、乱暴にされるとでも思っていたのか」
「だ、だってそうじゃない。荀彧に、あんなことしたばっかりだし」
「邪魔をされたから、排除したまでだ。俺はおまえが欲しい、梨晏。今日だけではなく、この先もずっとだ」
「ふえっ? あの、それって一刀。んくっ、ふえっ、はっ、んうあっ」
愛の告白、だと理解してもいいのだろうか。心の臓が一度大きく跳ねた。こんな状態で聞かされているせいか、股の間がひどく熱くなる。悪い男だ、と思考を乱されながら梨晏は自分から唇を押しつけた。
唇を強く吸われる。身体をどうにかされているわけではないのに、口づけだけでこんなにも気持ちが昂ぶってしまうものなのか。
世の中には、知らないことが山ほどある。それを嫌というほど刻みつけられると思うと、芯がぞくりとふるえた。
「んちゅっ、はっ、はむっ。んっ、そこっ、んっ、かずと……っ」
一刀の手が胸に触れる。
こんな野外で、しかも周瑜たちの眼がある中で、乳房を露出させられる。おかしな性癖に目覚めてしまいそうな感覚が少しあり、梨晏はおそろしくなった。
念入りに肉を揉まれているせいか、感度がじんわりと高まってくる。気持ちいい。それなのにもどかしさがあるのが、自分でもおかしかった。
一番感じるであろう部分を、あえて遠ざけて弄ばれている。手つきからして、一刀はかなり女に慣れていると梨晏は思った。
「くっ、んんっ、くふ……ぅ。あぅ、んんっ、胸、いいけど、んはぁ」
「どうした。触って欲しいところがあるなら、自分の口で言ってみるがいい」
一刀の指が、乳輪をしつこくなぞってくる。
触ってもらいたい。つんと勃起した乳房の先端。桃色に染まったそこを、男の太い指でいじられたい。
愛撫されたことを考えただけでも熱い吐息が洩れる。外気に晒されているというのに、乳房は果てしなく熱くなっていた。
「お、お願い、一刀。私の乳首、あなたの指で気持ちよくしてもらいたいの。あんまり焦らされたらつらいから、ねっ? あっ、んぐっ、おっ、んあぁああっ……♡」
「ははっ。いい反応をしているな、梨晏。自分でするときも、こうして乳首をいじくっているのか? それとも、どこぞの男にこうして捻り上げられているのかな」
「ち、ちがっ……。くふっ、んっ、んあっ。ほ、ほんとははじめて、はじめてなの。男の人とこんな遊びなんてしたことないし、口づけだって全部、んっ……」
乳首を転がされると、甘い痺れが背中を駆け抜けた。
意地の悪い笑みを一刀が浮かべている。指の先端が何度も突起を弾く。胸をのけ反らせ、梨晏は快楽に全身をふるわせている。
「し、知ってて聞くの、ずるい。一刀はたくさんこういう経験があるんだろうけど、私は、はうっ……」
「おまえを抱くのは、これがはじめてだ。新鮮なことばかりで、愉しいぞ」
下腹部になにか硬いものが押しつけられている。これが男の人の性器なのか。衣服越しだというのに、どんどんおかしな気分になってしまう。
一刀の指が乳首を左右上下に搾り上げる。ずっと触れられているせいで、快楽がどこにも逃げてくれなかった。ひたすらに気持ちよさを味わい、男の象徴のかたちを教え込まれる。どうにかなってしまいそうな気分で、梨晏は未知の感覚を味わっている。
「お、おちんちんなんだよね、それ。さっきから、すごく熱い。ほんとに興奮してくれてるんだ、一刀も」
焚き火と鍋の準備をしながら、周瑜が時々自分たちのほうに視線を向けてくる。放心状態から抜け出した荀彧まで一緒になって観察してくるものだから、なんだかそちらからも犯されているような気分になった。
あんなに文句をぶつけていた割に、やけにしおらしくなっていると思った。それとも、立て続けに経験したことのないような感情の動きに晒されて、荀彧の中でもなにか変化が起きているのかもしれない。
その良し悪しはともかく、孫策伯符は巻き起こる嵐の中心となれるような男であることに違いはない。自分はその風量にひたすらに揺られていて、すでに抜け出す手立てがなくなっている。
「あっ……。で、でてきちゃった、おっきいのが。これ、こんなのが、私のおまんこに。うあっ、くっ、んふぅ……。ぜ、絶対、壊されちゃう。私のおまんこ、一刀専用の穴に変えられちゃうんだ」
ぞくりとする感覚。威圧的ですらある男根の先をじっと見つめていると、痺れがまた走った。
一刀が男根の大きさを知らしめるように、幾度も腹に擦り付けてくる。欲しい。腹の内側にある切なさを、このたくましいものでなにもかも埋めて欲しい。一刀の熱を感じていると、不思議とそんな気分にさせられてしまう。
「いいか、梨晏」
「が、がんばり、ます。一晩好きにしていいって約束だもん。そりゃあ、おちんちんだって、挿れられちゃうよね」
たまった唾を飲み込んだ。
愛液で濡れた下着をずらし、一刀が先端の侵入を試みる。熱い。これまで感じたことのないような熱さだった。
「あっ。くっ、くる、きちゃう。私のはじめて、こんなかたちで、んっ、はーっ、くふぅ……」
「嫌だったか、梨晏? もっと普通の場所で、普通に抱かれることが、望みだったか」
「やっ、そのぅ。自分でもよくわらかないんだけどさ、んふっ……。な、なんでか、全然嫌じゃないの。むしろ、嬉しいくらいっていうか、うぐあ゙……ぁ」
なにかが突き破られる。これが噂に聞く処女喪失の瞬間なのか、と梨晏は身構えた。
突き入れる一刀には遠慮というものがなかった。それだけに、体内まで征服されているという感覚がつきまとう。
こつん、と硬いものが壁にぶつかった。一刀が優しく口づけてくる。そんなに、自分はつらそうな顔をしていたのだろうか。
「はっ、あはっ。し、しちゃったんだね、私。一刀、んんっ、かず……とぉ」
ほとんど知り合ったばかりの男と、情を交わした。ただ、そこに大した違いなどないことを、梨晏は本質的に理解できている。
魂の在り方なら、刃をぶつけたあの時にわかっている。
一刀の、孫策の牙はどこまでも鋭く、すべてを喰らおうとする。本能のままに生き、ひたすらに駆ける。どうしようもなく乱れた世の中だ。ひとりくらい、そんな男がいてもいいと梨晏は思った。
「はあっ、ふうっ、ふふっ。あったかいんだね、つながるのって。はじめて知ったのが、この日でよかったって、いつか私にそう思わせてくれる、一刀?」
一刀が首を縦に振る。同時に、下から激しい突き上げがやってきた。
膣内全体に快楽による痺れがある。自分という女の肉体は案外浅ましいようで、男のものを涎を垂らして迎え入れてしまっているのだ。
生まれてはじめて知った女の悦び。求められ、愛されることで、人は新たに生まれ変わることができるのか。
「はあっ、んっ。すごい、一刀のおちんちんが、私のおまんこの中えぐってる。はあっ、ふっ、おっ、くんぅう……。最初より大きくふくらんで、これ……なんなの……っ?」
「梨晏。男が気持ちよくなるとどうなるのか、知っているのか」
「し、知ってるもん、私だってそのくらい。射精……。あっ、いまの状態って、おちんちんが射精したがってるんだね。はぐっ、ふーっ、んっ。おまんこの中でぱんぱんに膨らんで。そっか、これが一刀の気持ちいいってことなんだ」
脳内に小さな閃光が走る。がくがくとふるえる腰。実際どうなっているのかは不明だが、精液を求めて、子宮が降りているような感覚が梨晏にはあった。
一刀がしつこいくらい男根の先を子宮口に擦りつけてくる。痺れが止まらない。全身を、快楽だけが支配しようとしている。
「ああっ、くる、いいのきちゃう。くふっ、あーっ、んんっ、ひゃ……あっ♡」
自分の意識とは別に、膣内が激しいうねりをみせている。
一刀の息が荒い。これが男の人の気持ちいいってことなんだ、と梨晏は喜悦に表情を緩ませていた。
男根がまた一回り太くなる。続けて、感じたことのないような大きな脈動がやってきた。
「あっ、すごっ。いってる、いってるんだね、一刀。これ、ああん、んっ、私も気持ちいい。熱いのとぷとぷって射精されて、くふぁ、いっ、んうぅうぅ♡」
強烈なふるえが止まらない。
二人して抱き合った状態で、快楽だけに身を任せている。
一刀の勢いは凄まじい。
普通の男は一旦出し切れば情動が収まると聞いていたのだが、そんな気配がまるでなかった。
「お゙……くっ。んあっ、あっ、そんなっ、まだなんてっ!? あひぃ、んっ、んーっ、うぁぁあ……!」
射精の波が収まり、ひと息つくような場面だというのに、一刀はすぐに抽送を再開させている。
ぐちゃぐちゃになった結合部。あられもない音が何度も何度も鳴り響き、自分が快楽に堕ちたことを強調してきている。
「腹が空いたら、その時は言え。だが、休憩はそれまでなしだ」
「う、嘘でしょ? ひゃふっ、ふあっ、あんっ。確かに、一晩好きにしてもいいって約束したのは私だけど、うっ、くひぃ……♡」
肌と肌とがぶつかり合う。そんな乾いた音だけが、いつまでも耳の中に残っている。
ちょっと顔を紅潮させた荀彧と、一瞬だけ眼があった。
だが、その様子の変化を気にしていられるほど、梨晏には余裕がない。