劉表軍前線の動きが慌ただしい。戦の機運が、いよいよ高まっているということだった。
関羽と睨み合っている亞莎には、そのまま軍勢を任せるつもりである。一刀が見出し、蓮華が育んだ才だった。身重である娘に、わざわざ陣頭指揮をとらせることもない。だから、側近は穏ひとりいれば充分という考えである。
執務室の椅子にもたれかかり、炎蓮は天井を見上げた。
天下を狙う大戦の序章。漢土すべてを併呑するまで、終わることのない戦なのだ。やると決めたからには、最後まで突き進む。孫家全体に、その覚悟は伝わっているはずだ。
命を張るだけの価値のある、一世一代の大博奕だった。
荊州を奪い、続けざまに益州にまで勢力を伸ばす。どちらも劉家の支配下にある土地で、これを孫家が鮮やかに手中にすることができれば、天下に与える衝撃はかなりのものになるだろう。そうなれば、西涼にいる常磐や月との連携が最大限とれるようになる。
仕方なく赴いたような賊軍征伐だったが、一刀の女に対する嗅覚は飛び抜けたものがあるのだ。あの道中で、孫家は多くの繋がりを手にしている。やはり、一刀を引き立てたおのれの眼に狂いはなかったのだと、改めて思わされた。
「ふぅ……。はっ、ああ゙っ……」
ゆっくりと息を吐きながら、強く火照る陰部に指を突き挿れた。血を浴びたわけでもないのに、性欲がいつまでも渦巻く。
中に溜まった愛液を掻き出すと、満足するどころかさらに火がついた。
「一刀。もっと、もっとだ。乱暴に、母のマンコを自慢のモノで犯せ」
身体を慰めていると、自然と息子の真名が口をついた。太く猛々しいチンポで、子宮の内側まで責められたい。愛おしい精液で、腹をいますぐに重くしたい。汁を垂れ流した状態で、閉じていた両脚を翼のように拡げた。
唾をつけた指で、陰核を容赦なくこね回す。痺れるような快楽があったが、腹の奥は疼いたままだ。
いつ頃から、一刀は双眸に炎を宿すようになったのか。磨きに磨いた刃は、ついに自分たちの手を離れた。あとひとつ、家督の継承だけが母としての最後の役割だと炎蓮は思っている。冥琳を筆頭に、一刀を頂点とする組織のかたちはできつつあった。桂花や梨晏、恋といった外からの力も、着実に加わっている。蓮華が子を孕み、次代への道筋が明確となっていることも、大きな追風となるのだろう。
ここまでは、ひとまず目論見どおりだった。
「冥琳です、炎蓮さま。お耳に入れておきたい事柄があり、参上仕りました」
「お、お゙お゙っ……♡ いいから、勝手に入れ」
いいところを冥琳に邪魔された、という感覚はなかった。なにも気にせず、自慰を続ければいいだけの話なのである。
ぐちゅり、と再び秘裂が淫らに泣き声をあげた。
中のの事情など知る由もない冥琳が、普通に入室してくる。眼があって、炎蓮がにやりと笑った。
「やっ……。そういうことの最中なら、一言仰ってくださればよろしいのに」
「なんだ冥琳。まさか貴様、オレがマンコをイジっているから忙しいと言ったら、報告を遅らせていたのか? ハッ。あり得ねえだろ、そんなこと」
俯く冥琳を尻目に、窮屈にしていた乳肉を外に放り出した。つんと尖った乳首を指ですり潰す。炎蓮が、低く唸るような声で鳴いた。
「むっ……。私にも、軍師としての矜持があります。仕える相手がどんな状態であろうと、仕事は仕事として、押し通す所存」
「ああっ、いいぜぇ。それでこそ、あのバカ息子が選んだ軍師さまだ。好きなように生き、好きなように死ぬ。人間、求めるのはそれだけじゃねえか。なあ、冥琳?」
冥琳がそばにきたことで、空想上の一刀の気配が強くなったような気がしていた。
顔がそこに見えているのに、腕で抱きしめられないことがもどかしい。その分、女陰の疼きは甘く切なくなる。
「自由すぎるのですよ、貴方たち親子は。一刀も、一刀です。しばらく連絡がないと思えば、今度は袁家の城から命令を飛ばしてきて」
「ハハッ。だったら、アレが意気揚々と引き上げてきたら、その場でふん縛ってやりゃあいいだろ。それで、動けないあの野郎を散々にいたぶり、音を上げるまで子種を搾り取ってやろうじゃねえか。おっと、その時は忘れずオレに声をかけるんだぞ? マンコでイク寸前だろうと、すっ飛んでいくからよ。ハッハッハッ」
海に浸したあとのように、右手のひら全体がべっとりとしていた。
「ンで、クソボケ淫蕩息子はなんて言ってきやがった。せっかく迎えまで出してやるっつったのによぉ、まだ帰ってきやがらねぇとは何様だってんだ」
「はっ。それが、しばらく南陽に滞在するつもりでいるから、戦がはじまるまでに麾下を密かに寄越してくれ、と。加えて、あちらでは都から逃れた何姉妹を保護したようでして、用意していた兵力はそちらの援護に回してやってくれ、とも言ってきております」
冥琳による詳細な報告が続く。劉表領の各地に潜んでいる間諜の誰かを使い、紅波が状況を伝えてきたようだ。
濡れた陰毛を指先でいじくりながら、炎蓮は話に耳を傾けた。
「派遣した恋と紅波は、姉妹と一緒です。折り合いをつけながらの行程なので、まだ五日はかかるとのこと」
「落ち目の大将軍殿を守るだけなら、それこそあいつが直接守ってやりゃあいい。危険を冒してまで長沙まで連れ出すとなりゃあ、これはなにか理由があるな」
「報告にはなにもありませんでしたが、私も同意見です。大将軍に駒としての価値がないわけではありませんが、無理をして担ぐほどの存在ではありませんから」
一度最前線に出て、関羽の顔を見に行ってもいいかもしれない、と炎蓮は頷きながら思った。
それで、両勢力の緊張はより高まる。劉表軍も、余計なことに手を回してはいられなくなるだろう。
「あと……。報告はこれで最後なのですが、紅波は人攫いを命じられたようですね。それも、相手は劉表軍の重要人物です」
「となると、狙いは紫苑とその娘か。オレも、ぼちぼち動くべきだとは思っていた。手勢は足りそうなのか、冥琳」
自分と劉表とが、ぎりぎりの均衡を保っているいまはいい。
ただ、それが本格的に崩れだしたとき、黄祖がどう動いてくるのか。普通に考えれば、紫苑は消すべき対象となる。処罰の理由なんてものは、あとでいくらでも付け加えることができる。
「ぶっつけ本番とはなりますが、明命が鍛えた部隊の働きどころでしょう。明命が、お猫さまとなった山猫衆は無敵です、と豪語しておりましたが」
「搦手のことは、明命と紅波に任すほかあるまい。正面切っての殴り合いなら、オレがいくらでも出向いてやるがよぉ」
「紫苑殿が孫家についたことを示せば、動揺を誘えましょう。ひとりの将としても、あの方の存在は貴重です」
「もっと大事なことがあるぞ、冥琳。紫苑はオレたちの飲み仲間であり、かわいい育児の後輩でもあるんだ。だったら、なんとしてでも生かしてやらねえとなぁ?」
かたい表情だった冥琳が、ようやく笑みをこぼした。
やるべき事柄は山積みになっていて、しかも一刀の気配は遠ざかっているようでもあった。それでも、ここからは喧嘩師としての腕の見せどころとなってくる。虎だなんだと言われていても、ここで力を出せなくてはなんの意味もない。
「派手にやるぞ、冥琳。それから一刀には、蓮華のことは伏せておくんだな。アレが驚いた顔を、直に見てみたい」
「承知いたしました、炎蓮さま。ただし、あやつの勘はいやらしいくらいに鋭い。いつまで隠し通せるものか、わかったものではありません」
今度は一緒になって、炎蓮も高らかに笑った。