美羽に一連の報告を終えた孫策は、宮殿内に与えられた部屋でひとり過ごしていた。
以前であれば、ぼんやり聞き流していたであろう内容にも、向き合う姿勢が見られるようになっている。袁家の令嬢が前線に出る必要があるとは思わないが、御旗は戦場に立っていてこそ力を発揮する。その輝きを背に、自分たちは血生臭い仕事をやるだけだった。
暗くなった部屋に、孫策が火を灯す。日中の出来事でまだ気が立っているからと、七乃の用意してくれた酒は断った。憂さ晴らしに飲むには、袁家の酒は質が良すぎる。
ほんとうであれば、梨晏や桂花といった直属の臣下を招集して、黄祖撃滅の作戦会議を行って然るべきではある。ただ、今夜はちょっとした予感があったのだ。
「桃香です。一刀さん、少しお邪魔しても?」
「なにもない部屋だが、入ってくれていい。ン……。あまり悪口を言うと、また張勲に酷い目に遭わされるかもしれないな」
やはり、勘は冴えていたようだった。自虐的な口調で、孫策が桃香を迎え入れる。
女を感じさせる華やかな香り。休んでいる間に、湯を使ってきたのだろう。自分の視線に気がついたのか、桃香が艶のある髪をいじりながら苦笑する。雰囲気からして、入浴の許可を取りたかっただけなのに、それ以上の支度を美羽の権限で散々させられてきたとしか思えなかった。
おそらく七乃が面白がってやったことなのだろうが、桃香の魅力がしっかりと引き出されているのだから、孫策としては文句のつけようがない。
扉を閉めた桃香の肩を、孫策が自然と抱く。少しのふるえ。それでも、拒絶されるようなことはなかった。密着すると、華やかな香りがさらに強くなる。
「あ、あははっ。ちょっと近すぎるんじゃないかなぁ、なんて……。んっ、んむっ……!? ふえっ、あむぅ、ちゅっ……」
苦笑する桃香の唇を、間髪をいれずに孫策が奪う。やわらかで瑞々しい感触。鼻でどうにか息をしながら、桃香が服の裾を何度も引いてくる。
かわいらしい抵抗だった。本気で嫌がるのだったら、あの裏切り者にしたように、俺を殴り飛ばしてみればいい。
桃香の瞳が揺れている。あまり、言葉は必要ないと思った。手触りのいい着物を肩から脱がし、白い肌をあらわにする。恥じらった桃香が、胸の前で腕を交差させていた。
「強引なんですね、一刀さんは。だけど、こうしてあなたに求めてもらっていることを、嬉しく感じている私もいるんです。
「いけないことなど、なにも。桃香は、いつまでも桃香のままでいればいい。それが、俺の望みでもあるのだろう」
寝台に、桃香を押し倒す。瞳にあるのは、期待の色なのか。唇。再び合わせると、桃香が遠慮がちに舌を使ってくる。吸い上げ、唾液を送り返してやると、甘えるように身体を抱き寄せられる。
「あっ、んんっ……。すごく、かたいのあたってる。これが、一刀さんのおちんちん……?」
「正解だ、桃香。おまえがかわいくて、俺もその気にさせられている。ここの反応だけは、偽りようがない」
「えへへ。やっぱり、嬉しいです。ねっ、一刀さん。ひとつだけ、約束してもらってもいいですか」
桃香の胸に顔を埋めながら、孫策は声を聴いていた。
劉表との戦のこと。孫家の行く末のこと。それに、離れ離れになっている、義妹たちとのこと。考えつくことなら、いくらでもある。
「私の中にある、甘さや怒り。それも全部まとめて、天下を目指す孫家の船に乗せてください。あっ、そうだ……! 関羽ちゃんや張飛ちゃんの分まで、よろしくお願いできますよね、一刀さん」
「ははっ。ひとつのはずが、いきなり三つになってしまっているぞ、桃香」
「あの……。だめ、ですか?」
桃香の声が、急に弱々しくなってくる。
関羽や張飛を、黄祖ごときに遣い潰させていいはずがない。胸の間から少しだけ顔を持ち上げて、孫策が桃香と視線を合わせた。
「言ったはずだ。桃香は、桃香のままでいればいいと。おまえに負けないほどの強欲さが、俺の売りだ。姉妹揃っての奉仕、愉しみにしていよう」
「あっ……。うんっ、えへへっ……♡」
関羽は、黄祖の策により前線で躍らされている。ならば、そろそろ張飛も動いてくると見るべきなのか。
いずれにせよ、二人を見殺しにする気はなかった。軍単位ではなく、張飛が衝動的に向かってくるとするなら、自分としては好都合の展開となる。
「覚悟はできているな、桃香。おまえのすべて、俺が貰い受ける」
ちょっと緊張したような面持ちで、桃香が孫策の顔を見つめている。股を開かせ、怒張している分身を擦りつけた。熱を帯びた汁が、糸を引いている。
あたたかな花弁。男根が隠れていくところを、桃香は観察しようとしているようだった。締め上げられる感覚が、心地いい。
「あっ、んんっ……」
桃香が、小さく声を洩らす。破瓜の血が滲んでいるが、取り乱すようなことはなかった。馴染ませるように腰を前後させ、反応を窺う。ぎゅっと結んだ口は、覚悟の証なのか。
この女も、間違いなく戦場に生きているひとりなのだ。黄祖や劉表は、そこを甘く見ていたのかもしれない。それとも、姉妹を使い捨てるような手口を選んだのは、将来的に扱いきれなくなることを恐れてのことなのか。
「はあっ、んっ。一刀さんのが、私の奥まで。赤ちゃんのできるとこ、何度も、あんっ……♡」
「少しは、楽になったようだな。おまえも愉しむといい、桃香」
「ひゃっ、うあっ……♡ おっぱい、ぐちゃぐちゃにされちゃってる。一刀さんのおっきな手で、たくさん」
胸を責められて、桃香は快楽を得ているようだった。
孫家の女連中にも負けないだけの代物だ。これまで、様々な好奇の視線に晒されてきたに違いない。そこで溜め込んできたものすべてを、解放させる。
「乳首まで、そんなくにゅくにゅって、んっ、やあっ……♡ あっ、ああっ。一緒にされてると、おちんちんもどんどん欲しくなってくるみたいで。お腹の奥、すっごく熱いよぉ……♡」
「かわいいぞ、桃香。もっと感じて、乱れてみせろ」
体位を変えるため、孫策が一度男根を引き抜いた。熱っぽい視線が下腹部の一点だけに集中している。うつ伏せなった桃香の花弁を指で開くと、旨そうな蜜が寝台にこぼれ落ちた。指ですくい、塗りたくってから再び侵入を試みる。
胸だけでなく、尻のもみ心地も抜群だった。白い肌に、明るい髪色がよく映える。
「やらしい音、すごいの。んっ、んあっ、あっ……♡ 一刀さんも、興奮してるんだよね。おちんちん、とってもかたくなってるの、おっ……♡ ひゃあ、あっ。気持ちいいの、たくさん、のぼってきて……ぇ♡」
後ろから犯されて、桃香の快楽はさらに増大しているようだった。艷やかな声が、部屋中に響き渡っている。近くを通る者がいれば、なにをしているのか丸わかりになってしまうような声だった。
「んっ、えへへっ……♡ 私だって、知ってるんだよ。おちんちん、気持ちよくなったら出ちゃうんだよね、精液。とっても素敵な、赤ちゃんのもと」
「できるかどうかは、運次第だ。それだけは、力があろうとどうすることもできない」
最愛の妹と、無二の親友。そのどちらにも、子を授けられていないことだけが気がかりだった。
おのれのどこかに、滞りがあるのか。あるいは、天に嫌われでもしているのか。ただ、そのあたりの流れにも、変化が起こるような気がしているのも確かなことなのだ。
「だったら、何度も試してみるしかないよね、一刀さん。うっ、んっ、んんっ……♡ おちんちんでしてもらうの、すっごくいいんだもん。身体たくさん熱くなって、頭の奥がふわってなって。関羽ちゃんたちにも、早く教えてあげたいな」
「約束は、必ず成し遂げる。だから、少しだけ」
ふるえる桃香の腰を抑えつけ、奥ですべてを爆発させる。
枕に顔を埋めながら放つ桃香の声は、この夜でもっとも切なかった。
†
それから、ほぼ三日ほどで七乃は袁家内部の掃除を終えていた。仕込みは早くに終えていたのだろう。眼につく者には厳しく処断を加え、その気になれば美羽が全権を掌握できる態勢を整えてみせたのだ。
さすがの仕事ぶりで、敵対勢力には一切容赦をしないあたり、毛嫌いしていた桂花も能力を認めざるを得ないようだった。
臣下の集結する広間。豪奢な椅子に腰かけていた美羽が、ゆっくりと立ち上がった。良人として同席している孫策に手を引かれ、美羽がさらに進み出る。
近くには、補佐役として紫苑の姿もあった。実権を七乃ひとりに握らせるのは危うすぎる。本人は少しも気にしていないのだろうが、建前上だけでも複数人で美羽を支えている、という状態にしておくのが七乃のためにも望ましかった。
「みな、苦労である。知っての通り、妾はこの孫策を良人として迎え、ともに天下を戴くことを決めたのじゃ。のう、主様ぁ?」
「偉いぞ。よく、練習してきたのだな」
「おおお……! もっと、もっとよく褒めてたもれ主様……っと、こほん。まずは、張遼」
呼ばれた霞が、静かに姿をあらわす。普段の砕けた感じではなく、表情は軍人そのものだった。
「謀略を巡らせ、妾の良人や黄忠を害しようとしたこと、断じて許せぬ。黄祖、ひいては劉表を討ち取り、荊州の民に平穏をもたらすことこそがわれらの役目。よって、張遼には名代として軍権すべてを預ける。妾、そして孫策のため、よく働いてみせるのじゃ」
「御意。大役を仰せつかり、恐悦至極に存じます。……へっ、この張遼に任せとき。といっても、しばらく軍団を作り変える時間はいるやろうけどな」
拝礼をしながら、霞が小声で本音を洩らす。
襄陽に対して、牽制ができればそれでよかった。美羽の袁家に綻びがなければ、曹操たちも簡単に介入はできなくなる。あちらはあちらで帝の擁護に忙しいだろうから、孫家は勝手に近場を刈り取るだけだった。
「袁家の助力、孫家代表として非常に頼もしく思う。荊州制覇は、天下統一に向けた大事な緒戦である。諸君の奮戦、期待しているぞ」
臣下の列の末端に紛れていた梨晏が声を上げたのを発端にして、歓声が巻き起こる。同盟関係としては対等でも、誰がこの闘いを先導しているのかを、ここで明確にしておきたかった。
当然、それに対して美羽が不満を抱いている様子はない。むしろ、広間全体の熱気にあてられて、眼を輝かせているくらいだった。
「うははっ。さすがは、この袁公路の兄様よのう。頼もしいこと、この上ないのじゃ」
飛びついてくる軽い身体を、孫策が抱き上げる。歓声が、また大きくなっていた。
「お嬢様も、さすがの神輿っぷりでうっとりしてしまいます、私。うふふっ。どうせ担ぐんだったら、軽ければ軽いほどいいって、巷でも言うんじゃありませんでしたっけ、孫策さん?」
「ははっ。いい教育をされてきているようだな、おまえは。俺が離れている間、無駄に黄忠とやり合ったりしてくれるなよ」
「んー、ですねぇ。そうならないためにも、諍いは閨でたっぷりしておけばいいんじゃないでしょうか。ねっ、ご主人様?」
真顔の七乃がそんなことを言ってくる。
話が聞こえていたのか、苦笑している紫苑を尻目に、孫策は戦に向けて闘志を燃やしていた。