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『ひろちゃん、おかえり!~一人のクラスメイトを救った少女の話~』
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以上2作品の関連作品です。
私は紘深。私は周りからすると変わっていると言われるものが好きで、小学5年生の頃の社会の時間ではある時そのネタだったばっかりに授業で無双してクラスの人がびっくりしていたっけ。
そんな私が社会の時間で無双してから数カ月が経った12月のある日の5時間目。私たちは理科のテストを受けていた。
そのテストの最中のことだった。
(ビチャビチャビチャビチャビチャビチャ…)
突然教室に水が流れ落ちる音が響いた。その音は私が座る席の右斜め後ろあたりから聞こえてきた。その方を見る私。
(うそ…)
間違いない。梨苗はテスト中におもらしをしてしまったのだ。
私はすぐに体が動いた。自分もテストを解いている最中だったが、そんなことを気にしてはいられない。というよりテストなんてどうでもよくて梨苗を助けることが私が今一番やらなければならないことだと思った。
「梨苗!?大丈夫?」
梨苗の元に寄り、話しかける私。でもその梨苗は頭が真っ白という感じで、返事らしい返事もなかった。
紘深「私が保健室に連れて行きます。」
クラスの担任「分かった。じゃあお願いできる?」
紘深「はい。梨苗、立てる?」
梨苗「うん…」
梨苗を立たせて、一緒に保健室に行く私。梨苗の履いているスカートはぐしょぐしょだ。
梨苗「ひろちゃん… 本当にありがとう…」
紘深「それくらいいいよ。梨苗。」
実は私は2年前、つまり3年生の頃、ある日の道徳の授業中に教室の自分の席でおもらしをしてしまい、それが元で1週間ほど不登校になってしまったことがある。
~当時の回想~
(ビチャビチャビチャビチャビチャ…)
荒木(当時の紘深のクラスメート)「あの… 先生… 紘深ちゃんが…」
~回想終わり~
そんな私が学校に復帰してしばらくが経ったある日、私が学校に復帰できるよう先頭に立って頑張ってくれたのが、他ならぬ梨苗だったということを、お母さんが教えてくれたのだ。
~当時の回想~
紘深の母「―梨苗ちゃん、紘深のために一番に頑張ってくれてたのよ。」
~回想終わり~
保健室に着いた私たち。
(ドアをノックする紘深)
紘深「すいませーん。」
岩井(保健室の先生)「はーい。どうぞ。」
(ドアを開ける音)
紘深「あの… 実は梨苗が、教室でおもらししちゃって…」
岩井「あらら。着替え用意するからちょっと待ってて。」
私は梨苗と一緒に保健室に入った。岩井先生が着替えを用意している間、私は保健室に来たことを記録する紙を書く。2年前私がおもらしをしてしまった時は、私を保健室に連れて行ってくれた保健委員の荒木ちゃんがその紙を書いてくれてたっけ。
紙を書いてしばらくが経った頃には、梨苗は着替え終わっていた。その梨苗は保健室の座れるところに座って俯いていた。
(梨苗…)
私も梨苗と一緒にいてあげようと思い、梨苗の隣に座った。
梨苗の隣に座る私。しかし数分が経っても、梨苗は何もしゃべろうとはしない。まあそりゃそうだととは思うけど。
「ねえ梨苗。」
「なに…?ひろちゃん…?」
「私さ、3年の頃道徳の授業中に教室でおもらししちゃって、しばらく学校休んだことあったじゃん。」
「うん。あったね…。」
「私さ、あの時本当に、『もう学校行けないんじゃないか』『転校することになっちゃうんじゃないか』って思ってたんだ。」
「そう… だったんだ…」
「うん…」
やはり話は長くは続かない。今さっきみんなもいる教室でおもらしをしてしまった梨苗が相手なのだから、言葉を選びに選ばなければならないのだから。
私は話の続きをどうしようか、頭の中で言葉を浮かべては消し、浮かべては消しをしばらく繰り返した。こんなことは初めてのことだ。保健室では岩井先生が電話で何か話している。おそらく梨苗のお母さんに、梨苗が学校でおもらしをしてしまったことを報告しているのだろう。
すると数分が経ち、私の中で言葉がまとまった。
「それでさ梨苗、さっきの続きなんだけど…」
「ひろちゃん?」
「私があの後初めて学校に来た時さ、梨苗『ひろちゃんおかえり』って言ってくれたじゃん。」
「うん。」
~当時の回想~
「あ!」
「?」
「ひろちゃん、おかえり!」
「うん… ただいま!」(満面の笑み)
~回想終わり~
「私それ今でも覚えてるよ。梨苗がそう言ってくれた時、私もとっても嬉しかった。」
「そうだったんだ。私もひろちゃんが教室に入ってきた時、とっても嬉しかったんだ。ぶっちゃけた話するとね…。」
「なに?」
「3年の時クラスに
「ああいたね。今4組だよね?」
「うん。その史子ったらね、『ひろちゃんが帰ってきたー!』『もう学校来ないんじゃないかって思ってたー!』って言って、帰り道で泣いてたんだよ。」
「そうだったの!?」
「うん… まさか嬉し泣きする人が出たとまでは思わなかった…」
「そうだったんだ… 初めて聞いた…」
私が学校に復帰した日のこと。確かに梨苗が『ひろちゃん、おかえり!』と言ってくれてとても嬉しい気持ちになったのは今でも覚えているのだが、まさか後で嬉しさのあまり泣いてしまった子がいたというのは、今になって初めて知ったことだ。
「そうだよ… 途中増田ちゃんとかと一緒に帰ってたんだけどね、史子が突然泣き出してびっくりしたんだから。」
「そうだったんだマジで…」
「うん… 『いやここで泣く!?』って思ったよ… 軽くパニクっちゃった(苦笑)」
「大変だったね…」
「うん…(苦笑)」
「でさ…」
梨苗と話をする中でいろいろと思い出す。私がおもらしをしてしまった後、私が学校に復帰できるよう一番に頑張ってくれていた梨苗。お母さんからは学校に復帰してしばらくが経った日、『機会があったら梨苗ちゃんにありがとうって言いなさいね』と言われていたのだけれど、教室でのおもらしというセンシティブ極まりないことがきっかけだったから、なかなか梨苗に直接ありがとうの言葉を伝えられずにいた。
「今更言うのもおかしいとは思うけどさ…」
「ひろちゃん?」
「あの後私が学校に復帰できるよう一番に頑張ってくれたの、梨苗だったんでしょ?」
「うん…」
「あの時は本当にありがとう。」
「こちらこそだよ。ひろちゃん。」
「えへへ… ごめんね。事情が事情だからなかなか今までなかなか言えなくて。」
「別にそれくらいいいよ。ひろちゃんが言ったように事情が事情なんだから。でもねひろちゃんが学校に帰ってきてしばらくが経った日、ひろちゃんのママが私の家に来てくれて、『紘深が学校に復帰できるよう頑張ってくれてありがとう。』って言ってくれたんだよ。」
「知ってる(笑)お母さんが直接私に言ったんだもん。『今日梨苗ちゃんの家に行って、梨苗ちゃんや梨苗ちゃんのママにありがとうって伝えておいたわ。』」
「そうだったんだ。」
「うん。でもさ私…」
私は話を続ける。
「前の夏休みに、私が新潟に旅行に行ったって話したの覚えてる?」
「うん。」
「実はその帰り途中にトイレに行きたくなっちゃったんだけどね…」
「どうしたの?」
「その車が渋滞にハマっちゃってなかなか進まなくてね、私、車の中でおもらししちゃったんだ…」
「そ、そうだったの?」
「うん…(苦笑)」
数カ月前、家族旅行で新潟に行った時、その帰りの車の中でトイレに行きたくなったのだけどその車が渋滞にハマってしまってなかなか進まず、最終的に我慢できなくなって車の中でおもらしをしてしまった私。私はそのことを梨苗に打ち明けた。
~その時の回想~
紘深「お母さん…」
紘深の母「紘深?どうしたの?」
紘深「も… もう… ダメ…」
紘深の母「え!?噓でしょ!?」
紘深「うう… うあ… あああ―」
(ジュ… ジュジュ… ジュジュジュウウウウウウウウウウウウウ…)
~回想終わり~
「あの時以来のおもらしを、今年しちゃったんだ…」
「そうだったんだ… 大変だったね…」
「うん…(苦笑)お父さんも一緒だったからとても恥ずかしくてめちゃくちゃ泣いたよ… あの後2日くらいお母さんはともかくお父さんの顔見れなかったよ…」
それからしばらくして。
「ごめんくださーい。」
梨苗のお母さんが保健室に来た。
「お母さん… ごめん…」
「いいのよいいのよ。あら紘深ちゃん。こんにちは。」
「こんにちは。」
「もしかして紘深ちゃん、梨苗が教室でおもらしをしてしまってから、ずっと一緒にいてくれたの?」
「はい。」
「ありがとう。梨苗も寂しくなかったと思うわ。」
「ひろちゃん、今日は本当にありがとう。」
「どういたしまして。」
そうして、梨苗は梨苗のお母さんと一緒に家に帰った。その梨苗の表情は2年前のあの時の私とは違って、さっき教室でおもらしをしてしまったとは思えないくらいに、明るいものだった。
梨苗が帰った後、私は教室に戻った。
そして次の日。
(教室のドアが開く音)
「あ!」
「あ。ひろちゃん、おはよう。」
「梨苗ー。おはよー。」
私とは違って梨苗が次の日普通に学校に来てくれたこと。私はそれがとっても嬉しかった。
ちなみに紘深たちの小学校6年間の間に学校でおもらしをしてしまった人はまあまあいましたが…
3年の時に学校でおもらしをしてしまった人は紘深だけでした。