イッセー視点
「な、何ですって祐斗!? それがコカビエルの真の目的だっていうの!?」
「はい。フリード・セルゼン……あのはぐれ神父が嬉々として話していました」
奪った聖剣を融合させる目的はコカビエルの能力を発動させることだというのだ!
ノロイの奴がケルベロス・オリジンを奪取するためにジュデッカを視察したのもそのためだとかなんだとか……。
「で、コカビエルの能力って何だ?」
「それは……」
おお、皆がずっこけるものと危惧していたがリアス部長は間をおく。
ゴクリ、と俺は生唾を飲みこむ。
市内……もといシナイの大戦を生き抜いた堕天使だというしとんでもない能力なんだろう。
「わからないわ」
「わからないんですかーい!!」
しまった! 思わず虚空を指さしながらツッコミをしてしまった! するとリアス部長は真っ赤になって俺に反論する。
「し、仕方がないじゃないの! シナイの大戦の最終決戦に関わる資料は殆ど残っていないのだから!」
ええ〜!? 天使、悪魔、堕天使の1大決戦の資料がまるきり残っていないなんてそんな話があるんですか!? いや、リアス部長を疑うワケではありませんけど!!
レイナーレ達に聞いた方がいいかもしれないけどミッテルトは奴等に凌辱の限りを尽くされたせいでそっちのケアにつきっきりだ。
「知っておるぞ」
そこでイゼベル様が部室のおやつを物色しながらさらりと言った。
「「な、何ですってー!?」」
俺と部長のシンクロした叫びが旧校舎にこだました。
ー
「では教えてやろう。この世で最も強い光は何か知っておるか?」
と、改めて話を始めたがいきなりクイズですかイゼベル様?
「イゼベル・シファー。まどろっこしい事はやめて頂戴。私達は急いでいるの」
「サーゼクスの助けを拒む程にかの?」
「今、お兄様は苦境に立たされているの。
風船みたいにフラフラ、ふわふわ生きている貴方には解らないでしょうけど」
「浮雲の様にゆるり、ふわりと生きるのも皆が謗るほど悪くはないぞよリアス・グレモリー」
イゼベル様はリアス部長の怒りを軽く受け流す。なんというかサーゼクス様にも劣らないゆとりと余裕を感じる。
「愛です! 愛こそが光! 愛がなければこの世は闇です! そして部長とイゼベル様は俺の行く道を照らす光!」
俺は二人に高らかに宣言する。
「ま、全く何を言い出すのよイッセー!」
「カッカッカ! イッセーよ。そなたはそれで良い。が、ハズレじゃ」
ま、まあそうですよね……。
コカビエルが愛の堕天使なんて言われてもドン引きだし……。
「では……太陽かしら?」
リアス部長は顎に手を当てながら思案深い表情で言うとイゼベル様はほう、と唸りつつ目を細めた。
「なかなかの慧眼よな。間違いではない。が、正しくもない」
「……イゼベル。もしかして私をからかっているの?」
「褒めてやったのにつれぬ小娘よ。まあ、良い。ヤツが扱うのは星の光。夜空に瞬く数多の星の光はヤツにすれば無尽の砲台と同義じゃ。無論、星の光さえも出力とできるが、それよりもより強くそして最終手段であるのは星の光を濃縮、凝縮し縮退砲と成することであろう」
「まさか……それは……」
リアス部長が青ざめる。
俺はアホだからかまるでコカビエルの狙いが解らない。
「ブラック・ホール……と言えばイッセーにもわかるかの?」
ぶ、ブラック・ホール!? あの、ブラック・ホールですか!? 地上にそんなモノが現れたら……!
「人類史始まって以来の大破壊になろうの。或いはそこまでせずとも星の光や隕石を核弾頭に擬態して世界のあちらこちらに放つだけでも効果は覿面。人類は自らの錯誤と恐怖によって滅びる事になろう」
それってつまり、コカビエルの超魔術によって核攻撃が他国から開始されたって勘違いした挙げ句に核戦争が始まるって事か……!?
母さんや父さん、松田、元浜、桐生……あとクラスメイトのみんなも皆、死んでしまうって事か!? そんなこと……! そんな事させるか! させてたまるものかよッ!
「部長! イゼベル様! 今すぐにでも奴らを止めなきゃ!!」
「落ち着きなさいイッセー。その規模の超魔術を使うには何らかの兆候があるはずよ。それさえ掴めば……」
「そんな悠長な! そんな猶予はありませんよ! 大破壊が起きた時、貴方たちはどこに居るんですか!? そりゃ冥界にとんずらすれば死ぬことはないからそれでいいでしょうよ!!」
俺はつい語気を荒くしてしまう。だけど、
だけどさ! 松田や元浜、桐生の事を考えたら居ても立っても居られない!
「イッセー君、言い過ぎだよ」
「先輩……落ち着いてください」
木場に子猫ちゃんに諭されて俺は二人から視線を外す。なんで皆、そんなに冷静でいられるんだよ!?
「祐斗の言う通りよ。確かに、コカビエルの狙いが解ればすぐにでも動くわ。だけど、その兆候を掴めるかどうか……。イゼベル、貴方なら何か知らないかしら?」
「……さての」
イゼベル様はそれだけ言って口を閉ざした。
ー
放課後、俺は無駄だと解っていながらも駒王町のあちこちをチャリンコで走り回った。僅かでもコカビエルの動きの兆候が掴めればと。だけど、何も掴めない!
クソッ! 何が赤龍帝だよ! 駒王町どころか世界の危機だってのに俺は……!
「どしたん? 話聞こうか?」
公園で塞ぎ込んでいた俺に誰かが話しかけてきた。良く見りゃ、いや良く見なくても美少女で外見は橙色三つ編みの眼鏡っ娘、パッと見委員長タイプの文学少女を思わせるような風貌だが口を開けばガッカリガールこと桐生愛華だ。
「なんか失礼な事考えてない?」
「お前には関係ないだろ」
「あ、私にそういうこと言っちゃう?」
ふわり、と女の子らしい石鹸の香りを漂わせながら愛華は俺のベンチの隣に座る。
「で、何悩んでるの? 話せることなら聞くよ」
「お前に言ってもどうにもなんねーよ」
「まあね。聞くとは言ったけど解決策を提示できるとは言ってないもん」
「な、なんだよそりゃ……」
俺は面食らうが同時に愛華らしい回答だなと冷静に思った。
「だから話すだけ話してみてよ」
「……桐生。もしあと数日で世界が滅びると知ったらお前はどうする?」
我ながら
変な質問だとは思った。だけど、愛華なら何かヒントになるような答えが返ってくるんじゃないかと思ったんだ。
「ん〜……。私だったら何もしないよ」
「……え? 何もしないって……」
「だって世界が滅びるんでしょ? だったら私は家族や友達、それにアンタと一緒に最後の日を迎えるの。そしてね、最後は笑って終わるんだよ!」
屈託のない笑顔だった。まるで夜空の星の様にキラキラと輝いてる。
「なんだよ、それ……」
「だからそれが私の答えだよ。正解がないものに無理矢理模範解答を当てはめたってダメダメ。だから、アンタはアンタの答えを見つけなよ」
愛華がそう言うと俺の中のモヤモヤした何かが晴れる気がした。そうだ、俺は俺だ。
「ありがとうな桐生。なんか吹っ切れたよ!」
「どういたしまして! お礼に今度ケーキ奢ってね。一番高い奴」
お、お前なあ……。こういう所がなきゃモテモテなんだろうけど。
「おりょ? なんか今日の空変じゃない?」
「……!! 桐生! どこがおかしいんだ!? 言ってくれ!!」
「あいたた!? どしたん兵藤?」
「いいから! 教えてくれ!」
俺は愛華に強引に肩を掴む。今は事を急がなきゃいけないんだ!!
「わ、わかったから離してよ痛いってば!」
「あ……悪い」
俺は慌てて愛華を離す。すると彼女は空を見上げて言う。
「……今日は宵の明星が現れる日じゃ無いはずなんだけどね」
「よ、宵の明星?」
「うん、簡単に言えば夕方の空に見える金星の事。オカルトマニアの間ではイシュタルとかルシファー、あるいなサナト・クマナとかを象徴する星だよ」
つまりコカビエルが超魔術を使うにあたって星の光が鍵となるなら、うってつけだという事だな! 俺はその宵の明星とやらを探すべく駆け出そうとするが愛華に腕を摑まれる。
「お、おい桐生!? 急いでるんだ! 用があるならまた……」
「兵藤。よく解んないけど、負けるなよ」
「ああ、そのつもりさ!」
そう言って俺は愛華から離れて宵の明星のもとへ全力でチャリンコを漕ぐ。夜まで待つなんて悠長な事はしてられない! 今からでも動かなきゃ……いざとなれば俺一人でも奴等をぶっ倒す!
ー
「で、どんな塩梅ザンス? バルパーの旦那」
「極めて順調だ。この分ならば今日の内に四本の聖剣は統合されるだろう」
「うふふ。そしてそれをガイドビーコンにしてリアス・グレモリー達を招き入れ、其の上で最終戦争の狼煙としてコカビエル様の超魔術を発動させようという手筈でいいのね」
「まあ……アザゼルとやらからの妨害は入るだろう。そいつらの相手は貴様ら二人に任せる。そのために貴様らに『黒死の銃』を作ったのだからな」
「解っているさぁ。白竜皇……『龍狩人』としちゃこの上ない獲物だからな」
「でも、いいのバルパー? 貴方は自分の聖剣計画を否定された事を恨んでこの計画を立案したのよね? 見返す相手がいなくなったら復讐の甲斐がないんじゃないの?」
「はあ……。貴様らも我が信仰を理解できぬか。そんなものはどうでもいい。全ては神の御心のため。預言の書に最終戦争が起こった時にメシアが降臨なされるとあるではないか。即ち三位一体の神が降臨なされ全てのものに救済が訪れる。
そのためならば罪人も聖人も、天使も悪魔も堕天使も……地上にあるもの皆死ぬべし」
バルパーは真顔で言った。
彼の信仰にはそうした狂気がある。
そしてコカビエルもまた……。
バルパーが原作よりヤベー奴になっている。
でもバルパーの思想って神の予定説に反しているから
全然神の教えに忠実じゃないんだよね。
英雄って言うのはさ、英雄になろうとした瞬間に失格なんだよ。お前、いきなりアウトってわけ。