外伝を間に入れるしかねえな。
俺は桐生から聞いた『宵の明星』目指してチャリンコでひたすらチャリンコで走っていた。
イッセー視点
『おい、相棒。もう少しいった先に魔力の歪みがある。恐らくコカビエルとやらはそこに超魔術の準備に励んでいる様だ』
するとドライグが語りかけてきた。
教えてくれたのはありがたいけどもう少し早く教えてくれないかあ!?
『まあ、俺としては貴様が死のうとこの人間界が滅びようと知った事ではなかったが気が変わった。ドラゴンはワガママで気まぐれなんだ。気に入ったモノをみすみす死なせるのは面白くない』
「……ドライグ、お前……。
眼鏡っ娘マニアだったの?」
カアー……とカラスが夕暮れ空を飛びながら鳴き始め、微妙な空気が漂った。
『お前な……何故そんな結論に至る』
「いやほら、だってさ……。話の流れ的に桐生に見惚れたのかとばかり」
さしずめ赤龍帝ならぬメガネ龍帝とでも呼ぼうかと。
『違う。それより魔力の流れを辿ってみろ』
「あー、なんだ。心配して損した……。それでドライグ、その魔力の歪みってのは?」
『今走っている十字路を右に曲がった先の大きな霊園だ』
言われた場所までチャリンコを走らせると、確かに黒っぽい感じのもやが霊園を覆い尽くしているのがわかった。外人墓地の件といいコカビエルって墓場マニアなのかな? 性癖は星の数程あるっていうし。しかし、改めて凄い魔力を感じる。正直世界の終わりを防ぐっていう使命感がなければビビって逃げているレベルだ。
「ドライグ、あの黒いのってやっぱり」
『ああ、コカビエルが張った結界だろう。見ろ』
ドライグに促されて霊園の中を覗き込むと墓石が宙を舞い、木々が枯れ果てていた。
『この結界は現実世界からあの霊園を切り離してやがる。恐らく中にいる人間は外の異常に気付く事すら出来ないだろう』
「……つまり中で暴れても外に影響はない?」
『まあな。だが、相棒。本気で奴等を一人で倒すつもりか?』
「倒すさ! そうしなきゃ世界が滅んじまうんだろ! だったらやるしかないだろうが!」
『ククク……小気味いい返事だ。俺も久々に暴れられるんだ。相棒のバカにとことんまで付き合おうじゃないか!』
「サンキュー、ドライグ! じゃあ早速……」
「待てよ兵藤」
いざ、総員突撃! (一名)とばかりに突っ込もうとしたら誰かが俺を呼び止めた。
この声は匙! 匙じゃないか! イゼベル様と一緒に来てくれたのか!
「うむ。しかも余だけではないぞ。
余は一人で構わぬと言ったが奴等がどうしても言うのでな」
匙が視線を向けた先に魔法陣が展開されると、そこから続々と生徒会役の皆さんと部長達が来てくれた。
「兵藤君。そういう無謀は匹夫の勇。本当の勇気とは己の至らぬ所や弱さを見つめ、
克己しつつも時には誰かの力を借りる勇気の事を言うのです」
「そうよ、イッセー。まさかソーナに私が臆病者だと叱られる日が来るだなんて想いもしなかったわ」
「部長……。俺、頑張ります! だから力を貸してくれませんか?」
「ええ、勿論よ」
「ありがとうございます!」
俺は思わず涙ぐんでしまった。
ああ、なんて素晴らしい仲間達なんだ……! 俺は、最弱の赤龍帝だけど孤独じゃない! こんなにも暖かい悪魔に囲まれているじゃないか!
「イッセー。これからは私が君の剣になる。この命果てるまで好きに使ってくれ」
ゼノヴィアが破壊の聖剣を携えて俺の傍らに立った。なんて心強いんだ。まさに百人力だ。
「ケーケッケッケ! 臭い! 臭い! 臭い!
貴様ら汚れた悪魔の友情ごっこは見るだけで反吐が出るわ!」
直後、上空から甲高いカラスの様な聞くに堪えない笑い声が聞こえてきた。何だとこのトリ野郎!!
「テメーがコカビエルか!」
「いや、違う。良く見ろイッセー。奴の翼を」
ゼノヴィアの言葉に従い俺はトリ野郎の背中を見る。漂白したかの様に真っ白だ。つまり天使ってワケか?
「相変わらず見苦しいのお。オファニエル。いや、ミカエルらの怒りに触れて4つに分かたれた今はオファニムじゃったな」
イゼベル様がフン、と鼻で笑い髪をかきあげながら悠然と言い放った。 昔馴染ってヤツかな?
転じてトリ野郎はニタニタと虫酸が走る笑いを浮かび続けた。
「ケーケッケッケ! 誰かと思えばイゼベルか。貴様とて似たようなものだろう? 余りにも矮小かつ卑しい姿に気がつくのが遅れてしまったぞ?」
「何だとこのトリ野郎!! 言うにこと書いて矮小とは何だ! こんなにも豊満! 優美! 婬猥! どこに出しても恥ずかしくない俺の女神様を掴まえて! ふざけた事いいやがるとキュッと締めて、フライドチキンにすんぞコラッ!!」
俺は思わず激昂してトリ野郎に啖呵をきった。
「イッセー、婬猥は褒め言葉ではないわよ……」
「……最低です先輩」
「ふむ。そうなのか。日本語とは難しいな。メモしておこう」
いや、ゼノヴィア。緊迫した場面だから。
「それはそれとしてイゼベル。我らと組まないか? コカビエルが超魔術を繰り出せばこの世界は滅びるだろう。しかしだ。死した土塊共に眠る神器の欠片を結集させれば神は復活なされ『千年王国』が更地となった地上に降り立つだろう。その功で貴様はジュデッカに押し込めるだけで許してやるぞ」
おい! 今サラッととんでもない事実を言わなかったか? 俺だけでなく皆にも動揺の色が見える。 特にゼノヴィアは明らかにパニックになりかけている。
「う、ウソだ! そんな事があるものか!」
「ケーケッケッケ! お前が聖剣使いから転生悪魔となったのに何一つ神の裁きが下されないのがその証拠だ! ミカエル共も甘い。所詮土塊など駒! 道具! 消耗品!
そんな物に慈悲をかけるなどと。だからシナイの大戦で遅れを取るハメとなったのだ」
「う、あ、ああ……」
がくりと膝をつき、ゼノヴィアは頭を抱えだした。無理もねえ。自分が信じてきたものや半生が全否定されようとしているんだ。
「オファニムう!! テメーだけは許さねえ! テメーはこの赤龍帝、兵藤一誠&ドライグが直々にぶちのめす!!」
『Boost! Boost! Boost!』
俺は赤龍帝の籠手を展開し、力を倍加させ飛び上がった。思い切りそのニヤケ面に拳を叩き込んでやる!
「ケーケッケッケ! 馬鹿者が!
貴様の相手は俺ではない! あの聖剣使いよ!」
ブオン! と地上から俺の足に何かが巻き付き、俺は地面に叩き付けられる。何とか受け身は取ったが俺は相手を見て面食らう。
「い、イリナ!」
「倒す……倒す……悪魔は……倒す」
目がうつろだし顔に生気がない……。
あの天真爛漫さも今は影も形もない。
まさか、洗脳しやがったのか!?
『フフフ、そうではありません。彼女は真実を知り、心に大きな空白が生じたのです。それに乗じて私が精神を乗っ取っただけのこと』
まるで守護霊……いや悪霊の様にイリナの背中から坊主頭の優男の幻影が見える。
「お前もオファニムの一部か! このハゲ野郎!」
『その通り。神の試練により我々は人、鷲、牛、獅子とそれぞれ分かたれたもの。
しかしこれも来たるべき『千年王国』の玉座に神に降臨して頂くため……』
「だから女の子に憑依して操り人形にしたっていうのか! ふざけるな!!」
『私は真剣ですよ。全ては神の御心のまま……』
ー
ゼノヴィア視点
う、ウソだ……。聖書の神が既に亡き者になっていたなどと。では……神の裁きの名の下数多くの悪魔や異端を屠ってきた私の存在は何だというのだ……?
私が信じてきたものは何だったと言うんだ!? ああ、消えてしまいたい……。
破壊の聖剣も私の不甲斐なさに見限りをつけたのか鉛の様に重い。
ダメだ……鷲のオファニム様、いやオファニムから刃の羽根が飛んできているのに私は何も出来ない。
「これ、何をくずおれておる。貴様が唯一傅くのは主であるリアス・グレモリーのみであろうが」
パキィン! と結界が刃の羽根を防ぐ音が響き渡る。イゼベルが私の周囲に結界を発生させた様だ。な、なぜだ?
リアス部長とイゼベルは不仲の筈。
部長の眷属である私を助ける義理などないだろう。
「イゼベル……どういうつもりだ?」
「どういうつもりも何も、そなたはイッセーのお気に入りであろう。しかし、そなたも存外戯け者よな。かのイエスが死した後、かの者が残した信仰は全て消え去ったか? そうではなかろう。それとも何か? そなたは彼奴らと同様に神の力にのみ信仰を捧げると言うのか?」
「そ、それは……」
ああ、グリゼルダとリアス部長の言葉を思い出す。
『貴方は、貴方のために生きなさい』
そうだ。信仰とは信じて仰ぐと書く。
俯いたり他人を見下して何が信仰だ!
間違っていたのは私の思い上がりであって聖書の神やその教えではない!
「オファニエル、いやオファニ厶!
私はお前を倒す! 誰に命じられたり、唆されてではない! 私は私の意思で……! お前を倒す!」
「漸く気がついた様じゃの。ほれ、お前の悍馬が早く俺を使えとウズウズしておるぞ?」
しっかりと地を踏みしめ立ち上がった私の上空からデュランダルが光の中から舞い降りる。そうか、この暴れ馬め……!
漸く私に手綱を持たせてくれる気になったのか! 「ああ、そうだとも! 待たせたな!」
私はデュランダルの柄をしっかり握りしめる。ああ、なんという重量だ……! だがこの重みが私を昂らせてくれる!
「皮肉な事よ。神の教えに背く事で神の教えの真意に至るとは。しかし獅子は欺かざるもの。我もまた、我の意思で貴様にまみえようぞ! 参れゼノヴィア!」
「うおおおおっ!!」
獅子のオファニムが感慨深く呟くと、クローを展開して向かってくる。イリナはイッセーが何とかしてくれる筈!
私は獅子のオファニムを倒すのみ!
ー
匙視点
どうやらゼノヴィアって子は持ち直したらしい。正直助かるぜ! 敵の戦力がどの位あるか解らない以上戦力が多い方がいい!
『そうですね元士郎。ですが気をつけなさい。ミカエル直属で無いにせよ彼らも嘗ての大天使です。しかも聖書の神の死を知っている以上、一筋縄では行かないでしょう』
ヴリトラ様が敬語口調で喋っている。
文字とおりに一心同体になったからかな?
これはこれであり!
「ぶもおおお」
所謂モーニングスターを振り回して牛頭の天使が襲ってくる! アイツもオファニムの一部なのか? 見るからにパワー全振りって感じのヤツだな! 取り敢えず痛恨の一撃を喰らわない様に注意しないとな!
「このおっ! 必殺! 雷霆蹴り!」
前線を張る仁村ちゃんがその天使の腹筋に稲妻の様な勢いの飛び蹴りをぶちかます!
メキイ! と、音を立てて天使の足元にヒビが入るものの……。
「ぶもおおお!」
ヤツが腹筋に力を入れると仁村ちゃんはふっ飛ばされてしまった!
「黒い龍脈・禍蜘蛛!」
ヴリトラ様の蜘蛛モードの力でセーフティネットを張り、仁村ちゃんをカバーする。
「すみません、匙先輩!」
「いいさ! 同じ会長の眷属だろ!」
「ぶもおお!」
躍起になった牛頭天使はメキメキっ! とアスファルトを剥がして投げつけてきた!
グオォッ! と空を引き裂いたそれはまるで砲弾の様だ!
「危ない元ちゃん!」
咄嗟に花戒先輩が結界を張って防いでくれた! いつの間にこんな事ができる様になったんだろうか? いや、疑問を浮かべるよりも先に礼を言う方が先だよな!
「サンキュー花戒先輩! 助かりました!」
「ううん、どういたしまして。元ちゃん」
優しく微笑む花戒先輩。うーん、なんだか癒される。これは恋か? いや落ち着け俺! 戦いの中で戦いを忘れるな!
ー
木場視点
「いよお、イザイヤ。聖魔剣を使える様になったんだってなあ?」
ノロイがヘラヘラしている様な声で二丁拳銃を取り出しながら話しかけてきた。
相変わらずフルフェイスヘルメットで表情は見えない。だが彼の正体は何となく解る。今の僕には解るのだ。いや、信じたくなかったから目を背けていただけだ。
自分の罪に、弱さに、そして何より目の前の敵が何者であるかという事に。
「お陰様でね、トロイア」
「ほー、漸く気がついたか?
ま、無理もねえわな。昔の俺とは何もかも違うしな。身長は伸びて、素顔は隠して、性格はひん曲がったからな! ハハハハハ!」
そう、トロイア・オルフェウスは聖銃使いを目指した聖剣計画の中での変わり種。皆が処分された時に僕を逃がすために自ら犠牲になった男。
その彼が目の前にいる。
「復讐が動機かい?」
「いや? 前にも言ったがなァ。俺達は弱いから切り捨てられたんだ。その事に恨みつらみは言わねえよ。だから俺は強くなることにしたってワケよ」
トロイアの魔法陣が展開されると彼の背後から数匹の魔獣が姿を表す。どれも3つの首を持ち、蛇の尾を持つ地獄の番犬ケルベロスだ。しかしその中で最も異彩を放つ大きいケルベロスにトロイアは軽々と跨がる。
「ハッハハハ! 中々騎士ってのも気分がいいモンだな! 銃士改めて黒騎士(ブラック・ライダー)って名乗るかな!」
「トロイア! 今更何が君にあったのかは問わない! だが僕はリアス部長の騎士!
君が駒王町、いやこの世界を破壊しようというのなら……君を討つ!
他でもない同志……いや無二の親友であった者として!」
「ハハハハハ! いいねえ! いいねえ!
やっぱさ、そういうのがないと張り合いってモンがねえよなあ!さあ、殺したり殺されたり、奪ったり奪われたりしようぜイザイヤァ!!パーティーナイトの始まりだァ!!」
彼が跨がるケルベロスが死闘の開始を合図するかの様に咆哮し、トロイアは二丁拳銃を僕に向けてくる。
「さあ、楽しもうぜ? イザイヤァ」
色々模索してるんだな。