ゼノヴィア視点
「オファニエル!いや、オファニ厶!残るはもはやお前一人の様だな!」
人のオファニムはイッセーが、
鷲頭のオファニムはイゼベルが、
牛頭のオファニムは匙がそれぞれ決着をつけていた。私は暴れ狂うデュランダルを懸命に制御しながら獅子頭のオファニムに剣を向ける。転生悪魔であってもデュランダルを扱えるというのだから我ながら妙な話だが、
「まさか我らがここまで追い詰められようとはな……。これが神のご意思であるということなのか?いや……例え我らが滅び去る定めにあろうとも!天の御遣いたる我らが容易く悪魔に傅く訳にはいかぬ!悪魔よ滅びよ!天の門が悪魔共の前に開かれることなどあってはならぬのだ!」
「この……わからず屋め!」
ヤツの爪とデュランダルが鍔迫り合う。
力はほぼ互角……!僅かでもスキを見せたらそれで勝負は決するだろう。
「我らが滅びようとも、悪魔は滅ぶ! それが天の御遣いたる我等の使命!」
「それはお前が勝手に決めたことだろう! 私は……私は私の意志で生きると決めたのだ!天使も悪魔も関係ない!私はゼノヴィア・クァルタ!背景はないっ!」
「背景はない……だと!?かあっ!!」
獅子頭のオファニムは咄嗟に炎のブレスを吐きかけ私を焼き焦がそうとした。だが今の私は転生悪魔だ。咄嗟に翼でその炎をガードした。痛みと熱は流石に感じるがニホンの言葉には背に腹はかえられない、という言葉もある。そして……!
「はああああっ!チェスト・セキガハラァ!!」
「な、何ぃ……!?破壊の聖剣……だと!?」
ドジュウゥゥ、と破壊の聖剣が握っている私の手を焼き焦がすものの全力の一閃は獅子頭のオファニムを横一文字に切り裂いた。
「小細工を弄して悪かったな。だが、こうでもしないと貴様に勝てる見込みがなかった……くっ……!」
これ以上は骨まで聖剣の力で融解されてしまう。止む無く破壊の聖剣を地面へと突き刺した。
「……そうか……背景はない、か。どうやら我らの敗因は神のみを背景とし、その身も心も預けてしまった己の弱さにあったのか……」
獅子頭のオファニムの身体が石灰へと変わっていく。確か天使や悪魔は死しても復活は出来ないと聞いたことがあるが……。
「なぜだ!それ程往生際が良いならば!その潔さをミカエル様達と協調するために使えなかった!」
言っても仕方がないことなのは解っていたが私は言わずにはおれなかった。
「……我らは神を信じ、そして堕天使達はアザゼルを信じて戦った。地位や名誉のためだけではない。我々は正しい。我々の勝利の先に千年王国はあるのだと……。
だが、嘯く様に奴らは言った。
『聖書の神亡き後、我らは滅びの道を歩む訳にはいかない。人の世の存続あってこその我々ではないか』と。
では!!我等の戦いは何であったというのだ!復活は叶わぬとわかっていてなお!奴らの理想に殉じ!最果てにある理想のための礎となった信徒や同胞の死はなんであったと言うのだ!!我らは……ミカエルの駒……!
奴隷であったというのかあっ!!」
塩の涙を流し、獅子頭のオファニムはポロポロと石灰になりつつある腕で虚空を掴んだ。人間も天使も死に際には嘘をつくことはないだろうから、これがオファニムが反旗を翻した動機だろう……。
私やイリナを洗脳したことを許すわけにはいかないが、それでも一つの考え方として受け止めて然るべきなのかも知れない。
「さらばだ。オファニム」
オファニムは石灰となって一陣の風に吹かれ、消えていった。私は自然と彼を弔うかの様に祈りの姿勢に入っていた。神にではなく、何かもっと大きなものに対して。
ー
木場視点
「ハッハハハア!オファニム達は全員ヤラれちまったみてえだな。だがまあ考えてみりゃあ憐れな奴らだぜ。聖書の神が死んだってのに神の教えに囚われていたんだからな。俺達は言わば解放されたんだぜ?聖剣だの、神だの、黙示録だの、くだらねえ!くだらねえ!!くだらねえ!!!俺達は自由なんだよ!!」
そう吠えるノロイの猛攻に対して僕はケルベロス・オリジンの噛みつきを大地の魔剣で凌ぎトロイアの銃撃を風の魔剣で弾く。
「本当にそうかな?僕には君が一番、怒りと憎しみに囚われている様に見えるよ」
「オイオイオイ。賢者モードにでもなったかイザイヤ?お前は聖剣に関わるものは全て滅ぼすんじゃあなかったのか?」
ノロイの挑発に僕は冷静に反論する。
確かにそういう気持ちがあったことも事実だけど、何もかもを犠牲にして……とはもう思わない。
「僕が今思っていることは一つだけだよ。彼等の想いに報いる。それだけさ」
「なるほどなあ。お前らしいぜ。
なら俺も死んでいった奴らの思いに報いてやろうじゃあねえか?なあっ!!」
アオォォーン!!とケルベロス・オリジンが嘶くと僕らの周りに無数の亡者が壁の様に立ちはだかった。
「これは!?」
「ニクイ、ニクイ……」
「ウラヤマシイ……ウラヤマシイ……」
「ナンデ……ナンデオレダケ……」
「ワタシノホウガ……ワタシノホウガ……」
亡者の壁が魔力を遮断し、周囲は邪悪な瘴気に満ちていくのが解る。ここで聖魔剣を顕現させるには悪しき思いの力が強すぎる。
「ハッハハハハ!!な?俺が正しいだろ?
誰かのために?愛と正義のために?バカバカしい!人間どんな綺麗事を言ってもな!一皮剥きゃ皆怨念とクソが詰まった肉袋だ!それを隠して!偽って! それで何が得られる!?何も残らねえだろうがよ!
所詮俺もお前も!全て無価値なゴミだ!だからよお!ここでなにもかも
ノロイの叫びは僕には慟哭に見えた。
僕を庇って死んだ彼は全てに絶望してしまったのだろう。己の弱さ、人の醜さ、神の独善、悪魔の暴虐、天使の欺瞞、堕天使の譎詐……。あらゆるものに唾をはきかけ狂犬の様に暴れ回りたい。その想いが今の彼を形作っている。
「確かに、そうかも知れないね」
僕はノロイの叫びに静かに応えた。
「だけど!僕は……いや、僕らはそんな世界でも生きなければならないんだ!」
「何ぃ?」
正しい、とか間違っている……とかの話じゃないんだよトロイア。あの時の君が僕を助けようとした気持ちは偽りじゃない。なら……。
「それでも誰かのために戦ってきたんだろ?ならお前さ、もっと胸張って生きろよ」
イッセー君に言われた、いや救われた言葉を僕はトロイアに放った。
「なっ……」
告死の銃の銃口がぶれ、引き金を引く指が僅かに遅れた。そして一瞬早く僕の作り出した王水の聖魔剣が彼の心臓……いや核を融解させた。
「やっぱり……機械の身体になっていたのか……」
「ハッハハハ……心臓だけじゃねえぜ?
脳味噌も内蔵も血肉も全部が全部……奴らの特別製だ……施設時代に散々聞かされた天国にも地獄にもいけねえ半端者のジャック・ランタン……それが俺さァ」
バチバチ、と身体の各部からスパークを生じさせながら生きてもいないし死んでもいないからこそケルベロス・オリジンは彼の騎兵となったのだろうか?しかし……。
「グルアァァァ!!」
生と死のバランスが崩れたためかケルベロス・オリジンはノロイを敵と再認識してしまったらしく彼を振り落とす。
そして亡者達を吸い込み、更に巨大化し始める!
「くっ……!」
今の僕では流石に対処できない……!
だが、やるしかない!そう思い、覚悟を決めた時。
「ボケがっ!!みっともねぇんだよ!!」
毒づきと共に半壊したトロイアから音もなく、質量のない『死』そのものが彼の持つ告死の銃から放たれた。
だが、僕の身体にはなんのダメージもない。いや……。
「グギャアアアアアア!!!」
ケルベロス・オリジンの心臓が撃ち抜かれるや黒い炎に包まれながら亡者ともども消滅していく……。彼が狙ったのはケルベロス・オリジンの心臓だったのだ。
「トロイア!?どうして!」
「バカが……相変わらず温い野郎だぜ……。負けたら失う。死んだらゴミ……。テメェで決めたルールを捻じ曲げたら亡者未満のクズになっちまうだろうがよ……」
「……トロイア。君は」
「あー……喋るのもダルくなってきたぜ。悪いがカイシャクってヤツを頼まあ。報酬はこの鉄砲だ」
僕は無言で魔剣を創造する。作ったのは相手に痛みや苦しみを与えず安らかな眠りを与える微睡みの剣。
「さようなら、トロイア」
「あばよ、
ヒュン、と風を切る音が僕らの別れの挨拶となった。
ー
イッセー視点
イリヤをあの空間で休ませつつ、俺はコカビエルとかいう堕天使の所に改めて向かう。何人かの信徒やら堕天使やらをぶっ飛ばし、この異空間の一番奥の祭壇に辿り着いた。
「コカビエル!」
「ほう、来たか赤龍帝。まさか戦いの前に女を抱いてくるとは余程の大物か?
それともタダのバカか?」
「くっ……」
ニヤリ、と狼が牙を剥く様な獰猛な笑みを見せるコカビエルに俺は言葉を失ってしまった。コイツは……強い!!今まで会ったはぐれ悪魔やら堕天使や降天使とはランクが明らかに違う!
「どうした?何を驚くことがある。
赤龍帝とは最強のドラゴンを宿すものなのだろう? 超魔術による星の光で強化された堕天使如き相手にならんだろう? まさかとは思うが……戦う前から臆したのか?」
「くっ!?そ、そんな訳ねえだろ!」
俺の強がりをコカビエルは嘲笑う。
「ならば戦え!我に恐怖を叩きつけてみろ!赤龍帝!!」
バサリ、と背中から悪魔の翼を生やしたコカビエルはその丸太の様な両腕を開き俺に向ける。この構えは……!
レイナーレと同じ光の槍……!?
「ぐあああーっ!?」
槍なんてものじゃない!まるで軍艦の主砲の様な質量の光が撃ち出されてきた!
かわすとか防御するとかそういう次元の話じゃない!
「うおおおおっ!」
俺は咄嗟にドラゴンショットの連続撃ちで
相殺を試みたが、コカビエルのヤツは打ち出した光に追いつき、拳で俺の心臓を直打ちする!
「ぎゃああああーっ!?」
全身が砕け散ったんじゃないかという衝撃が俺を襲う!
「どうした?その程度か?赤龍帝!
アザゼルから聞いた話とまるで違うではないか!!」
「ぐ……は……」
肺が血液で埋め尽くされているかのような錯覚に襲われ俺は返答すらできない。
血の海に沈むって言うのはこういうことを言うんだろう……。
『本気の相棒と戦いたいと言うなら少し待て。最凶の堕天使』
ドライグが待ったをかける様に言ってくるとコカビエルは愉快そうに笑った。
「待て?待てだと?ハハハハハ!悪い冗談だぞ赤き龍よ!既に超魔術の儀式は終わり、発動を待つのみだ!星の光により人の世は終わりを迎え、黙示の時がくるのだ!
アザゼルだろうがサーゼクスだろうかミカエルだろうが、誰が生き延びようと俺の知った事ではない!だが、黙示の時となれば必ず救世主が現れる!勝敗など問う所ではない!だがその救世主とやらに俺は一言言って滅びてやる!
貴様が大物ヅラをして今まで現れなかったばかりに我が同胞のみならず、人の世は無為に滅んだのだと!!何が千年王国だ!貴様らの狭量と無分別こそが最大の悪であったとな!!」
「ぐっ……そ、そんな……!」
コカビエルは腕を振り下ろし、俺の身体を地面に叩きつける! なんてパワーだ……!痛覚神経がイッちまっているから解りにくいけど身体がバラバラになっちまったんじゃあないか!?くそ、ドライグの力を借りても勝ち目がないってのか……。
『相棒』
ドライグのヤツも流石に焦りを滲ませた声で俺に呼びかけてくる。
『このままでは死ぬぞ?どうする?』
神に祈る……って転生悪魔じゃ向こうからお断りだろうな……!いや、神は神でも……俺にはイゼベル様という女神がいる……!俺がここで死んだら……!
イゼベル様や……リアス部長とエッチできないじゃないか!!
俺は星の光の集う光の中に飛び込んだ!
「ハハハハハ!赤龍帝よ!恐怖のあまり狂ったか?星の光の力は堕天使の光の比ではない!」
「ぐわああああっ……」
燃える……溶ける……消えてゆく……。
俺も……ドライグも……全て……すべて……。ダメ……なのか……?やっぱり最弱の赤龍帝の俺なんかじゃ……?
『これ、イッセー。そなたは何じゃ?』
イゼベル様の声はやっぱり女神様だ……。
『余の可愛いイッセーよ、応えよ。
そなたは神の奴隷か?悪魔の手先か?
はたまた余の愛玩物か?』
いや、どれでもない……。俺は……オレは!ハーレム王にして愛とおっぱいのために生きる男!!兵藤一誠だ!
おっぱいは太陽の輝き!乳首は星の航路を示してくれる一等星!!
そんなものの前にはドラゴンだの悪魔だの天使だの神だのなんだの関係ない!!
『ChaosDragon allstar!!』
「……な、何だと!?金星の力……!?
まさか始祖たるルシファーの力を取り込んだと言うのか!?貴様が……?貴様が悪魔の世の救世主だとでもほざくかあ!!」
「うおおーっ!」
コカビエルが殴りかかって来たがまるで痛くねえ!俺はカウンターとばかりにコカビエルの顔面に拳を叩き込む!
「ぐおっ!?ば、バカな!!何だこの力は……!?」
「愛の力だ!!」
「愛だと!?」
俺はきっぱりと言い切った!根拠はないがそうだとはっきり解る!!
愛とはキラキラ星の様に輝くものだからな!今の俺の鎧の様に!
「ふざけるなあっー!」
「俺は真面目だあーっ!!」
バオン!バゴォン!!と異空間全体が
震えるかの様な互いの拳と拳の応酬だ!
「ぐはっ!!うぼあーっ!!」
「がふっ!!げぼあーっ!!」
もう、どっちが殴ってどっちが殴られているんだか解らねえ……。
だが、コカビエルはそれでもなお戦意を衰えさせない。流石は最強の堕天使だぜ!
「何が愛だ!! 愛で奴らの無念が!
弟の敵を取るべく奮戦したハールート!
姉に殉じ、最後まで降伏せず戦って死んだマールート!!友のために自ら城を開き、責任を取って自裁したクリフォト!
奴らの無念が!そんなお為ごかしで消されるものか!!」
コカビエルのヤツ、自分の部下達の事を……。俺はドライグに力を貸してもらってるだけで、コイツの様に親友や仲間、後輩を喪った悲しみをまだ知らない。
でも、それでも!
「愛はお為ごかしなんかじゃあねえ!俺のおっぱいへの想いが、イゼベル様への信仰心が!そして何よりリアス部長や朱乃さんや小猫ちゃんへの愛が俺をここまで強くしてくれたんだ!お前だってそうじゃねえのか!? 今言った皆の無念を思い知らせたくて戦ってんだろ! 戦争をしたいのはさっぱりわからねえけどよ!誰かを守りたい、助けたいって願ったからお前は強くなったんじゃねえのかよ!悲しみに押し潰されてお前の中にある思いまで否定するな!
お前に託された10枚の背中の翼が泣いてるぜ!」
「喧しい!!牧師か貴様はあっ!!!」
コカビエルの拳が俺の鎧を砕き、俺は口から血を吐いた。だが……。
「これが……!俺の!龍拳だぁーっ!!」
金星の光により黄金に輝く龍のオーラと共に繰り出した俺の拳はコカビエルの顔面を直撃し、異空間に穴を開けるまでの威力を発揮した。そこから星の光の力が漏れ出ていき、呼応する様に俺の金色の鎧もパリパリと砕けていった。
これで超魔術は発動しない!俺たちの勝ちだ!
あれ?バルパーと鷲頭のオファニムはどこ行った?
まあ、ヴァーリがおしおきするでしょ。