ミカエル「囲師は周するなかれとも言いますね」
イッセー視点
「イッセー君!」
「イッセーさん!」
「イッセー!」
コカビエルごとぶち抜いた異空間の穴。
そこから出てきた俺に、部長、アーシア、朱乃さんの三人が駆け寄ってくる。
3人とも流石にあちこちボロボロだな。
目の保養……じゃなかった! 目のやり場が!
「ぶ、部長! アーシアまで! 大丈夫ですか!」
「それはこっちのセリフよ。よくコカビエル相手に無事だったわね」
「いや、まあ、何とかギリギリで……」
カオスドラゴンやらオールスターやら良く判らん力が俺とドライグに宿ったおかげだ! 黄金の龍となった俺は強靭! 無敵! 最強! なんだかハーレムなんてかるーく作れちゃいそうな感じだぜ! わっはっは!
『あのな相棒。あの力を引き出せたのは全くのまぐれだ。迂闊にまた使おうなどと考えるなよ? あの力は覇龍どころの騒ぎじゃないからな』
なんて調子に乗っていたらドライグからしっかりと釘を刺された。というか覇龍って何だろう?
「赤龍帝の持つ力の一端さ。
寿命を著しく削る無様で不完全なものだがな」
……む? 随分と引っかかるものの言い方のイケボが上空から聴こえてきた。どこかで聞いたことがある様なないような?
「白い龍の鎧……? 貴方は……まさか……!?」
俺が記憶を辿っている前にリアス部長が青ざめながらそのイケボの主がいる方を仰ぎ見る。真っ白い赤龍帝の鎧にそっくりな白い龍の鎧を着込んだ誰かがいる。
その片手には知らんおっさんの生首が握られもう片方は失神中のコカビエルをぶら下げていた。あまり、気分のいい光景じゃないな……。
「そうだ。俺の名はヴァーリ・ルシファー。今世の白龍皇だ。アザゼルの命でコカビエルを始末しにきたんだが……どうやら君たちがカタをつけてしまったようだな?」
カタをつける? あとアザゼルってレイナーレの言っていたあの『神の子を見張るもの』のリーダーか? アザゼルがどうしてコカビエルを始末するんだ?
頭に次々とクエスチョンマークが浮かぶなか部長が口を開く。
「だったらどうだというの? あとそのバルパーの首をどうするつもり?」
「さあな……。アザゼルを経由してミカエル辺りに引き渡すのではないか?」
「随分他人事の様に言うのね?
貴方はアザゼルの配下なんでしょ。そのわりにはアザゼルに対する忠誠心が見受けられないのだけど」
『愚かな小娘よ。私とヴァーリは誰かに付き従うものではない。そこの赤いのと違ってな』
(言ってくれるぜ、白いの。相変わらず上から目線で物を言うヤツだ)
ヴァーリではない誰かの声が響く中、ドライグは俺だけに念話でぼやく様に呟いた。
えーと、白龍皇に宿るのはアルビオン。
で、俺こと赤龍帝に宿るのはドライグ。
で、互いにフグとタイの天ぷらみたいに危険で相容れない存在なんだっけか?
(それを言うなら不倶戴天だ相棒……)
す、すまん。学がなくて……。
『しかし……。堕天使と天使のハーフに、悪魔と猫又の合の子に、聖剣使いのなり損ない、堕ちた聖女、果ては妙ちきりんな赤龍帝か。まるでサーカスか旅芸人の一座だな』
「全く同感だな。危機感もなければ知性もない。きっと育ち方も育て方も悪かったんだな」
ヴァーリはアルビオンともどもこちらを見下す様に言う。俺はともかく周りを下げるのは正直ムカつくな。
「育て方が悪かっただあ? リアス部長や父さんと母さんをバカにしてんのか? そういうお前の育ちはどうなんだよ? さぞかしご立派なんだろうな……おい?」
「……先輩、落ち着いてください」
カッカした俺の袖を小猫ちゃんが優しく、だがしっかりと掴む。
「言いようは気に食わないけれど、イッセーとドライグの力を引き出せていないのは確かに私の力不足によるものだわ」
「ぶ、部長……!」
お、俺は悔しいよ! 部長がこんなヤツのために部長自身を下げる様な事を言うなんて!
「しかし、そのボンクラぶりでよくコカビエル達相手に生きていられたものだ。もう2~3発ほどもらっていれば消し飛んでいただろうに」
「うるっせえな! 勝ったんだからいいだろ!」
「いや、良くない。君と俺とは前にも言ったがいずれ戦う定めにある。その事を踏まえてパワーアップしてもらわなければ……。あの黄金龍の力は見るべきところがあったものの、それ以外は論外だ」
ぐぬぬ……! 腹は立つがヴァーリのいう事はもっともだ。今の俺の戦い方は『赤龍帝の籠手』と『大いなる7つの丘』に頼ったやり方で変化に乏しい……!
「しかし、だ。キミ達の敢闘に免じてこれ以上はやめておくとしよう。では、さらばだ」
言うだけ言って彼奴等は飛び去っていってしまった。ドライグ! 塩まいとけ塩!
ー
そして翌日……。
「なあ、イッセー」
朝食の席で父さんが真剣な顔で箸を置く。
い、一体どうしたのだろうか?
やはりウチが急にデカくなった違和感に気がついてしまったのだろうか!? だってイゼベル様にリアス部長にアーシア。ちょっとひとつのテーブルじゃ狭すぎる!
「父さん達な、ここを社員寮にすることにした」
「しゃ、社員寮!? 父さん! 社長になったのか!?」
「いや、違う。会社を転職しての雇われ社長だ。今ではヘッドハンティングというのかな、ワハハハハ」
まさか万年サラリーマンを地で行く父さんが社長!? と、いう事は俺は社長の息子!? 急にスケールアップしすぎだろ!
「まあまあお父さん。イッセーだけでなくアーシアちゃんの学費や私達の老後も考えたらねえ」
「そ、そんな! お義母様にそこまでご迷惑をおかけするワケには……!」
アーシアは手をわたわたさせて遠慮するが、母さんは優しくアーシアの頭を撫でた。
「いいのいいの。イッセーなんかのお嫁さんになってくれるアーシアちゃんのためならこの位は当然よ」
母さん……イッセーなんかのって酷くない? いや、今までの悪行を思えばそうなんだけどさ。
「……」
転じてリアス部長は思案顔だ。父さんが雇われ社長になるっていうのだからてっきりサーゼクス様絡みの案件だとばかり思っていたのだが違うらしい。となると……?
「まあ、先ずはその社員の皆さんを紹介する。アメリカ本社から出向して下さった皆さんだが日本語も堪能だぞ」
「イッセー。日本の恥になる様なマネだけは謹んで頂戴ね?」
母さんからしっかり釘をさされる。
解ってるさ……。だが……。
外人……金髪でボインボインでオープンな性格のお姉さんとかかな……?
『ねぇーん? イッセーボーイ? そこのブラジャー取ってくれるぅ〜?』
『ニホンではハダカのツキアイって言葉があるって聞いたデース!』
なーんて事がある……かも? ぐへへへへ。
「イッセーさん顔がだらしないですぅ!」
「イッセー。もう少し気を引き締めなさい」
「うむっ。旨い! やはり三希の作る飯は天下一じゃ!」
相変わらず食欲旺盛ですねイゼベル様……。とにかく、日本男児として、部長の眷属として節度は守らないとな!
『自制なんて出来るのか?』
(わ、解んねえけどやるんだよ!)
そして紹介されたメンバーに俺は愕然とした……! レイナーレ、カラワーナ、ミッテルト! 更にはゼノヴィア! 更に更に……! ライラちゃんとイリナだって!?
な、なんちゅう事だ!?
悪魔、堕天使、天使勢力が揃い踏み!?
大事件だよコレは!? という俺の動揺など父さんと母さんは気にするはずもなく父さんのヘッドハンティングの祝賀会ならびに皆の歓迎会となった……。
「なんだか前にもこんな事があった気がするわねえ……」
頬に手を当てながら呑気に母さんが言っていたがあったからね!? 多分記憶か何かを操作されているよ!?
リアス部長は自分の部屋にそそくさと行ってしまったし……怒っていたワケじゃなかったが。
「本当にゴメンねアーシア」
「本当にすまなかったアーシア」
一方ゼノヴィアとイリナはアーシアを魔女呼ばわりした事を深く恥じてアーシアに謝罪していた。
「いえ! そんな、もう気にしてませんから!」
「それでは私達の気が済まないわ!」
「そうだな。なによりニホンでは女性が罪を詫びる時には全裸でドゲザをする風習があると聞いたことがある。郷に入っては郷に従え」
「そうね! ゴディバ夫人の様に身の潔白のみでなく芯からの謝罪と反省を表すには全裸でドゲザね!」
「いやいやいやいや! そこまでしなくていいよ二人とも!? というか土下座は日本の文化じゃないからな!?」
流石にラッキー! だなんてやるほど俺はクズじゃない。アーシア共々スカートから服を脱ごうとする二人を必死で止めた。
そもそも脱ぐ時は上からだろ……って違うわ! この二人を改めて日本の常識に染めるのって容易じゃ無いな……。
しかしレイナーレから後で衝撃の事実が語られた。ヘッドハンティングしたのはあの阿佐是さんもとい、堕天使総督のアザゼルだという……!! なんちゅう事だ!
ミカエル達も三大和平のためにイリナとライラちゃんをここに派遣したっていうし……どういう事なんだあ!?
俺はパニック寸前の頭を何とか整理すべくリアス部長の部屋へと向かった。
扉が閉まっていたので聞き耳を立てたのだが……。
「だからといってお兄様、お義姉様!
私に一言もなくイッセーの周りに女の子を増やすだなんて!!」
『しかしだなリアス。イッセー君、もとい赤龍帝が今回の三大和平の立役者である事を示すには丁度いいのでは、とアザゼルの提案があったんだ』
『はい。それにライラ、並びに紫藤イリナが転生悪魔であるイッセー様と交わって尚堕天せず、聖剣も扱える事実にミカエル様、ジョフィエル様が非常に興味を示されまして』
「えっ……何それは。私、イッセーからは何も聞いていないわ」
声のトーンが2オクターブ位下がってる!?
い、いかん! これはいかん! だがある意味ヤキモチを焼いてもらえて嬉しくもあるような!?
『……うーむ。急用を思い出した』
『そう言えば私も明日の朝食の仕込みを忘れておりました。後のことはイッセー様におまかせしましょう』
まさかのキラーパス!? サーゼクス様とグレイフィア様が一方的に通信を切ってしまった様だ!
「イッセー……いるんでしょ? いらっしゃい」
しかも盗み聞きまでバレている有様!
だがここで逃げてはハーレム王の道は失われる! 俺は扉を開き中に入った! そして一世一代の土下座からスタート!
「本当に申し訳ありませんでした」
「何を謝っているの?」
ハイライトの消失した瞳が怖い!
これは理由を聞いているのか? それとも俺の態度が気に入らないのか!?
「いや、その……ゼノヴィア達やイリナの件で……」
「ふーん、そう。貴方の自由恋愛に私がああだのこうだの口を出すだなんてそんなつもりは毛頭ないわよー」
う、嘘だあ……。目が据わったままだし、その握りしめた拳が物凄く震えておりますし!
「で? どうするの? この後は堕天使どもとイチャつくの? それとも転生悪魔になったゼノヴィアとサバトでもするの?
あ、聖剣使いの二人と共存共栄の証を作るのもいいわよねー。私はぜーんぜん構わないわよ。所詮イッセーにとって私は部長であり主従の間柄ですものねぇ」
う、うう。取り付く島もない。俺の節操のなさが知らずしらずの内に部長を傷付けていたんだ!
「そんな事はありません! リアス部長は俺にとって……」
「ほら言わないことじゃない。貴方はイリナをイリナ卿とかレイナーレをレイナーレ殿とか敬称をつけて呼ぶの? 呼ばないでしょ? そうよね? 所詮リアスぶ・ち・ょ・うですものね『赤龍帝の兵藤一誠』くん?」
「そ、そんな! 冷たい事を言わないでください……!」
「触らないで!」
縋ろうとした手をバシッ、と払われた。
な、何てことだ……なんてことだ。
視界がぐにゃぐにゃしてショックのあまり泣きそうだ!
(相棒。ダメだなこれは。今のリアス嬢ちゃんには何を言っても逆効果だ。今は退け)
う、うう……。ドライグの奴も匙を投げるだなんて……!
そんなワケで俺は涙ながらに無念の敗走をしたのだった。
ー
「なるほど、その様な事があったか」
「うう〜、うえぇ〜、うえぇぇ〜ん」
イゼベル様の待っていた俺の部屋でまるでガキの様に俺は泣いていた。
アーシア達の前では見せられない情けないことこの上ない姿だが彼女になら見せられるという妙な信頼が俺にはあった。
「とは言え確かにリアスめの怒りも一理あるのう」
「そ、そんなあ〜……」
この上イゼベル様から見捨てられたら俺、もう生きていけないよ! リアス部長、イゼベル様あっての俺! ここは何としてもこの窮地を脱しないと!
「まあ、そう泣くでない。リアスもお主の事が憎くてあの様な態度を取っているわけではない」
イゼベル様は俺の頭を優しく撫でながら諭すように語り始めた。
「リアスは不安なのじゃ。今でこそ魔王の妹にしてグレモリー家当主として申し分のない器量と力を持っているが……。その実中身はまだまだ子供。特に色恋沙汰に関してはそなたよりも奥手と見える」
え!? でも裸で添い寝してくれたり甘えさせてくれたりしてますよ! 十分に積極的と
俺は思いますが! と俺の表情から考えを察したイゼベル様は快活な笑い声を部屋に響かせた。
「それはペットを可愛がるようなもので男と女が心から信頼しあっている証拠ではないのう。今のそなたが余に見せている様に弱さや醜さを示されてなお揺らがぬことこそが愛よ。そうではないか、イッセー?」
そうかな……そうかも……。
リアス部長が俺に弱さを示したというのに俺は狼狽え、自分のことしか考えてなかった……。
「リアスは不安なのじゃよ。そなたが自分を置いて何処かへ行ってしまうのではないかとな。今まで体験したことの無い感情のうねりにどうしていいかわからずに、そなたの気持ちを試す様な真似をしてしまったのじゃ。ハーレム王を目指すならば悋気の一つや二つあやせなんだら先行きは危ういのう」
イゼベル様は余裕たっぷりの笑みを浮かべ、俺の頭を撫で続ける。
「あの、イゼベル様は俺が他の子とエッチしても気にならないんですか?」
「気にはしておる。しかし、そなたは他のものよりも余に愛を注いでおろう?」
「は、はいっ」
「ならばよい。余はそなたの愛さえあれば満足じゃ」
や、ヤバい……。余りの器量っぷりに気持ちが揺らいでしまう。今はリアス部長、いやリアスを優先しなければいけないのに……!
「うむ、うむ。何も言うなイッセー。そなたは今、何をすべきか解っておろう?」
はい……。今俺がすべき事は……!
ライザーの奴に宣告したあの言葉を実行するのみ!