すいません……。敵勢力マシマシアブラカタブラを抑えきれなかった……。けど抑えるから!あと1人か2人くらいに抑えるから!!
「出世かあ……」
自分の部屋で俺は天井をみつめながら呟く。ハーレム王を目指す身としては中級悪魔、上級悪魔とステップアップすべきなのだろう。
けど……。
「むにゃむにゃ……もう食べられんぞ〜」
「イッセー様……♥すうすう……」
左右で寝息をたてているイゼベル様、カラワーナの幸せそうな寝顔。
「イッセー様♥ずっとお側に……♥ぐうぐう……」
バイサーも最早過去の悪夢に悩まされることなく穏やかな寝顔を見せてくれている。
(もう、いいんじゃないかな)
俺の事をこんなに慕ってくれる美人が3人もいてくれる。そんな3人を放ったらかして他の女の子の所に行くってどうなんだ。
リアス部長やアーシアに魅力がないわけじゃない、寧ろ魅力ありまくりだ。
でも、やっぱり悪魔としての幸せは上級悪魔の眷属になってこそ得られるのではないだろうか?
だからと言って彼女達を踏み台にする様な真似は、ハーレム王として失格じゃないのか?
イゼベル様、カラワーナのおっぱいが俺のパジャマに当たっているのにも気づかない位、俺は答えの出ない悩みに頭を抱えていた。
ー
でも、まあそれはそれとして契約は取らないとな!! きっと父さんも母さんや俺のために下げたくもない頭を下げ、やりたくもない事を幾つもしてきただろう。改めて尊敬するぜ! そんな父さんの息子である俺ならば契約を取ることは不可能ではない!
気合と共に俺は今回の契約先である蔵位家へとチャリンコを急がせる。
部長からこの仕事を任される時、『今回の契約は別に取れなくてもいいから。どちらかというとクレーム処理ね』と添えられたのを思い出す。小猫ちゃんにクレームをつけるなんて太いヤツだな!
しかし見た感じフツーの一軒家だが家族に会ったらどうしよう?
『やー、初めまして。悪魔の兵藤一誠です』
『まあ、ご丁寧に』
……そうはならんやろ! フツーに通報されちゃうだろ! ああ、こんな時に魔術が使えれば……。
と、玄関口が開いていた。こんな一軒家に不用心な……。
ドクン、と心臓が高鳴る。何や恐ろしい気配を感じて俺は戸惑った。まるで教会の中に入ったような空気感……。
「あのー、すみませーん」
恐る恐る足を踏み入れたが返事はないし玄関には電気もついていない……。明らかに不穏な雰囲気だ。
「何なんだよ、この家は」
電気くらいつけてほしいが悪魔の俺は夜目が効くから支障はない。俺はそのまま台所に向かった。
「あ……あっ……♥」
!?
何やら盛り合う男女の声が聞こえてくるんですけどォ!? すげー気まずいよ!
この家は玄関口を開けながらリビングでセックスするのか? 未来に生きすぎだよ!?
『私も仲間に入れてくださーい!』なんて割って入るわけにもいかず俺はドアを開けずにそーっと見守ることにした。
いや、覗きじゃないから! これも契約取るための情報収集だから!
夜目が効く悪魔の力に今は感謝!
ドアの向こうでは黒髪ぱっつんの女の子が誰かの上で腰を降っている。
うお……リアス部長並のプロポーションじゃないか……!
「んっ♥んんっ……あっ、やっ……そこぉ……!」
女の子は耐えきれないと言った表情で可愛い声をあげる。男の顔は見えないがあれ絶対キモい顔してそう!男は夢中で女の子のお尻を掴み激しく腰を振った。その度に胸がプルンプルン揺れている。
「はあん♥セルゼン君のオチンポ♥ゴム越しでもすっごく熱いのぉ♥」
プロポーションのみならず顔も抜群!
黒髪ぱっつんロングに閉じ目というお姉さん的な妖艶さの中に幼い感じも兼ね備えている。セルゼンと呼ばれた男もすぐ射精しそうな感じだな。
「くう〜……! 宗派は違えどマグダラ氏のオマンコは最高ざんす! 何せ俺ちゃんのいた教会では姦淫はご法度ですからなあ!」
「ああん♥セルゼン君♥これは姦淫じゃなくて清めの儀式よ♥だから神様も許してくださるわあ♥んんん♥奥っ♥セルゼン君のチンポが気持ち良すぎてオマンコとろけちゃうぅ♥」
いや、明らかに楽しんでますよねマグダラさんとやら!? それはセルゼンとやらも十分わかっているはず!
「そうですなあ! 快楽殺人者を清めるためのシンセーな儀式でありますからして! マグダラ氏の聖水ならぬ聖マン汁をエクス雁BARで堪能しちゃいますですよお!!」
対面座位の姿勢になるやセルゼンと呼ばれた白髪の男はテンションを更に高めて突き上げる!
「んあああああっ♥ああん♥いいわぁ♥♥ちょうだい♥ちょうだい♥セルゼン君の愛を頂戴♥」
「うう……イクでゲスよおお!! この時ばかりはフリードと呼んでくれやっす!!」
ドプッ! ビュルル! ドピュウ……!
「んあああああ♥♥イクうううう♥♥フリード君のチンポからお汁がピュッピュッと出て、ゴムに溜まってえ……♥♥♥あああ……♥♥♥熱いのお♥♥」
フリードと呼ばれた白髪の男は満足したのかゴムを自ら外した。それを見たセルゼンも同じく外すと精液だまりにはかなり大量の液体が溜まっていた。
「いや〜濃ゆいのがたっぷり。純度100%と言った所ですなあ! 拙者、セックス大好きながらガキは大嫌いはぐれ神父でありますからして……神の御名においてアーメン! バキュゥン!!」
フリードと呼ばれた男は発砲音と共にコンドームを銃で撃ち抜いた!
な、なんだアイツ!? そう言えばさっき快楽殺人者がどうとか言っていたが……。
「な、なにやってんだアンタら!」
「うわ、なんか出てきた!」
ここでやっと俺に気づいたフリードとやらだがニヤニヤしながらズボンを上げた。
「全くクソ悪魔と来たら人の清めの儀式を覗き見るとかどうしようもねえクソクソアンドクソだな! なあ、マグダラ氏?」
「私としては別に……。相手は大好きなセルゼンくんだし♥」
肩を寄せつつ笑うマグダラと呼ばれた女の子。
「はあ!? あんたら何言ってんの? 頭おかしいんじゃねえの!」
「おかしいのはこの家の悪魔崇拝者よ。悪魔を召喚して自分を生んだご両親を殺害させようとしたんですもの」
朱乃さんよろしくあらあらオーラを出しても明らかに笑っていない……。というか蔵位っていうヤツはそんな事を小猫ちゃんにさせようとしていたのか!?
「恵まれた環境に産まれたクセしやがって親が悪りーだ、国が悪りーだとアテクシに言いやがりましたのでこれは有罪! 宿なし親なしケツモチなしの俺ちゃんと致しましては、神の捌き、いやさ裁きを執行、なう! 『悪いことする人はおしおきよー』と、聖なるお方の言葉を拝借? みたいな? ギャハハハハハ!」
バイサーを犯して、はぐれ悪魔にまで堕としたヤツみたいな醜悪かつ邪悪な笑いと笑顔でフリードというヤツはまた下品な言葉を壁に逆十字に吊るされた蔵位の惨殺死体を指さした。マグダラって子はフリードの奴を諌めもせずにニコニコしている。
……異常だ!! こいつらは社会と折り合えないはぐれ悪魔とは違ったタイプの怪物共だ!! 自分の快楽の為に人を殺す事を神の名を借りて正当化するこいつらを野放しにはできない!
「き、教会の関係者なのかよお前ら……!」
俺は内心の怒りを悟られないよう努めて冷静にそう言う。
「元、ね。色々あって破門されちゃったのよ。まあ、あまり褒められた理由じゃないけど仕方ないじゃない? 兔には兔の、犬には犬の、鶏には鶏の生き方があるのだから」
「そうですぞ! 今はタヨーセイを認める社会ではありませぬか? なら俺ちゃん達快楽殺人者の権利を認めないのはホーリツイハンじゃね?」
……マグダラやフリードの言葉の意味がわからない。
いや、わかってはいけない。そう思えば思うほど俺は眼前のバケモノ二匹に気圧されした。
「あ、悪魔だってここまでの事は……!」
しない、なんて言い切れない。バイサーの記憶に残る醜悪な上級悪魔たちの笑みが頭から離れない。悪魔のいきつく先がアレなら俺は……何のために……?
俺の迷いを見透かす様にマグダラが一瞬で距離を詰めてきた。
「ここまではしない、と言いきらない辺りが可愛いわね、貴方」
「なっ……」
頬を優しく撫でられ唇が触れ合う。小鳥が枝に止まるような軽やかな口づけ。
「おや? おやおやおや? これはNTRですかなあ? 人の物を取るだなんてやっぱり悪魔はクソを越えたクソですな! 俺ちゃんの脳みそがフットーしそうだよお!? アレがアレしてアレなんでぇ、斬ってもいいですか? 撃ってもいいですかぁ? OK? OK? OK牧場?」
フリードは四白眼を見開いて、ブォンと柄だけの剣から光刃が発生した。まるでジェ○イの騎士みたいだな……。と、その時俺の体内が爆発したかの様な感覚が襲い、喉から吐き気より先に吐瀉物が巻き散らかされる。胃液ではなく血液がねっとりと鉄臭い匂いを放つ。
な、なんだ? 撃たれても切られてもいないのに?
「うふふ。ごめんなさいね? 私の身体ってそれ自体が超高濃度の聖水と変わらないらしいの」
「何でも血液一滴で25メートルのプールが悪魔にとっては濃硫酸をも凌ぐ聖水になるそうですぞ? マグダラ氏はさながら虹の実ですなあ? マジヤバくね?」
な……なんだと!? 全身から冷や汗が流れるが体内が焦げ付いていく様な焼け付く痛みが止まらない!
痛い! 痛い痛い痛い!! 俺は床を転げ回ってこの痛みから逃れようとするが、フリードが俺の背中を光刃で切り裂いた!
「ぐわああああ!?」
「ぶははははは! 俺ってば黄金比の十字を切るのは得意なワケよお! 好きこそもののジョーズってな! さめざめ泣けえ!」
十字に切られた傷から聖なる炎が巻き起こり俺の翼を焼き焦がす!
「うぎいいい!!」
身体の表面から聖なる炎で焼かれる痛みと絶望に俺は白目を剥く!
し、死ぬ……。死んでしまう……。このままじゃ……おれは……。絶望と失意に飲まれかけたその時、背中に温かい感触を覚えた。何か母さんに抱きかかえられた子供の時を思い出して落ち着く……。
「イッセーさん!」
見ればアーシアが俺の背中に手を当てて治癒している。なんで……悪魔の俺のためにここまでしてくれるんだ……!?
「い、いい……アーシア……俺なんて……」
「いいから! じっとしててください!」
今までにない気迫で彼女は俺の手をギュッと握りしめる。……す、すごい安心感だ……! これが人の持つ治癒能力なのか!?悪魔には到底真似できない奇跡的な力で俺の傷が治癒されていくのを感じる。
「おや? おやおやおや? アーシアちゃん? 人よけの結界をさておいて何をしてくれちゃっていやがりますか?」
「まあまあ、セルゼン君。これはきっとセルゼン君が堂々と一対一でこの転生悪魔を切り刻める様にって気遣いをしてくれたのよ♥」
「なるほどぉ〜マグダラ氏! アーシアたんってばもう一回遊べるドン! というヤツですな!」
「そんなワケがありません! 貴方たちは……それでも人間なのですか!」
涙を振り払い、キッと鋭い視線を送るアーシアに二人のバケモノはポカンとした間抜けヅラを晒して硬直する。
「あのさあ、君が何を言っているのか僕ちん頭悪りーからわっかんねえだけど?」
「まあまあ、セルゼン君。アーシアちゃん。私達は人間よ?」
どこがだよ! 俺は声を大にして叫びたい気分だった。欲望のままに他人を襲って、傷つけて、弄び、しまいには殺す……! 世間じゃそういう奴らはバケモノというんだ!
「あなた達は悪魔と同じです!」
アーシアの言葉に悪気がないのだろうが、その言葉は転生悪魔である俺にも突き刺さる。やっぱり清らかで敬虔なシスターである彼女と欲望に溺れる悪魔の俺とでは……。
そんな俺の葛藤やアーシアの糾弾なんてどこふく風。マグダラは閉じ目のままこう嘯いたのだ。
「だから、私達は人間よ。人間だからやりたいことをやる。欲しい物を欲しい。したいことをしたいって言って何がいけないの? 私達は誰よりも純粋に、正直に人間であろうとしているだけ」
「そうですぞ〜……堕天使に保護される事でしか生き長らえる事のできない半端者には解らぬ境地でございましょうけど」
アーシアの顔が蒼白になっていく。たぶん彼女なりに二人を尊敬していたりお世話になった恩義も感じていただろうに。
「もう嫌です……。悪魔に魅入られたからといって、人を裁いたり、滅ぼすだなんて間違っています! 『汝、人を裁くなかれ』『迷える子羊を導き、群れに戻すのが羊飼いたるものの役目』ではないのですか!
こんな事、主がお許しになるはずがありません!」
「そもそも許される必要があるのかしら」
「いかにもタコにも! クソ悪魔になんて謝ってなどおりませぬからなあ我々は!」
アーシアの告発、いや説得を二人はふん、と鼻で笑った。アーシア、こいつらには誠意なんて無意味だ。狂っているか、さもなければ性根が腐りきっている。
「まあ、お喋りも飽きてきたし……死んでくれないかしら?」
「最悪の口説き文句だな」
夕麻ちゃん、もといレイナーレと似たような台詞をマグダラは発する。と、同時に下卑た笑いを浮かべるフリードが何の予備動作もなくいきなり間合いを詰めてきた。
早いが対応はできる!
「ちいっ!」
「バッキューン!」
光刃ではなく銃を放ってきたが首を捻って間一髪でかわした俺の頬を銃弾がかすめる!
俺はお返しと言わんばかりにフリードの股間を思い切り蹴り上げたが……!?
「ぐわああっ!?」
凄まじい痛みが足の甲に走る!
一体どうしてだ……!?
動揺する俺にフリードはベロを出しながら種明かしでもする様に嘯く。
「でっひゃはははは!! テメーらクソ悪魔がやってくるクソ汚え喧嘩殺法なんて俺ちゃんには通じねーって話ですよん?
法儀処理済シルバー製のファールカップでガード済! 俺ちゃんのビックマグナムは金銀パールのジェットストリームアタック仕様でござんすよこのトンチキがッ!!」
パンパンパンッと乾いた銃声が連続して鳴り響く。咄嗟に顔と心臓をカバーしたがヤツの狙った先はダメージを受けた俺の足の甲だった!
「うがあっ!!」
肉を焼かれる激痛にくずおれ、膝を突いた俺にマグダラが歩み寄り、追撃してきた。
「ふふ、貴方ってよく見るとハンサムね?」
閉じ目のどこか神秘的な彼女の笑みは狡猾な女狐を彷彿とさせた。
「だから優しく殺してあげる♥」
ばっと胸元を開き、直接俺の顔に彼女の柔肌が触れ合う。その瞬間、俺の肌に薬品やけどを負った時の様な灼熱の痛みがほとばしる!
「がああああっ!」
皮膚が焼けただれ、溶けされ神経を剥き出しにされていくような激痛だ……!
痛い痛い痛い……痛えよ……! まるで皮膚を剥かれて塩でも塗りたくられたようだ。骨まで食い込む様な猛毒に全身が支配される! 更にゴリラじみた怪力により俺の首と頭蓋骨がミシミシと軋みを上げる!
「ひゃっはははは! マグダラ氏の必殺『アイアン・メイデン』が炸裂ですなあ!
別名幸せ固めではありますがコレに耐えられた悪魔は未だかつて誰もいないぜえ?」
骨も心もベキべキにへし折られそうだ……。俺は、所詮この程度なのか?
「イッセーさんを傷つけるのはやめてください! 罰なら私が代わりに受けます! だからもう……これ以上は!」
「ほっほー、アーシアたんってばこんなクソ悪魔のためにその身を捧げるとは……。
感動的ですなあ〜? じゃ、脱げよ」
!? こ、コイツ……アーシアを辱めるつもりか! フリードは下卑た笑いを浮かべながらアーシアに迫る。
「イッセー君? よそみをしちゃ嫌よ?」
更にマグダラの締付けが強くなり、俺の首をへし折る様な力が込められた!意識が飛びそうに……いやもう一瞬後には飛んでいたかもしれない。霞む視界の中で俺はアーシアが衣服を脱ぎ捨て、全裸になるのを見ていた。
「私はどうなってもいいので……イッセーさんは……」
羞恥と悲壮に震える彼女の身体がフリードによって膝立ちの姿勢を取らされる。何をするつもりか嫌でも解ってしまう……!
「おいおいおい! やべえよやっべーよ!
感動で涙とチンポ汁がちょちょぎれますなー! うへへへへ!!」
ふ、ふざけるな! ふざけるな! ふざけるな! 俺の目の前で……女のコを泣かせるんじゃ……ねえええっ!!
「ざっけんなああああ!!!」
『boost!!』
俺が吠えると同時に左右の籠手が同時に顕現し、床をぶち抜いた!
その威力にマグダラは俺から両手を離し、
尻餅をつき、フリードもテーブルの角に頭をぶつけていた。
「きゃん!」
「痛ぁーい!!」
俺にこんなバカ力があったとは……。
火事場の馬鹿力というヤツだろうか?
と、自分の潜在能力にたじろぐ俺だが更に状況が好転する。俺の後ろから魔法陣が発生するとそこから現れたのは……。
「リアス部長!」
俺のためにわざわざ駆けつけてくれたのか……! 涙が出そう! いや、木場達まで援軍にきてくれてはいるんだけど!
「ちぃっ! クソ悪魔の集団かよ!?」
二人の美女の登場だというのにフリードは毒づき、マグダラも忌々しそうに顔をしかめた。
「……イッセー!? その顔は!?」
リアス部長は顔を真っ青にしていた。
恐らく硫酸をぶっかけられたかの様な酷い顔になっているのは何となく皮膚の感覚があまりないから想像はつく。
「い、いやあ。俺の顔は元々あまり整ってないもんですからお気にならさず。わはは……」
力なく笑ってみせたがリアス部長の表情が曇る。ああ、それはそうだよな。弱い上にブサイクな眷属なんて愛想が尽きるよな……。
「よくも……よくも私のかわいいイッセーを……! 絶対に許さないわ! 生きてこの街を出られると思わないことね!」
ってまさかのマジギレモード!?
バチバチ、と赤黒い魔力の奔流が家を吹き飛ばしそうな規模で迸り、リアス部長の本気度が見て取れる。
「いけないリアス! 貴方が直々にこの二人を消し飛ばしたら堕天使と悪魔の全面戦争になりかねないわ!!」
朱乃さんがいつものあらあらうふふモード(俺命名)から一転して厳しい表情でリアス部長を止める。
「それが何だというの!!」
「冷静になれと言っているのが解らないの!?」
怒り狂うリアス部長に朱乃さんは毅然と言い放つ。俺は、俺はバカ野郎だ! 痛みは感じないが情けなくて涙が出てくる……!! しかし今度は天井に亀裂が走り、逆十字の魔法陣が現れた。向こうの援軍なのか?
「ふふ、ゲームと言うのはこうでないと。
これで条件はイーブンね。さあ? どうするのリアス・グレモリー?」
アーシアを肩に引き寄せ胸元を閉じる余裕ぶりを見せてマグダラは言った。目は閉じたままだが口元には笑みが浮かんでいる。何なんだこの女? 全面戦争になりそうなこの状況すら楽しんでいるのか?
「いんやあ〜マグダラ氏。アンタサイコーだわ! まさにダイナマイトなハニー! ではありますが、レイナーレ氏は戻ってこいとのお達し! すまじきものは宮仕え……そんなワケでばいばいき〜ん☆」
フリードが閃光弾を放ち、マグダラやアーシアを光が包み込む。
「ま、待て!」
「待てと言われて待つのはワンちゃんだけなんだよねえ〜!」
「イッセーさん。私は平気です……だから、また会いましょう」
涙をうっすら浮かべながらにっこりと微笑んでそう言うと彼女はフリードに連れ去られてしまった。
そして、イゼベル様も転移の魔法陣を起動させて、その場から去ってしまった……。
アーシアが連れて行かれる間、俺は何もできずに見ているだけだった。守るべき女一人も満足に守ることもできず……!無力感に苛まれていると意識もまたおぼろげになって行く。だ、だめだ! これじゃあまりにも情けなさすぎる……! だけど、いしきが……もた……なる……。
ー
ハッと気がつくと俺は自分の部屋のベッドに寝かされていた。
側にはイゼベル様が濡れたタオルを握りしめたまま眠っている。
顔の痛みはまるでないが感覚は戻っている……。恐る恐るテレビの画面を鏡代わりに使い、自分の顔を見てみると……。
「さ、再生してる……!」
火傷は消え、傷一つない綺麗な顔がそこにはあった。い、一体どんな回復魔術を? というか悪魔は回復魔術を使えないのでは ? 次々頭に疑問符が浮かぶ中リアス部長がドアを開けて入ってきた。
「イッセー!」
彼女は俺の側に駆け寄るとぎゅうっと抱きしめてくれた。あったかい! やわらかい! マグダラと同じかそれ以上!
「リアス部長……俺は一体……?」
俺の質問に彼女は安堵した顔になると事の顛末を説明してくれた。イゼベル様が色々手を尽くし、更にリアス部長のコネを使い『フェニックスの涙』とかいう万能薬を取り寄せてくれたという。
ここだけの話、一本で兵藤家の生涯収入に匹敵する程らしい。うう……イゼベル様がこんなへっぽこ眷属ならびにパートナーの俺なんかのために……。
「す、すいません……! 本当にすみません!! 俺が弱っちいせいで……部長にもイゼベル様にも迷惑をかけてしまって……!」
「別に迷惑だなんて私もイゼベルも思ってないわ。貴方が無事ならそれで良いの」
部長は俺の顔を両手で包みながらにっこりと微笑むと俺の胸に顔を押し当ててきた。いい匂いがする……ああ、女のコに抱きしめられるのも至福……! でもな〜……アーシアのことを思うとなあ……。
「その事は気にしなくて良いわイッセー。今は疲れを取るためにゆっくり休みなさいな」
「ありがとう……ございます」
部長に頭を撫でさすられながら俺は目を閉じた。情けなさと悔しさで頭がどうにかなりそうだが今はとりあえず寝てしまおう。部長達の好意を無下には出来ないもんな……。意識が落ちていく中、部長の声が聞こえる。
「けどイゼベルを見た時のライザーのご両親のお顔は一体……。お金だけじゃ数ヶ月待たなきゃ渡さないフェニックスの涙もあっさり渡してくれたし……」
よく解らんがイゼベル様には感謝してもしきれない……起きたらちゃんとお礼を言わなきゃ……。