※この作品はR-18です。

ハイスクールD×D×M   作:ぷうち☆りん

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たまにはイッセー以外もありだ。


第57話

「はあ……はあ……」

 

(どうした相棒。さっさとあのディオドラの兵隊を始末すればいいだろうに)

 

 人の心とかないんか? 

 いや、ドライグはドラゴンだったか。ともかく裸体のあちこちから血を流し、もう体力の限界らしいネイちゃんに俺は攻めあぐねていた。 確かに戦闘能力を失わせる事は簡単だ。けどその後、ネイちゃんはどうなる? 

 ディオドラのヤローはきっとネイちゃんを詰り、その人格も愛情も否定して彼女の心を粉々に打ち砕くだろう。

 そうなったらネイちゃんは生きてはいけない。はぐれ悪魔になるか或いは禍の団にでもスカウトされて悪に染まりきってしまうに違いない……。

 それはあまりにもネイちゃんが報われない。なんとかしてやりたいが……。

 

『諸君! 突然だがこのレーティングゲームは中止する! 禍の団の輩が会場や此方に乱入し始めた!!』

 

 と、そんな時にサイラオーグさんからのアナウンスが神殿中に響いた。 な、なんだって!? いやこれはある意味ラッキーと言えなくもないか! 

 

「聞いたろ、ネイちゃん! レーティングゲームが中止になった以上俺たちに戦う理由はなくなった!! 

 だから今すぐ手当てを……どわっ!?」 

 

 手を伸ばしてネイちゃんをなだめようとしたが即座に彼女は真空刃を飛ばしてきた。

 咄嗟に手を引っ込めなければ指を一本くらい持っていかれたかもしれない。

 

「ディオドラ様はまだ……! 私に期待してくれている……!! 

 だから何があろうと! 私は貴方を殺す!」

 

 悲壮な決意を示すネイちゃんは血塗れであっても美しい。

 ディオドラのヤローなんかの犠牲になるだなんて勿体なさすぎる。

 

(う〜ん、恋する乙女のパワーは凄いな)

(恋という呪いだな、あれは)

 

 ザンリュウさん! ドライグ! 

 この状況でボケるのはやめてくれ! 

 しかし、真面目にどうしよう。これ以上戦えば確実にネイちゃんは死んでしまう。けど説得しようにも聞く耳すら持ってくれない。

 ああ、どうすればいいんだ……!! と、さながら五里霧中にあった俺の迷いを打ち払う声がとんできた。

 

「狼狽えるでない! イッセー!!」

 

 声の主はイゼベル様その人だ。しかし駒王学園の制服姿というのは似合ってはいますけどどうなんでしょう!?

 

「……誰が相手であろうと、私のやる事は変わらない!」

 

 しかしネイちゃんはニ対一の状況であるのに未だディオドラの忠誠心を損なう事なく戦う意思を示していた。

 

(イッセー、この様な小娘に何を手こずる? 見た目はまあ悪くはないがそなたの琴線に触れる様なものでもあるまいよ)

(いえ……それがですね)

 

 俺は念話でイゼベル様にネイちゃんの事について大まかなイメージを送った。恐らく悲しい過去があることや、ディオドラにそこをつけ込まれた事やらネイちゃんは悪くないどころかフツーに美少女であることやら。

 

(ふむ、となれば……仕方ないの)

(な、何がですか?)

 

 一頻り念話を送った辺りでイゼベル様が悪代官ばりのデビルスマイルを披露してくる。な、何やら寒気が……。

 

「ほ〜お。こんな所に聖女崩れの転生悪魔がいるとはなぁ。向こうの女は良くわからんが……どの道下賤な赤龍帝などに与するものだ。碌なものではあるまい」

 

 なんか魔法陣で転移したかと思ったらいかにもテンプレというか、かませ犬というか、やられ役ポジっぽい貴族のお兄さんが現れた。何気に銀髪ロン毛のイケメンだ。畜生め。

 

「あ、貴方はマルコ・アムドゥスキアス様ではありませんか!?」

 

 ネイちゃんの知り合いなのだろうか? 

 彼女は平服してマルコとかいう上級悪魔に頭を垂れていた。

 噂に名高い全裸土下座に近いものがあるが見ていて気分のいいものじゃない。

 

「何故貴様らは私に平服せぬのだ」

「する理由がないからな」

 

 なんかマルコは急に不機嫌な顔つきで俺たちが無礼を働いたかの様に詰問する。え〜……フキハラかよ。今どき。

 なんか腹が立ったのでフン、と鼻で笑ってやるとイゼベル様はくっく、と楽しそうに微笑みを浮かべてくださる。

 バッチリ、いい印象を与えたみたいだぞ。っていつの時代のギャルゲーだ。

 

「はあ……つくづくグレモリー家のものは主従の尽くが度し難いもの揃いだな。

 まあいい。すぐにリアス・グレモリーの穢らわしい血は清められ、我々の手によって正しい血統の魔王を産み落とす事になるのだからな」

「……あ?」

 

 今、なんて言ったコイツ? 

 俺の怒りに対してマルコはさも愉快そうに告げてくる。 まるで俺たちを見下しているかの様な冷酷な表情で。

 

「ディオドラの側にはクルゼレイ様、そしてシャルバ様の両名が待機してリアスを相手している。ディオドラはともかくお二方があんなクソ女に負ける筈がない。あの高慢な鼻っ柱をへし折り地に組み伏せ淫乱な肉体を犯しつくして自らの子種を注ぎ込む姿を想像したらゾクゾクするというものよ。あのバカ女が我らの子種で栄光を取り戻すための新しい魔王を産み出す苗床となる事を想像するとますます胸躍るな! フハハハハハ! おい? どうした? 

こういう時は許さねぇ……。許さねぇぞぉおおおお!! とでも貴様のようなカスは吠えるものだろう?」

 

 ニタニタと嗤って俺が怒り狂うのを期待している様だが何というか乳語翻訳とは違った意味でコイツの事が何となく解った。

 解ってしまうと怒りより憐れみが湧いた。

 

「いや、全然。というかお前、リアス部長にイキ告して手酷く振られて逆恨みしてるとかそういう感じのショボいオーラがプンプンするんだよな。自覚あるか? 

 しかし苗床て。お前は父親以前に悪魔としてもまがいもんだよ」

「ハハハハハ!! さもあろうな! 女子を辱めようとわざわざ跳ね回る小魚の動機や性根などあらかたそのようなものじゃ!」

 

 俺の煽りにイゼベル様も便乗して笑い飛ばし、ネイちゃんは呆気に取られていた。

 で、とうのマルコと言うと……。

 

「貴様ぁぁぁ!! 許さん! 許さんぞ!」

 

 あ、図星だった。

 しかも自分でカスが吠えるとか言っていたセリフを言うくらい取り乱している。

 

「我が衝撃波動で貴様をこの冥界から消し飛ばてやる!! 消えろ!!」

 

 と、キレながらフルートを取り出すというシュールな光景を披露しながらマルコは何やらフルートを吹こうとする。アホか? 

 ああ、アホなのか。

 

「オラァ!!」 

「ぐへぁ!?」

 

 ボディーブローをマルコへと見舞う。

 殴られるという発想自体がなかったのだろうか、赤龍帝の籠手からメリメリッと拳がめり込む感覚が伝わってきて、俺は思わず顔をしかめた。

 

(人、いや悪魔のいい事だな。

 なんなら感覚を遮断しておいてやろうか?)

 

 いや、それを止めると自分の痛みや他人の痛みにも鈍感になる末路が待っているだろうし、そこまでクズにはなりたくない。

 

「ごは……! が……! わ、私の……高潔にして華麗なる……奏曲を……邪魔するとは……! ゆ、許さん……許さんぞぉぉおおおおお!!」

「なんでお前の許可がいるんだよ。護衛の一人も連れてこないのが悪いだろ」

「何をしているそこの下級悪魔!! さっさと私を護衛しろ!!」

「え……!? ええ!?」

 

 ツッコミを入れると錯乱気味にネイちゃん相手に喚き散らす。 ネイちゃんはディオドラの眷属だろうに……。

 ネイちゃんは戸惑う様子を見せたその時イゼベル様が彼女を捕らえた。

 

「やれやれ、イッセーめが目溢ししたというのに仕方のない小娘じゃ。

 イッセーよ。この小娘は余が相手してやるが故、そこなすくたれ悪魔を存分にぶちのめしてやるがよいぞ」

「ありがとうございます」

 

 イゼベル様はネイちゃんを抱えるとそのまま何処かへと瞬間移動して行った。ネイちゃんが危険な目に遭わないだけ安心できる。性格上、無慈悲なことはしないだろう……。うん。恐らく……! 

 

「マルコ様! お待たせ致しました!」

「後は我らにお任せを!!」

「我らは偉大なるシャルバ様よりお墨付きを頂いた正当なる悪魔の血統を持つ者! レーティング・ゲームならばいざ知らず実戦で後れを取るなどとは思わぬ事だ」

 

 マルコをかばい立てる様に背丈が大・中・小三人の従者が現れた。声色からしてたぶん男。あ、意外と眷属は真っ当なんだな。

 と変な所で感心してしまった。

 

「行くぞ! 我らの必殺戦術トライ・クリムゾンを馳走してくれるわ!! ……ぐわーっ!?」

 

 時代がかった物言いでデカい従者が仕掛けようとしてきたので、散らばる前にドラゴンショットで三人を吹っ飛ばす事にした。

 まさか当たるとは……。

 

「ぐっ……うぐぐ……!」

「じゃあ後はお前だけだな」

「ま、待て! こうしよう!! 

 リアスではなく私の方につかないか!? 今なら女王でも戦車でも好きな地位を用意してやるぞ!! 金か? それとも女か? 

 何でもお前の望むものをやるぞ!」

 

 と、マルコは跪く様にしながらみっともなく懇願してきた。情けなくて涙が出てくる。フリードや黒瓜の奴辺りなら「……と見せかけて! くらえ!」と悪あがきの一つも見せるのだろうな。

 ある意味アイツらの何が何でも負けないというハングリー精神は凄いかもしれない。 尊敬は勿論、痺れも憧れもしないが。

 

「俺の望み? それはな……お前の欲しいものは何一つやらない事だ」

「へ? ぐぎゃあっ!?」

 

 顔をあげたマルコの鼻面に一発入れ、

 

「リアス部長も!」

 

 壁へと吹っ飛ぶマルコより先行して神殿の壁に三角蹴り。

 隙だらけの背中へ肘を入れる。

 

「お前らの言う正当な血統だのなんだのくだらねえことに拘る世の中も!」

 

 サマーソルトキックで蹴り上げる。お星様にしてやりたい所だがここは冥界。 地上とは違い天井があるためそうもいかない。俺は飛び上がって後ハンマーナックルでハエ叩きで地に叩きのめされるハエの様にマルコを地面に叩きつけた。

 

「何一つ! くれてやらねえ!」

 

 最後にニードロップでトドメを刺す。死にはしないが腰の骨はボロボロ。二度とリアス部長をオカズに腰をヘコヘコさせる事はできないだろう。こいつへのお仕置きはこれで終わりだ。

 

「ひ、ひいっ……!」

「お前は勘弁してやる。さっさと仲間と主を避難させてやれよ」

 

 軽傷だった小柄な眷属を一瞥して俺は言ってやった。 俺が全員再起不能にしても構わないがリアス部長の眷属がそういうサディストと勘違いされちゃかなわん。

 いや、朱乃さんはサディストを売りにしているような……。まあいい!! 

 

「くっ……! 礼など言わんぞ!! この屈辱は必ず晴らしてやる!!」

「おう。文句あんならいつでも腕で来い」

 

 拳を突きだして俺は言ってやるとマルコの従者は顔を青くしながら逃げていった。

 ネイちゃんの方はどうなったのか気になるが、そんな事よりリアス部長が心配だ! 

 とはいえ、リアス部長がどこにいるのかわからん有様……! 

 俺の魔術に関する才能のなさが憎い! 

 

(と、言うと思って僕が探知しておいたよ。急いだ方がいい)

(あざーっす! ザンリュウさん!!)

 

 

 脳裏に現れたザンリュウさんからリアス部長の居場所を教えてもらい、俺はそこに一直線に駆けていった。

 そして辿り着いた先には……!? 

 

 ー

 

「ああーっ♡ やめて♡ もうっ♡ やめてよぉっ♡♡♡」

 

 ネイは狂乱と悦楽の入り混じる熱と欲に溶かされていた。愛撫、という言葉では生温い。イゼベルが口づけをするだけで甘く、熱く、濃厚な口付けはそれだけで絶頂を覚えてしまうほどだ。舌を絡め取られて吸われるような激しさはないものの、口腔内を余すことなく舐め尽くすかのような執拗さは、もはや愛撫の域を超えていた。

 

「フフフ、イッセーのヤツめを蕩かし堕としては本末転倒であるが故、普段は我が性技を抑えてはおるが……。

 そなたの様ないい女がディオドラ如きに囚われの身とあってはあまりに惨い」

 

(あ、ああ……♡女同士……なのに♡ こんなぁ♡♡♡)

 

 性愛の雨と嵐、そして雷に翻弄されながらもイゼベルの言葉をぼんやりと理解したネイは自身の運命とイゼベルに感謝の念を抱いた。なぜなら、今、彼女が感じている快楽はまさに至上のものだったからである。

 

「くっくっく。こんなに身を捩らせ、濡らしてまで余を愉しませるとは憎めぬヤツよな。ほれ、どうじゃ? 

 そなたはここをこうされるのが好きであろう?」

「ひうっ! あぁん!」

 

 そう言われながら首筋を舐められ、胸の蕾を摘まれただけで体が跳ね上がってしまう。そして秘裂を直接指で掻き回されると一際大きな声が出た。その反応を見て満足したのか更にじわじわと責め立てる。

 膣内の浅い部分を刺激されたと思ったら今度は深く押し込んできて中を擦られる。

 ペニスとは違う指の腹は勿論、関節の捻りまで使った巧みな愛撫は確実に弱点を捉え、的確に快感を高めてくる。

 

「あっ♡はぁん! あん! だめぇ! またイっちゃう♡イクッ! イクゥウウッ!!」

「そうか、イけ♡ 無様に果て、押し流されるが良い。みせかけの愛や忠義など熱意の欠片もない数打ちの陶器に等しいわ。

 惨めなひび割れを晒して朽ち果てるより、見事なまでに割れて砕けるがいいのじゃ」

 

 そう言い放つと同時に陰核に歯を立てられ、今まで以上に強く吸われると共に激しく膣壁を擦られた瞬間、視界が真っ白になった。頭の中で何かが弾け、意識が遠くなる。

 

(ああ……♡わたし、おかしくなっちゃう♡ディオドラぁ……助けて……♡いや……、ああ……。いいえ、助けてほしいのは……どちらなのでしょうか? ……そう、です。

 もう……私は、とっくに虜になってしまっていました。だからこそ……)

 

 絶頂を迎えた直後の虚脱感の中で彼女が最後に考えたことは……己が破滅に向かっているのかそれとも救いに至りつつあるのか、ということだった。

 

 ー

 

「ほーお。思ったより速かったね」

「イッセー……来てはダメよ……」

 

 俺が辿り着いた先にいたのは、全裸で磔にされるリアス部長と、その下でニヤニヤとゲスな笑いを浮かべるディオドラの姿だった。 あまりの怒りに全身の血液が沸騰しそうだ。 リアス部長が自分のことより俺の身を案じてくれなければブチ切れていたかもしれない位に。

 

「何してんだ……テメェ……!」

「何をしている? 見て分からない辺り本当に理解力のない脳ミソの持主らしいね」

「そう言う回りくどい言い回しは止めろよ」

『Wealthdragon! balancebreaker!!』

 

 悪いがもうコイツの茶番に付き合うのはゴメンだった。

 ゴング代わりにドライグの声が響くのに併せて俺は禁手化を発動させる。

 

「へー……クズはクズばりに成長したみたいだね。倍化もなしに禁手化に至るなんて。そんなにこの売女が大事かい?」

「売女だと……!?」

 

 たじろぎもせずディオドラは余裕の態度を崩さない。コイツ……! 俺の予想よりも強いのか? 持っている神器を禁手化できるって言うのはハッタリじゃないのか……! 

 という疑念が脳裏をよぎったが今は置いておく。

 それよりリアス部長を侮辱された事の方が一大事だ!! 

 

「リアス部長は売女なんかじゃない! 優しさとプライドを持った立派な女性だ! お前みたいな弱い者を弄んで悦に入るクズとは違うんだよ!」

「ハハハ。前者に関して否定はしない。だって弱いって事は僕の餌になるって事だからねぇ。ほら、こんな風に」

 

 指を鳴らすと磔台は霧消し、リアス部長がディオドラに抱きかかえられる形になった。 頬を舌でなめ回し、ぐにぐにと奴の掌がリアス部長の豊満な乳房を揉みしだいている。

 

「や、やめなさい!! 穢らわしい!」

「穢らわしいとは随分だな。

 そもそも僕ら純血魔族はその血筋を絶やさぬ為、多くの女達と交わってきたわけだが、君はそのうちの一匹になるわけだ。

 光栄に思うといい」

「ひゃあ!?」 

 

 首元を吸われ、リアス部長は艶やかな声を上げるがその瞳には俺しか映っていなかった。助けて、と訴えるその瞳に応えられないでなにが眷属だ!! 

 背中の翼をロケットブースターの様に展開させ、俺は全力でディオドラの元へと突撃すべく身構えた。

 だが……

 

「おっと? いいのかな? 君の大事なアーシアとゼノヴィア、

 はたまたクラスメイトの女の子や友人達がどうなっても?」

「な、なにっ!?」

 

 ディオドラがパチン、と指を鳴らすや現れたのは2つの鏡。

 それぞれ映し出されていたのは、フリード達によってあちこち傷つき、ボロボロにされたゼノヴィアとアーシア。

 そして……。松田、元浜、村山、片瀬、桐生が黒瓜、学生服姿の黒歌とボーリングに興じている姿だ。 ま、まさか……!? 

 

「ま、君のお粗末な脳ミソでもこのくらいは解るだろうけど。

 僕に手を出したら君の友人を黒瓜と黒歌が始末する様に命じている」

「……外道が! 貴方と同じ空気を吸っていると思うだけで反吐が出るわ!!」

 

 気丈に振る舞い、一線は決して越えまいと抵抗するリアス部長にディオドラは愉悦の表情を浮かべて応じた。

 

「そう怖い顔をしないでくれよ。今の僕は最高に気分が良い。何せ、君という極上の存在をこれから好きに出来るのだからね。

 たまには聖女以外の女を犯すのも悪くない」

 

 そう言いながら再びリアス部長を愛撫し始める。そのあまりの仕草に俺の怒りは臨界点を超えそうになる。

 けどダメだ。もしも俺が暴れたら松田や元浜達が……!! 

 

「ああ、あと特別にアーシアを助けに行く事だけは許可してやるよ。

 但しあの元聖女のゼノヴィアを庇ったり助けたりするのは認めないけどね」

「ぐ……! うぐぐ……!!」

 

 くそっ! どうすればいい! どうすればいいんだ……!! 

 

 ー

 

「フフ、どんな気分です? サイラオーグ様? 獅子の異名を持っても檻に囚われれば痩せ猫も同然ですわね」

 

 場所は変わってレーティング・ゲームの舞台の外。

 マグダラは嗜虐的な笑みを浮かべて、禍の団の兵隊達に囲まれているサイラオーグに問いかける。

 転じてサイラオーグであるが当に不動の精神を示すかの様に腕を組んで結界の中にて泰然自若。

 それがマグダラと禍の団の兵士達には気に入らなかった。

 

「おいおい。従姉妹のリアスが犯されそうだってのに随分余裕そうじゃねえか〜?」

「あの赤龍帝に寝取られたからもう興味もねぇんじゃねえのか〜?」

「ハハハハハ! 言うね! あのクズ野郎なら確かにそれもありえるかもな!」

「それに比べて俺らの親分のディオドラ様は粋だねぇ。あの売女を俺達の肉便器にしてくれんだもんなぁ」

「「「ハハハハハッ!!!」」」

 

 品性の欠片もない罵詈雑言の嵐。

 だがサイラオーグは尚も平然と佇んでいる。

 

「けれどサイラオーグ様のお気の毒ですこと。あんな下等な転生悪魔にリアス・グレモリーを取られても御家の事情で抗議の声一つ上げる事もできないだなんて……」

 

 マグダラは殊更サイラオーグを憐れむかの様に囁きながらそのまま彼にしなだれかかる。 彼女の体液は悪魔にとって猛毒に等しいものな筈だが、サイラオーグの鍛錬によるものか或いは他の要因によるものか何の影響も齎さなかった。

 

「そう思うか」

 

 無視を決め込んでいたサイラオーグが口を開く。ここが急所だ。と彼からは死角の位置にてマグダラは俄に口角をあげた。

 僅かな隙を見せれば中に入り込んで食い破り、腐食させる。

 “破滅的な淑女”の異名にふさわしく彼女は更にサイラオーグへと語りかける。

 

「貴方もご存知でしょう? あの男は、あの下等な転生悪魔は女の敵なんです。誰かれ構わず手を出して欲望のままに貪り続ける卑劣漢。そんな男が、彼女の心を繋ぎ止めることが出来るなどとはとても思えませんわ」

「だからアンタもこっちに付けよ。中から悪魔社会を変革するなんてできっこねえよ」

「そうだそうだ。何事も暴力で解決するのが一番だぜ。それに俺達のボスは俺たちにこんなに素晴らしい力を授けてくださるんだ! 見ろ!」

 

 囃し立てる様に兵隊達はその力を誇示するかの様に変化する。 あるものは自身の得物が怪しく輝き、あるものはその身が肥大化し、別の者は巨大な怪物に姿を変えた。

 

「その魔力、自らの力で練り上げたものではないな」

「ハハハハハ! そうだ! これこそオーフィス様が俺たちに授けてくださった加護の賜物だ!!」

「お前だって魔力を持たない出来損ないなら解るだろ? 力を得たあとに、偉ぶった奴等をいたぶり殺して嗤ってやるのがどれだけ気持ちいいかよォ!」

 

 力という武器を安直に手に入れ、増長した彼らは歓喜と狂気の雄叫びをあげた。そんな一同とサイラオーグにマグダラはまるで観客の様に澄ました顔をして成り行きを見守ろうとしたが……。

 

「わからんな。お前達は憐れだ。その上に醜い」

「なんだとォ!?」

「今、何て言った!?」

「憐れ? 醜い? テメェ、何様のつもりだ!」

「何様か……? 俺はサイラオーグ・バアル。それ以上でもそれ以下でもない」

 

 重油から燃え上がる炎の様に毒々しく、かつ醜い兵士達に対しサイラオーグの言葉と態度は雪解け水から連なる清流のように澄み渡っていた。

 その威風堂々たる態度にマグダラは無意識のうちに奥歯を噛み締めていた。それは、意のままにならぬものに対しての苛立ちか、嫉妬によるものであるかどうかは解らない。

 

「だから言葉を選べよ、三下! それともテメェの立場がわかんねぇのか?」

「そうか。お前達は知らんのだな。力とは何か。誇りとは何かを」

「だったら俺たちがテメェらバカにしていた力の使い方を教えてやるよ!!」

「そうだ!! テメェらみてえな弱者が、強者の前でどんな風に振る舞わなきゃいけないのかっていうことを思い知らせてやる!!」

「「ヒャッハアアアアア!!!!」」

 

 結界が解かれるや否や、首を刎ねる斬撃、身を引き裂く爪撃、千切り飛ばす噛撃がサイラオーグに振るわれた。

 ……が、当然の様に無傷。

 超音速の拳が3発振るわれた。

 それだけで3体の獣は3つの骸に成り果てた。更に風圧の余波によってマグダラの余波によって右肩を穿たれる結果となった。

 

「ぐあああっ……!?」

「消えろ。形だけ整えた醜女。 

 己を律せず、他者を愛せず、執着と支配することでしか生の実感を得られぬ憐れな蜉蝣。

 お前の飼い主に泣きついて、その美貌だけでも愛でてもらえ」

「く……うぅぅ……!! 覚えていなさい……!」

「リアスの言葉だが、月並みな悪党は捨て台詞も月並みだな」

 

 いつものすまし顔の閉じ目は彼岸の彼方。

 まるで般若の様に悍ましく邪悪な表情でサイラオーグを睨みつけると霧の様にかき消えたがそれこそ不動明王に等しい彼には通用する筈もない。

 

(俺は俺の、誇りと生き様を示す為に戦う。それだけだ。イッセー、リアス。お前達もな)

 

 サイラオーグは振り返り、その拳を握り締めた。

 その拳に宿るのは、信念と覚悟と魂。

 何が相手であろうと己の全てを信じ、貫き通す。

 そして、それはきっとリアスとその眷属も同じはずだ。だから、ここで安易に助け舟を出すわけにはいかない。

 故に静観の構えを取った。どうやらマグダラが逃げた事で取り巻きも脱兎の様に退散していく。

 サイラオーグは目を瞑り、胸中で祈った。

 イッセーなら必ず、自分自身と仲間達の絆を証明してくれると。たとえ、どれだけ困難な状況であろうとも、必ず乗り越えてみせる。

 そして、リアスたちもまた、それぞれの道を進み、強くなっていく。彼はそう信じていた。

 そう。 イッセーは、必ずやリアス・グレモリーを救い出し、皆と共に未来を切り開く。その時こそ、彼が真の意味で赤龍帝の称号を受け継ぐ時なのだと。

 

(が、あの御方はそうではあるまい。イゼベル様は何を考えておられるのか……) 

 

 と、気をもむが女性というものは自らが見出し見初めた男にはいつまでも自分の庇護がなければならぬと思うものらしい。そしてそれはあのセラフォルー・レヴィアタンも例外ではなかった。

 

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