※この作品はR-18です。

ハイスクールD×D×M   作:ぷうち☆りん

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エロは次回


外伝 浜辺の女神 中編

「さあ、かくして始まりました!! 

 駒王町主催のビーチ・ビーナスコンテスト!! 昨今のポリコレなんてなんのその! 美しいものが嫌いなヤツがいるかーっ!?」

「いなーいっ!!」

「綺麗なものを綺麗と言ってなにが悪ーいっ!!」

「悪くなーいっ!!」

 

 ウオォォォォッ!!! 

 天地が割れるんじゃないかっていう雄叫びが駒王町の海岸を揺るがした。

 バカのコンテストがあるならここが一次試験会場と言ってもいいレベルでギャラリーが集まっていた。

 こんなヤツらの見世物にされる桃先輩は大丈夫だろうか……? 

 なんだか不安になってきた。

 

「ふっ、何をたじろぐ事がある元士郎。

 桃とやらは心強き女よ。ソーナ、ヴリトラめを恐れずそなたの伴侶になろうとする位にのぅ。全く貴様のどこが良いのやら」

 

 薄手のジャケットを羽織っても赤黒交差型ビキニを纏うイゼベルは男達の注目の的だ。プロポーションは抜群。髪は純金の黄金細工さながらに輝くブロンドのロングヘア。目鼻立ちは彫刻家が再現できうるかの美貌。そのくせ、本人には見られる事に対する羞恥心など一切ない。それどころか堂々と胸を張り、慈善活動のように振る舞っている。……すげー自信。

 膝下周りに元太と元気が擦り寄りさえしているのが気にかかるが。

 

「アンタは参加しないのかよ」

「元太と元気、あと元子が寂しがるでな」

 

 いつの間に三人ともすっかり懐いているが喜ぶべきなのか? 悲しむべきなのか? 

 ともかく桃先輩はいち早くエントリーしたのだろうか一番初めに現れた。

 午前中に着ていたものと同じ水着だったけど、ステージに立つというだけで雰囲気はまるで違う。

 

「宜しくお願いしまーす♪」

 

 キュピキュピ、ならぬキャピキャピとした快活な笑みを観客に向けている。 桃先輩……なんかすげえ輝いてる! 

 

 ウオォォォォ!! 

 

「おーっと、開幕からものすごい歓声だー!!」

 

 司会の人もハイになるくらいに盛り上がっていた。これはもう勝負は決まったかな? 

 などと俺は楽観的に成り行きを見ていたのだが……。

 

「いやー、こんなアイドルやトップアイドルクラスの子が出てきちゃ次の子は出づらいかもだけど……さあ、どうぞ!」

 

 司会者が言うが早いか二人目の子が現れた。色素が抜けたような淡いプラチナブロンドを後ろに結んだショートボブに後ろ髪の結び目には、ハイネック式の黒い水着に合わせた漆黒のリボンを着用している。

 少し胸が薄い気もしないでもないが、ヴリトラ様に引けを取らない腰回りの黄金比が俺の視線を釘付けにする。

 ……ってヴリトラ様の分霊のヴリトラ・アスラじゃねえか!! 

 

 ウオォォォォォ!! 

 

「フン」

「おーっと! オーソドックススタイルの桃先輩に対してツンギレスタイル炸裂だァーッ!!」

「アスラはん!! バッチリ決まっとるがや!! 日本一!!」

「スッゴイステキダヨー」

 

 観客の歓声に引けを取らない大声で応援しているツンツン頭のゴリラ男は木下藤吉郎……だったよな? 

 隣の蚊の鳴く様な声で応援する独特のヘアスタイルのヤツは知らない顔だが。確かあいつら『禍の団』の一派だよな? 

 ちょっと挨拶と釘を刺しにいかねば……。

 

「イゼベル。三人を頼む」

 

 イゼベルからの返事を待たずに俺は二人に近付くと目ざとく向こうから気がついた。

 

「おぉー! 元士郎くんじゃないか!こんな所で会うとは奇遇だぎゃあ!! ゴブリン鉱山の時は世話になったぎゃあ!」

「お、おう……」

 

 バンバン、と俺の両肩を叩きニカッと笑って先制されるとどうも毒気が抜かれる。……やりづらい相手だぜ。

 

「藤さん? その人と知り合い?」

「おうとも道満。この男は匙元士郎! ソーナ眷属はもとより下級悪魔の中でも折り紙付きの男だで。

 ワシらなんぞ一息ではね飛ばせる強さの上に男っぷりも最高のイケメンだぎゃあ!! 

 それに比べりゃワシはほんとひと山幾らの山猿だがや! ガッハハハハ!!」

 

 何故か俺の紹介をして豪快に笑う藤吉郎。

 おべんちゃらというか太鼓持ちなんだろうけど、こう人前で褒められるとなんだか気分はいいな。

 しかし、それを受けた独特ヘアーの青年は首を傾げて俺を見てくる。

 

「ほんとに君が?」

「ああ。まあ、そうなるかな」

 

 別に自慢する訳じゃないが否定するのも卑屈すぎるし、まあいいや。

 

「へぇ、ふーん、ふむふむ……」

 

 蛇みたいな目でジロジロ見られる。……何か、コイツもやりづらいタイプだぜ。俺は無意識に後退り、猫足立ちの姿勢を取っていた。

 

「成る程。警戒させてゴメンよ元士郎くん。藤さんが持ち上げるからちょっとイラッとしちゃってさ。悪い悪い」

「道満にしては似気ない事だぎゃ」

 

 謝罪と和解の意志を示す様に道満と呼ばれたヤツが握手を右手を差し出してくる。

 一瞬その右手が蛇の口と胴に見えたが幻覚……ではなく油断していると一気に丸呑みにされるぞ。という直感だろう。

 ともかく俺は逆らわずに握手する事にした。これ以上敵意を向けてこないというのであれば今ここで戦う必要はないのだし。

 

「よし、握手握手。これからは仲良くしようね。

僕の名前は芦屋道満。と言っても本人じゃないけどさ。

陰陽師、というより狗神使いの様なことをしている」

 

 道満が手打ちの言葉を述べ、俺たちは再び会場に目をやる。

しかし凄い歓声だ。まあ、桃先輩もアスラも美少女だからな。

 うんうん。とひとりごちていたら更に歓声が轟きだした。

 

「いやー! 今回はレベルが高すぎるぜ! 野郎ども!! 生まれてきた事を神に感謝しな!! 最高ですかー!?」

「最高でーす!!」

 

 ギャラリーも変な方向に行きつつあるが、そこに現れたのは白いつば付き帽子に日除けのレインコート、血を抜いた様に白い肌、雪峰の様に張り出た乳と尻を白ビキニで包む足の長い八頭身はあろうという長身美女が現れた。

 

「さーて! エントリーナンバー3番は……八尺ちゃん! 今回の意気込みは?」

「ぽ?」

「これは不思議ちゃんキャラかー!? 三者三様の激熱ビーナスバトル勃発だー!!」

 

 ……って喋れないんかーいっ!! 

 危うく場外からツッコミを入れそうになってしまうがそれは俺が先輩、ソーナ会長、桃先輩、仁村、ヴリトラ様と言った美少女に慣れているからの話。

 観客はそんな純朴ミステリアスな様子にすっかり魅了されたのか割れんばかりの歓声があがっていた。

 

「へー……いいじゃないか」

「なんじゃ道満。 おみゃあさんはああいうタイプが好みなんきゃ?」

「まあね。ケツとタッパ……あと乳がデカいとグッと来るよね。態度がデカいのはイヤだけど」

 

 男同士の猥談をしていたらまた人が入場してきた。 次は誰だ? もう誰が来ても驚かんぞ……? 

 

「続きましては敢えてコンビで参戦! 麗しきは女の友情か!? それとも禁断の愛か!?  エントリーナンバー4番5番! 

 三手留斗。三手留斗(みて ると)選手に! 伽貞 嶺亜。(かて れいあ)選手ダーッ!!」

 

 ミッテルトとカテレアじゃねーかっ!! しかし金髪縦ロールゴスロリボインスクール水着と敏腕秘書お姉様系鱗粉色競泳水着という独自色の強い水着を選んできた。

 なんちゅうヤツらだ……!! 

 

「そして最後に登場するのは一体誰だ!? 

 前年チャンピオンをジャマですクソゴミ、と文字通りに一蹴してしまった謎の飛び入り選手……刮目してよーく見やがれ!! 

 雨と嵐! セクシータイフーンの化身!! ミスXだーっ!!」

 

 ウオォォォォォーッ!!! 

 一際歓声がデカくなり耳が遠くなるんじゃないかという騒音に俺は耳をふさいだ。 元太達は大丈夫だろうか……? 

 イゼベルがちゃんと面倒を見てくれているならいいのだが。

 一端戻ろうとしたが、壇上にいるミスXとやらの体つきに俺は目を奪われた。

 青いビキニ姿なのはともかく白磁器の様に滑らかな肌に流麗な曲線を描く肉体。

 さらに胸は乳と言うより二つの肉球に近いかもしれない。しかし決して垂れてはいない。しかし、引き締まりながらも張り出た尻やすらり、とした足や腿よりも竜骨、鼠径部、腰回りの美しさときたら……! 

 まさしく完璧。ミス・パーフェクト。当に男が夢見る女体そのもの! 

 ……しかし俺は知っている。この身体の持ち主を知っている!! ヴリトラ様じゃないか!! 学園長としての仕事は!? 

 というか何故紙袋を被って……!? 

 

「宜しくお願いしまっす♡」

 

 しかも正体がバレない様にゼノヴィアじみた萌え声まで……!? 芸が細かい!! 

 

「まさに1000年に一度のハイレベル! 

 世紀末がどうした! ここが千年王国だ!! 

 六名の美女神が頂点を競うビーチ・ビーナスコンテスト!! 開幕だアーッ!!」

 

 司会者の声がマイクを通して響き渡る。

 海辺の砂浜には特設ステージが組まれ、周囲を取り囲むギャラリーたちからは異常な興奮の渦が巻き起こっている。

 

「そしてお題はこちら! 『魅力アピールタイム』です! 各選手には自由に自己PRをする時間があります。まずはエントリーナンバー1番、桃園桃選手!」

 

 桃先輩が前に進み出た瞬間──

 

 地鳴りのような歓声が爆発する。彼女は明るいスマイルを浮かべながら軽快にポーズを決め、元気に手を振る。シンプルなアンダー付き水着が清潔感と健康的な色気を醸し出し、「ザ・健全なお姉さん」という印象を俺たちに強く与えた。

 

「皆、ありがとうございま~す♪ 元ちゃん! 私頑張るね〜♪」

「元ちゃんって誰だー!? キミの彼氏かあーっ!?」

 

 ここでまさかのカミングアウト!? 

 い、幾ら何でもここで堂々と彼氏持ちだって暴露するのはコンテスト的にどうなんだ!? 

 

「莫迦が。勝負を捨てたか……」

 

 憮然とした腕組姿勢でアスラは冷たい瞳で桃先輩を一瞥するが桃先輩はなんのその、余裕の笑み。

 

「私は私の道を行くだけだから! 

 皆さん! ビーナスに選ばなくても私と元ちゃんの恋路を応援してねー!」

「かーっ! 元ちゃんが何者かは知らねーが羨ましすぎるクソヤローだぜ!! なあ皆!」

 

 意外な事に歓声が沸く。

 彼氏持ちを公表したのを潔しとみなしたのだろうか……? 

 

「人の恋路をジャマするヤツはなんとやら……ってね。お邪魔虫がいるなら格安で手を貸すよ?」

「ガッハッハ! 元士郎くんがいなけりゃ何日拝み倒してでも娶りたい女丈夫だがね! 桃ちゃんは!! そんな顔せんでもワシは人の彼女は取らんがね!! ワシは人は裏切らん、人に酷い事はせん。その二つが取り柄の男だもんでのぅ!」

 

 肩を組んできて、道満と藤吉郎は俺に目配せする。いや、距離が近いからお前ら。

 友達じゃねえし!! 

 

「続きましてエントリーナンバー2番! 

 明日楽ちゃんは一体どんなインパクトを残してくれるのかーっ!?」

 

 と、壇上では明日楽、もといアスラの出番となっていた。アイツ、大丈夫なのか!? 

 まさか血祭り開催なんて事はないだろうな? 

 

「まあ、大丈夫じゃない? たぶん」

「何の何の。アスラはそのあたりの事は弁えとるがや!」

 

 ホントか? ホントに大丈夫なんだろうな? 

 藤吉郎と道満は何処吹く風といった顔をしているが……アスラの出番は続いている。

 彼女はやおら氷の剣を一瞬で作り出すと、剣舞を始めた。

 ドライアイスが昇華する様な靄と光の屈折と蜃気楼が齎すか幻想的なステージに観客も見惚れている。

 

「さあ!! 続いての挑戦者はこの方!! 

 ゆうに180cmを超える長身と長乳!! 圧倒的威圧感!! 恐怖の女巨人!! 

 八尺ちゃん!!」

 

 おー……観客は魅了されているなか、その八尺の行動を俺は固唾を飲んで見守る。

 アスラ並みに暴走したら俺が止めるしかないが……しかしそんな事はどうでも良いように彼女はアスラがステージに刺した氷の剣を上空に投げると……! 

 

「ぽっ」

 

 鮮やか、という言葉では説明しきれない速さですらっとした足を蹴り上げ、氷の剣を粉砕。残心の構えを取った。

 沈黙が引き潮ならば歓声は当に満潮。

 会場を揺るがす大歓声に彼女は手を振り続けている。どうやらコミュニケーションを取るのが難しいだけで悪意がない性格なのかもしれない……。

 

 あれで言葉が通じたらモテモテだっただろうになぁ。イッセーのヤツが少し羨ましい様な。いやいや、妬んでどうする! 

 俺にはソーナ様、ヴリトラ様、桃先輩、仁村、椿姫先輩がいる!! 

 

「ちょっと数多くない?」

「人の顔色を読むな!!」

 

 道満が誂う様にニヤニヤした笑みを俺に向ける。……ホント、コイツ調子狂う奴だぜ! 

 

「でも解るよ。隣の芝生って青く見えるっていうか、禁じられているからこそ冒険したくなるのは僕らの業っていうかさ。

 俺は藤さんとは違うから。遠くから指しゃぶって我慢する位なら殴ってでも奪うよ」

 

 この道満というヤツは本当に食えないヤツだと俺は内心冷汗を掻きまくるが、コンテストは順調に進行していた。

 なお、ミッテルトとカテレアについては割愛する。

 

 そしていよいよ満を持して(?)ミスXもといヴリトラ様の出番と相まったが何をどうなさるおつもりなのか……。

 先ずは被っていた紙袋を自ら破る。

 その美貌はアスラをそのまま大人にした……いや、大人になりすぎた豊満極まるところもあるがそれを帳消しにする超絶的な色気。艶やかな唇を開く。

 

「オーディエンスの皆さん、今日はお越しいただいて感謝致します。

 私が今回皆さんにお見せするのは……特別なパフォーマンスです」

 

 ヴリトラ様がウインクすると、砂浜から突如として巨大な龍の頭蓋骨が隆起し、波の上で踊るように動き出した。周囲の海水が舞い上がり、虹を作る。

 更に両腕を広げると突風が巻き起こり、宙を舞う海の泡吹雪が人々の感情を昂らせた。

 

「な、なんて大仕掛けだーっ!! 

 いつの間にこんなド派手な仕掛けをしていたんだーっ!?」

「昨日からですがなにか問題でも?」

 

 当然のことのように涼しい顔で告げるヴリトラ様に対し観客席では熱狂の渦が巻き起っていた。

 

「こんなのアリかよーっ!!」

「ありだー!!」

 

 有り難い事に問題なしとの裁定らしい。

 流石はヴリトラ様。伊達に不傷の竜王じゃない。たかだか街のコンテストというにはやった事の規模が大き過ぎるが……! 

 それこそヴリトラ様の魅力というものだろう。

 

「参ったねぇ。流石にここまで大掛かりな

 演出されちゃあ姫様も出る幕なしだよ」

「ヴリトラさーん!! 最高だぎゃー!!」

 

 道満も舌を巻いて賞賛し、藤吉郎も感動しているのか目から涙を流していた。

 一方でミスXことヴリトラ様の番は終了し、投票の時間と相まった。

 

「なんか投票した俺達にも抽選があるらしいぞ」

「まさか、エッチな事でもさせてくれんの?」

「マジかよ……!!」

 

 マジなワケねえだろ。と思わず言いかけてしまう。

 観客の中にそんな不埒な事を言い出す奴らがいた。いやいやいや……桃先輩やヴリトラ様にそんな事をしようものなら俺は流石に黙っていないからな? 

 と、焦燥に駆られている間にも投票結果が出たようだ。司会者の声がマイクを通して再び響く。

 

「さて、いよいよ運命の結果発表です! 今年度のビーチ・ビーナスの栄冠を手にするのは果たしてどの選手でしょうか!!」

 

 一呼吸置き、勿体ぶらせた後に発表する。

 

「今回の優勝は……ミスX選手だー!!」

 

 オオーッ!! とこれまたデカい声が轟く。

 流石というか、当然というか。

 が、観客達が注目するのは抽選で誰かが選ばれて壇上に上がることが出来るというサービス精神旺盛なものである事に他ならない。

 つまり、選ばれたらヴリトラ様に抱擁などの接触が可能なのだ。

 いや、もし当たりを引き当てたヤツがいたら本気で嫉妬の炎にて焼き殺してしまうかもしれん……。などと冗談半分に考えていたら抽選箱の中から一枚の紙切れが取り出された。

 

「幸運の当選者は……こちらの方!!」

 

 司会者が読み上げようとした紙に書かれている内容が自分の予想していない内容であり狼狽するのが傍から見ても分かるくらいであった。

 しかし、司会者はすぐさま気を取り直して、当選者の名前を呼ぼうとする。

 

「おめでとうございます!! ヴリトラ……もといミスXとの接触権を得られた方の名前は……匙元士郎さんですね!」

 

 な、なんだとー!? 

 ともかく俺はあれよあれよと言う間に壇上へと案内されるがままに上がっていく。俺とヴリトラ様は向かい合う

 

「おめでとうございます、匙元士郎さん。

 では約束通り、ビーチ・ビーナスとの触れ合い券プレゼントとなります。さあ! 思いっきり抱き合っちゃってくださいね!! 

 お姫様抱っこなりなんなり!!」

 

 司会者が言うや否やヴリトラ様が抱きついて来た! その豊満な胸に顔を埋める形となる俺は硬直したまま動けないでいた。

 ふ、普段家でアホ程やっているだろだと!? 人前でやるのとは違うだろ!! 

 

「おーっと!! これは大胆な展開になりましたなぁ!! 羨ましい!! 

 見て下さい皆さん!! あのビーナスを相手にこの貫禄!! 素晴らしいモテ野郎ですよ!!」

 

 周りのギャラリー達からも口笛が聞こえたりして、俺はとても恥ずかしかった。

 

(ちょ! ヴリトラ様!! 流石にやりすぎじゃないですか!? 離してくれませんかね!?)

 

 慌てる俺に対してヴリトラ様はゆっくりと身体を離し微笑んだ。

 

(あら、元士郎は私のことが好きではないのですか? 私で童貞を捨てたのを忘れてしまうとは情けない)

 

 その仕草には大人の女性特有の妖艶さがあったため思わずドキッとしてしまったもののなんとか平静を装うことができた。

 

(もちろん好きですよ!! だからこそこの様な公開プレイは困ります!)

 

 と、ドギマギしているなか、次は桃先輩がひしっと抱きついてきた!? 

 だから人前でやるのと二人きりでイチャイチャするのは全然違うんですって!! 

 

「おーっと! 二位の桃選手も負けじとアタック開始です! これは眼福だーっ!! 

 というか元ちゃんの正体は彼なのか!? 

 ファーック!! 全く羨ましけしからん野郎だぜ!」

 

(ヒドいわ元ちゃん! 私の前でヴリトラ様にデレデレしちゃって!!)

(い、今はそういう状況じゃないでしょう!? それに……!!)

 

 なにやら観客達が群狼の様に憤怒と殺意に満ちた眼差しを俺に向けてくる。

 ヤバイ、マズイぞ。これは非常に不味い展開だぞ……!! 

 

「ふざけんなーっ!!」

「何でお前ばっかりモテるんじゃー!!」

「よーし! 皆の怒りはワシが預かった!! 

 ココがワシの天王山だぎゃ!! 

 進めーい! 敵は弾正、いやさ壇上だでよ!!」

 

 あ!? 藤吉郎の野郎が指揮を取り始めやがった!! まさか裏切ったのか!! 

 いや、初めから敵同士だったけどさ!! 

 

「ほう……貴様は色魔か」

「誰が色魔だ!! って、氷の剣を出すな!!」

 

 アスラが憮然とした表情で氷の剣を展開し始めた。すわお手打ち!? 

 俺は咄嗟に桃先輩とヴリトラ様に視線を送る。助けを求めたが既に気配はなし。

 少しは痛い目をみろって事かーっ!? 

 もはやこれまで……! 

 

「ちゅうわけで匙くん。騒ぎを鎮めるために覚悟を決めるがね!!」

 

 と、藤吉郎がガタイの良さ通りの怪力で俺を持ち上げるや、ダイブの要領で観客席へと俺を投げ込んだ。

 俺はまるでトビウオか飛び石の様な鮮やかな動きと巧みな観客同士の連携によって彼らの頭上を渡りきり、海へと放り込まれてしまった。

 

 ざっぱーん!! と大きな水柱が上がりどんちゃん騒ぎはフィナーレと相まった。

 

 ー

 

「さあ焼けた焼けた! 皆どんどん食べるがね! 肉は道満が選んだ丹波牛! 焼き手は右府様直伝の焼き加減を学んだワシこと木下藤吉郎だぎゃ!!」

「フン。いい肉を使えば美味くなるのは当たり前だ」

「そうかねぇ。環境が美味しくさせるってのもあると思うよ」

 

 そしてその日の夕方の話。

 焼肉奉行を務める藤吉郎は焼肉屋の大将も真っ青なくらいに熟練しており、肉が焼けたか見抜く目とそれに肉を裏返す串捌きが実に見事なのだ。

 牛肉の質自体が良いのもあるんだろうけど……。

 というか何でコイツらが桃先輩の保養所に? というかイゼベルのヤツはどこに? 

 食い意地が服を着て歩いている様なヤツがバーべキューの宴に参加しないワケがないが……。まあいいや。折角だし、食べますかね。

 藤吉郎のヤツが焼いた丹波牛を頬張る。

 

「こ、これは……!?」

 

 確かに、柔らかい触感と共に溢れ出てくる肉汁。噛めば噛むほど広がる濃厚かつ深みのある味わい。そして玉ねぎのバランスも見事だ。

 これはまさに極上の逸品。今まで食べた中で一番美味しいと断言できるほどの代物だ。そしてこの焼肉は単に贅沢な食材を使っただけでなく、藤吉郎による職人技があってこそ成り立っているというのがよく理解できた。

 

「……悔しいが美味いぜ」

 

 素直に認めた方が腹の足しになる。と俺は判断し、さらにもう一口。やはり旨い。

 後でタレのレシピを教えてもらおう。

 

「どうだ? うまいきゃ?」

「「「おいしーい!!」」」

「そうきゃ。ワシも焼いた甲斐があったでよ。じゃあもっと焼いたるで、待っとりゃあす」

 

 元子達はすっかり藤吉郎に懐いたらしい。

 すっかり親戚の兄ちゃんになっていやしないか。

 

「どうしたの元ちゃん? 淋しいの?」

 

 そんな俺の機微に気づいたのだろうか桃先輩が俺の横に座ってくる。

 

「い、いえ。そういうワケでは」

「ホントかなぁ?」

 

 桃先輩は俺の顔を覗き込みつつ問い掛ける。その甘い香りと共に胸が高鳴ってしまう。口ぶりとは裏腹に心配してくれている

 のが解る……。

 

「ま、血は水よりも濃いからねぇ。ん? オジャマだったかな?

お嬢様がた」

「まあ、それなりに?」

 

 と、ジャケットに男物水着という出で立ちの道満が俺達に問いかけてくる。わかっているならアスラの相手でもしてやってほしい。

 いや、確かコイツの好みとアスラは真逆だし……。

 

「ならオジャマな道満さんに聞きたいけど、貴方がた禍の団はどんな野望を抱いていらっしゃるの?」

 

 と、いきなり桃先輩が際どい話題をぶっ込んだ!! 当に剛速球!!  道満はどう出る……? まさかいきなり豹変したりしないよな? 

 万が一の時は元子達と桃先輩を逃がす為に全力を尽くすのみだが……。

 

「……それは簡単。解放さ」

「解放……?」

 

 まさか答えてくれるとは……。

 桃先輩は目をしばたたかせ、鸚鵡返しに答える。

 

「そ。魂の解放。永遠の解放! 

 君等や天界や堕天使側だけじゃない。人間、悪魔、神様、英雄、妖怪関係なしにだね。みんな堅苦しいのは嫌だろ? 

 ホンネの所では楽になりたいんだよ」

「堅苦しい? その割には貴方も藤吉郎さんも随分楽しそうだけど」

 

 確かにそうだ。アスラはともかく道満も藤吉郎も心底今を楽しんでいる。それが未来から目を背けた自堕落なものでもなく、嘘偽りでもないのが俺にはわかる。だから怪しい。

 

「目に映るものだけが、耳から聞こえる事だけが全てじゃあないさ。

 特に英雄なんてものはしがらみと枠組みの塊だ。

 真っ当に堂々と、或いは姑息にこそこそと戦ったり争ったりしても結局死ぬ羽目になる。 大衆ってのは残酷だよ。

 だけど伝記に残してやったんだから文句ねえだろ? ってなモンさ。

 それじゃあ人間も人外もやってられないし、救われないだろ? 

 そんなヤツとそんなヤツらが作っている世の中が救われる手段があるとするなら僕は喜んで力を貸すね。

 まぁ、兵藤くんみたいに全部抱え込んでなお潰れないのも面白いけど、あくまで例外だよ。誰でも同じ真似は出来ない。

 じゃなきゃ呪いなんてものは存在しない。先達である兄の口から出るもの……と書いて呪いとは良く言ったもんさ」 

 

 海の水平線を見つめる道満の言葉は本音だろう。だが本音と本当は違う。だが嘘だけを言っているワケでもない。

 正と奇、陰と陽、光と闇。相反する両方を併せ持った男。それが蘆屋道満、木下藤吉郎であり兵藤か。……俺はどっち側だ? 

 

「アンタは何者なんだ……?」

「あっはっは! やっぱり聞いてきちゃう? 僕の口から教えて欲しいかい?」

「いや、やっぱいい」

 

 と、俺は答えつつ肉を頬張る。

 真実は自分で見極めるしかねーからな。

 まあ、それは追々考えるとして今はとにかく腹一杯飯を食わないと。

 食べるなと言われても腹は減る。

 それも真実の一つだ。

 あと……何でミッテルトやカテレア、八尺までいるんだ? マジで……。

なんか元太と元気に構っているが青田刈りなんて事はなかろうな。

 

 

 ー

 

 所変わって、夕暮れの砂浜。イゼベルは曹操と対峙していた。

 宴のあとの閑散とした情景は、夏の終わりを想起させる。

 

「初めましてイゼベル。お会い出来て光栄だ。英雄派のリーダーをやらせてもらっている曹操というものだ」

「知らぬのう。皆目知らぬ」

 

 曹操に肩透かしを食らわせようというのか、単に興味がないのかイゼベルの受け答えは冷たい。

 

「ちょっと待ちなさいよ貴方! 曹操に対して失礼じゃない!」

「あまり調子に乗るなよ若作りのババァが!」

 

 英雄派の幹部であるヘラクレスとジャンヌはイゼベルの傲岸不遜な態度に苛立ち、囲う様に詰め寄ろうとするが、曹操はそれを制した。

 

「サルとキジめが弁えずに余に向かって騒ぎよる。時に犬はおらぬのか、曹操とやら」

「狗は所用があって留守にしている。二人とも落ち着け。イゼベル殿はこういう御方さ。

 それで、イゼベル殿、我々としては貴方と不戦の同盟を組みたい」

 

 曹操の丁寧な物腰と敬語は、三国志の曹操という人物と違ってかなり穏やかな印象を与える。しかし、その鋭い眼光は獲物を狙う梟のもの。まさに乱世の奸雄。

 カエルの子がカエルならば、梟の子は梟。

 宵の空を舞い、森を駆け、蛇を食らう。それもまた梟の習性というものだが、イゼベルはそんな曹操に対して白けた様に肩を竦め、溜息を漏らした。

 

「詰まらぬ。余を捕らえてイッセーめの人質にしようとでも言うかと思うたが……」

「我々は人間だからね。そこまでムチャはできない」

「「曹操!?」」

 

 てっきりイゼベル討滅の合図が出るとでも思ったのか、ヘラクレス達が驚愕した。しかしそんな事は曹操は気にも止めない。ただイゼベル一人だけに集中している様に思えた。

 

「英雄か。神殺しにして簒奪者どもの血統がそれほど上等とも思えぬがな」

「それはそうだ。真水も流れなければ澱んで腐る。まして血ともなればね。 だからこそ流れを新たにして循環させるのが我らが役目だと思っている」

「よかろう。その答えのみ気に入った。不戦の同盟とやら、契ってやる。 イッセーめがそなたらと事を構えたとき、余はどちらにもつかぬ。それで良かろう」

 

 ともかく両者の間で盟は結ばれたらしい。

 もっとも約定の書も握手もなかったが。




Q三人で拉致すれば?
A無理です。サーゼクスも一目置いているイゼベルですから。

Q道満の答えって本音?
A本音ですよ。出力がどうなるかはわかりませんが。

Qエロは?
A次回
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