「ぐぬう……。ぬ、抜かった……!」
「イゼベル様!! 早くフェニックスの涙を!!」
「要らぬ。余にすれば心臓を撃ち抜かれるなどほんのかすり傷じゃ……!!」
しかし顔面は蒼白で流れている冷や汗が尋常ではない。
「さて……続きと行こうか?
僕は生憎この通りまだ戦えるが?」
「上等だ!! ディオドラ!! 今度こそ引導を渡してやるぜ!!」
ヤツの未来を選択する能力は厄介だが万能ではない。現にさっきはゴリ押しで突破できたものな……!
(ドライグ! 今度はお前にくれてやった右腕のコントロールを任せる! ザンリュウさんは翼のコントロールをお任せします!)
さっきの痩せ我慢ラッシュ戦法とは違うやり方で俺はディオドラに挑む。
奇策、兵法に二度はなし! ってこの間アザゼル先生から教わったしな。
俺の翼からエナジーウィングを発射し、相手を牽制、その間ドライグはドラゴン・ショットを撃ち込み、俺は大いなる7つの丘の勾玉をコントロール。某オールレンジ兵器ばりにディオドラのヤツに回転させながらぶつけていく。
「どうだディオドラ! お前の未来を決定する能力でも三人同時となるとそうはいかないだろ!?」
「それは認めよう。 だが、僕の権能は『神は再び設定する』(RE.SET)のみではないよ?」
「なんだと!? つまらねーハッタリは止すんだな! そんなチート能力を何個も持てるもんか……!?」
口走った途端、妙な寒気が走る。
『倍化』『半減』『龍神』『大いなる7つの丘』……。俺が持っている力だってどれもこれもチート能力だよな……!?
何にでも例外はあるもんだ……! これもアザゼル先生から教わった事だ。
そしてよく見れば顎をぶん殴ったのに、ディオドラのダメージがもう回復している。
フェニックスの涙か……? いや、違う。
ヤツのいう神の権能ってヤツなのか!?
「『RE.JECT(神は再び却下する)』」
ヤツが宣言するように指を鳴らすとエナジーウィングは反射され、ドライグのドラゴン・ショットはあらぬ方向に全て逸れていき、勾玉に至っては地面に落下し、鉛のように動かなくなってしまう。
「うわあっ!?」
「イッセー! しっかり!!」
エナジーウィングの余波を喰らい、俺はふっ飛ばされてバランスを崩してしまうものの咄嗟にリアスが援護してくれた。
その間に俺は体勢を立て直し、ディオドラの様子を見る。
余裕ぶって両腕を組みながらニヤニヤと笑っている。まるで天地がひっくり返っても自分が負けるなどありえないといった感じだ。
「このヤロー!」
「おい! イッセー! 熱くなるな!」
アザゼル先生の警告を受けても俺は止まるわけにはいかない。イゼベル様がまさかの致命傷を食らってしまった。
俺のミスだ! すぐにでも治療しないと……!
突撃を敢行しようとした刹那、俺の目の前に壁が現れた!? よけられない……!!
いや、これは壁じゃねえ! 大地だ!!
ボゴオッ!! と轟音と共に俺の顔面が大地にめり込んでいってしまう。
な、なんだこりゃ!? いくら選択肢をある程度設定できるからってこんな選択肢があり得るのか!?
ま、まさか……!! ヤツは『選択肢それ自体を設定できる』んじゃないだろうか……!?
な、何だよそれ! インチキもいい所だ……! 勝てっこない……!?
『そうだ英雄、お前がイゼベルを殺した』
『お前のせいだ』
『罪を償え。俺達を解放しろ』
『覇竜よ、我々を受け入れろ』
『我々の力があれば何でもできる……! 因果律を歪める事は勿論、全てを消滅させる事も……』
「な……なんだ……!?」
突如頭の中に直接声が響き渡ってくる。それも複数人の声だ。
覇竜? 何だそれ? 良く解らないがそれを使えばイゼベル様の仇を討てるのか……?
なら……!! 俺の身体や心くらい……!!
「黙らんかあっ!! 貴様ら!!」
俺が覇竜とやらの誘惑に乗りかけたその時、アザゼル先生から治療を受けていたイゼベル様から激が飛び、俺ははっと気がついた。
「イッセー! イゼベルの言う通り!
責任を取るというのはヤケになって命を投げ出す事じゃない! 開き直って、何が何でもアイツの思い通りにならないって事よ!」
「ハハハ、言っている事がムチャクチャだねリアス」
ディオドラは顔を抑えて、ニヤけた後に髪をかき上げる仕草を見せていた。
が、主の命令ならヤケになっちゃダメだよな! 俺が無理をしてまで強くなっても悲しむ奴がいるかもしれない!
リアスや朱乃、アーシア、ゼノヴィア、小猫ちゃん、レイヴェル、それに親父やお袋や叔母さん達!
そうだ、俺には守りたい者たちが沢山いる! まだ死ぬ訳にはいかねえ!
俺は頭をブルブルと振ると、覇竜とかいう輩の声は聞こえなくなった。
「うむ……! それでよい!」
「よくねえよ。お前さんの傷がまるで塞がらんのだからな」
「あなた! まさかフェニックスの涙をケチっているんじゃないでしょうね」
「そこまで欲ボケも耄碌してもいねぇ。
俺の人工神器、高天原からパチった治療術、フェニックスの涙の欲張りセットだというのにな……。しかしこれは妙だぜ。
治る兆しがまるでないというか傷が塞がろうとしないというか……」
ニッ、と俺の様子に安堵したイゼベル様に対してアザゼル先生の表情は険しい。
すると、ディオドラのヤツはあろうことかテーブルを出現させて寛ぎだした。
「何のつもりだ!?」
「何のつもりだって? キミたちがイゼベルを癒そうとしているのを憐れんで手出しをしないでいるだけだよ?」
「ふざけないで! 遊んでいるつもり!」
「遊び? そうかもしれないね」
リアスの怒号に対してディオドラは涼しい顔だ。そしてヤツは自分の持っていたコップの中の飲み物をグイッと飲み干す。
「キミ達が無力だって示してやるのも紙である僕の慈悲であり、遊びとも言えるな」
「ふざけやがってこのクソガキ……!!
人の命や心を弄んで何が神だ!!
やるならひと思いにやれってんだ……!」
「イゼベル! しっかりして! 死なないで!」
アザゼル先生は今まで見せた事のないような激怒の形相を見せ、リアスは必死にイゼベル様に呼びかけている。
(で、どうする相棒? 盤面は俺達にとって大分手詰まりだ)
(……正直厳しいね。ここは一旦下がって態勢を立て直すべきかもしれない)
ドライグとザンリュウさんも珍しく弱気というか心が折れかけている。
だが、俺の中で何か引っかかる……!
さっきの覇竜がどうのこうのではなく、アザゼル先生の言葉だ。
やるならひと思いにやれ!
……そうだ。ヤツが未来を創造できるならさっきの誘惑に乗った俺を自爆させたり、
イゼベル様の呼吸を止めたっていい筈だ。
「おい、ディオドラ。なんでひと思いにやらないんだ?」
「だから言ったろう。悪しきドラゴンは記憶力も悪いのかな?
キミ達が無力だってのを示すためさ」
確かにそう言われれば納得するヤツの方が多数だろう。だが、他ならぬリアスの命令だ。コイツの思い通りになんてなってやらん。
「ウソだね。お前は直接ぶちのめしてケリをつけたいタイプだろ?
なんてったってお前って誰も信用してないもんな。
何でも俺が正しい。俺に従え。俺の都合に合わせろ。だから神様だなんて名乗れるんだ」
「黙れ」
「やだね。どーしても黙らせたいなら俺の言い分を認めろよ。それなら幾らでも黙ってやるよ?」
「黙れ……!」
「あれー? 普通に喋れるぞー?
オメーって自分が言う程万能の神様じゃねーんじゃねーの? それともアレか?
俺の言い分を認めたって事か?
いや〜、ヤルダなんたら様は慈悲深い事だねー!!」
「黙れと言ったぞ!! 兵藤一誠!!
いいだろう! 望み通りに殺してやる!!」
(死ね、とは言わなかったな相棒?)
(ははは! やっぱりドライグは最高の相棒だ!)
(僕は? あとイッセー君は言い分を認めろとはいったけど、死にたいとは言ってないよね)
(あ、すいません! 俺達は最高のチームっス)
ディオドラが苛立ち、声を荒げるのをみて俺達は確信していた。
コイツの能力は未来を創造する事じゃない。もっとガキくさくて、狭量で独り善がりな能力だって事を。
ディオドラが初めて自分から攻撃をしかけてきた。確かに威力もスピードも俺より遥かに上だ。けど、それだけの事だ。
バキィ! と足でカウンターをかます。
「幾ら俺の足が短いって言っても流石にお前の腕よりは長いぜ? あ、そうだ。
序にお前の最設定とやらで足伸ばしてくんない?」
俺の攻撃&口撃にディオドラは顎を抑えながら忌々しそうに睨みつけてくる。
そこには神の威厳も何もあったものじゃない。ただの捻くれ、承認欲求を拗らせた悪魔が一体いるばかりだ。
「何故だ!? 僕は絶対で正しいはずだ! なのにどうして! 認めない! 認めない!!
お前なんて認めない!!」
「別にお前に認めてもらわなくても俺にはリアスとイゼベル様がいる。何の問題もないけど?」
「貴様アァァ!!!
僕に従え! 崇めろ!! 称えろ!!
称賛しろ! 並ぶものなきディオドラ・ヤルダバオトの名を称えろ!!」
「まあ並ぶものはいねえわ。最低最悪って意味でな」
そして始まった打撃戦だが、想像よりも遥かに俺にとって有利だった。
教科書通りのハイキックに合わせて、アキレス腱へのトーキックが決まり。
ヤツのフックに対してつんのめっての頭突き。
更に魔力弾を撃ち込むべく手をかざしたタイミングで小指を掴んで圧し折ってやった。
「ぐわあああっ!? な、何故だ! 何故こうも不都合な偶然が……!? 何故、お前の反撃を却下できないんだ……!?」
「偶然? バカ言うなよ。
お前、鍛えてるのは認めるが稽古は何回やった? 100回か? 1000回か?
歴史ってのはな! 経験の積み重ねなんだよ頭でっかち!!
スケベな事ばかりしてこっぴどく振られたり! 騙されて1回殺されたり!
危うくリアスを焼き鳥野郎に奪われかけたり!
調子に乗ってアーシアに失望されかけたりして俺は強くなった!!
俺は俺の恥、失敗、挫折を却下したりしねえ! それが生きるって事だろうが!」
「こ、この僕に説教しようというのか!
このクソトカゲがっ!!」
「ああ、説教してやるよ! 神様ってのは神様に生まれるんじゃない!
神様って呼ばれるまで努力し続けるヤツがいつか神様になるんだ! それを覚えておけ!!」
ディオドラのパンチを避けながら俺は渾身のパンチを顔面にお見舞いしてやった。
ヤツの顔は俺との距離が近すぎて、もはや顔面がボコボコで見られたもんじゃない。しかし、それでもヤツは倒れない。意地だけで立っている状態だ。
「負けない……! 負けないぞ……!
よりにもよってお前なんかに負けるわけにはいかないんだ! 僕は神だ!! 唯一無二のディオドラ・ヤルダバオト様なんだ……!!」
「俺もリアスもアザゼル先生もお前の神様ごっこにつきあっている暇はない。
だからとっととネイちゃんとアーシアに謝った後に罪を償え!」
「ふふ……言ったな? 僕に償えと?
罪を償えと言ったな!!」
ディオドラが不気味な笑みを見せるとピシッ! ピシッ!! と次元に罅が入りだした!? な、なんだ!? 何が起こった?
「おっ! やっと傷が治り始めたぜ!
俺の治療術もなかなかのモンだな!」
「アザゼル。おどけてイッセーめの不安を減らそうという心がけは良いが、そうも言っておられぬ。ヤツは『RE.jECT』を解除して最後の大技を使おうというのであろう」
「ちょっとイゼベル! 顔色がまだ悪いわよ……!? 大丈夫なの!?」
「大丈夫ではないがそうも言っておられぬわ」
イゼベル様の傷が治ったとは言え彼女の言う通りだ。廃魔毀聖の霧を再び発動させて擬似的な無敵モードに突入するばかりでなくディオドラは血走った目でヤツは追い込まれたのか、俺の『聖と魔を統べし覇王』(トゥイン・ロード)をパクる様に光と闇の力を融合させた魔力球を増幅させてきやがった。
「神様がパクリかよ!?」
「違うね。これが僕の最後の権能。
『RE.GENERATE 』(神は再世する)だ。
僕を告発したサタン(悪しき者)を消し去り、新しく正しい世界を再構成する。
古き世の終わりに闇ありき。
新しき世の始まりに光ありき……」
な、なにー!? 俺が反論したからサタン扱いだと!! どんだけ自己中なんだコイツ! そしてヤツの膨らみきった承認欲求とプライドが自重で崩壊するかの様に交わりあった力がブラックホールを形成していく。神殿、床、壁、柱、次々と飲み込まれていく。
「全てを消し去り! 正しい世界を作り出す。僕が再び創世の神となろう。
サタンを倒して僕が偉大なる神として君臨するのだ……!!
愚かな神々に僕の尊厳と意志を認めさせるためにも、全ての宇宙の神々を統一し、僕が宇宙の王となり、全ての宇宙を平定するのだ!!!」
アザゼル先生は次元の裂け目を使って避難しようとし、俺は咄嗟にリアスを庇おうとするもどうやらもう遅いらしい。
ブラックホールに飲み込まれるのは時間の問題だ。そしてディオドラの顔は勝利を確信して薄ら笑いを浮かべていた。
「僕はこの廃魔貶聖の霧で異次元でも生き残る事はできるがお前たちはどうかな?」
「わ、わからん……!!」
「ハハハハハハ!! 正直に言う辺りが傑作だな!! 最高に笑える瞬間をありがとう!」
ここまでか……!? と、あきらめかけた時、魔法陣と共に誰かが現れた。
「ネイちゃん!?」
「……」
現れたのはネイというディオドラの元眷属だ。確かディオドラに助けられた恩があって眷属になったがそれはヤツのマッチポンプだった事実を知り、更に捨て駒にされて絶望していたんだっけな。
しかしそんなネイちゃんはイゼベル様のお力もあってかディオドラの前に堂々と立っている。
「そなた、死ぬ気か?」
リアスに支えられて立つイゼベル様の言葉にネイちゃんは無言で頷いた。
だ、ダメだ!! 折角助かった命だろ!?
辛い事、悲しいことばかりだった
けどこれから良い事があるはずだ!!
「ダメだ、そんなの認めない!
俺は認めないぞ!!」
「ありがとう兵藤一誠。その言葉だけで私はこの世に生まれた価値があったと思える」
けど、俺はどうしても納得がいかない……!! だがネイちゃんはディオドラのヤツを真っ直ぐと見据えた。
「ネイちゃん!!」
俺の制止にネイちゃんは振り返りもせず、歩いていく。そして、彼女はヤツに近づいていった。
ディオドラは心底バカにした様な表情でネイちゃんを見下す。
「今さら何の用かなネイ? 君達の犠牲のもとに僕は神に至ったことには感謝しているよ。
新たな創世がなされた際には君達の名は永遠に語り継がれていくというのに」
「お言葉ですが転生悪魔になる前の名はウェンディです」
「だから何だと言うんだ? 僕の眷属になる前の過去になんて興味はないよ」
なんという態度だ……!
コイツはネイちゃんの本当の名前すらまともに聞いていないのかよ!
「そうですね。あなたはそういう男だ。
故に……」
彼女が風を巻き起こすと廃魔貶聖の霧が晴れていく……!? あれは聖の力でも魔の力でもない……。彼女固有の能力だったって事なのか!?
「ぐぬっ……! 土壇場で裏切りにあうとは皮肉だな! だが、僕には
『RE.ject』がある。例えキミが何をしようとも僕には通じな……!」
「ええ、あなたの『RE.ject』の能力はあなたの性格そのものです。
狭量で独り善がり。思い込みが強い」
「だから何だというのだ!?」
「私は裏切ったのではありません。
契約の時の言葉……。
『貴方と共に栄え、貴方と共に滅ぶ』という契約を全うするだけです。
貴方と共に栄える事はできなかったけど、
貴方と共に滅ぶ事はできる」
悲壮だがどこか吹っ切れた様な笑みを浮かべながら彼女はディオドラをふわりと抱きしめた。
「ネイ……」
「貴方が求めていたのは自分が否定されない世界……。そうでしょう? なら、私は貴方を否定せずに貴方と共に殉じます」
いや、これでいいのか……!?
だ、だがしかし……!! ディオドラを止めようと動き出す俺をリアスは無言で手で制してきた。
「ディオドラ・グレモリー様……
いいえ、ディオドラ・ヤルダバオト様。
貴方には貴方を否定しない人が必要だったのですね……。私はそれに気づけませんでした。もし、私がもう少し早く気づけば……」
彼女はディオドラの耳元でそう呟いてから額にそっと口づけをした。
「何を……しているんだ……?」
「共に旅立つのです。これこそが私達の永遠です」
ふわり、と微笑んだネイちゃんにディオドラは困惑しているが、やがてブラックホールへと引き寄せられていく。
その間も彼女はディオドラを優しく抱きしめ続けていた。
「何故……」
「貴方を、愛しているから……」
ネイちゃんとディオドラの身体がやがてブラックホールの側に近寄り……2人を飲み込み……はしなかった。
「だけどね? 僕の方にも感情があってさ。
君が僕を愛していたって、僕が君を愛する理由も動機もないんだよ」
ザクッ!! とヤツの手刀がネイちゃんの心臓部を貫いた。
「!? ……どう……して……?」
「どうして? だって僕は神様だからさ」
酷薄な笑みを浮かべてディオドラは空き缶でも投げ捨てるマナーの悪い酔いどればりにネイちゃんをブラックホールへと投げ込んだ。
「兵藤一誠。君が言った事だろ?
恥、敗北、挫折を却下せずに受けいれろよ。ネイの尊い犠牲、いや、犬死もちゃんと受け入れて成長するがいいさ!!
ハハハハハハハハ!!」
「……そうだな」
自分でも驚く位、冷静だった。
よくもネイちゃんを! よくもよくも! とはならないっていうのは……俺ってヒドいヤツだったんだろうか。
(そうじゃないわ。イッセー。
今の貴方はネイという子の意思を尊重しているからよ。
彼女の愛情は通じなかったけれど、彼女は確かにディオドラを愛していたのだから。
然るに彼をご覧なさい。
貴方に馬鹿にされて、罵られて、
怒りをぶつけた結果があれよ)
(ああ……リアスの言う通りだ)
俺は目の前の光景を睨みつけていた。
あれこそがネイちゃんの犠牲を踏み躙った愚者の末路だ。
「ハハ……。ハハハハハ……!
どうだ兵藤一誠! 僕の勝ちだ!
僕は神に至ったぞ! 誰も僕を否定できない! 誰も僕を咎められない!
僕は自由なんだ!
ハハハハハ!!! ハハハハハ!!!」
「そうかい。だが俺達は消えちゃいないぞ? お前もだ。ブラックホールに飲み込まれず残ってる。
お前も俺と同じだ。
独り善がりな神様じゃない。
仲間が必要なんだ。お前はお前を肯定してくれる誰かを探していただけなんだ。
お前は一人で生きていけない。
お前はそれを理解しきれなかった。
だからお前は誰にも愛されない。
お前が愛するのはお前だけだからさ」
「そうかもなぁ!!
だが関係ない! 宇宙の中心に立てるのは所詮独り!! 神は一人! 神は我のみ!!」
もうヤルダバオトには誰の言葉も届いていない。届けない。自閉してしまっている。
「どうだろうな。宇宙の中心は一つだが……宇宙の光は全部星の煌めきだぜ」
「ほざけ!!」
ブラックホールとは言え、どこかに繋がっている。全てを飲み込むと言っても星系、銀河系レベルだろう。少なくとも俺達が存在できる範囲なら『大いなる七つの丘』の力が使える。
ブラックホールの裂け目、その全てに散らばった勾玉は星の光、その輝きは暗黒空間を照らす希望の光。
ブラックホールを修復するに至るが……
俺もコイツも消失したネイちゃんを再び顕現させる程全能じゃない。
いや、それでいいんだ……。ネイちゃんの死は無意味な犬死じゃないんだ。
「ば、バカな……!! 僕は神に至った筈なのに……!? な、何だ……!? か、身体が……!! 身体が崩れる……!?
こ、これも貴様の力だって言うのか!?」
「いいや? お前が再構成するとか言って放った力の副作用だ。お前の身体に完全に馴染んでいなかったんだろうよ」
「な、何だと……僕の理論は完璧だ!!
聖杯の力も取り込んだというのに……!
まさか……あの二人は僕をも実験台にしたというのか……!?」
悔しそうに顔を歪めるディオドラにアザゼル先生が説明する。
ディオドラはディオドラで既に身体が消えかけていた。
俺もコイツも同じなんだ……。
自分が正しいと自惚れて、思い上がって、
でもそれでいて認められたがってた。
ただ俺はラッキーにも正してくれる皆がいたってだけなんだ。俺はそれだけじゃ絶望していたかもしれない。
コイツの境遇だったらアーシアの様な善意を前にして『お前らは俺を認めろ』って喚き散らしていたかもしれないんだ。
いや……片瀬や村山にはそうしていたってけな。
「ま、待ってくれ……! 僕にはまだやるべき事がある……! こんなところで終わる訳にはいかないんだよ……!」
「ああ。終わらせてやらねえよ」
俺はほんの少し魔力をディオドラに分けてやった。
「イッセー。貴方はそれでいいの?」
「いいっスよ。このまま歪んだ根性のままで死なれたら、ネイちゃんが報われませんから」
「……そうね」
ディオドラのやった事を許すわけにはいかない。コイツには神としてでなく罪人として罪を償わせて、ネイちゃんら眷属の墓で
自分が間違っていたって認めて欲しいんだ。
「ふふふ。それでこそ余が見込んだ男よイッセー」
「ま、待ちなさい! イッセーは私の眷属なのを忘れないで頂戴!」
「両手に花か? いや、この場合は両手にイバラってヤツかもな? イッセー。
ま、このクソガキの保存に関しては俺に任せろよ」
首だけになったディオドラの髪をビニール袋でも掴む様に持ち上げるとアザゼル先生は一足先にフィールドの外へと向かった。
「これで良かったンすよね……」
「さての。良かったか良くなかったかにするのはこれからのお主ら次第じゃ」
「……そう……スよね」
「そうよ。さ、私達も戻りましょう。
クルゼレイやシャルバはタンニーンとセラフォルー様が成敗したという話だし……」
あ、あの二人が相手か……。
敵ながら御愁傷様だぜ。合掌。
「いや。まだもう1人挨拶したいヤツがいそうじゃの? ほれ、出て来ぬか」
「……お前、相変わらず、姦しい」
「「だ、誰だ(よ)!?」」
「◯の胎なれば姦しいのは当たり前じゃ」
あらぬ所から声が聞こえたがリアスの様子幻聴ではない様だ。 受けてのイゼベル様はあらぬ所を見ながらフン、と鼻を鳴らしていた。
原作キャラはなるべく生かすがオリキャラは殺す。
仕方ないだろ。