舞台は学園都市キヴォトス。
その世界に転移してきた『ブルーアーカイブ』を知る先生(20歳)はいつも通りの日常を送っていたのだが、当番だったサヤのイタズラでおかしな事態へと発展してしまう……
※今回は若干ストーリー性もあります。
※エロ無し。ただし、あとがきにおまけあり。
【先生発情シリーズ】プロローグ~サヤとかいうコイツがいればどうにでもなりそうな枠の生徒~(エロ無し)
キヴォトス。
それは世界のどこかにある学園都市。
少女たちが時に悩み、時に喜び、また時には自ら銃を持って敵へ立ち向かう。
そんな青春の物語。
その物語の中で
その物語の名を
物語の……この透き通るような世界の名は――
『ブルーアーカイブ』
朝。
カタカタと、キーボードを打つ音だけが聞こえるのは連邦捜査部シャーレの活動場所である建物の中にある一室。
その部屋で目の前のパソコンとにらめっこしていた若い人間の男性は、ようやく仕事が一区切りしたことに安堵して体を伸ばす。
「くぅ、ふぃ~~~…………アー、やっと終わった。眠い」
大きく欠伸をしたのは俗に“シャーレの先生”と呼ばれる人物だった。
黒髪の若い人間の男性。特徴と言えばそれぐらいなのだが、
ふと、生徒からの貰い物である男性向け手鏡を見れば、ところどころ髪の毛が跳ねている眠たげな表情の大人――否、
(今更だけど……空いた時間に調べた限りじゃこの世界、オレ以外に種族:人間の男がいないんだよなぁ。ホント不思議だ)
……“男”はいるのだ。何故か動物やロボットなだけで。
先生としてキヴォトスへとやって来てから1年も経っていないのに4、5年は過ぎたのでは?と思うほどの濃密な日々が過ぎたが、未だに同族の男に会わない。学園都市というだけあって少女は数え切れないほどいるのに、少年の姿はどこにもない。
……その度に「花の女子高生が銃を持ち歩いているのが当たり前な時点で大丈夫じゃないか」という結論に毎回至るのだが。
「オレがこの世界にやって来て随分経ったけど、ジャンルとしては異世界転移でいいのか? 神様に出会った覚えはないし、かといって死んだ記憶もないんだけど……」
先生は自分の今いる世界がアプリゲーム『ブルーアーカイブ』の世界であることを認識していた。
本当に突然だった。
目が覚めたら妙に覚えのある世界。
連邦生徒会長代理として会いに来たリンを見た時など挙動不審になったものである。予想よりも自分が若かったこともあって「この方で本当に大丈夫なのでしょうか?」と怪訝な顔をされたのを今でも覚えている。
それから、とてもではないが一言で表わせない程たくさんの苦労があった。
『ブルーアーカイブ』は遊んでいたから必要となる知識はあったのだが、覚えているのが大まかな部分だけで細かいところが不自然に抜け落ちていたため、命の掛かった各イベントは死に物狂いで挑んだのだ。少し前の鋼鉄大陸での一件など、自分が誤った選択をしたせいでBADENDになってしまったのではと本気で焦っていた。
だが、そんなイベントとは別の意味で苦労していることがある。
それがゲーム内で魅力的だったキャラクター――つまりは生徒との関係だ。
“大人として生徒を導く”ことは苦でない。
そもそもキヴォトスへやって来る前から『学校の先生』になるのが夢だったのだ。だからこの状況は一足早く夢が叶ったと言える。
問題なのは、夢を叶えるために学んでいる最中だったことであり――
「20歳になったばかりの若造には色んな意味で刺激が強いんだよなぁ」
キヴォトスに来たのが成人式を終えてすぐのことで、現役の大学生であるにも関わらず“大人としての責任”を果たさなければいけないことであった。
「早いんだよ。まだまだ心構えができていないんだよ。今はいいけど、最初の方はちょっと吐きそうだったよ……」
何気に世界観を知っているからこそ焦燥した。
日常的に銃弾が飛び交う世界で生身のままがんばらなくてはいけないのだ。なんて刺激的な日常なのだろうか。
さらに、細かい部分は覚えていないのに選択肢を間違えたら世界滅亡&生徒が不幸になるなど精神的に溜まったものではない。おかげでチナツやミネなど医療関係の生徒に世話になった時期もある。胃薬を飲み過ぎたことがバレた際の、ミネによる救護(物理)は今となっては良い思い出として先生の心に(ちょっとだけトラウマと共に)残っている。
さらにさらに、別の意味で刺激的なのが……
「はぁ~……生徒が魅力的すぎて辛い」
先生は男としてまだまだ元気一杯の20歳。
関わる生徒は15~18歳の美少女ばかり。年齢が近いからか距離感が近い生徒も多く、しかも色々とガードが緩いおまけ付き。
当然、健全な反応として性欲が溜まる。以前の世界で世話になったエロサイトなども存在せず、対象は自然と欲情してしまった生徒となるわけだが……罪悪感が凄い。
キヴォトスにエロ本もエロサイトも無いのが悪いのだ。
正確にはエロ系自体はあるがそこまで踏み込んだものでなかったり、人間以外同士のものだったりと日本人向きではないのである。
以前、レッドウィンターの同人イベントでそれっぽいのがないかと探してみたが見つからず、いっそのことメルにR18同人誌でも描いてもらおうかなどとアホな考えまで浮かぶようになってしまった。
「いかん、寝不足だからか変なこと考えてる。コーヒー飲もう」
喉が渇いていたこともあり、ボ~ッとした状態で冷蔵庫にしまってあった新発売のボトルコーヒーを飲む。
(……いっそのこと、
恥ずかしいが背に腹はかえられない。
帰ってしまう前に相談しようと先生が今日の予定を立てていれば、件の人物が大欠伸をしながら部屋へ入ってきた。
「ふぁ~~~あぁぁぁ……あっ、おはようなのだ先生!」
「おはようサヤ。ゴメンね、昨日は夜遅くまで手伝ってもらって」
「構わないのだ。それに何か急ぎの報告書とかあったりしたんだろ? UFOだっけ? ぼく様はオカルトよりも霊薬作りとチーズにしか興味ないけど」
「ははは……」
山海経の錬丹術研究会に所属する2年生。
天才発明家ではあるが、すぐ他人を実験体にするイタズラ好きの面もあって先生も幾度となく被害に遭っている。
何故早朝のシャーレにサヤがいるのか?
それはとある件で早急に片付けなければいけない仕事が入り、溜まってた先生のするはずだった仕事を夜遅くまで代わりにしてもらっていたからだ。
(まさか、飛行しているマルクトがUFOと間違えられて色んな地域で目撃情報が上がっていただなんて……)
鋼鉄大陸での一件からまださほど時間は経っていない。
アイン、ソフ、オウルの3人を失い、自分1人で一度世界を見て回ることに決めたマルクトの意見は尊重しているし、素晴らしいものだと思っている。
だが、あの特徴的な大きな帽子を被ったマルクトが長距離移動のために飛行している姿が、新発見のUFOとしてオカルト界隈で有名になり始めていたなど予想外だった。
つい先日の、ツチノコ探しで新たに知り合ったツバサから話が聞けたのは幸いだ。
ちょうどヒマリたちもこの件をネット情報で知ったところだったらしく、情報統制に動いてくれた。マルクトには余計な騒ぎに巻き込まれず、世界を見てほしい。世界を見て、自分を見つめ直して、満足したその時は――生徒として迎え、先生として導く。
「本当ごめんね。1日でも早く片付けたかったからってサヤに無理言ったのは事実だし、このあと時間があるならお昼にサヤの好きなものを奢るよ」
「本当か!? 実はD.U.でチーズ専門店ができたと噂で聞いていたのだ! 先生がいいなら一緒に食べに行こうよ!」
「もちろん」
「ふっふー♪ がんばった甲斐があるのだ。
「待って」
ストップモーションになる先生。
今、聞き捨てならないことをサヤは言ってなかっただろうか?
「実験って……何の話……?」
「先生はさっきそのペットボトルの飲み物を飲んだよね?」
「うん。新発売のコーヒーらしくて、独特の苦みが――ぁ」
「実は先生の目を盗んで、こっそり中にぼく様特性新調合の不老不死の霊薬を入れておいたのだ!」
「やっぱり!?」
先生の口元が引きつる。
思い出すのはサヤがシャーレ所属となって間もない頃。山海経で散々飲まされた不老不死の霊薬()の数々。
黄金に輝いたり、謎の毛が生えてきたり、幼児化したりetc.……
「そんな騙すようなことしたらダメだって言ったでしょ!」
「だって最近は先生もぼく様の霊薬を中々飲んでくれないじゃん?」
「おかしな効果がいっぱいだからね! むしろ毎回最後には何だかんだ言って飲む私を褒めてほしいかな!?」
サヤも先生にとっては大事な生徒だ。
困ったことも多いが、だからといってサヤの趣味を否定しない。できるだけ付き合ってあげるようにはしている。が、それはそれ。毎回変な効果が体に表れるのは勘弁してほしい。
ふと、サヤの服から顔を覗かせたネズ助と目が合った。
申し訳なさそうな表情をされた。
先生は遠い目になる。――そうか、キミは6年もサヤの
「それで? 今回はどんな効果が出るの?」
「今回の霊薬は貴重な材料を使っている上に、カイ先輩が残してた資料からヒントを得て作ったものなのだ。ぼく様の計算によれば、先生の中で今まさに生命力がみなぎってきているはずだよ!」
「生命力……言われてみれば、下腹部が熱を持っているような……?」
「おぉ! お腹に熱が籠もっているということは実験は成功かも! おへその辺りに“気”を生み出す場所があるとされていて――」
「いや、おへそというか……もっと下が、何か、その…………」
「ん? せ、先生?」
ここで先生、本格的に違和感を感じ始める。
確かに熱を下腹部に感じているのだが、その場所はおへそというより股間に近くて……というか、股間を中心に体全体も熱くなってきて……
直後、先生の体が床に倒れる。
「先生!? 一体どうしたのだ!?」
「はぁー……! はぁー……!! !?!????」
サヤが何かを言っているが、先生はそれどころではなかった。
思い出すのは高校生時代、ネットでたまたま好みドンピシャのエロマンガを見つけた時。直球で言えば非常にムラムラしていた際の何十倍ものムラムラに襲われていた。
(ちょ……これ、マズ……!)
今も、先生を心配して肩を揺すっているサヤを性的に見てしまっていた。
それこそ、服をひっぺかえして胸や股を見たいなどと思ってしまうほど、とにかくエロいことをサヤにしたいと妄想をしてしまうほどに。
性欲魔神の名が相応しいほど、先生は異常な性的興奮に襲われていた!
「何で!? 解毒薬が効果ない! ち、違うのだ。ぼく様は先生をこんなに苦しめるつもりは……誰か! 誰かー!!」
サヤに何かを飲まされたが熱が少し引いただけでムラムラは収まらず、「サヤめ。ロリ体系でありながらチャイナ服を着て健康的な脚を出して……誘っているのか?」――などとバカな考えが浮かび出した自分を理性で押さえつけるのが限界だった。
* * * * * * * * *
――それから2時間後。
シャーレの部屋は何とも言えない雰囲気が漂っていた。
サヤが助けを求めた結果、あれよあれよという間に自体が大きくなり、比較的近くに来ていた面々が集結したのだ。
「それで? 薬物取り締まり禁止法に基づいてコイツを連行すればいいのか? 悪意が無いのは理解したが、それはそれ。先生をこのようにした責任は取ってもらうぞ」
緊急の連絡を受け、容疑者確保に出向いた
「ううぅ……先生ごめんなさい。ぼく……ぼく……」
カンナに首根っこを掴まれたうえに手錠を掛けられ、本気で泣いているサヤ。
「ん。まさか先生がこんなことになっているなんて。絶好のチャ――んんッ」
趣味のライディング中に話を聞いて立ち寄ったらしいが、不穏なことを言い掛けている
『一先ずミレニアムにある最新医療施設をいつでも使えるようにはしておいたわ。必要ならこちらから迎えに行くこともできるのだけど』
何かあったとき用にとシャーレの倉庫に置いてあったドローンを操って、立体映像越しに先生の様子を伺う
「どうチナツ? 先生の容体は?」
連絡を受けてゲヘナから超スピードでかっ飛んできた不安な表情の
「何とも……霊薬の具体的な内容が分からないと、お薬の投与も危なくて……」
ヒナに連れてこられ髪がボサボサになってしまっているにも関わらず、どうにか治療の術はないかと問診している
「先生は……その、つまり、そういう状態ってことだよね……?」
顔を赤くして隣にいる人物と先生を交互に忙しなく見ている、私用で近くのカフェにいた
「そうだよ~。割と大事みたいだから今は茶化せないけど……事態が落着いたら新作のネタにしたいぐらいには興味深いことになってるじゃん。あぁ! 創作意欲が沸くなぁ!」
ミカのためだけの同人誌(2冊目)の内容の擦り合わせを直接顔を合わせて行っていた
「急いで来てみたものの……この状況、どうすれば良いのでしょうか? はぁ……」
何かあってからでは遅いとヘリを使ってシャーレまで来た、疲れた表情の
――そして、
「はぁはぁ…泣かないで、サヤ。ふぅ~…今回はちょっと失敗しただけ。わざとじゃ無いって…ぅぁ…分かっているから。だからカンナ、一先ず手錠だけは外してあげて?」
異常なムラムラに苦しみ、これ以上女性比率が上がったら絶対に抑え切れないからとアイマスクを装着し、股間部分をクッションやタオルで覆い隠しているシャーレの先生。
以上が現在シャーレにいるメンバーである。
「状況を整理しましょう」
先程到着して聞き出せた現在の先生が置かれている状況を、言葉にすることでどうにか理解しようとしたリンが口を開く。
「まず、先日先生は急ぎの要件があったことでそちらを優先。当日当番だった薬子サヤさんは快く仕事を受け持ったものの、どちらも業務が多かったため夜も遅い時間に。サヤさんはその日シャーレに泊まり込み、先生は朝早くに起きて残っていた業務を何とか終わらせた。……ここまでは問題ありません」
「……」
「問題となったのは本日午前、今から約2時間前。先生が買ったペットボトル飲料にサヤさんが無断で、非公認且つ未検証の薬品を混入させていたことが発覚。飲料水がコーヒーだったこともあって先生は薬特有の苦みに気付かず、全部を飲み干した。間違えありませんか?」
「ずずっ……は、い……間違いないのだ……」
「リンちゃん、もう少しだけ言い方をマイルドに……」
「先生は黙ってください。あと、誰がリンちゃんです……。そして……えぇ、はい。……不老不死を目指して生命力を活性化させる霊薬とやらの効能で――先生の性欲が爆発的に増加。現在、女性を見るだけでどうにかなりそうだと視界を遮ることで悪化を防いでいますが、根本の解決策にはならず、サヤさんが事前に用意していた解毒薬も効果が薄い……と。そういうことですね?」
「……恥ずかしながら」
顔から火が出そうになりながら肯定する先生。
これが医療関係者だけの空間ならともかく、自分を心配して駆けつけた生徒たちにまで聞かれることの恥ずかしさといったら……
「はぁ~~~、久々に頭痛がします。……サヤさん、先生に飲ませた解毒薬は本当に効果があるものだったのでしょうか? 何か別の解毒薬と間違えてたりなどは……」
「グスッ……ぼく、様は……効果の強い薬を飲ませる時は必ず解毒薬もセットで作るようにしているのだ。イタズラ程度の効果しかない薬は1日ぐらいで元に戻るから作らないけど、若返り薬のような人体に大きな影響のある霊薬クラスは必ず解毒薬も用意してからにしている。本当だよ?」
「解毒薬も……んっ、は~~……全く効果がないわけじゃなかったよ。耐えられないほどの熱は引いたし」
「では、今の先生は非常にムラムラしているとのことですが……具体的にどんな状態なのでしょうか? 異性に対しての興奮度が高いというのは、まぁ……理解できたのですが。先生、サヤさん、隠しても状況は好転しないので教えてください」
「「うううぅ……」」
「先生が憐れだ」
「わ~お……連邦生徒会長代理さんって、ひどいなー///」
「ん。新手の羞恥プレイ?」
「で、ですが、患者と薬の制作者からの具体的な報告は重要でして……」
「チナツ? どうして顔を赤らめているのに興味津々の目をしているの……?」
「いやー、これをネタにするのはさすがに可哀想だよね~」
『何をそんなに恥ずかしがっているの? 2人からの具体的な説明は、先生を治療するに当たってとても合理的よ?』
「そう、だね……そのムラムラする感情が通常の何倍もあって、女の子を見るだけで余計なことまで考えちゃうんだ。こうやって視界を遮っていても……エッチな妄想をずっとしてしまっていて、辛い……です。はい」
「先生からは言いにくいだろうからぼく様が言うんだけど……常に性的興奮状態にあるせいで、先生の先生が……その、常時臨戦状態というか、お見せできない状態なのだ」
羞恥心を堪えながら言った先生たちの告白を聞き――
『なるほど。アイマスクはともかく、どうしてクッションやタオルを置いているのかと思ったら……体調異常とエッチな妄想で男性器が勃起したままなのを見られたくなかったからなのね』
「「「「「!!!??」」」」」
「リオーーーーー!!」
効率を重視し、空気が読めないことに定評があるリオ。先生とサヤがどうにか濁した言葉を直球で言ってしまう。
これには真剣な表情だったカンナやヒナも顔を赤らめ、他の面々と一緒に無意識に先生が隠しているであろう股間に視線が吸い寄せられ……
「………………リオ」
『何?』
「……あとでユウカやヒマリに報告するから、反省してね」
『ちょ――!?』
調月リオ、後にユウカとヒマリの説教コース3時間が決定した瞬間であった。
「あ~~、ちょっといいかな先生?」
「メル?」
何か言いたそうに手を上げたのはメル。
様々な本を描くに当たって必然的に
「もうそっちの、ミレニアムの生徒会長さん(?)が空気壊したんで私もぶっちゃけちゃうんだけど……一先ずの応急処置でさ、自家発電でスッキリするまで抜いてきたらどう? 終わるまで私たちも建物の外に出るしさ~、落着いたらモモトークとかで連絡して、改めて話し合いした方がこの場にいるみんなが冷静になるためにもいいんじゃ~ってね?」
ようは1人で自慰行為し、先生から賢者に転職すれば?という提案。
内容はアレだったが、羞恥心と興奮度MAXな先生とセンシティブな話題にピンク色の空気を出し始めた一部生徒を一旦冷静にさせた方が良いという、マジメに考えての案だった。
が、
「…………もう、した」
「へ? ぁ、そうなの?」
「だけど……上手く、いかなかったんだ」
「あ~っと……もしかして、容量が無限大になってた?」
「何というか、その、とにかく……ダメだったんだ」
「分かった分かった。もうそれ以上言わなくていいよ~。この案がダメだったってことさえ分かれば問題ないしね。いやでも、どうしたらいいかなこれ?」
サヤの薬で体に異常が出てすぐ、先生はトイレに駆け込み出すもの出してスッキリしようとはしたのだ。しかし上下にシコってもイマイチ快感が鈍く、禁断である生徒のエロい姿を全面解禁の妄想でも射精に至らなかった。
どうすることもできず、解毒薬の効き目が薄かったことから明日までに治るのかも分からず、せっかく外してもらった手錠をサヤが再び自分で付けようとしたその時、
――~♪ ~~♪ ~♪
先生のスマホから着信音がなった。
「ゴメン。誰か代わりに出てくれる?」
「ん。じゃあ私が……誰だろ? むぅ、名字が読めない……」
視界を遮っているせいでスマホの操作ができない先生の代わりにシロコが操作し、スピーカーモードになったスマホから知っている人物の声が聞こえてきた。
『先生! 大丈夫ですの~~~!?』
「この声……ユカリ?」
『はい! 先生がぴんちということでユカリ、電話越しに参上ですの~!』
声の主は百鬼夜行の百花繚乱紛争調停委員会所属の1年生
「え? 何でユカリが……?」
『何を言っているんですの? 身共のももとーくに、助けを求める連絡が入っていましたのですけど……』
「……まさか」
先生はすぐユカリに連絡した存在に当たりを付ける。
その2人は自身の所有する『シッテムの箱』に暮らす、頼れるOSたち。
『えっへん! 先生のサポートとしてこれぐらいは当然です!』
『正確には勘解由小路ユカリ本人ではなく、その関係者へ連絡を取れるようにしてほしいと先生のモモトークから連絡を入れました』
(関係者?)
『それではお電話変わりますので、何かあったらまた身共を頼ってくださいまし~』
「変わるって……誰に……」
『……ククッ、私だよ先生。声のみで失礼するよ』
「!? もしかして……カっ――リクなの?」
『久しいねぇ。どうやら可愛い後輩さんがやらかしたみたいで……。安心したまえ。霊薬の知識は豊富だから力になれるはずだよ』
ユカリと代わるように電話に出たのは、かつて山海経で事件を起こし、その後端正局へ戻っていったと思いきや百鬼夜行で再び会うこととなった七囚人の1人、申谷カイであった。
少し前に起こった百鬼夜行内での出来事の後に先生と再会し、「また脱走したの?」などの言いたいことを飲み込んで、変わろうとし出しているカイを応援することにしたのだ。
「失礼。ヴァルキューレの公安局所属の局長、尾刃カンナだ。先生の力になるというが……本当か? どうにも貴様の声に聞き覚えがあるのだが……」
『公安の誇る「狂犬」に警戒されるなんて……“光栄”と言うべきかな?』
「大丈夫だよカンナ。電話の向こうにいるリクは……信用できる」
「……はぁ、分かりました。ここで聞いたことは忘れることにしますよ」
『……あの「狂犬」が丸くなったものだねぇ。これも先生の存在あってこそか……気になるが、話が脱線しそうだし次の機会に取っておこうか。ククッ、では本題に入ろう。――サヤ』
「うぇっ!? カ、カ、カイ先p――」
『おっと勘違いしないでくれ。私は勘解由小路家の客人で、流れの医者をしているリクというものだ……いいね?』
「わ、分かったのだ」
『大まかなことは別途贈られてきたメールの内容を読んで知っているが、改めてサヤの口から話してもらうよ。霊薬に使った材料・調合方法・使用法――余すところなく全部だ』
「は、はい!」
そこから……素人には全く理解できない会話が10分以上続いた。
先生は溢れ出る妄想や情欲を抑えるのに集中してただけだが、他の生徒たちは少しでも理解しようとして、しかし余りにも専門的過ぎたために途中で思考を放棄する。
そも、2年生でありながら錬丹術研究会の現会長を任されるだけあってサヤは誇張もなく天才である。素人にも分かるような説明など最初から2人の間にはない。
『――なるほどなるほど。……やってくれたねサヤ。今度先生に会うことになったら後輩さんの代わりに詫びなければならないよ』
「うぐっ!」
「それで……リクさん、でしたか? 何か分かったことがあれば、先生や私たちにも理解できる言葉で教えてほしいのですが」
『では専門用語は抜きにして非常に分かりやすく、1つずつ丁寧に教えてあげよう連邦生徒会長代理。そうさね……先生の立場からすると、かなり困った事態になってしまったと推測できるからよく聞いてくれ』
「もうすでに困ってるんだけど……」
『そもそも、だ。今回サヤの作った霊薬は普通に調合した結果なら、一時的に活力がみなぎる程度のものだ。性欲にも影響は出るだろうが意識するほどじゃない。副作用で目がギンギンになって眠れなくなったりすることもあるが、解毒薬を飲めば治まる程度だよ』
「じゃあ、どうして」
『主な原因は2つ。まず使用方法がマズかったねぇ。調合に使った材料のいくつかはコーヒーに含まれているカフェインと反応してしまうものだ。これによって効果が乱れたうえに効能が過剰になったと考えられる。霊薬は水以外のものと混ぜないという鉄則を忘れたのかサヤ? これは時間経過じゃ元に戻らないよ?』
「すみませんでしたぁ……」
「じゃあ私、明日以降もこの状態ってこと!?」
『2つ目の原因は……先生側に問題がある』
「私?」
『あくまで知識とこれまでの経験から導き出された説だがね、先の状態になった霊薬を摂取した時、先生の最も我慢している要素が霊薬によって過剰反応を引き起したと考えられる』
「「「「「つまり……」」」」」
『先生……元から性欲は強かったけどずっと我慢してたクチだろ? 身も蓋も無い言い方をすれば、先生の“異性と性的なことがしたい”という隠れた欲望が爆発し、発情という形で脳と体に影響が出たというわけさ』
「がはっっっ!!」
先生、撃沈。
余りにもあんまりな事実を指摘され、座ってた椅子から転がり落ちる。
「ああぁっ!? 先生が死んだ! この人でなし!」
『ここで誤魔化しても双方のためにはならないだろ? 予想外のことで不利益を被った際はありのままの事実を共有するのが大事だよ』
先生の内心を察したメルがテンプレのセリフを吐くが、リクはどこ吹く風。
カンナは目元を手で覆い天を仰いだ。
リオは余計なことを言わぬようにと口を閉ざす。
サヤは改めて先生に向かって土下座する。
リンは眼鏡を外して目頭を押える。
残りのシロコ、ヒナ、チナツ、ミカの4人は――
「「「「………………」」」」
顔を赤らめて、または鼻息を荒げて、先生を見ながら何やら思案顔。一体何を考えているのか……
「ぐふ、頼むリク。治す方法があるなら――」
『本来なら何故私が――というのだがね? 先生とは今後も仲良くしたいし、
「ありが――1年後?」
『解毒薬にはサヤが霊薬の調合に使用した貴重な材料も必要なんだが……1年の限られた期間にしか採取できず、長期保管もできないから予備が無いのだよ。だから、どんなに早くても調合できるのは1年先だ』
「そんなに待てないって! ちょ、本当に困る!
「ん。久しぶりに先生の『オレ』って一人称を聞いた」
「普段は『私』って使っていますけど、余裕がない状況だと出てしまうことがあるんですよね……」
「大人として生徒の模範であろうとしているのよ。尊敬するわ」
「大人っていっても私たちと年も近いんだから、無理に変えなくてもいいと思うけどな~。『オレ』って言っている時の先生は先生で格好いいじゃんね☆」
『根本の治療は無理だが、一時的に症状を抑えることは可能だよ』
「本当!?」
『何、出すものを出してスッキリすればいいのさ。先生の様子を聞くに相当溜まっているんじゃないのかい? 1度出せばしばらくは日常生活を送るぐらいはできるよ。とは言っても、日常生活に支障がないだけで少しでも先生がムラムラしたら突発的にその状態になってしまうから、都度欲望を吐き出さなければならないがねぇ?』
「最後の方、絶対ニヤニヤしてるでしょ? とはいえ……自分でしても、上手くいかなくて」
『解決方法自体は簡単だよ? 自家発電が上手くいかないのは、爆発してバグった欲望が“異性との性行為”を望んでいるから。つまり、その通りなら問題なくスッキリできる』
「…………へ? あの、それって……つまり……」
『先生を慕う生徒は多いんだろ? 誰でもいいから抱けばいいのだよ』