先生はサヤの薬によって発情。最も辛い現状を解決するためには生徒を抱かなければならないことが判明し、混乱に陥る生徒たち。
その翌日、慈愛の怪盗アキラからの犯行予告がキヴォトス全土に贈られる。
深夜、発情のせいで苦しむ先生の元へアキラが……
大混乱。
今現在のシャーレはその一言であった。
先生は本気で頭が痛くなって呻き出す。
「ホント~~~~~っっに、ゴメンなのだああああああああああああああっ!! こ、こうなったら、ぼく様が責任を持って――!」
「泣くな。そして服を脱ぎ出すな。ええいっ! 手錠どころかロープで縛るぞ! 落ち着け犯人! あぁもう! これでは――」
『私でも分かるわ。――キヴォトスに未曾有の危機が訪れようとしている』
「未曾有の危機……で済めばまだマシってこともあるかもよ?」
「んっっ!! 先生を……食べる(意味深)!! アビドスのみんなと一緒に、既成事実をっ!!」
「そんなのダメーーーッ!! や、やだよぉ……先生が、他の女の子と……? ア、アハハハハハ! 無理☆無理! そんなの耐えられない……。私、ね? 先生だったら……いいよ? だから、だから――!」
「み、みんな、落着いて(チラッ)? 突然のことで混乱してるのは分かるけど(チラッ)、今、1番辛いのは先生のはずだから(チラッ)……。抱く……とか(チラッ)、そういうのは(チラッ)、本人の前で(チラッ)、したらいけないというか(チラッ、チラッ)」
「えぇ、その通りです委員長。これはとても繊細且つ複雑な問題です。先程のリクさんの話が事実とすれば、先生にはどなたかと……か、体の関係を持ってもらわなければずっとこのままの状態というわけです。それも一度きりでいいのでなく、定期的に性欲を発散させなければならず、その場合たった1人にその役目を負わせるのはお仕事の忙しい先生にとって現実的ではありませんので、各主要学園に1人か、2人……いえ、3大校ほどの規模ならそれ以上に欲しいところなので、要らぬ争いが勃発する可能性も視野に協議する必要が……ぁ、それだと先生と関係を持つ人同士で……? いえ、忘れてくださいというか忘れたいのですが、しかし実際にそうなった場合、その人数の多さが政治的な手札になる場合もありますので、今のうちに対策を考案しながら先生と関係を持ってもいいという生徒のリストアップも進めなければなりませんし、でも他の方々の示しになるためには風紀委員などといった有名な組織の幹部が最初のお相手に相応しい可能性もあり、先生の体調の変化にいち早く気づける者が望ましく――」
「…………頭痛が痛い、なんて言いたい気分です」
「……ゴメンね、リンちゃん」
「だから、リンちゃんでは――はぁ……やめましょう。いつもであればもう少し無駄話にも付き合いますが……本当に頭痛が酷いんです」
「私も……はぅ……今日は余裕がないかな……」
『ククッ、はははっ。予想以上に混乱が大きいようだねぇ♪』
「笑い事ではありませんよリクさん。……それで? 今の話は本当なのですか? さすがにウソでしたと言うなら怒りますよ」
『先程も言った通り、あくまで私の持つ経験則と知識に基づいた結論だが大凡は当たっているはずだよ。先生は現在、相当苦しんでいるんじゃないか? 悪いことは言わないから今日の内に1人でも相手を決めて発散した方がいい。私の予想だとその状態で我慢できるのは2、3日が限界だ。それ以降は……どうなるか分からない。もしかしたら、先生の体や心が耐えきれなくなって――なんて最悪も可能性として考えられる』
「……それでも、私は先生だ。生徒とそういう関係になるべきじゃ……」
『ふぅん? 意地悪のつもりで言うわけではないけど、今なら薬のせいという大義名分は通るよ? 例えば――』
「大人として……大義名分を使ってしまったら……生徒を導く資格を失ってしまいそうなんだ。特に“目的のためには仕方なかった”なんて言葉を……リクの前で言いたくない」
『――!?』
その言葉はリク――カイにとって非常に重かった。
かつて己の目的のために山海経全体を巻き込んだ悪事を起こしたカイには、そんなカイも“生徒”だと言ってのけた先生のその言葉は軽く受け流していいものではなかったのだ。
『ククッ、クククッ……! 本当に先生は面白いよ。常にその覚悟を持って生徒と接していたのなら、乙女が恋い焦がれるのも納得するというものだ。あぁ、今になって退学されてしまったことを後悔しだしている。全く、先生は罪な人だ♪』
「えっと……」
『とはいえ……先生の容体が望ましくないことは事実だよ。今回ばかりは我慢どうこうで解決する問題ではない。…………七神リン』
「はい。何でしょう?」
『明後日の正午までだ』
「――っ、それは……」
『それが霊薬に詳しい流れの医者として許可できる先生のタイムリミットだよ。最低でも明後日の朝までには……先生と性行為してもいい生徒を見繕え。そして、すぐにさせろ。でなければ、先生の身は危険となる。そのようなことは許可できない』
「ちょっとリk――」
『本当に今の先生は危険なんだ。これでもかなり譲歩しているのを理解して欲しい。恥ずかしいとか大人の責任がとか言っている場合ではないのさ。責任なんてのは目先の危機が終わってからその生徒にしてあげればいい。この件に関して私は全面的に先生の味方だ。後から文句を言ってきたり邪魔する生徒がいたら……私はソイツを絶対に許さないよ』
「………………」
『あの時、“君自身を諦めないでほしい”と私に言ったね? 今、私は諦めないための行動をしている最中で、その結果をまだ先生には見せていないのだよ。私に色んな期待をさせた“責任”はとってもらわないと困る』
「……考えさせてくれ。今はオレも、いっぱいいっぱいなんだ」
『その言葉が聞けただけで良しとしよう。……七神リン』
「…………」
『準備だけは怠るなよ』
「肝に銘じます」
『サヤ、聞こえるか?』
「……はい、なのだ」
『恐らく先生に抱かれても良いという人間は複数いるはずだが、ややこしい問題が発生して間に合わなかったなんてことだけはあってはならない。……いよいよとなったらキミが体を差し出せ。それがサヤ、霊薬を飲ませたキミの責任の取り方だ』
「……覚悟は済ませているのだ」
『よろしい。では電話を切らせてもらうよ。先生、
「うん……リクも、体には気を付けて」
ブツンと、リクとの電話が切れる。
嫌な静けさだけがシャーレの部屋を覆っていた。
そして、その様子をシャーレに仕掛けられた盗聴器を使ってずっと聞いていた少女が1人。
「ふぅ……、ワイルドハントとも深く関わるようになってきたので今のうちに先生のご趣味などを知っておこうとしていただけでしたが、まさかこのような事態になっていようとは」
――……うん、もちろん。みんな大切な生徒だよ
「……万一があってはなりません。何よりも、他の生徒とそんなことをされている先生を想像するだけで胸が張り裂けそうです。なら、どうするか。ふふっ、先生は今やキヴォトスにとって無くてはならないお宝。なら、怪盗として先生の価値を理解している私が――を奪うべきですよね?」
* * * * * * * * *
「おかえりなさい局長! 緊急の出動とのことでしたが一体どのような……え? ヴァルキューレやSRT所属で先生への想いが強い生徒? 本官はよく分からないのですが、それと緊急の件はどのような関係が……?」
『……相分かった。どう転ぶにしても政治的に山海経は難しい立場になるじゃろう。もうすでに過ぎてしまったことを嘆いても問題の解決には繋がらない。ならば、妾にできる最大限の謝罪の形を先生にせねばなるまい。無論、お主もじゃ。逃げるようなら退学措置をせねばならん。明日の夜までにはこちらの仕事を終わらせてそちらへ向かう』
「シロコちゃんおかえり~~。……? あれ、どうしたの? そんなに鼻息荒くして? 緊急会議? おじさん、今すごく眠たいんだけど……ふぇ? 覆面水着団で今度は先生の童貞を奪いにいく??? 5人全員で??? ……うん、ちょっと冷静になろうか」
「待ってユウカ。先生から色々聞いているのかもしれないけど、タイムリミットのある緊急事態が――え? 『説教は後回し』? 『私は今、冷静さを欠きそうになっている』って……ちょ、本当に待ってちょうだいユウカ。瞳孔が……その……その顔で近づいて来ないでほしいわ。ノアも止めて――何でアナタまで詰め寄ってくるの!? 助け――トキーーー!!」
「お帰りなさい委員長、先生の体調が良くないとの連絡でしたが――委員長? どうしたんです? お顔が……はっ!? その反応! 先生にセクハラされたんですね!! 全く先生はいくら委員長が素敵だからって! ついに本性を現したんですね! 明日にでもシャーレに直接乗り込んで抗議ついでに今度こそどっちが上かを――! 何ですチナツ? はぁ? 血涙流しかねない??? 私が? 血圧抑制の薬を先にお注射??」
「ちょっとミカさん!? 突然帰ってきたかと思えばテラスの開き戸を半壊させないでください! アナタが想像以上のバカ力だと分かってからいつもいつも……。何を焦っているんで――高級エステ?? 明日1日を使って自分を磨く??? 勝負下着も……って何を言ってるんですか!!? 淑女にあるまじきことを口走っている自覚はありますか!? 口にロールケーキをぶち込みますよ!!」
「にゃははは……あ~、全く笑えない事態ですねー。ですが、他の学園と同時に情報を得られたのは大きな収穫と考えればまぁ……。にゃは~しっかし、どうしましょ? 百鬼夜行内での先生との好感度調査なんて禄にしてませんし~。けど最低1人は……。一先ずリクさんでしたっけ? これからお忍びでシャーレに向かうんですよね~? どうなったかの結果報告だけでも連絡ってもらえませんかぁ?」
「そうですか。先生が……、ま、まさか本のネタにするつもりじゃありませんよね!? ぁ――それくらいの常識はある、と。あー……でも参考になるから当日にシャーレには行くんですね。気を付けてくださいよ。下手に藪を突いたら蛇どころかドラゴンが出てくること間違いなしなんですから」
「…………頭痛が……。大変だったのねリン。でも、なんでそんな話を私に……!!? ま、まさか……私をあてがうつもりなの!? 確かに総決算の関係で先生とは良く話すのだけど――! え、総決算を口実に会いに行ってるのバレバレ? 愛人?? 連邦生徒会内でもとっくに噂……??? ――その話、詳しく」
* * * * * * * * *
先生がサヤの薬を飲んでしまい、強制発情状態となった翌日。
キヴォトス全土に七囚人“慈愛の怪盗”からの犯行予告が届いた。
「――で、これが……ぅ……アキラからの犯行予告」
『えぇ、シャーレや連邦生徒会を含めたキヴォトス中に届けられたそうで。これまでと違い場所の特定すらできないので、各学園が自分たちの所へ来た場合に備えて警備を固めています』
「ワイルドハントの生徒でミヨっていうアキラの犯行予告を解いたこともある子から――ぉぅ――モモトークが届いたけど、今回はキヴォトス全体にとっての……んっ……芸術品を盗むんじゃないかって話なんだよね?」
『我々もその可能性が高いと睨んでいますが……キヴォトス全体に関わるもので彼の七囚人が盗もうとするものに心当たりがないのですよ。相も変わらず詩的な文章のせいで一体“いつ”、“どこ”の“何”が狙われているのか不明ですし』
「私も……oh……こういうの解くのは苦手だからちんぷんかんだよ」
予告状
黒き雫で白紙の本を穢す旅人。
灰を身に纏う者に掛けられた魔法が砂へと還る刻。
花咲く前の蕾達がその花の咲き方を乞う拠り所。
拠り所の管理者たる温かな太陽は月に隠れ凍える。
再び日の光を取り戻すため、管理者が持つ青き果実を頂きに伺います。
慈愛の怪盗
「アキラの予告を見るのは3回目だけど、こだわりを――んんっ――感じるな」
『慈愛の怪盗が何を盗むつもりなのかも気になるところですが……先生、やはり体調は良くなりませんか』
「あはは……全然だね。今もベッドの上だよ」
サヤの霊薬によって先生が発情してしまう事件から丸1日。
時間経過と共に効果が薄まる――といった希望的観測も叶うことなく、あまりのムラムラに仕事も禄にできない状態であった。
「ンフ――これは……困った……本当に」
『えぇ、確かに。それで? もう
「聞きたくないけど……うん、とりあえず聞かせて」
『では報告を。……先生の健康の安全が保証できるのは明日の正午まで。時間経過で効果が薄まる可能性も潰えたことで、事前に通達した案を採用。あの場にいた生徒たちの所属する学園から“先生と性行為してもよい”生徒を1人だけ代表として選び、当日朝9時までにシャーレへ集合。その後、集まった代表たちで「先生の初めての女決定! 大ジャンケン大会」を開催。優勝者が先生の童貞を貰い受け、目先の危機を回避。後は流れで残った生徒たちと交わって性欲を発散――という形を予定してます』
「…………もの凄く頭の悪いエロゲのあらすじを聞いた気分だよ」
『気持ちは分かります。私も目眩がしていますので』
つまり、そういうことだった。
カイからの電話が切れてからしばらく、内容こそ酷いが笑い話にして良いことではないとリンが先生を抜いて別室で生徒たちと大真面目に先生の貞操モロモロについて1時間以上会議をした結果が“代表1人選んだら当日ジャンケンして、最後に勝った奴が先生と初めてを交換し合うってことにしようよ”というもの。
誰が先生のネオアームストロング・サイクロンジェット・アームストロング砲から発射される欲望を最初に受け入れるかについて、真剣な表情で話し合う生徒にリン、カンナ、リオは頭を抱えた。
アビドス生徒のシロコはアビドスメンバー全員との6Pを提案し、トリニティのミカは情報規制して自分が代表になるつもり満々だし、ゲヘナのチナツは元・救急医学部であることを利点にさりげなく自分を売り込もうとし、ヒナは積極的でこそなかったもののちょくちょく意見をだしたりと……混沌を煮詰めた会議だったようだ。
サヤは万一トラブルが起きて誰もシャーレへ辿り着けなかったら、自分を差し出す覚悟でいるというだけで話し合いはせず。
メルは紛糾する会議の様子をじっくり観察して1人の男を取り合う女の戦いに関しての貴重な資料になると、頭の中にあるメモへ書き込むことに集中していた。
『参加予定なのはミレニアム、トリニティ、ゲヘナ、アビドス、SRT、山海経、連邦生徒会から各1名ずつとなります。ゲヘナだけは代表者の選出が難航していると連絡がありました。どうやら情報が漏れて抗争が起こっているようです』
「ゲヘナは相変わらずだなー」
ゲヘナでは現在、一部生徒たちの間で抗争が巻き起こっていた。アコが騒いだことで万魔殿に情報が微妙に歪曲されて伝わった結果、議長のマコトが火に油を注いだのだ。
状況が巡るましく代わっていくのでリンが得られた情報は少ないが、目の据わったイロハが虎丸で砲弾の嵐を巻き起こし、美食研究会のハルナが万魔殿に襲撃を掛けたり、何故か巻き込まれたアルが白目を剥いたり、良く分かっていないのに祭り気分で参加した一般通過ゲヘナ生徒たちが発生したりと、ゲヘナ学園の3分の1が吹き飛ぶ事態にまで発展していた。
ちなみに、ちょうど現在のゲヘナ。
先生が苦しんでいるのにふざけすぎだと魔王的なオーラを発するヒナによって全員が鎮圧され、ついでに火に油を注いだ張本人たるマコトを割と本気でしばき倒してちゃっかりヒナが代表になっていたりする。
「……はぁ」
『やはり、納得いきませんか』
「いくはずないよ。これまでまだまだ経験が足りない若造なの承知で先生であり続けて、たくさんの事件を生徒と共に解決して、奇跡的に良い方向へとこれまで辿り付いて……」
『知っています。それまでの業務を見て、先生がいなければ一体キヴォトスでどれだけの生徒が不幸になっていたのか、どれほどの惨事が巻き起こっていたのか、考えるだけでも恐ろしいです。これまでのこと、私は尊敬しています』
「はぁ…はぁ……ありがとうリンちゃん」
『リンちゃんではありません。……先生には先生なりの矜持があるのでしょう。突然、生徒と体の関係を持たなければならないことに抵抗もあるのでしょう。しかし、今考えられる最悪は先生が最後まで生徒との性行為を拒否したことで、何らかの形でアナタを失ってしまうことなんです』
「…………」
『先生……もう良いではありませんか。リクさんの言が本当なら、元々複数の生徒に魅力を感じていたのでしょう? 私はそういったことに無縁だったので大した意見を言えませんが、若い男性にとってはむしろ健常なはずです。だから……その……』
「少しでも、私の罪の意識を無くそうとしてくれてるの?」
『えぇ、慣れないことだったので、結局自分でも何を言いたかったのか途中から分からなくなってしまいましたが』
「不器用なだけで優しいリンちゃんらしいよ」
『……先生は、欲望と責任との間で身動きが取れなくなっているのだと思います。本当なら時間を掛けて解決させてもらいたかったのですが、タイムリミットが差し迫っています。なので、先生が明日の朝になってまだ悩んだままでいたとしても、各校の代表に選ばれた生徒たちを――抱いてもらいます。もうこれは決定事項です』
「……」
『せめて抱くのであれば……受け入れてあげてください。少なくとも、先生と“そういった関係”になっても構わないと、むしろなりたいと思う生徒たちばかりが来るのです。恋愛について私は語れるような経験もありませんが……“その時”になってもまだ行為をすることに相手が拒否感を示すというのは、女として悲しいことだと思っています』
「…………」
『これ以上は先生の精神的なご負担にしかなりませんでしょうから、今日はこれで失礼します。次の連絡は当日の朝に。あぁ、シャワーぐらいは浴びた方がいいですよ? 清潔であることに越したことはありませんから』
「ありがとう、リンちゃん。ちょっとだけ……気が楽になったよ」
『大いに楽になってください。後、リンちゃんではありません』
そこでリンとの通話は切れた。
何もなければ次の連絡は明日――このシャーレに先生と性行為するために来た何人もの生徒が揃いだした時だろう。
「まぁ確かに、男目線でもこれからエッチする女性が自分との行為に積極的じゃないってのは……かなりクるよな」
一体、それぞれの学園から誰が来るのだろうか?
当日にシャーレに来るということは、自分と“そういうこと”をするために来た生徒というわけで……
「あー、やめだやめだ。余計なこと考えるな」
何名かの可能性のある生徒たちが頭に思い浮んだ辺りで、現実から逃げるように先生は布団に包まった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
深夜。
ずっと発情しながらベッドにいた先生の眠りは浅い。
明日になれば自分は生徒の誰かを抱くことになるという事実もあって、緊張からちょっとしたことでもすぐ起きる程度の睡眠の質だった。
(あれ?)
だから、自分の寝ている部屋の窓がいつの間にか開いていることに気付き、
(何か……布団の中が、妙に温かいような……?)
自分の掛けている布団の中に違和感を感じ、
(というか、何だ? この異常なムラムラは……!?)
意識が段々とハッキリしていくのと同時、布団の中から温かさと柔らかさがを合わせ持った
「うおおおおおっ!? 何だ一体!?」
咄嗟に布団の中にある手を外に出そうとすれば、何らかの硬い物に触れたような感触。
「あんっ♡」
そして、艶っぽい声と共に柔らかい感触が。
(――!?!??)
どうして両手を布団に出そうとしただけでことなる2つの感触と一緒にムラムラが倍増しそうな声が聞こえるのか。
その答えは、右手を出そうとした時に引っ掛かって布団の外へ飛び出た
布団が盛り上がっていき、恐る恐る見れば――
「もう先生ったら、顔を出した後に格好良く仮面を外す予定でしたのに……」
先生に笑みを浮かべるパジャマ姿の慈愛の怪盗――アキラが。
「アキラ!!?」
「はい♡ 夜分遅くに失礼します」
「うん、こんばんわ……じゃなくて! な、何て格好で男の寝てるベッドに入り込んでいるの!?」
焦りだす先生。
何せ布団の中にアキラが入り込んでいたこともそうだが、正確に言うと先生の体の上に乗った状態で布団の中に潜り込んでいるのだ。先程までは具体的な状況が分からなかったので事の重大さに気付かなかったが、非常に不味い状態であった。
「あのねアキラ、一先ずどいてくれないかな!? 今、オレってすごくヤバくて――!!」
「はい、よく……分かります。ベッドに潜った瞬間に理解いたしました。先生の
アキラは自分のお腹を先生の股間に密着させる。
想像していた何倍も熱く、堅く、クラクラする臭いをパジャマ越しに発する限界まで勃起した肉棒が、アキラの柔らかな肢体と触れ合っている。
「~~~!!?」
先生、性的欲求によるムラムラが限界突破。
無理だよこんなの。普通の大学生だって同じシチュエーションになったら狼に変身して目の前の御馳走(分かってて股間をお腹に擦り付けてくる年の近い美少女)を食べるって。我慢できるのは聖人だけさ。
(た、耐えろ~~~!!)
だが、先生は一味違う!
火山のように溢れ出る性欲を理性だけでどうにか抑える!
ぶっちゃけ氷上に立っているぐらいギリギリだが、目の前の生徒を襲わないように踏みとどまる! 銃弾が飛び交うキヴォトスで“先生”をしていただけはある。各種イベントを一通りこなしたならそりゃ精神力も増すよ。だって鍛えなきゃやっていけないもん。
「ふぅーー! ふぅーー! そ、れで……アキラは何でオレの部屋に……!?」
「お可哀想に……とても、苦しそう。えぇ、どうしてここに私がいるのか?でしたね。決まっています。犯行予告を出したのだからお宝を奪いに来たのですよ」
「犯行予告って……ふぅ……昼間の?」
「えぇ。ちゃんと読み解けば分かるようになっていましたよ? 『今日』の『深夜0時』、『シャーレ』にて、苦しんでいる『先生』の『大切なもの』を奪うと」
「そうだったの!? え、でも私の大切なものって……はぁ、はぁ…『青い果実』って奴? それって一体」
「それは――」
アキラは懐から取り出した何かを飲むと、身を乗り出して先生の顔に自分の顔を近づける。息が掛かるほどの距離にアキラの美貌があることに先生の興奮度は増し、その両手の細い指を先生の顔に添えたアキラは
「先生の、初めてです♡」
「ぇ――むぐっっっ!?」
一瞬、思考に空白ができたその時。
アキラは自分の唇を先生の唇へと強く押しつけた。
沿わせてた指で顔を固定し、逃げられないように。
――ちゅ、ちゅう……レル、チュピッ、ジュルル
「はぁん♡ へんへぇ……キス、しあわせれす……レロぉ……♡」
「――! ――!!?」
それだけではない。
先生の口を舌で無理矢理こじ開け、お互いの舌を絡め合う。
ある意味でアキラらしくない行動に目を白黒させる先生は、すでに理性が限界だった。どうしてアキラがこんなことをするのか? そんな疑問を覚えつつも性欲を理性で抑えることなど不可能なぐらいのディープキスに、我慢などもうできないとアキラに手を伸ばそうとして――
(う、動けない……!?)
麻痺したかのように体の自由が奪われていることに気付いた。
「はふぅ♡ ふふ、特製の麻痺薬です。少しの間だけですが……これで先生は身動きがとれませんよ?」
数分にも思えた長い長いキスを終え、名残惜しそうに先生の口から舌を抜いたアキラは、未だ自分と先生の口を繋げる透明な橋をうっとりと眺めながら疑問に思ってるだろうことの答え合わせをする。
「実を言いますと、先生がお薬で大変なことになったしまった際ちょうど盗聴していました。その内容を聞き、他の方が先生と体を重ねるなど耐えられないと感じる私自身に気付きまして。えぇ、自分勝手な暴論であることは理解しています。ですがその時、決めたのです。慈愛の怪盗として……今やキヴォトスのお宝といっても過言ではない先生――その初めてを頂こうと」
「ぁ……いう……!」
「過言だよ!!」というセリフは先生の口から出ない。だって痺れて上手く喋れないから。
「アキラが狙うのはお宝と一言に言っても、骨董品や絵画なんかの芸術作品だよね! オレの股間のブツなんてグロテスクで芸術とは最もかけ離れているはずなんだけど!!」とツッコミたいが、舌も痺れて呂律が回らない。
まぁ、先生の初キス(それも舌を絡めるねっとりしたの)も奪ったメロメロ状態のアキラが、先生からのツッコミにまともな取り合いをしたかは疑問である。
「先生……」
先生の体の上で上半身を起こしたアキラは、着ているパジャマのボタンを1つずつ外していく。
「先生は何も悪くありません。体の自由を奪う毒を飲ませて、先生を救うという名目で“初めて”を頂戴する怪盗が悪いのです。だから――」
全てのボタンを外し、パジャマを脱ぎ、現れたのは……
「私の体で……欲望を全て吐き出してください」
生まれたままの姿で月明かりに照らされたアキラだった。
「――――」
相変わらず先生は口も体も動かせない。
しかし、もしも口が動いていれば――エロすぎるとか、初めて生で少女の全裸を見て感動したとか、そんな俗なことではない本心からの一言が漏れていたことだろう。
綺麗だ、と。
「先生のパジャマも、脱がせますね」
アキラは動けない先生の代わりにパジャマを脱がしていく。
丁寧に上のパジャマを脱がされたが先生には焦りのような感情はもうなかった。目の前で揺れる少女の胸に釘付けとなり、脱がす時に意識してか無意識か、先端にあるほんの少しだけ堅くなった突起を体に擦り付けることに興奮と……これから起こることの期待があった。
「それでは……こちらも……」
アキラの手がパジャマのズボンに掛かる。股間が自己主張して大きなテントを作っている下半身に。
ゆっくりと、履いていたパンツごとズボンを下ろしていけば――
「――!!? ま、ぁ……すごい……これが、先生の」
パジャマから解放された肉棒がアキラの前に現れる。
霊薬の効果か通常の勃起時よりも大きく、堅く、そびえ立つ肉棒。
しかも、動物の要素を持った人種であるアキラの脳を揺さぶるほどの濃いオスの匂いを発していた。
「は、ぁ……♡」
見ているだけで、匂いを嗅ぐだけで意識が飛びそうな恋する相手の肉棒。それをうっとりとした目で見つめ、唾を飲み込む。
「これが……私の膣内に……」
どうすれば良いかの知識はある。
今の性欲をずっと我慢していた先生と1つになれば、その瞬間に大量の熱い欲望を吐き出すであろうことも。
だが、いざ勃起した肉棒を見れば「こんな大きいのが本当に自分の中に入るのか」と思うのは当然のこと。
しかし――
「ふふっ、尻込みするなんて……怪盗らしくありませんね。お宝を目の前にして臆するなど」
アキラは諸々の覚悟をすでに済ませている。
先生と会ってからはスマートにいっていないが、1度犯行予告を出して頂戴すると言ったからには必ず盗み出すのだ。
ふと、先生の方に顔を向ければこちらを心配するような目をしていた。
アキラはそれに笑顔で返す。
「ご安心ください。先生のものを見た時から……私の大切な場所が……これを受け入れるための場所が、自分でも驚くぐらいに濡れているんです。だから、心配要りません」
腰を浮かせる。
肉棒を受け入れやすいよう指で秘所を開く。
アキラの濡れた秘所から垂れた愛液が亀頭に落ちる。
この時点で射精したい気持ちを抑えて、先生は
今夜、自分は目の前の少女と――セックスするのだと。
「……先生」
潤んだ瞳のアキラは肉棒に狙いを定め、
「キヴォトスのお宝……先生の持つ『青い果実』……頂戴します」
一気に腰を落とした。
肉棒はそれが当然であるかのように膣内へと入り込み、膣壁をかき分けて奥へと進み、子宮の入り口を押し潰し――弾けた。
――ドビュルルルルルルルルルルルルッッッ~~~~~!!!!!
「あああああああああああああっっ♡♡♡」
「――っ、~~~~~!!」
2人の脳内が快楽でスパークする。
これまで自慰で得ていた快感など足下にも及ばないような気持ち良さが繋がった肉棒と秘所を中心に溢れ出る。
(気持ちよすぎて……頭がおかしくなりそうだ……!)
まるで数年間溜め込み続けた欲望が1度に解き放たれたかのような射精。一体どこにそれだけの量があったのだと不思議に思えるほどの精液が、子宮の入り口に先端を押しつけた肉棒からドロドロした熱い奔流となって子宮へと注ぎ込まれる。
「熱い……! 先生の精液が、私の中に……イクッ……イクぅぅぅっ!!」
アキラは女としての幸せを体中で感じ取っていた。
自分の甘っちょろい想像など置いてけぼりにするだけの熱さを持つ精液がずっとお腹の奥へと注ぎ込まれ、絶頂が止まらない。
体から力が抜けて倒れそうになるのを何とか堪える。
荒い息を吐きながら先生を見れば、目が合った。自分と同じはずの……相手を愛おしく想っている瞳と。
「あぁ……好きです。好きです……先生……」
内から溢れる想いはそのまま口から出て、ただひたすらに愛を囁く。
「愛しております」
「どうでしたか? 私との初体験は?」
「……気持ちよすぎて気ぃ失いかけた」
アキラへの中だしを終えて数分。
先生とアキラはお互いに体力を使い果たして、身を預け合っていた。
体の痺れが取れた先生は動揺することなく、何とか倒れないようにしているアキラの体をゆっくりと抱き寄せ、少女特有の柔らかな肢体と温かさを堪能しながらその頭を撫でていた。
このようなシチュエーションで撫でるなど初めてだった先生だが、アキラの耳がピクピク動いたり、尻尾がフリフリと振られていることから喜んでくれているのだろう。
「ふふっ……好きな人との行為を終え、その人の心臓の鼓動を聞きながらトークすることの何と幸せな時間でしょう……」
「不思議な満足感があるよね」
「私のちょっとした行動で心臓の高鳴りが早くなるのを感じるのもおもしろいです。指で先生の乳首の周りを円を描くようになぞったり、繋がったままの性器を動かしてみたり……胸を擦り付けた時が1番興奮されてましたね♪」
「おっぱいが嫌いな男なんていないので。……というか、信じられない量の射精したのにまだ股間が堅いままっていうのが信じられない」
「本当でしたら、先生が落着いた今だからこそ2回戦、3回戦といきたいですが……絶頂のしすぎで、これ以上は本当に立てなくなってしまいそうでして」
「捕まる予定ならこのまま朝まで抱き合いながら寝る?」
「非常に魅力的な提案ですが、捕まる訳にはいきませんので次の機会にしましょう。それはそうと、予想よりも落着いていましたよね? その、もっと抵抗されることも考えていたので体の自由を奪ったのですが……このように先生の方から抱き寄せてくれるとは夢にも思わなくて……」
「すごく悩んでいたのは本当だよ? ただ……リンちゃんとのやり取りでさ、“ちゃんと受け入れてあげて”って言われちゃったんだ。こういうことする直前にもなって相手が嫌がったり悩んでいたら悲しいよなって。だから、アキラにキスされて、我慢が限界を越えた時には全部受け入れてセックスする気だったんだよ。……腕を回そうとしたら全然動かなかったんだけど」
「……最初の方で大きな失敗をしていたわけですか。不覚です」
「けどそっかー。オレの初めてはアキラかー。これは予想外だった」
「……嫌でしたか?」
「……これが嫌な男の顔に見える? 色々言いたいことはあるし、明日からのあれやこれが怖いけど……初めてがアキラで嬉しいよ」
「~♡」
アキラはうっとりした顔で先生に顔を近づける。
その際に繋がっていた性器同士がようやく離れ、肉棒という名の栓が抜けたことで膣内から収まりきれなかった精液が噴き出し、お互いの下半身を汚していたが……2人とも気にはしなかった。
最初の貪るようなディープキスではない、愛情を伝えるための唇同士のキスをしていたから。
「……本当に、本当に名残惜しいですが、もう行かねばなりません」
「大丈夫、また会えるよ。アキラとしてでも、ミリアとしてでもいい。こんなことしたけど、先生と生徒なんだから。いつでもおいで」
「はい」
アキラはベッドから離れ、帰る準備を始める。
股から精液を流しているにも関わらず、月明かりに照らされるその姿はやはり下手な芸術作品よりも綺麗だと先生は思った。
「ふふっ、これから忙しくなります。先生も……今のうちにシャワーを浴びたり、ベッドの掃除をすることをオススメします」
「? それはもちろんするけど……忙しくなるって?」
先生は忘れていた。
アキラが“慈愛の怪盗”だということを。
怪盗とは犯行予告をし、予告通りのことが済めばその場を去る人物のこと。大抵の場合は犯行が行われた場所にいた人物たちが騒いで翌日の新聞などに載るものである。
では、犯行現場に人がいなかったり、限定的で騒ぎにならなかった場合――
「もちろん……予告状通り、先生の童貞を奪ったとキヴォトス中に成功の報告を広めるのですよ♪」
「ゑ?」
世間に自身の成果を周知させること!!
今回の場合、アキラが先生の童貞を奪ったと……先生が夜這いを掛けられて初体験を済ませてしまったと広められるのだ。
ある種、公開処刑だった。
「ちょ、待っ――!!?」
「bye♪」
アキラは一瞬で“慈愛の怪盗”としての正装に着替え、部屋の窓から飛び出す。
先生が慌てて窓の方に近づけば、夜の空を舞うハングライダーの姿が……
「………………ヤバい」
どうにか口から出たのはその一言。
その後、コレまでの人生で最速記録を叩き出す速度でシャワーとベッドの掃除(+消臭)を終えた先生は変な汗を流して
壊れたのではないかと思うくらいスマホからモモトークの着信音が響いたのは、それから30分後のことである。