※この作品はR-18です。

女子高生になる   作:姫野真沙美

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その2 はじめての……

 梅津さんのお陰で、男子生徒は寄り付かなくなった。チラチラと、此方を覗き見る奴らは居たけど、話し掛けて来る奴は居なくなったので、少しほっとした。

 落ち着きを取り戻したので、次の問題に取り掛からなければならなかった。

 

 休み時間を待って、梅津さんに助けを求めた。

 

「あの、梅津さん。僕、どうすればいいかな?」

 

 周りに聴こえないように近くに寄って小声で話す。

 

「ん? どうしたの? 何かあった?」

 

 親身になって聞こうという態度に安心した。梅津さんがいて本当によかった。

 

「えっと、その、つまり、トイレ、どうしたらいいかな?」

 

 トイレと聞いて梅津さんは目を丸くしている。

 

「はぃ? どういう事? トイレどうしたらいいって何の事?」

 

 梅津さんは、本当に意味が解らないって様子で、頭の上にハテナマークが浮かんでいる。

 

「えっと、その、つまり、僕って元男だから、女の子たちが嫌がらないかなと思って」

 

 それを聴いて初めて、「ああ」と得心した様子だった。

 

「そんな事、思いもしなかったわ。先生はどう言ってるの?」

「三上先生は、気にせず使いなさいって言ってるけど、実際どうなのか気になって」

「なるほどねぇ」

 

 梅津さんは、しばし考えた後に、言った。

 

「解ったわ。私がそれとなくみんなには伝えておくから、安城くんは、気にせず使って。まさか男子トイレ使う訳にもいかないしね」

 

 梅津さんには先程僕が性転換手術を受けた訳ではなく、身体は本物の女性であり、子供も産めると説明しておいたので、事情は汲んで貰えた様だった。

 

「安城くん、これから色々と苦労しそうね。ほんと。私も出来るだけサポートするから。頑張ってね」

 

 そんな労いの言葉を貰った。

 

「一緒に行ってあげようか?」

「え? や、いいよいいよ。独りで行くから、行けるから」

 

 何だか急に恥ずかしくなり、その場から逃げる様に去る。

 

 そして女子トイレの前に立っていた。

 いざとなると緊張する。僕が元男だと知らない人が見れば、何の不思議でもない光景だ。女の子が女子トイレに入ろうとしているだけの姿だ。

 でも、知っている人からするとどう見えるのだろうか。やっぱ変に映るだろうかと、逡巡する。

 

 とはいえ、そろそろ色々と限界が来ている。漏れそうなのもあるし、休み時間も残り少ない。それに、ずっとトイレの前で立ったままなのも不審者過ぎる。

 

「そんな事だろうと思った」

 

 すぐ横から声が掛かった。梅津さんだった。彼女は僕が心配で見に来たのだろう。ほんとに有り難い。

 

「梅津さぁん、ありがとうぅ」

 

 涙目になりながら感謝を告げる。

 

「はいはい、さっさと入るよ」

 

 そう言って僕の背中を文字通り押した。僕はされるがまま、トイレに入っていった。中には幸いな事に誰も居なかった。

 

 生まれて初めての女子トイレ。と言っても、別段何も特別なものが在るわけではない。男子トイレにある小用の便器が無いだけだ。それは解っているけど、何か込み上げるものがあった。背徳感のようなものもあるけど、今はそれよりも、本当に女の子になったんだという実感と、周りにも認められたという部分が大きかった。公共の場で、女性しか入れない場所に入れるという事が、凄く嬉しく感じた。

 

「ほら、さっさとする! 時間無いよ」

 

 梅津さんに急かされて、個室に入る。

 

「私は外で誰か来たら説明しておくから、安心して」

 

 そう言って、梅津さんは去って行った。

 近くに居たらやりにくいだろうという配慮かも知れない。

 たいへん有り難かった。知らずに鉢合わせすることもないので、驚かさずに済むのだ。

 

 個室に入り、スカートを捲って、ショーツの脇を掴んで足首まで降ろす。ショーツと密着していた部分が剥がされる感触は何とも言えないエッチさがあった。それに個室とはいえ、家の外の空間で下半身を晒している事にも、少し自分が興奮しているのを感じた。

 そんな煩悩を振り払い、スカートの後ろをたくし上げて身体の前へ引っ張って便器に付かない様にする。この辺は、一ヶ月の間ずっと家でスカートを履いて過ごした経験から慣れたもんである。

 周りに人が居ないことも助かった。これで他の人が居たら緊張して出るものも出ないところだ。

 

 一息ついたトコロデ、安心して用を足す。が、その時になって初めて気が付いた。家では特に気にならなかったのだが、ジョバジョバと大きな音を跳ね上げてしまっていた。本当に人が居なくて良かったとほっとする。恥ずかし過ぎる。何とか音を出さないようにと身体をくねらせたりするがあまり効果は無かった。

 まあ、人も居ないことだし、今は観念して最後まで出し切った。

 梅津さんに、どうしたらいいか聞くのも躊躇われる。やっぱり聞くのは恥ずかしい。

 

 用を足し終えた後、トイレットペーパーで股間を拭く。これも慣れたものだ。最初は戸惑いがあったものの、こうしなければショーツが汚れるのを体験したせいで忘れる事は無くなった。

 何度か局部に押し当てて水気が無くなるのを確認する。

 よし完了っと、立ち上がってショーツを上げて綺麗にセットする。男のときはトランクスを履いていたので何も木にならなかったが、ショーツだと肌の密着度が高いので、できるだけピッタリとフィットさせたくなるのだ。細部を調整して満足いったので、個室を出ようというところでふと思い留まった。そうだ、トイレットペーパーを三角折りした方が良いのではないかと。家ではやったことが無かった。何故今そう思ったかいえば、使った時に三角折りされていたからだ。女子がみんな三角折りしていたならば、そうなっていない時は僕が使った後だと解ってしまうのではないか。僕の後に使うのは嫌だと思う子がいるかもしれない。それに、僕が使っている事が噂されるのも怖かった。

 取り敢えず、三角折りにしておくに越した事はない。どんな折り方だったか確認しておけば良かったが後の祭り。今はかたちだけでもそれっぽくしておこう。次回はちゃんと見ておくのを忘れないように。

 

 最後は少し焦ったけど、無事に初学校の女子トイレはクリアした。

 

 個室を出て、手を洗ってハンカチで拭く。梅津さんはというと、トイレの出口の側で見張ってくれていた。

 

「お疲れさん。トイレ一つ行くのも大変ねぇ」

「なんか迷惑ばかりかけてごめん」

「いいのいいの、だって初めてなんでしょ。仕方ないよ。ほんとは先生がそういう事しっかり準備しておいてくれないとって思うわ。どうせ、気にせずに使いなさいとだけ言われたんでしょ?」

「あ、うん、そんな感じ」

 

 細々した話を先生としたわけではないけど、全体的には、本当にそんな感じだった。他の女子たちと同じ様にすればいいよーっていう感じだった。

 

「まったく、それって結局私たちに丸投げってことよねぇ」

「なんか、ごめん」

「あ、いやいや、安城くんが悪い訳じゃないじゃない。こういう時にスムーズにいくようにするのがさ、先生の役目なんだと思うわけよ、私は」

 

 確かに、梅津さんの言うように、初めにいろいろ取り決めをしておけば、その場で悩む事ないんだろうけど。とはいえ、僕の様なケースは初めてだろうし、正直どう対応したらいいのか先生方も悩まれているに違いない。だから、僕としては先生方を恨むつもりはさらさら無かった。

 

「それに、安城くんは迷惑かけてるって言ってるけど、私からしたら、手のかかる可愛い妹が出来たみたいでちょっと楽しいよ」

 

 そう言って、ニマニマと梅津さんは笑った。

 

 

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