※この作品はR-18です。

女子高生になる   作:姫野真沙美

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その3 はじめての……パート2

 無事に初の学校女子トイレを済ませた矢先、次なる関門が待ち構えていた。

 

 体育の授業である。つまり、更衣室問題だ。

 

 また梅津さんを頼るしか方法がなかった。

 

「まあ、大体察しはついているけど」

 

 梅津さんの席に向かうと彼女は僕を待っていてくれた様だ。他のクラスメイトは体育の授業の為、更衣室へもう既に向かっていた。

 

「付いてらっしゃい。私が話して来るから、安城くんは、更衣室の前で待ってて」

 

 言われるがままに彼女の後を付いて歩き、女子更衣室の前で待つ。

 しかしなかなか梅津さんは出てこなかった。

 やっぱり揉めているのだろう。そりゃそうだろう。元男が自分が着替えているところに入って来るのだ。心中穏やかでないに違いない。やっぱり僕は遠慮すべきだろうな。そう思う。着替えなら、女子トイレでも出来るし。そう考えてドアの前を離れようとしたところで、ドアが開き、梅津さんに呼び止められた。

 

「こらこら、何処へ行く。大方、女子トイレで着替えようとでも思ってるんでしょ」

 

 図星を突かれた。

 あははと照れ笑いで返すと、腕を掴まれて、更衣室へ連れ込まれた。

 

「ええええ」

 

 更衣室の中は女の子の香りで充満していた。それは男子更衣室の匂いとは違っていた。なんというか、いい香りに感じた。

 不意打ちに戸惑いながら、ついつい周りを見てしまう。だめだとわかっているけど、好奇心には逆らえなかった。時間が経っていたせいもあって、大方の女子は体操着に着替えが済んでいた。一部の女子が、まだ着替え中で急いで着替えていた。

 上半身の着替え中で、ブラ姿の子が数人いた。残念ながら後ろ姿であり、胸元やサイズなんかはよくわからなかった。

 

 そして、チラチラと見ただけだけど、思ったより興奮しなかった。女子更衣室という事で、そこに入る事に背徳感があったのだが、それは、やっぱり興奮すべき物理的な部位が、僕にはもう無いからなのだろうか? もう女の子の身体に興奮するような事はないだろうか? これは普通に同性から見た感覚になっているのかもしれなかった。少し残念な気がした。

 それに、女の身体になったからといって、今度は男に興奮するという事もないわけで、そういう意味では、恋愛対象が女でも男でもない。つまり恋愛する対象が存在しなくなったのだ。男のときは女の子が好きだったけど、女の子になったからといって男を好きになるわけではなかった。それはそれでなんだか大事なものを無くしたような気がした。

 

「こら! ジロジロ見ないでこっちに来る!」

 

 梅津さんに怒られながら、部屋の隅っこに引っ張られて壁を向かされる。

 

「ほら、よそ見しないで、さっさと着替える!」

 

 背中を散々に叩かれて急かされた。

 そうだった。決していやらしい目で見ているつもりはない。だが、見られている女の子の側からすると気持ちのいいものではないだろう。ここで警戒されてしまってはせっかくの梅津さんの心使いが無駄になると思い、大人しく着替える事にする。

 大人しく着替える事に専念するはずだったが、すぐ横で一緒に着替えている梅津さんの胸が、目の端で大きく揺れているのが気になって仕方がなかった。相当に胸が大きかった。僕の胸もそれなりの大きさだったけど、それを遥かに上回っていた。以前から彼女の胸の大きさは話題になっていたので知ってはいたけど、こんなに間近で、しかもブラだけの姿で見るのは初めてだった。彼女の身体の動きに合わせて、ブラからはみ出しそうなぐらい大きくぷらんぷらんと揺れていた。

 

「ちょっと、あんま見ないでよ」

 

 梅津さんに気づかれて怒られてしまった。彼女にはお世話になりっぱなしなのに失礼な事をしてしまったので、「ごめん」と素直に謝った。

 

「まあでも、男の子だけじゃなくて女の子にも見られちゃうのよね。昔から。このサイズだとねえ。だから慣れてるっていえば慣れてるんだけどね。だけど、もう見ないでよ」

 

 本当に恥ずかしそうに言いながらフォローまでしてくれた。

 

「うん。ごめん」

 

 気を取り直して着替えに専念する。ハーフパンツをスカートを履いたまま履く。ブルマーは随分前から使用されていない。元男としてブルマーを履いてみたいという気はしないでもなかったが。最近ではハーフパンツが主流のようだった。

 ハーフパンツを腰まで上げてから、スカートのジッパーを下げて脱ぐ。ブラウスのボタンを外そうとして手が止まる。

 改めて考えると、人前でブラウスを脱ぐのは始めてだ。病院の検査では裸体を晒したけどそれは例外である。クラスメイトで女子だけとはいえ、公衆の面前だ。急に恥ずかしくなってきた。

 よくよく考えれば、女の身体になって始めての事だからだ。幼い頃から慣れていればそんなに気にならないかもしれないが、流石にいきなりでは緊張する。

 

 元男で、それがこんな女の身体になっているんだ。みんな好奇の目で見るだろう。そう思うと恥ずかしさに身体が熱くなった。

 

「なにしてんの? 早く着替えなよ。時間無くなるよ?」

 

 梅津さんが心配して声を掛けてきた。彼女の着替えはもう終わっていた。

 

「あ、うん。なんか、ちょっと緊張しちゃって。あは」

「女の子同士でしょ。安城くんが緊張してどうするのよ」

 

 そういって彼女は笑った。

 

 意を決してブラウスのボタンを一つずつ外す。普段と比べて緊張のせいで上手くボタンが外せず、かなりもたもたしてしまった。

 ブラウスを脱いで簡単に畳んでロッカーに入れる。

 

「ほー、本当に、女の子になったんだー」

 

 梅津さんだけでなく、後ろにいた女の子たちも驚きの声を上げていた。

 

「ちょっと、そんなに見ないでよ」

 

 つい反射的に声が出てしまった。声に出した僕自身が驚いた。あまり意識して女の子の様に振る舞おうとは思っていなかったけど、自然に普通の女の子の様な反応していた。

 

「へー、もうすっかり女の子なんだねえ」

 

 周りからそんな声が上がると同時に、警戒心が溶けているように感じられた。元男から、女の子になった子に意識が切り替わったのだ。

 そのせいか、周りの女の子の動きも大胆になってくる。すぐ僕の側まで来て、じろじろを身体を舐め回すように見始めた。

 

「え、と、ちょっとなに?」

「やー、肌も綺麗だなーっと思って。ちゃんと手入れしてるのね。それに胸も立派よね。サイズはどのぐらいあるの?」

 

 女の子としての僕に興味があるようで、女の子としての僕の品定めをしているようだった。確かに必要最低限の手入れは母の指導の元、やってはいる。

 

「えっと、Cカップだけど」

「おぉ」

 

 一部の女性陣から歓声が上がる。「私より大きい」とか「なりたての女子に負けた」など、サイズが小さい女の子からの声のようだった。なんとなく済まない気持ちになる。

 

 ツンツンっと、女子たちが僕の胸を突いて来る。

 

「ほうほう。本当に女の子の胸なんだ。すごーい」

 

「こらこら、君たち、安城くんが困ってるじゃないの。着替えが済んだらさっさと出る」

 

 梅津さんが、ドアを指さして退室を促した。女の子たちは「安城くん、後でねー」と口々に言って手を振って出ていった。

 

「ごめんね。でもこれであの子たちの警戒も取れると思うのよ。だから多少の事は大目に見てね」

 

 梅津さんの言い分も分かる。僕の身体が完全に女の子である事が解れば、警戒心も無くなるのだろう。とはいえ、安易に触られるのは女の子相手でも恥ずかしい。

 

「本当は胸だけじゃなく、下の方も見せればもっと安心するんだけど」

 

 彼女は、とんでもない事を言いだした。

 

「えっと、見せた方がいいの? でも」

「ああ、大丈夫、大丈夫。流石にそこまでは出来ないでしょう。もしもの話よ。ちゃんと下の方が男の子じゃないって解れば、安心するって話。まあ女の子同士でも見せ合うようなもんじゃないしね。気にしないで」

 

 ほっとして、体操着の上を着て、体育館シューズを履く。まあ確かに、股間に男性器が付いてなければ安心するという理屈も解る。見せれるものなら、見せて安心してもらいとすら思うけど。それでも流石に、はいどーぞと見せるのは恥ずかし過ぎる。

 

「サイズ、もっと欲しかった? 私ぐらいに」

 

 僕の着替えをずっと待っていてくれた梅津さんが唐突に聞いてきた。

 

「え、いや、その」

 

 なんと答えるべきか、悩んだ。正直なところ、胸のサイズは今ので充分満足している。また、サイズだけではなく形もいいと思っている。ただ、もっと大きかったら、例えば梅津さんの様なサイズだったどんな感じだろうか、という興味は確かにあった。

 

「あはは、冗談、冗談。大きいのは大きいので困るしね。さ、行こう」

 

 そう言うと僕の腕を掴んで引っ張っていくのだった。

 

 

 事前に取り決めがあったのだろう。体育教師は女の先生だった。その事にちょっとホッとした。男性教員に奇異な目で見られるのはちょっと怖かったからだ。

 先生は、僕の事には特に何も触れず、初めから他の女子と同じ様に扱ったし、周りにも特に何も言わなかった。

 

 準備運動で身体を動かすと、胸の揺れが思った以上に邪魔だった。これは男のときには感じなかった感覚だった。屈伸や飛ぶごとに揺れるので、周りの目が気になって仕方が無かった。しかしそれは杞憂で、女の子たちは特に僕を見ている様子は無かった。女の子になりたてなので少し自意識が過剰になってるのかもしれなかった。ただ、これ、男子が周りに居たら絶対見られるだろうなとも思った。なぜなら、男子のときに僕も見ていたからだ。

 

 二人一組の柔軟体操で、梅津さんがパートナーになってくれた。

 

「まあ、そろそろみんなも大丈夫かなと思うけど、一応ね」

 

 確かに、さっきの感じだと他の女子もパートナーになってくれそうな感じはあった。ただまだ僕も不安だったので、梅津さんの提案は助かった。

 

 両足を開いて座り、背中を押してもらって柔軟体操をする。背中を押して貰う度に、背中に胸が当たる。柔らかく温かい感触だった。

 

「あ、ごめん。胸当たってるよね」

 

 彼女は自分で気がついて、当たらないように注意していたが、何度か度々当たっていた。

 男のままの僕だったら、凄く興奮していた事だろう。今はそういう性的な興奮はなく、ただ単に気持ちいいと思った。

 

「ねえ? 興奮する?」

 

 そんな僕の気持ちを知ってか知らずか、そんな事を彼女は尋ねてきた。

 

「男のままだったら、凄く興奮してただろうね。今は、凄く気持ちいい」

 

 そう素直な気持ちを伝えたら、彼女はくすくすと笑っていた。

 

 体育の授業は、バレーボールだった。バレーボールは体育の授業で男子のときに何度かやっていたし、僕はバレーボールは不得手ではなかった。元男子としてかっこいいところが見せれるかもしれない。そう考えていた。ところが、実際に女の子の身体でやってみると思うようにいかなかった。動く度に胸が邪魔になった事もあるが、一番の問題は、自分が思っている速度で身体が動かない事だった。男子のときの動きの感覚で身体を動かしても、思った速度で動いていない。離れたところに飛んで来たボールを捕らえようと飛び込むが、まったくボールに追いつけなかったし、また両手でボールを捕らえて弾こうとしたけど、思ったほどボールが飛ばない。

 

「安城くんって運動音痴だっけ?」

 

 そんな言葉が彼方此方で聞こえてくる。

 何とも不名誉な事で、少し恥ずかしくなった。

 

 これはちゃんと運動を繰り返して自分の身体の動きをちゃんと認識しないとだめだと思った。

 授業中なんとかしようと思って、いろいろ試みて見たけど、駄目だった。無様に突っ転んだり、尻餅をついて笑われてしまった。 

 

 

「うー、つらい。いいところ見せようと思ったのに」

 

 体育の授業の後、更衣室で梅津さんに愚痴る。身体の動きにまだ慣れていない事を告白した。言い訳じみているけど言わずにはいられなかった。この辺りはまだ男としてのプライドを引きずっているのかもしれない。

 

「まあ、しょうがない。徐々に慣らして行くしか無いね。がんばだよ」

 

 優しい彼女の言葉に気持ちが少し和んだ。

 そして気がついた。いつの間にか自然に更衣室に入って着替えている僕と、それを受けて入れているみんなに。これらはすべて梅津さんのお陰だった。

 

「ありがとうね。梅津さん。すっごく助かった」

 

 隣で着替えている彼女に、素直に感謝を告げた。

 

「ふふふ。いいよいいよ。あー、でもー、そうねえ。なんかそのうちいい事返してもらおうっかな?」

 

 最後に彼女は、そう言っていたずらっぽく笑うのだった。

 

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