夜ベッドで横になっていても、なかなか寝付けない。今日の事が頭から離れず、ずっとその事ばかり考えているからだ。忘れようと何度も試みたけれど、直ぐに僕の頭の中を侵食し、占領して来るのだ。錦戸たちの息遣いが今もリアルに思い起こされる。耳元で囁かれる卑猥な言葉、そして興奮している息遣い、そして逝く時の呻き声が、すぐ其処に本当にあいつらが居るかの様に頭の中で勝手に再現される。
それらが再現される度、僕の身体は女として反応してしまう。嫌だったし、恥ずかしかったし、悔しかったし、憤りもあった。しかしそれとは別に僕の女の身体は快感を感じ、そして有ろう事か、それを今も求めている。
秘部をごつい指で弄られる感触を思い出しては自分の指でそれを再現する。こんな事をしている僕自身に嫌気を感じながらも指を止める事が出来ない。自分がされた事を自分で再現し、悶える。
足りない。こんなんじゃない。自分で再現していても、その再現に満足出来ず、秘部に男性器を入れたいという欲求が時間と共に高まってくる。指を二本入れても足りない。
「ああぁっ はぁぁっあ」
声が自分の意志とは関係なく漏れる。そして僕自身が、女の感じている声を上げているのを耳で聞き、さらに興奮してしまう。こんな嫌らしい喘ぎ声を僕は上げていたんだ。それを錦戸たちに聞かれてたんだ。そう思うと、さらに興奮してきた。
自分の指で胸を揉みしだき、乳首を捏ねくり回す。あいつらがやった様に。あいつらがやっている様に。
「ああっ、だめっ、んんぅ、我慢できない。欲しい」
少しは自分でやって感じていれば、気も紛れるかと思っていたが、逆効果だった。もう欲しくて欲しくて堪らなくなってきていた。
「だめだ。こんなんじゃだめだ。僕は、ああぅ」
頭で解っていても、身体は解ってくれなかった。僕の身体は執拗に快楽を求め、男性器の挿入を求めていた。
このままでは本当に僕は駄目になってしまう気がした。何か取り返しのつかないところへ行ってしまうのではないかという不安に襲われる。なんとかしないといけない。
そうだ、逝ってしまえば収まるのではないか?
そう考えて、秘部に入れていた指を抜いてクリトリスを弄る。
あいつらに弄られている事を想像して。
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結局、朝まで一睡も出来なかった。
いや、ところどころ気を失っていたかもしれない。しかし寝ていた自覚は無かった。
目覚ましを起きたまま止めて、起き上がる。
下腹部に強烈な痛みを感じた。
昨日、あいつらにやられたせいだろうか訝った。腰が異常に重いし、気持ちが悪かった。
もしかして、僕の中が傷つけられたとかだろうか?
不安を抱えながら、ひとまずトイレに向かう。歩く度に下腹部が引き剥がされるような痛みが走った。
なんとかトイレにたどり着き、パジャマと一緒にショーツを降ろして便座に座る。
「んっ、ううぅんっ」
たまらない不快感と共に、何かが便器の中にぶち撒けられた。
肛門から出たものではない。
もしやと思って、トイレットペーパーをちぎって秘部に当てる。当てたそれを見ると、血に染まっていた。
これはもしかして生理なのだろうか?
元男であっても多少の知識はある。生理とは秘部から血が出るものだと。
どうしよう?
パニックになって、トイレを飛び出して、母親を大声で呼ぶ。
母はブツブツ文句を言いながらやって来て、僕を見て驚きの声を上げた。
「あんた、それ?! あらあら、始まったのね。ちょっと待ってなさい」
そう言い残すと、奥の部屋の押し入れを開いて何やらごそごそやっている。
「あ、動かないで。あんた血が落ちてるから、そこから動かないで」
その言葉でやっと僕は気付く。そうだ。トイレから飛び出してしまっていたので、秘部から流れ出た血が脚を伝い、床まで落ちていた。
母は、持ってきた濡れタオルで僕の脚を一通り拭き取った後、シャワーを浴びに行くように即した。
父が朝早く仕事に行ってくれていて助かった。流石に父にはこんな姿を見せたくはなかったからだ。それでなくても、女になった僕の姿を見られるのは抵抗があったし。こんな姿は尚更だった。
「今日は学校休みなさい。色々と用意しないとだからね」
「え? なんで? そんな大げさな」
「大げさじゃないでしょ。あんた何も知らんでしょ? 生理用品とか使い方とかいろいろあるから。今日みっちり教えるから、外で解らんようになったらどうするのよ」
言われてみればその通りだった。このまま学校行っても、生理にどう対処したらいいかなんて解らない。クラスメイトの女子に聞くしかないのだ。梅津さんなら教えてくれるかも知れないが、やっぱり恥ずかしがらせるだろうし、僕も恥ずかしかった。
ここは大人しく母の言う通りにして、今後の学校生活がまともに送れるようにする方が先決だ。
それに、さっきはパニックになっていたから気付かなかったけど、生理があったという事は、昨日いっぱい出されたやつで妊娠する事は無くなったという事だ。完全に大丈夫なのかはわからないが、基本的には大丈夫な筈だ。そう気付くとホッとした。このまま妊娠とかになったらどうしようかという不安はあったのだ。それもあって昨日は寝れなかったのもあるんだ。単に興奮が止められなかった訳じゃない。むしろ興奮する事で、妊娠の恐怖から逃げようとしていたのだ。現実逃避というやつだ。
ひとまず母からナプキンを渡された。付け方を教えられなんとか付ける事が出来た。しかし、なんかごわごわして股間が気持ち悪い。女の子は毎月こんな事をしているのかと、初めて知った。
その日は、その後いろいろと大変だった。
一緒に買物に行き、ナプキンの種類や用途などを詳しく教わり、必要なナプキンを選んで買った。また、ナプキンは一日に何度も交換するのだと教えられて、途中でトイレで交換したりした。
慌ただしい一日が終わり、僕はぐったりしていた。ただ、その御蔭で、昨日の事を考える余裕が無かったのは幸いだった。また、妊娠の恐れがほぼ無くなったお陰か、昨日の様な激しい性欲に襲われる事無く、割と平和に過ごせた。
朝になり、トイレでナプキンを交換して準備万端。なんかすっかり女の子になっている自分を感じる。女の子しかやらない事を僕はやっているのだ。
「持っていくの忘れないようにね」
家を出る前に、母に念を押される。
確かに、今日ナプキンを持って行かなかったら、昨日休んでまで準備した意味がない。しっかりとナプキンケースの中身を確認してカバンに入れる。
「じゃあ、行って来ます」
「いってらっしゃい」
自転車を漕いでいると、サドルで擦れる股間がナプキンの違和感で気持ち悪かった。そのうち慣れるとは思うけど。いや、慣れないとつらい。
自転車置場に到着して自転車を降りる。目に入る風景が一昨日の事を思い出させる。
せっかく、生理騒ぎで忘れていたのに、再び僕の心を占め始めた。
そうだ。どうしよう。妊娠はしないで済んだけど、あいつらがこのままもう何もしてこないなんて思わない。動画や写真も撮られたし。それで脅してくるに違いない。毎日毎日、あいつらに嬲られるのだ。これからの高校生活はずっとそんな感じになってしまうのか。そんなのは嫌だ。でも、訴えたりしたら、元男だとしてもこれから女として生きていくんだから、あんな姿を世界中にばら撒かれても困るんだ。
だめだ。どうしよう。どうしたらいいだ? 僕は。
「勝巳?」
後ろから声を掛けられて、びくっとした。
一瞬、錦戸たちかと思ったからだ。
「なんだ、翔吾か。びっくりさせんなよ」
「そりゃ悪かったな。でもお前、そんなところに突っ立ってたら邪魔だぞ」
そう言われて自分が自転車置場で、立ち竦んでいることに気がついた。
「あ、ああ、ごめん。邪魔だったのか。ちょっとね考え事を……」
最後まで言えなかった。
途中で声が震え、詰まり、両目から涙が流れ出していた。
身体が震え出してその場に座り込んでしまいそうだった。
ふらつく身体を支えようと翔吾にしがみついてしまった。
「勝巳?」
翔吾の身体の暖かさを感じると、もう自分を止められなかった。
この先の事を思うと不安でどうにかなってしまいそうだった。
翔吾に何か出来るとは思わなかったし、翔吾に助けて貰えるとは思っていない。
でも今は、今このときだけは、翔吾にしがみついて居たかった。
そして僕は、翔吾の胸の中でわんわんと泣いてしまった。