許して…オカアサン……(魔法の言葉)
「ん゙っ……んん゙………」
腕を上に伸ばしながら大きく息を吸うと、前世では感じられる機会がそうなかった、深い自然の香り。少し古いが確かな温かみのある慣れ親しんだ木造の家の一室で、早朝から日課である魔法の研究で机に向かい続けていた私は一息ついて、目を閉じゆったりと思考にふける。
無意識にぼんやりと天井の木目を目線でなぞったり、木製の壁の小さな割れ目を無意に観察してみたりしていると、確かな心の安らぎを覚える。
この世界のこの時代を当たり前に生きる人々にとって、変哲もないはずのものに未だこうも特別感を抱いてしまうのは、日本人的な感性故なのであろうか。
日本人。そう、私は元日本人であった。その頃の記憶を持っている。
戦争で親を失った私はそのショックの影響か、気づけば前世の記憶が蘇っていた。前の世界で一度死んだ自分は、葬送のフリーレンの物語の登場人物であるフェルンに転生していたのだ。
最初は随分と戸惑いもしたし、境遇もあいまって精神はある程度成熟しているはずの自分でも中々に堪えることも多い日々を送っていたが、人間それでも案外どうにかやっていけるもので、なんだかんだでハイター様に引き取られ共に暮らし、やがてフリーレン様と出会った後、ハイター様を見送り、フリーレン様と一緒に旅に出ることになった。今はその旅の準備の段階だ。転生してそれなりの時間が経っているので大まかなストーリーくらいしか覚えていないのだが、大体の流れは今の所原作の通りのはずである。
さて、私には夢があり、元々あまり生真面目とは言えないような人間であったかつての私であるが、その夢を叶えるために日夜研究を重ねている。
その夢とはズバリーーチンコを作る魔法を開発することである。
実は前世の私は男であったのだ。前世では童貞を卒業できぬままに生を終えてしまった。その未練を今世では是が非でも果たしたいと思っている。
生み出すのはただのチンコではない。あらゆる女に圧倒的快楽を叩き込むことのできるマジカルなチンポだ。デカさと固さを併せ持ち、底なしに湧き出す精力で何回戦でも継続可能。どうせ作るなら男の夢をふんだんに詰め込みまくった、最強のチンコを作りたいのだ。魔法はロマン。夢はでっかく。
私の性自認は今でもずっと男なのだ。
そしてチンチンを取り戻した暁には、女の子とぐへへな事をしてみせる。
とはいえこんな事を大っぴらに言う訳にはいかないので、夢の事は隠しながら、私は日夜修行にあけくれているのである。
私はその夢を叶えるためにハイター様のもとにいた頃から魔法を学び続けた。もちろん、チンチン作りたいので魔法を学びたいです!!なんて言えたもんじゃないので適当に理由をでっち上げていたが。
とはいえ流石にずっとこの十数年を煩悩塗れで生きていた訳ではなく、刻々と寿命が近づくハイター様を死なせないための研究も並行して行っていた。今までずっと良くし続けてくれた人に情を抱くなって方が無理あるってものですよ。
それに実際、チンコを作る魔法の開発と全く無関係というわけではなかった。生と性と精はそれぞれ紙一重ってね。
……なんか罪悪感は存在するのは確かだ。
ハイター様、それに今世のお父様とお母様、こんな娘でごめんなさい。でもそれは今の私が悩んでもどうにもならない事。私は私なりに幸せを追い求めます。貴方たちの分まで私は幸せになります。取り戻した息子と共にね!!
私は魔法のイメージを固めるために、子供なのをいいことにハイター様のブツをまじまじと確認したり、こっそり張り型を購入してあれやこれやしたりした。あれやこれやというのは、マジチンが齎す快楽をイメージするために自分自身の身体で……まぁ色々頑張ったのである。流石に男とヤったりまではしてないけどね。
フリーレン様の弟子になった後も私は密かにずっとこの研究を続け、遂にいよいよ魔法は完成目前という所まで来ているのである。
そしてそんな私の努力の結果なのか、それとも単に原作通りなだけか、今ではすっかりムッチムチのドスケベボディに成長してしまった。原作通りといっても、自分の記憶の中にあるフェルンが原作のフェルンなのか盛られまくった二次創作のフェルンなのか、正直もはや思い出せないのだが……
うーん、私はエッチな女の子になりたいんじゃなくて、エッチな女の子とエッチなことをする者になりたかったのだが。
私のこの身体は色々苦労も多い。ちゃんとした下着をつけていないと歩く度に身体の特定の部位が揺れてしまって大変である。フリーレン様からも時々なんとも言えない視線を感じたりするのだが、私は口には出さないものの、内心ではフリーレン様のことを本気で羨ましく思っていたりする。身軽そうでいいですね。いやほんと。飛行魔法とかは特に、胸が暴れて痛いし恥ずかしいしでそれはもう大変である。なにより擦れた刺激で変な気分になってきたりもするし。そんな時は人目を忍んで発散するのだが、段々発散の回数も日を追う事に増えてきており、すっかり癖になってしまっていると感じる。
息子を取り戻した後は、この身体をもう少し大人しめに変える方法を模索してみようと考えているくらいだ。
しかし、完成間近となったこの魔法をまだ私は試せていない。魔法の安全性に、今はまだ疑問があるためだ。
マジカルなチンチンを生成することはおそらく既にできると思うのだが、万が一チンコに何かの不具合があった時のために、ちゃんと魔法を解除できるようにしておきたいのである。
とはいえ、ずっと研究し続けてきた魔法の完成、夢の成就を控えた私は高揚せずにはいられず、最近はずっと浮いた想いだ。
さて、一息ついた私は、窓から見える太陽がすっかり空の上の方にまで登っているのに気づく。そろそろフリーレン様を起こさなければならない時間だ。
そう思って立ち上がり、うっかり研究ノートををきちんと片付けないまま部屋を出ようとしていた事に焦る。このノートや研究に使った道具などは、絶対に人に見られる訳にはいかない。しっかりと隠しておかなくては。
危ない危ない。魔法の完成が近い事もあって、ここ最近は注意力散漫になってかなり気が緩んでしまっている気がする。もしかしたら既にうっかりフリーレン様に見られてしまった可能性もある。まあフリーレン様は性的な事に対して鈍いから、見られても別にどうということもないような気はするが、どうしても私が恥ずかしいのでやっぱり隠さないとダメだ。
ここが最後の正念場だと自分に言い聞かせた私は、無事片付けを終えてから、気を取り直してフリーレン様を起こしに向かうのだった。
ところでここ数日、なにやらフリーレン様の様子がおかしい気がするのだが気のせいだろうか。
私の前で突然顔を赤らめ前屈みになったり、部屋に引きこもって出てこなくなることが増えたり、不審な挙動が増えた気がする。
もしかして、こっそり悪い物でも食べてお腹を壊してしまったのか。それならそれで言ってくれればいいものを。私は別に怒ったりなんてしない。ちょこっとの小言なんて、千年以上生きてるフリーレン様にとって瞬きする間くらいなものだろう。
健やかな人生を送るには健康が一番。健康はほんとに大事だからね。
「お腹の調子が良くないなら、胃に優しいものを作ってあげないといけませんね……」
私はいつもの様に、どうせまだ眠っていて聴こえないのであろうと思いながら、フリーレン様の部屋のドアを叩くのだった。
フタナリーレンが「アウラ、ヤらせろ」って言うシーンまで書きてぇなぁ……