(さて……どうにかしてフェルンのノートをもう一度見つけ出さないとね……)
フリーレンはフェルンの部屋に再びやって来ていた。あの魔法を使ってしまった日以来の事である。現在、部屋の主であるフェルンは湯汲み中であり、見つかる心配はなかった。とはいえ、時間に大いに余裕がある訳ではないので、手早く済ませなくてはならない。フェルンのノートを探して、もう一度の魔法の解除を試みる。ここに来てまでフェルンの手を借りるのを躊躇うフリーレンの、最後の悪あがきのようなものだった。
(…緊張するな……)
フリーレンのその緊張は単なる後ろめたさから来るものだけでは無い。フェルンのパーソナルスペースに踏み込む罪悪感と共に背徳的な好奇心がフリーレンの中でない混ぜになり、ゾクゾクとした高揚感が芽生えていた。そんな普段の自分では到底あり得ない思考に、フリーレンは現状の危うさを改めて認識させられる。
(できるだけ手早く済ませよう……フェルンにバレちゃうと困るし)
なるべく思考を自分の内には向けないように意識しつつ、フリーレンは探索に取り掛かった。
フリーレンにとっては残念だが、フェルンのノートはあの日のようにわかりやすい場所に置かれているというような事は流石になかった。といっても、あの日がたまたまフェルンの意識が緩んでしまっていただけで、それをまた望むのは都合が良すぎる考えだろう。
さて、では一体フェルンのノートは一体どこに隠されてしまったのだろうか。実はフリーレンは見つけるのにそれほど手間取るとは考えていなかった。北の魂が眠るという地を目指す旅に出るにあたって、持っていく物は纏められているのだから。フリーレンはフェルンのクローゼットの中にあった、ガッチリとしたトランクケースを取り出し床に置いた。フェルンが大切にしているノートも、ここに一緒にある可能性が高い。
トランクを開けたフリーレンは、その中にまず現れた、几帳面なフェルンらしくキッチリ丁寧に畳んである洋服を、なるべく崩さないように気をつけつつ取り出していく。フリーレンにとってはついこの間まで自分よりずっと小さかったサイズの服を着ていた筈のフェルン。目の前の服を広げて確かめたりはできないが、畳んであっても大きさは感じられる。今では着れなくなった昔の服は処分されてしまったのだったか。
(フェルンが変わるのもあっという間だったよね)
少ししんみりとした懐かしさに浸って意識が逸れていたフリーレンだったが、服を取り出していったのなら、やがて「それ」が出てくるのは当然であった。
「っ!!?」
気づくとフリーレンが手に取っていたのはフェルンの下着であった。すぐに目を逸らしたため見えたのは一瞬だったが、フリーレンには全く馴染みがない、桁外れのカップサイズの下着だったのがわかった。一瞬持ち主がそれを着用した姿を思い浮かべてしまい息を飲むが、慌てて手に取ったそれを床に置いていた他の服の下へと突っ込んだ。
「なにもみてない…なにもみてない……」
ブンブンと頭を振ってフツフツと湧き上がってくる邪な思考を必死に頭の隅へと追いやりつつ、下着にはできる限り意識を向けないようにフリーレンは探索を再会した。
一通りトランクの中身を確認したフリーレンだったが、予想に反してノートは発見できなかった。トランクの中になかったという事は、フェルンは旅にはノートを持っていかないつもりなのだろうか?それともこれから入れるつもりだったのか。なんにせよ、纏められた荷物の中にあるだろうというフリーレンの当ては完全に外れた。
では、一体ノートは何処にあるのか。もしこの家に大量にあるハイターの蔵書の中に紛れ込ませているのだとしたら、流石に手に負えない。しかし頻繁に使っているのだとしたら取り出すのに手間取るような置き方をわざわざするとは考え難い。意外と身近な所にあるのではないか。そんなものぐさな自分を基準にした思考で机の引き出しを覗いていくが─────存外、フリーレンのその思考は的を得たものであった。
「あった……!これだ!」
フリーレンは机の引き出しの奥の方に、他の物に紛れ隠されるように存在していた数冊のノートを発見した。
「意外と単純な隠し場所だったね」
少々虚脱感のある結果だったが、フェルンとしては、そもそもハイターはフェルンのプライバシーを侵害するような行為はしないし、フリーレンが魔法使いとして未熟な自分の研究をわざわざ積極的に探ってくるような事も無いだろうと考えていたが故の警備の手薄さであった。
そんな事情はともかく、目当てだった物を無事見つけられたフリーレンは、1番肝心なノートの中身の確認に移る。とりあえず3冊ほど手に取って、パラパラと中身を確認するが、やはりノートの大部分がびっしりと謎の言語で埋められていた。
「ひょっとしてこれ、全部……?凄いな……」
内容は読み取れないものの、綿密に書かれた文字列には中々圧倒される。更に他のノートも中身を覗いてみるが、やはり全てのページが丁寧に埋められており、フェルンの並々ならぬ研究努力が伺えた。
「フェルンもたくさん頑張っていたんだね」
弟子の密かな努力に触れて、フリーレンはなんだか心が暖かくなってしまう。そういった気持ちを抱くのはあまり自分の柄ではなかったようにも思えるが、やはりそれだけ今の師弟の関係に馴染んでいるという事なのだろうか。
(……にしても、内容を読めないのはやっぱり勿体ない気がするなぁ……)
何冊ものノートのページに目を滑らせながら、ここに来てもフリーレンは解呪の目的以外から来る純粋な好奇心から、そんな風に考えてしまっていた。男性器が生えるなどというあんな突飛な魔法があったからこそ、貴重な情報が他にも沢山あるのではないかと思えてきて、謎の文字への煩わしさは増すばかりである。そもそも内容がよく分からなかったからこそ思わず魔法を使ってしまったが、魔法の効果が分かっていたならわざわざ発動する事も無かったかもしれないのだし、やっぱりこの謎の文字が無ければ良かったのではないか。
(……なんてね。はぁ…)
などと、つい身勝手な考えが浮かんできてしまった。弟子の懐に踏み込み、秘匿されていた効果の分からない魔法を使って後から勝手に後悔して。人としても、魔法使いとしても、明らかに思慮を欠いていたのはフリーレンである。だというのに、その非を一方的に押し付けるような思考は理に反している。フリーレンは一時でもそんな思考をしてしまった自分を恥じた。
(……とりあえず、今は問題の解決に専念しないと……この前魔法を発動できたように、うまく解除の方法もわからないものかな…)
フリーレンは改めて目の前のノートへ向けて意識を切り替える。そんな思考もこれまた自分にとって都合の良い考えだと解っていたが、それでも望ましい可能性に縋らずにはいられなかった。
そうして引き続きノートを吟味し続けたフリーレンだったが、結果は全くもって振るわないものだった。
(……やっぱり厳しいのかな…)
辛うじて読めるエルフ語での記述にも解除に繋がりそうなデータは書かれていない。そもそも、あの時断片的な情報から魔法に辿り着けたのは奇跡のような物だったのだ。一刻を争う今の状況で、この言語をほぼゼロから解読するのは流石に無理があり、それは初めから分かりきっている事であった。フリーレンは完全に自身の旗色の悪さを察してしまう。ノートを見た所でどうにもならない可能性の方が高い事は初めからわかっていた。結局の所フリーレンの行動は、決断を先送りにするための口実としての側面が大きかったのである。
(もっと早くからフェルンを頼るべきだったんだ……)
時間をかけ過ぎてもいけないのだし、いい加減さっぱりと諦めてしまうべきでないだろうか。それが、フェルンにとっても望む事なのでは。
そうしてフリーレンの心を諦めが支配しかけたその直前、ひとつだけ、フリーレンの中で閃くものがあった。
(待って。別に全部があの言葉ばっかりで書かれてるノートとは限らないよね)
フェルンのノートの文字は、フリーレンの知る限り既存の言語に全く当てはまらない未知のものだ。もし仮にこれらの言語をフェルンが1から作り上げたのだとすれば、それにはさぞ苦心した事だろう。フェルンが研究を開始した時点から完璧に新しい言語を使えていたとは限らない。ならば、暗号化される前の情報だって残されていてもおかしくないのではないか。
(そうだ…きっと、普通の言葉で書かれたノートも一冊くらいあっていい筈……それを見つけられさえすれば……)
実際にはそんなノートが存在するのか全く不明だが、筋は通っていない訳では無い仮説はフリーレンに一筋の光を与えた。今度こそ最後の足掻きとして、もう少しだけ探してみてもいいのではないか。そうしてフリーレンがまだ中を見ていなかった引き出しを開けた時─────
「ん……?下の段にまだなにかある……?」
「これって……」
フリーレンが新たに発見したそれは、一つの細長い長方形型の箱だった。デザインは飾り気の特にない無骨なもので、触った限りでは中々頑丈そうな作りとなっている。
「……これまたなかなかに厳重だね」
そしてその箱の何より特筆すべきは、魔法による施錠が行われている点である。箱にかけられた術は並大抵の魔法使いではそうそう太刀打ちできない代物で、歳若いながらも優秀なフェルンの実力を示していた。
(これはひょっとすると、さっきの考えは正しかったのかもしれない……)
明らかに他とは違う、中身を隠そうとする意図が強く伺える代物。フリーレンが見つけたノートの場合、謎の言語で記された断片的な情報で記された魔法に辿り着くなど普通は考えないし、見られる事もある程度許容されていたのかもしれないが、解読の必要のない原本とも呼べる物は当然別。見られない為の工夫を凝らすのが自然だ。目の前の箱が今さっき浮かんだ仮説を裏付けるに他ならない現物であると、フリーレンには思えてならない。
箱はノートを入れるには細長く、巻物のように丸めでもしなければ入らないように思えるが、ノートの重要なページだけを切り取ってこの中に残している可能性はあるのではないか。とにかくここまで来てしまったのだから、中身を確認する価値は大いにあるだろう。フリーレンは箱を開ける決意を固めた。
さて、確かに封は並の魔法使いでは歯が立たない程度に厳重ではあるが、それと対峙しているのは1000年以上を生きた大魔法使いフリーレンである。
「残念だけど、相手が悪かったね。こと箱開けに関してなら私には自身があるから」
厳重な防御が施されているが、それ自体はフリーレンにとって障害にはならない。魔法で防壁さえ突破できれば後はこちらの物。この中に暗号化されていない情報があるのだとしたら、謎の文字の解読という困難を実質的にスキップして、単純な魔法使いとしての実力で勝負できるという事でフリーレンにとってこれ以上なく都合がいい。フリーレンは箱を開けるための魔法を発動しにかかる。
(ごめんね…フェルン…)
とはいえやはり込み上がる後ろめたさから、内心で弟子に謝罪した。だが、ここまで来てもう後に引く選択肢はない。気になる物は全て確認し、それで違っていたなら今度こそ綺麗さっぱり諦めよう。
(フェルンの秘密、暴かせてもらうよ─────)
フリーレンが魔法を発動すると障壁は呆気なく突破され消え去り、そのまま箱の蓋に手をかけ持ち上げると隠されていた中身が露となる。フリーレンが箱の中身を覗き込むと予想していた通り更に何冊かのノートが見えたが、しかしそれらはフリーレンにとって意識の外だった。そんな物よりもずっとフリーレンに衝撃をもたらした物体が、箱の中にはあったからである。
そこには、フリーレンがまるで予想もしていなかった物体が存在していた。
「え……?」
思考が空白に支配される。呼吸が自然と浅くなり、視界が霞むような感覚さえフリーレンは覚えた。それ程までの衝撃だった。
呆然としながらも震える手で『それ』を持ち上げ、恐る恐る指先でその形状を捉えていく。その感触を味わう程に、自分が見ているものが幻覚か何かなのではないかという考えが否定されていく。長くて太い棒状で、硬さと弾力を併せ持ったクセになりそうな感触。先端はぷっくりと膨らんだ傘を被ったような形状。それは明らかに、図らずもここ数日ですっかり見慣れてしまったのと同じもので。脳の強烈な拒絶感と共に、フリーレンはあるがままの事実を咀嚼するしかなかった。
フェルンの部屋に、男性器をかたどった物体が、存在していた。
「あ、え……なんで……なにこれ……」
先端の部分は大きく反り上がり、強烈な刺激と快楽を女体に与える凶器の形状。鈍く光を反射する、雄々しい質感。
「なんで、フェルンがこんなモノを……」
なんで。どうして。
動悸が激しい。背筋を嫌な汗がつたい、急速に身体が冷え込んでいく。フリーレンの頭の中が疑問で埋め尽くされ、様々な考えが断片的に浮かんでは、纏まりきらずにグルグルと乱れてそのまま霧散するのが次々と繰り返される。
(フェルン……フェルンは………)
しかしそうしている内に少しずつだが、フリーレンの持っていた中途半端な知識と、狭まった思考によって禁断の解答が形成されていく。それはドロドロに溶けた焼き菓子の生地が型へと収まり固まるかのように、やがてフリーレンの中で一つの確固とした答えが導き出された。
(───────全部、フェルンが望んだ事だったの?)
(私に男性器が生えたのも、私が苦しい想いをしているのも、全部全部、フェルンの筋書き通りだったの……?)
側から見たならあまりにも飛躍していると言わざるを得ない発想。しかし必死に押しとどめていた性欲と状況に対しての混乱で、フリーレンはそれこそが真実なのだと完全に思い込んでしまったのだった。
フリーレンはその場にただ茫然と居続けた。当初の目的だとか、フェルンにバレないようにだとか、そんな事は頭の中からもう完全に消え去っていた。フリーレンはまともな思考力をもはや喪失していた。ただ、そんな中でもフリーレンは必死で何かを考えていたようにも思うし、なにも考えていられなかったようにも思う。フリーレンはもう、自分で自分を認識できていなかった。
その状態まま何分、或いは何十分もが経過したのだろうか。突然、フリーレンの背後から声がかけられた。
「フリーレン様……?わ、私の部屋で一体何をしているのですか?」
それはとてもよく見知った弟子の声であった。
「あ……フェルン……」
振り返り見上げると、いつの間にかシャワーを浴び終わっていたらしいフェルンが、フリーレンの真後ろに立っていた。
フェルンの表情は羞恥、驚愕といった感情に染まっており、震える声にそれらが込められていた。その視線はフリーレンの顔とフリーレンの手に握られたディルドを何度も行ったり来たりしている。それに対し、なんだか白々しいな、と、少し冷めた感覚をフリーレンはぼんやりとした思考のどこかで覚えた。自分がフェルンに見つかってしまったという事実に対し、フリーレンが何かを思う事はもはやなく、真っ直ぐに視線を送り返すと、悪びれたりする様子が全くないのが予想外だったのか、フェルンは余計にたじろいだ。
そんな弟子を意に介さず、フリーレンはフェルンの肉体に目を向ける。湯汲みの後でまだ熱が抜けきらずに火照った顔に、ボディラインの浮き出たラフな薄い格好が酷く扇情的に映った。現在のフリーレンにとっては完全に猛毒だ。身体が、熱い。
「あ、あの…!フリーレン様、ここは私の部屋で…」
「ねぇ、フェルン。聞きたい事があるんだけど、いいかな?」
「え……」
やがてフリーレンの悪びれる様子を一切見せない態度に業を煮やしたのか、少し強い語調でフェルンがフリーレンに詰め寄ろうとした。しかし、被せるように発せられた言葉にフェルンはまた勢いを失ってしまう。その言葉は疑問符はあれど実際には有無など言わせぬ意志が込められており、それに押されたフェルンの声は窄んでいく。そんなフェルンにフリーレンは自分の疑問を投げかけた。
「これは、フェルンが使っている物なの?」
持っているディルドを振って見せて、言い逃れをさせないように強調する。フェルンの目が大きく見開かれ、自分の耳にした言葉への懐疑、羞恥といった感情により、ぱくぱくと口を開閉させた。そんな弟子の様子をフリーレンは静かに見つめる。
「な、なんでそんな事…」
「いいから答えてよ」
やがて絞り出すように発した言葉を切って捨てられ、フェルンの心に失意が浮かんだ。
「…………………そうです…」
「そう」
フェルンの弱々しい声での返答を聴いたフリーレンの声は、対照的に感情の色を感じさせない無機質なものだった。そしてフリーレンの問答はこれで終わりではなく、尚も容赦なく続けられる。
「それで?どうしてるの?」
「どうって…」
「どんな風に使ってるのかってこと」
「そ、それは…」
より具体性を増した質問を受け湧き上がる羞恥心と、今まででは決してなかったフリーレンのまともに会話を交わすつもりのない一方的な姿勢を前に、フェルンの感情は動揺に支配されていた。
「な、舐めたり…」
「へぇ……舐めるんだ…他には?」
「他にって…」
「他にはどんな事をしているの?」
「……」
いよいよ答えに窮したフェルンは沈黙するが─────
「……………れるんです」
「え?」
「挿れるんですよ!」
観念したのか、矢継ぎ早なフリーレンの質問に遂にフェルンは声を荒げ、殆ど自暴になって返答した。
「入れるって、どこに?」
「お股にです!」
「……そうなんだね…」
「も、もういいですか?私がそれで何をしていようとフリーレン様には関係ないじゃないですか……とにかく、今は部屋から出ていってください……!」
一連の質問は、フェルンにとって余りにも残酷なものであった。いくら付き合いの長いフリーレンとはいえ、このように人の密事を暴き立てるような真似は受け入れられない。とにかく今は互いにひとまず落ち着こうと、フェルンはフリーレンを一旦部屋から出そうとするが──────
「関係なくなんか、ない…」
「…え?」
その場で俯いたフリーレンが発した言葉に、フェルンは異様なものを感じとった。
ビキ……
「ほんとは全部知ってたんでしょ」
呟くような小さな声量の言葉がやけに重たく響く。
「ずっと私を誘うような真似して、しかも自分はこんなモノを使って愉しんで……」
フリーレンは思い返す。この数日間、目の前の弟子が見せた無防備な姿、仕草に、一体どれだけ心を乱されたか。激しく心臓が脈打ち、目眩がするかという程の限界の中で妙に意識は冴え渡っていて、どこか冷静に自分の行動を冷めた目で俯瞰する自分もいた。
ビキ……ビキ……
しかし、もはやフリーレンには自分を抑える選択肢はなかった。なぜなら、フェルン自身が私にそうされたいと願っているのだから。自分はその想いに応えるだけ。
そんな風に、狭まった思考でしか動けなくなってしまったフリーレンの激情を阻めるものはもはやない。
「フェルンは、私が苦しい想いをしているのを影では笑っていたんだね……」
「え……?あ、あの、フリーレン様……?一体なんの話を……」
尚も白々しい素振りを見せる弟子を前に、フリーレンの心には憤りと共に不思議と安堵の感情が存在していた。
なんだ、フェルンだっていつもそんな事をしていたんだ。だったら自分が後ろめたい想いを感じる必要など全く無かったんだ。遠慮なんていらないんだ。
理性が、壊れた。
前に踏み出すと、フェルンの身体を抱きしめて、そのままベッドへと押し倒した。
突然の行動にされるがままのフェルンに、フリーレンは顔を近づけ─────
───────フェルンにキスをした。
「─────っ!!!?」
その行為にフェルンの目がいっぱいに見開かれたまま、完全に硬直する。しかし、すぐにそれを上回る衝撃がフェルンに訪れる事となった。フリーレンのキスが、あまりにも情欲に満ち溢れたものだったのである。
「あむ、ちゅうっ、じゅるっ」
「ん、んん゛〜っ!!?」
フリーレンはやり方など詳しく知らないため唇同士を合わせるだけだが、それでも貪るように吸いつかれるそのキスは、フェルンにフリーレンの本気さを理解させるには充分だった。
「ん……っ、ぷはっ…フリーレン様、ちょっと……っ!!」
後戻りのできない行為に及ぼうとしていると悟ったフェルンは身を捩りフリーレンの腕の中から抜け出そうとするが、フリーレンは上から自分の体重をかけ、脚を絡めてもがくフェルンの抵抗を制圧した。そうしてフェルンを逃がさないようにしたフリーレンは、再びフェルンの唇を蹂躙しにかかる。
(フェルン……♡)
柔らかな唇を貪る度にフリーレンの脳に蕩けそうな程の多幸感が押し寄せてきて、もっと互いを感じ合おうと更に堅くフェルンを抱き締める。より激しく密着した事でフリーレンの剛直がフェルンの下腹部に押し当てられる形となり、混乱に支配されていたフェルンはここに来てようやくその異質な感触に意識が向いたようだった。
「…!?、…………っ!!!!?」
瞬間、フェルンの混乱は最高に達した。その様子を見たフリーレンは唇を離し、一旦フェルンを解放する。するとフェルンは守るように両手で口元を隠しながら、掠れた声で疑問を口にした。
「はぁっはぁ…っ……フ、フリーレン様……一体…なにが…」
「なにって、フェルンは分かってるでしょ」
「え…?」
フリーレンはフェルンに馬乗りになった体勢からそのまま膝立ちすると、そのまま徐に履き物を下ろして自身の下半身を曝け出す。弟子の目の前に、血管が浮かび上がった凶悪な男性器の容貌が顕になった。
「ぁ、え……?」
今までにないほど膨張し、張り詰めたフリーレンのペニスを前にしたフェルンは完全に硬直した。そんな様子はお構いなしとばかりに陰茎はより力強さを増して脈打ち、目の前の雌の身体を蹂躙し尽くすようにとフリーレンの本能へ必死に語りかける。
「これがずっと欲しかったんでしょ」
巨大なふたなりペニスを見せつけながらそう言うフリーレン。先端からは待ち続けるのも限界とばかりに、先走り汁が次から次へと涎の如く溢れて来ていた。それを自分の指で2、3度指先で軽く擦ると、尿道に溜まっていたカウパー液が押し出されて、激しい勢いで前方へ飛び出ていく。その先にいるフェルンへ向かって。
「お゙っ……ふ♡♡」
それだけでも感じられた擬似的な射精のような快感にフリーレンは思わず声を上げて悶えた。焦がれに焦がれた極上の女体を前にし、その興奮は今までにない最高潮に達しており、想像を絶する快楽への期待がフリーレンを突き動かす。見ると、先走り汁を自身の盛り上がった胸元にべったりとつけられたフェルンはただ呆然としており、尚も無垢を装う表情がフリーレンの心に余計に苛立ちを齎した。最早フリーレンを遮るものは無く、フリーレンは凶悪なペニスを弟子の眼前にしっかり突きつけて見せ囁く。
「………私に教えてくれるかな……あのおっきいのでフェルンが普段どんな事してたのか」
「あ、あぁ……」
「……全部フェルンのせいだよ」
フリーレンはもはや声にならない声を漏らすしかできないフェルンの頭にガシリと強引に掴みかかると、混乱から抜けられない弟子の口内へと自分の剛直を押し込んだ。