俺は楯無と共に、執務室であるやつが来るのを待っていた。
呼び出しをしたため、しばらくすれば来るだろうと待っていたら、思ったよりも早くやつが来た。
バーゲストだ。
「晴の守護者・バーゲスト、ここに」
「わざわざ呼び出して悪かったな。
お前には話があってな。
…楯無」
「はーい、じゃあここからは私が話をするわね」
「は、はぁ…」
俺の代わりに、楯無が用件を話し始める。
「実はね、あなたが冤罪に掛けられたという、殺人事件のことを調べていたのよ」
「…っ、そうですか」
楯無の言葉に、一瞬だけ同様するバーゲスト。
バーゲストが冤罪に掛けられた、育ての親である叔父の殺人事件だ。
第一発見者であるバーゲストを、家族皆が彼女を犯人に仕立て上げ、そしてあの違法な研究施設に送り込まれるきっかけになった事件だ。
「余程あなたを貶めたかったらしく、真犯人を突き止めるのも苦労したわ。
けど、やっと見つけたのよ。
あなたの伯父上を殺した犯人がね」
「何だと…!」
バーゲストは、強い怒りと殺意の籠った目を、楯無に向ける。
そのせいか、空気がビリビリと伝わる。
「落ち着け」
「ですが、旦那様! これは!」
「お前はすぐに熱くなる。
話を最後まで聞け」
「ぐっ……」
俺がたしなめると、バーゲストは一呼吸置いてから再び楯無を睨み付けた。
「ごめんねぇ? そんな怖い顔しないでくれる?」
「っ、すまない……」
楯無に困ったように笑いかけられ、バーゲストはしゅんとする。
「…でね、そいつはあなたの伯父上を殺した犯人は、ある派閥が雇った殺し屋よ。
それも、あなたの伯父上と対立してた派閥が、あなたの家族と手を組んでね」
「何……?」
楯無の言葉に、再び殺意を溢れさせるバーゲスト。
「……旦那様!」
「落ち着け」
今にも飛び出そうとするバーゲストに、俺は同じ言葉をかける。
バーゲストは唇を噛みながら、今度は楯無を睨み付ける。
「……くっ……だが、どうしてその殺し屋が伯父上を殺したのだ?
確かに、家族からは嫌われていたが……、派閥と対立してたなんて」
「えぇ。
あなたの伯父上は、イギリスの王族に仕えた騎士で、弱気を守るために力を奮う高潔な精神を持ってた。
だけど、その高潔さが王族にとっては目障りだったらしいのよ」
「そ、そんな理由で……!?」
バーゲストが驚愕する。
「最初は家族と手を組んで、罪をなすりつけようとしたのよ。
だけど、あなたの伯父上が己の潔白を証明した上で反論したせいで計画はご破算に。
そこで今度は刺客を送り込んで殺させたのね」
楯無の説明に、バーゲストは押し黙ってしまう。
「その刺客が、その派閥が雇った殺し屋、ということか」
「えぇ。
その刺客は、あなたの伯父上を殺してしまった後、証拠を隠滅し、家族があなたに罪を擦り付けたの」
「何ということだ……」
バーゲストは、怒りを堪えるかのように顔を俯かせる。
「旦那様、楯無がこのような話をしてるということは」
「あぁ、そいつらが今、俺の街の近くに来てる。
お前の家族、特に手を組んだ派閥は伯父を殺した殺し屋を含めて大勢の殺し屋と凶悪殺人犯などを雇ってやがる。
んで調べたら俺の街に何人かそいつらが蔓延ってて、色んな所で睨みを効かせてやがるし、何人かが拉致されてる。
おかげでそれにビビってカタギどもが安心して眠れねぇでいる。
だから近日中、出来れば明日にでもこいつらをとっちめる。
お前にとっても、因縁のある相手だから、こうして話をしたって訳だ」
「とっちめるって、始末はしないんですか」
「逆に聞くが、お前は伯父を殺して罪を擦り付けるような奴らの同類になりてぇのか?」
「……っ」
俺の言葉に、バーゲストが黙り込む。
「大丈夫よ、そんな奴らには地獄を見せてあげるんだから。
むしろ向こうが殺してくれって懇願するようにね」
楯無が力強く言う。
「そ、そうか……」
安心させるように話す楯無に、バーゲストは力なく返事をすると、俺の方を向いた。
「旦那様。
お願いがあります」
「何だ?」
「私も、その作戦に参加させていただきたい!」
バーゲストの言葉に、俺はため息をつく。
「そのための確認として話したんだがな。
…楯無」
「良いんじゃないかしら?」
俺が楯無に話を振ると、あっさり了承した。
「他の守護者にも言うが、殺すなよ。
全員生け捕りにして、脱出も反撃もできねぇように拘束してから、洗いざらい吐かせてやる。
もちろん、拉致されたカタギの救出もな」
「旦那様のお心のままに」
バーゲストが、恭しく頭を下げる。
「よし、なら作戦会議だ。
楯無、残りの守護者を集めろ」
「了解♪」
こうして、作戦会議が始まり、翌日殴り込みに行くことになった。