「ねぇ一馬〜肩揉んで〜」
「何で執務室に居座ってそんな格好になるんだよ」
俺の守護者第一号の更識楯無。
対暗部用暗部組織、更識家の当主。
そいつが今、執務室でブラウスと下着だけの格好でソファに寝そべり、足をパタパタさせていた。
「良いじゃない、これでも素早く対応できるんだから」
「目のやり場的なこと考えろバカ。
…さてはお前、本名は痴女だったりするのか?」
「失礼ねっ!? 何でそうなるのよっ」
「いや、こんな格好してるし」
「バカにしてるでしょ?」
「あぁ。そうだな」
楯無は結構エロい身体をしている。
女に飢えた野郎共が興奮しそうな身体だ。
格好も相まって、ここに俺以外の野郎がいたら間違いなく襲われそうだな。
「一馬の馬鹿っ!!」
頬を赤くしてそう言うと、楯無は近くにあったクッションで顔を隠した。
「そんな格好をしてるお前が悪いんだよ。
…ほら、わかったらとっとと着替えろ。
今度こそ痴女認定するぞ」
「…わかったわよ」
この格好が一番楽だし一馬を誘えるのにと、不貞腐れながらちゃんと服を着る楯無。
俺はその間、執務で書類に目を通す。
「今日の予定の確認かしら?」
「そうだな。
雑務は末端に任せられるとして、これは俺が出向いたほうがいいな」
「どれどれ?」
書類を楯無に渡して読ませる。
「敵対組織の基地への奇襲?」
「あぁ、奴らは俺らの縄張りで勝手に薬を売り払ってやがる。
それも、女子供相手に。
だが、奴らの基地は警備が厳重だ。
だから、奴らの警備が手薄になる交代の時間に一気に攻める。
こちらもなるべく犠牲は避けたいから、人員は俺を含めて数人にするつもりだ」
「なるほどね。
じゃあこれ、私一人に任せてもらえるかしら?」
「おい、一人は無茶があるだろ。
せめて俺も行かせろ」
「なら、一馬はそばで見てれば良いじゃない。
それに守護者の私の実力、見てみたくないかしら?」
と、流れる水と扇子の模様が入った匣を見せる楯無。
「お前匣まで持ってるのか」
「裏の世界で戦うためよ。
ちなみに自作」
「マジかよ…」
「で、どうするの?」
「そうだな。じゃあ俺はお前のバックアップに回る。
それで良いなら許可しよう」
「決まりね」
楯無は書類を大事そうにファイルに入れ、笑顔を向ける。
その笑顔が俺をドキッとさせたことにこいつは気付いていないだろう。
「じゃあすぐ行くの?」
「そうだな。準備出来たらすぐにでも行こう」
俺達はしばらくして準備してから、敵組織の基地に来た。
見ての通り、交代の時間か警備が薄い。
双眼鏡で遠くからその様子を見る俺たち。
「やっぱり警備は手薄ね。
じゃっ、始めますか!」
「おう、お前の実力見せてもらうぜ」
楯無の雨のアモーレリングに死ぬ気の炎が灯る。
そして、2つの匣に炎を注入し、開匣される。
一つは彼女の体を覆う水のヴェールとなり、もう一つは楯無の手に握られた水を纏う槍となった。
「…あら、守護者に選ばれたからか、出力も大分上がってるわね」
「それがお前の匣兵器か」
「そう、これが私の匣兵器、
じゃあ行ってくるわ」
槍を手に、一瞬で消える楯無。
その瞬間、基地の入口が爆発音と共に吹き飛んだ。
「うぉっ、初っ端から派手にやってるな…」
楯無に続くように、敵に見られないように俺も中に入り、倒れた敵を縄で縛りながら楯無の活躍を見る。
その先では奇襲をかけた楯無が槍を振るっていた。
「はぁ!」
水の見た目をした雨の炎の鎮静効果により、硬い装甲がまるで水に濡れた紙の如く容易く切断されていく。
「なんだ! 何事だ!?」
「侵入者だ!!」
突然の襲撃に、狼狽える敵。
楯無はそんな奴らに情け容赦ない雨の鎮静の水蒸気を噴出させる。
するとどうなるかと言うと……。
「……あ、あれ?何で体が」
武器を落とし、動きが鈍くなる敵たち。
楯無は雨属性の鎮静効果により、敵の動きを鈍らせて完全に無力化してしまった。
「何だこの女!?」
「し、侵入者だ! やっちまえっ!」
と、銃を構えて楯無に撃ち込む。
「きゃっ」
銃弾を撃ち込まれ、怯む素振りを見せるが。
「なーんてね♪」
可愛らしく舌を出して、余裕の表情を見せた。
彼女の前に展開された水のヴェールが、着弾した銃弾が届く前に雨の炎で威力や速度を無効化して地面に落ちる。
「ば、化け物かこの女!?」
「失礼ね、レディーの扱いが慣れてないんじゃないの?」
「ひっ」
「覚悟なさい」
楯無は敵を一瞬で無力化し、基地の制圧を完了させた。
「これで全部?」
「あぁ、お前がぶっ飛ばしたから他の奴らは縄で縛っといたし、今回収班を手配してる」
「了解。
……それで、一馬は私の実力を見てどうだった?」
「あぁ、俺が心配するまでもないな。
正直ここまで強いとは思ってなかったよ」
「ふふっ、そう!
なら、あなたの役に立てて良かったわ♪」
「じゃ、帰るか」
「そうね。帰りましょう!」
と言って、俺たちはその場を後にした。
この時、誰かが俺たちのことを見ていたとは思いもせずに。