※この作品はR-18です。

六人の愛の守護者   作:ガンダムラザーニャ

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死に場所を失った侍

私はバーゲスト、アモーレファミリーの晴の守護者だ。

 

今は街の平和を守るため、街の巡回を行っている。

 

強者たるもの、弱き民を守るのが務めだからな。

 

えっ?口調が違う?

 

ふっ、今の私は守護者、つまりは騎士だ。

 

メイドでは、街を守れん。

 

オンオフを切り替えてると言ってもいい。

 

ゆえに、私は今守護者として街を闊歩している。

 

私は街を歩く。

 

街を行き交う人々は笑顔で溢れている。

 

彼らがこうして平和に暮らしていられるのは、アモーレファミリーが守っているからだ。

 

私も、その一員として彼らを守っている。

 

最初こそ、私は自暴自棄になって彷徨っていたこともあって、彼らに恐れられていたが、誠心誠意を込めて彼らを他の組織から守り続けたことで、今や街を歩けば声を掛けられる程に、街を守る守護者として信頼されている。

 

とてもいい事だ。

 

「あっ!バーゲスト様!今日もお勤めご苦労様です!」

 

「ああ、お前達もご苦労。

 

何かあればいつでも頼ってくれて構わないからな」

 

「はい!ありがとうございます!」

 

行き交う人々の笑顔、それこそが我らの誉れ。

 

こんな日が、いつまでも続けばいいのに。

 

そんなことを思っていると、一人の住人が怯えた様子で私に駆け寄ってきた。

 

「バ、バーゲスト様っ!」

 

「む、どうした?

 

何かあったのか?」

 

「そ、それがこの街に、刀を持つ、鬼のような侍が近づいているのです!!」

 

「侍…?」

 

確か、この日本にかつて存在したという、日本刀という武器を携えた戦士のことだな。

 

それに確か、噂で聞いたことがある。

 

ある戦いで死に損なった侍の少女が、死に場所を求めて戦場や組織を渡り歩いていると。

 

しかもその力は鬼の如く強く、剣一本でその尽くを鏖殺したと。

 

そんな少女が、この街の近くに来ているということか。

 

「わかった。

 

ならその目撃した場所を教えろ。

 

私が対処する」

 

「は、はい」

 

住人から教えられた廃墟に来た。

 

見たところ誰もいない。

 

だがここで見掛けたと言うからには、そう遠くには行ってないだろう。

 

私は匣を開匣し、鎧を纏って聖剣を握り、周囲を警戒する。

 

するとそこへ。

 

「そこな武人」

 

と、フラフラと廃墟の奥から誰かが近付いてきた。

 

今どき珍しい、袴姿の少女だ。

 

長い髪をリボンで結び、どこか兎みたいな印象を受ける。

 

顔には大きな切り傷があり、それがより彼女を浮世離れさせている。

 

手には仰け反った刀が握られていた。

 

だが、少女の目は虚ろで、生きる希望すら抱けずにいる状態だ。

 

「貴様が、侍か?」

 

「左様、某は侍、女に非ず。

 

…貴殿を強き者と見受けました。

 

ぜひ、立ち会いたく候」

 

構えた刀は陽の光に煌めく。

 

それに対して少女の瞳は闇にいるかのように暗い。

 

「貴殿ならばこの首、斬り落としてくださるか?」

 

「っ!!」

 

とてつもない勢いで一瞬で距離を詰められた。

 

反射的に聖剣を構えて防御したが、重い一撃に吹き飛ばされそうになる。

 

くっ、何て強さだっ!!

 

そんな華奢な体から、一体どれほどの力を?

 

私はすぐに体勢を立て直し、少女に向かって剣を振るった。

 

だが少女は私の一撃を軽々と弾き、即座に反撃の斬撃が繰り出される。

 

速いっ!! 目で追うのがやっとだっ!!

 

「っ!くっ!!」

 

なんとか防ぎきるも、次々と攻撃が繰り出されてくる。

 

まるで暴風のように凄まじい乱撃だ。

 

負けじと反撃するも、紙一重で避けられてしまう。

 

鎧が刀で打ち込まれる度に軋む。

 

あと数発打ち込まれたら凹むか、あるいは砕かれるかもしれない。

 

幸い、私の体はどれだけ傷ついても再生する。

 

だが、このままでは埒が明かない!

 

動きを止め、私は集中する。

 

彼女の動きを止めるには、目で追うのがやっとな私ではこれしかない!

 

「ふぅ──……」

 

素早く重い攻撃を受けながら集中する。

 

全身に晴の炎を巡らせ、より強く活性を促す。

 

そして、私の胴体を斬り裂かんとする彼女の刀を弾き飛ばした。

 

「ぐっ!?」

 

私は即座に少女の腕を掴み、彼女を地面に叩き付けた。

 

「ふっ!!」

 

「っ!?」

 

そのまま彼女の鳩尾に拳を入れる。

 

すると少女の目から光が消えるのを確認出来た。

 

彼女が完全に意識を失ったことを確認すると、私は彼女を担ぎ上げ、アジトへ戻る事にしたのだった。

 

私の部屋に連れていき、ベッドに寝かしつけ、しばらく目が覚めるのを待った。

 

「…んっ?」

 

彼女は目を開けムクリと体を起こした。

 

「ここは?某はどうして」

 

「気が付いたか」

 

「き、貴殿はっ」

 

私の声に反応し、彼女は腰に手を伸ばすが、刀がないことに気付く。

 

「済まないが武器はこちらで預からせてもらった。

 

心配せずとも、私は貴様と戦う気はない。

 

とりあえず水を飲め」

 

「…かたじけない」

 

コップに入れた水を差し出せば、彼女は素直に受け取り、ちびちびと飲み始める。

 

私は彼女の向かいの椅子に座り、話しかけた。

 

「改めて、貴様は侍だな?」

 

「……いかにも」

 

「どうしてこの街の近くに来た?

 

いや、それよりも今までどこで何をしていた?」

 

「某は戦場で死に損ない申して候……故に某が満足できるような戦場を求めて彷徨っておりました」

 

「……」

 

なるほど、では数多の組織や戦場を駆け抜け、刀一本で鏖殺したという噂は本当なのだろう。

 

「某は今の時代では珍しく見られる武家の出身。

 

名を月鍔ギンコと申す。

 

この度は、武人としての誉れを求め、貴殿に手合わせを願った次第」

 

「そうであったか。

 

私はバーゲスト。

 

アモーレファミリーの晴の守護者だ」

 

「アモーレファミリー……?」

 

「ああ、私の所属している組織の名だ」

 

「では貴殿に聞こう。

 

なぜ某を殺さなかった。

 

某は、貴殿と戦い、貴殿を殺そうとし、そして某もまた、貴殿の刃にて死することもまた本望であった。

 

それなのに何故」

 

「…貴様の刃は、確かに凄かった。

 

だが、命のやり取りとは言え、何も殺すことはないと思ったまでだ」

 

「……左様か」

 

ギンコはどこか不服そうに顔を逸らした。

 

私は咳払いをして話題を変えることにした。

 

「ではギンコ、貴様はこれからどうする?」

 

「どうするも何も……某は戦場でしか生きられぬ身。

 

どこにも行く宛などあり申さん」

 

「……なら、ここにいても構わない」

 

「なんと……?」

 

驚いたように私を見るギンコに私は頷いた。

 

「私には仕えるべきボスがいるが……彼は寛大なお方だ。

 

きっと貴様の力になってくれるだろう」

 

私がそう言うと、ギンコはきょとんとした顔をした。

 

「どうした?」

 

「貴殿は、某を……このような鬼を傍に置きたいと申されるのか?」

 

「ああ、そうだが?

 

その腕前と、戦場に死に場所を求めていたという貴様の生き様、気に入った。

 

それに貴様はこの街の近くに来ただけで、街に被害を出していない。

 

私からもあのお方に推薦し、その腕を街を守るために使ってはくれないか?

 

貴様なら、強い守護者になれるかもしれんのだ」

 

私がそう言うと、ギンコはじっと私を見た後、小さな声で呟いた。

 

「某は……侍です。

 

たとえ戦場に生きられぬ身になろうとも」

 

「確かに貴様は侍なのだろうな。だが私も騎士なのだ」

 

私は椅子から立ち上がり、彼女に向かって手を差し伸べた。

 

「ギンコよ、我らの力になってくれないか?」

 

「……承知した」

 

ギンコはおずおずと私の手をとった。

 

そして私は彼女のことを旦那様に話し、守護者にしてもらうことにし、ギンコもそれに賛同してくれた。

 

「ギンコ、よろしく頼むぞ」

 

「はっ」

 

こうして、アモーレファミリーに新たな仲間が加わったのだった。

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