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あたしは暁切歌、気が付いたらあたしはこの施設にいたデス。
ここに来る前の記憶がないデス。
あるとしたら、あたしの名前が暁切歌であること、それだけデス。
それ以外のことは、あたしは知らない。
覚えてない。
名前は覚えてるのに、それ以外は誕生日すら覚えてないのデス。
でも、施設に入れられたあたしは、来る日も来る日も、実験を受けさせられたデス。
痛くて、辛くて、苦しい日々で、実験の成果が出ないと、その日のご飯は抜きにされて、殴られたり蹴られたりしたデス。
そんなある日、かなり大きい女の人が施設に来たデス。
何か施設の間じゃあの人はブラックドックと呼ばれて、しかも体が頑丈だからってあたし以上に酷い実験を受けさせられてたデス。
しばらくしたある日、あの人は暴走して、施設は壊滅したデス。
あたしはその時牢屋に入れられて、無事だったデスが、あたし以外は皆死んで、建物もめちゃくちゃ。
何とか脱出に成功したけど、あたしお金がなくて、ご飯も食べれなくて、いつだっておなかぺこりんこデス。
「はむっんぐっ!げほっげほっ!」
行く宛がなく、彷徨い続け、あたしはゴミ箱の中を漁ってまだ食べれそうなものを見つけて、食べるのデス。
正直、全然美味しくないデス。
臭くて、冷たくて、不味くて、吐きそうで。
しかも通り掛かる人たちの視線が痛くて、冷たいデス。
でも、あたしは生きるために食べるデス。
こうでもしないと、生きていけないから。
「あむっ!もしゃっ!げほっげほっ!」
不味さと臭さに咳き込みながら、ゴミ箱を漁って、今日もあたしは何とか食べれそうなものを探し回っていくデス。
するとそこへ。
「あんた、そこで何してるのよ?」
「っ!?」
不意に後ろから声を掛けられ、恐る恐る振り向くと、多分あたしよりも小柄な、長い緑の髪の女の子がこちらを見てきたデス。
「…あんた、もしかして食べるものがなくて困ってるの?」
「ふぇっ!?い、いやぁ、これは違うデスよ!?
ちょーっとご飯がゴミ箱に入っちゃって、探してる最中と言うデスか…」
「いや、それはそれでばっちぃわよ。
…はぁ」
あたしが慌てて言い返すと、その子はため息を吐いたデス。
「全く、仕方ないわね。
ほら、付いて来なさい」
そう言ってその子があたしの手を引いて歩き出すデス。
「ふぇ!?な、なんで、デス?」
「私、ちょうど皆とお昼食べるから。
あんたも来なさい。
一人増えた所で、どうってことないし」
そう言って、その子はあたしを引っ張るデス。
「わわっ!ま、待って欲しいデス!」
「いいから来なさい」
あたしの制止も聞かず、その子はあたしを連れて行ったデス。
連れてこられたのは、大きなレストランだったのデス。
とてもいい匂いが立ち込めて、涎が出てきそうになっちゃうデス。
「…じゅるり」
「あんた涎出てるわよ」
「ふにゃっ!?そ、そんなことないデス!?」
慌てて袖で涎を拭くと、中に連れて行かれる。
店員さんがあたしたちに向かっていらっしゃいと言う。
女の子が待たせてる人がいるって一言言ってレストランの奥に連れられたのデス。
するとそこへ、一人の男の人が座って、たった今食事が運ばれた所だったです。
そして、男の人に向かって、彼女は。
「この子にスパゲティを食べさせてあげたいけど、良いわよね!!」
って、あたしに宣言したデス。
「え?」
突然のことに、あたしは呆然とするしかなくて。
でも男の人は何を聞くわけでも、かと言って不機嫌な顔をするわけでもなくて、それが当然のように自分に運ばれた美味しそうなスパゲティを、あたしに差し出したデス。
「え?あ、その……えっと……」
あたしはどうしていいのかわからないまま、男の人を見返すと、その人もあたしを見返してきて、まるでそれが当たり前みたいな雰囲気だったデス。
そして、気付いたらあたしはその人の隣に座らされて、スパゲティが出されるのを見届けてたデス。
「ほらっ!食べなさい!」
そう言って彼女はあたしを急かすのデス。
今までそんな風にされたことなかったデス。
食事も、酷いときは虫が集ってたり、腐りかけてたこともあって、それを食べるしかなくて。
そんなあたしに、この人は。
「あむっ」
あたしは出されたスパゲティを一口食べるのデス。
「美味しい……デス……」
思わずそう言うと、あたしはお行儀悪く、スパゲティにがっつき始めたのデス。
美味しい。
こんな美味しいもの、初めて食べたデス!
すると、目からポロポロと涙が溢れて止まらなくなって、どんどん出てきて。
「ぐすっ、ひぐっ……うぅっ!」
泣きながらあたしはスパゲティを食べるのデス。
そんなあたしを彼女と彼はただ隣で見守りながら、ずっと頭を撫でてくれてたのデス。
一通り食べ終えて、しばらくしてから、屋敷に連れられて、お風呂に入らせてもらったデス。
脱出してから、あたしはお風呂に入れなかったから、ボロボロに汚れて自分の臭いが鼻につくことが時々あったデス。
だから、お風呂に入れなくて臭かっただろうに、そんなあたしを快くお風呂に入れてもらったのデス。
お風呂を上がると、あたしにピッタリなサイズの着替えが用意されてて、それを着させてもらったのデス。
サイズがぴったりなのは、きっとあの子、男の人から七罪って呼ばれてたあの子があたしのことを見てたからだと思うデス。
着替え終わってから、七罪が来て、部屋に案内されちゃったのデス。
とても綺麗な部屋デス。
「ここは」
「あんた、見たところ帰る場所がなさそうだったから、拾った私が面倒を見るって条件で一馬、さっき私といた男から部屋を借りたのよ。
ここには生活する分には困らないし、お金の心配もしなくていいわよ」
そう言って、彼女はあたしの頭をそっと撫でたのデス。
「あ……」
あたしは思わず七罪の手に触れると、その手は小さくて柔らかい女の子の手で、とても気持ちいい手だったデス。
「え?ちょっと何よ?」
「ごめん……なさい……でも、嬉しくて」
あたしがそう言うと、七罪ははぁってため息を吐いたのデス。
「まぁ、あんたが今までどこで何してたかなんて私は知らないけど、何か困ったことがあったら、私に頼りなさい。
いやじゃなければ、ね」
「…じゃあ、一つ聞いても良いデスか?
何であたしなんかのために、こんなにしてくれるのデスか?」
「何でって?
…強いて言うなら、あんたが私に似てたからよ。
それだけ」
「えっ?」
「碌に洗濯も食事も入浴もできない境遇が、私にもあったって言ってるのよ。
もっとも、私のはあんた以上に酷かったけどね」
「……」
「そんな訳で、これから宜しくね。
…そう言えばまだ名前、聞いてなかったわね。
あんた、名前は?」
「あたしは切歌、暁切歌って言うデス。
……宜しくお願いしますデス」
「ふっ、そう。
じゃあ、よろしくね切歌」
「はいデス!」
こうして、あたしのここでの生活が、始まったのデス!
実験しか知らなかったあたしに、掃除洗濯、料理と、色々と教わりましたデス。
それに、ここに来るまで碌に食事が取れなかったから、あたしの体はかなり細かったデスけど、今じゃちゃんとご飯が食べれるようになって、健康的に成長できたデス!
…特に、胸を見られたりすると、ガチ目の舌打ちをされるのはちょっと怖かったデスけど、七罪はあたしの恩人デス。
あたしに優しくしてくれる人は、七罪が初めてだったのデス。
だから、あたし、そんな七罪に恩返しをしたいのデス!
それに、記憶がなくて自分の誕生日を知らないことを言ったら、一馬が『それならお前がここに来た日を誕生日にすればいい』って言ってくれて、とても嬉しかったデス!
あと、ここに来てからは驚きが盛り沢山デス!
何とあたしと同じ施設にいたブラックドックさん、いやバーゲストさんがここで晴の守護者として働いていたのデス!
まぁ面識がなかったから、あの人はあたしのこと知らなかったみたいデスけど…。
他にも楯無さんも、あたしに女の子としてのおしゃれを教わりましたデス!
あとギンコさんという人がいるんデスけど、あの人の立ち振舞に刀の使い方とか、マジでヤッベーデス!
これぞジャパニーズサムライって感じデス!
もうここに来てから、あたしの世界が広がったのデス!
あたしを拾ってくれた七罪に、誕生日をくれてここにいてくれることを許してくれた一馬に、恩を返すために、あたしはここで生きていくデス!