そろそろエロシーンに入りますが、序の口でしょうか。
機械相手なのでそう見えない方はすみません。
「あっ、多輝くん……」
頼りなく呟いた直後、由梨佳の表情が消える。多輝はのろのろと由梨佳を振り返った。無表情になった由梨佳の目が青く光る。
「試運転が正常に完了しました。ヒューマノイドサステイニングシステムをインストールします」
感情のない声で告げた由梨佳を多輝はじっと見つめた。どうやら機体は正常に起動したようだ。しばしの後、由梨佳は何度か瞬きをした。目の色がゆっくりと元に戻る。
「ヒューマノイド全般に対する、情報ブロックを解除しました」
機械的に報告する由梨佳を見つめながら多輝は立ち上がった。
「精神安定度99.9999パーセント。各部動作良好。通常動作モードに復帰します」
報告が完了したのだろう。由梨佳の顔に表情が戻ってくる。多輝は大丈夫か、と由梨佳に声をかけた。
「大丈夫……だけど」
そう応えた由梨佳が毛布の中で身じろぎをする。眉を軽く寄せて何事かを考えているらしい由梨佳を多輝はまじまじと見た。毛布越しに由梨佳の身体を眺めてみる。どうやら天輝にお預けを食らわされたことが、思っていた以上に身体を追い詰めてくれているらしい。多輝は自分の身体の反応にため息を吐いた。
「多輝くん、少し、少しだけ時間をちょうだい!」
慌てたように叫んでから由梨佳が口の中で何かをぶつぶつと言う。どうやらヒューマノイドの特性についての情報が由梨佳の頭に機械的に流れ込んだようだ。急激に大量の情報を与えられて混乱しているのだろう。多輝は苦笑して由梨佳の頭を軽くぽんと叩いた。
「んな、無理しなくていいって。ゆっくり覚えてきゃいいだろ」
性的衝動をぶつける相手なら他を探せばいいだろう。今は由梨佳に無理強いすることもない。それに由梨佳は記憶をなくしているのだ。例えマスターが自分に設定してあったとしても、その気がないのに抱かれるのは嫌だろう。そう考えた多輝は、衝動を綺麗に隠して由梨佳に笑んでみせた。
「多輝くん! その……いいって言うまで目をつむって」
真っ赤になって由梨佳が言う。
「へ? 何で?」
多輝は目を丸くして由梨佳に訊ね返した。だが由梨佳はいいから、と言うだけだ。多輝は訳も判らないまま、言われた通りに目を閉じた。衣擦れの音にどきりとしつつ、多輝は大人しく目を閉じたままでいた。もしかしたら急にヒューマノイドのあのシステムが作動したのだろうか。だがそう考えてから多輝は首を傾げた。さっきシステムが起動したばかりなら、由梨佳にはストレスは溜まっていない筈だ。
「由梨佳? まだか?」
由梨佳が何をしているのか見当がつかず、多輝は不安からそう訊ねた。力を使えば思惟を拾うのは簡単だろうが、一体どこまで力を使っていいものかも判らない。
「多輝くん、どうぞ!」
緊張した由梨佳の声に促されて多輝は目を開けた。その瞬間、絶句して硬直する。由梨佳がヒューマノイドの標準ポーズと言われる格好をしているのだ。着ているものを脱いだ由梨佳がベッドの上に座り、膝を折った足を大きく左右に開いている。それを目の当たりにした多輝は思わず低い呻き声をもらした。
「私、宇田川由梨佳は、ヒューマノイドとして雨宮多輝をマスターとし、その命令に忠実に従うことを誓います」
か細い声で由梨佳が言う。多輝は額を押さえてめいっぱい眉を寄せた。
「うあー……。よりによってこんな時にそんなかっこすんなよなー」
由梨佳が真面目にマスターとの関係について考察したのはよく判る。だがぎりぎりのところまで我慢していた多輝は、由梨佳の艶かしい格好を目の当たりにして抑制が一気に切れた。くそ、とぼやいてベッドに乗る。
「多輝くん。私、この身体に順調に適応してるみたいだから大丈夫よ。多輝くんがもし良かったら、抱いてください」
「言われなくても我慢出来るかよっ」
苛立ちをこめて言い返してから多輝は靴を脱いで床に放った。手早く着ているものを脱いでいく。
「好かれてるかどうかも判んねえうちはするつもり、なかったのに!」
叫ぶように言ってから多輝はジーンズと下着をまとめて床に放った。現れた多輝のペニスは硬くそそり立っている。それまでじっとしていた由梨佳もそれを目の当たりにして驚いたのだろう。目を丸くしている。
「あの……、私多輝くんのこと、好きです」
真っ赤になって由梨佳が言う。多輝はそれを横目に見ながら靴下をつま先から引っ張った。脱げた靴下も床に放り投げる。
「何で? だって記憶ねえんだろ?」
目覚めた由梨佳とはまだ一時間も一緒にいないのだ。苛々しながら多輝はシャツのボタンを外した。脱いだシャツを床に放り投げて改めて由梨佳を見やる。
「だから、以前の事は知らないわ! 多輝くん、私に告白したでしょう? 多輝くんみたいなかっこいい男の子に、あんなに真剣に想いをぶつけられて、何も思わないほうがおかしいと思うわ」
真剣な表情で由梨佳が言うのを聞いて多輝は言葉をなくした。乱暴に由梨佳をその場に押し倒そうとしていた腕から力が抜ける。ええと、と何とか言葉を紡いだところで多輝は無意識に赤くなった。恥ずかしさに赤くなって俯いた多輝に由梨佳が膝で寄ってくる。
「それとも、私は嫌い? 記憶が無ければ、だめなの?」
上目遣いに多輝を見ながら由梨佳が涙ぐむ。多輝は慌てて首を横に振った。真っ赤になった多輝の顔を覗き込んだ由梨佳が目を見張る。多輝は逃げるように由梨佳の視線から顔を背けた。
「……ごめんなさい」
落ち込んだ風に言う由梨佳の言葉に多輝は慌てて顔を戻した。
「ちっ、違う! おれは、その、好きって言われたこと、ないから」
恥ずかしさに引きつりながら多輝はぎこちなくそう言った。血が頭に昇って耳まで熱い。多輝は情けない気分でまた俯いた。
多輝はいちごですからね……。