※この作品はR-18です。

狩りの終焉 一部   作:伊駒辰葉

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続きです。
ちょっとラストはエロっぽいかも知れません。


祐の決意とやりたかったこと 2

 同じ時期に紫翠の魂も生まれ変わる。二度と同じ過ちを繰り返さないよう、誓約に従って水輝は砂夜の魂を守り続けた。だがその弊害は大きかった。長い歳月を経るに従って水輝は歪みを生じていたのだ。

 

 紫翠の魂の生まれ変わりとして存在したのが立城とその弟である真也だった。立城は紫翠の記憶に従って砂夜を求め、そして真也はそんな立城を庇って死ぬことになった。同時に莢花も水輝を守るためにその命を散らしてしまったのだ。

 

 生き残ったのは水輝と立城、そして渚だけだった。狂った水輝の力と真也の死によって木龍神としての力を得た立城の力がぶつかった地が、この清陵なのだ。

 

 だが紫翠は知っていたのだ。砂夜と呼ばれたあの夜叉は本来は水輝だったのだと。そしてだからこそあの夜叉は砂夜という名前だったのだ。

 

「標として消えるはずだった渚さんを残したのは見事だったわ。立城さんが莢花さんの転生に手を加えたのと相乗効果を発揮して水輝さんを護るはずよ」

 

 今の水輝はかつて記憶を失って仲のいい家族と共に暮らしていた時と同じように、莢花と渚と共にある。渚は今は金龍神としての座位についているし、莢花の魂は奈月に転生している。彼らは誰が頼むでもなく水輝を護り続けるだろう。

 

「今、水輝さんはぎりぎりのところに居るわ。余分な負担を及ぼす邪魔な存在は切り捨てる必要があるの。あの馬鹿母とか、そして」

 

 あたしとか。そう続けて祐は僅かに目を細めた。優一郎は神妙な面持ちで黙って話を聞いている。

 

 順は約束を守ってくれたようだ。今は水輝はこちらからは見えないところにいる。ということは、水輝には外の様子は窺い知ることは出来ないだろう。幸い、順は紫の存在を欲している。水輝から引き剥がして宛がうには丁度いい人材だ。

 

「馬鹿母を処分しなきゃいけないことは、あなたも気付いていたのでしょう? 嫉妬とかじゃないわ。あれは駄目。水輝さんとは根本的に属性が違うから」

 

 この身体を見ればわかるでしょう? そう言って祐は胸に手をあてがった。本来は使い魔として存在すべき筈が、結局はこの機体と水輝の力の相性が悪かったために自我すら形成できなかった。動かすだけなら特に支障はないが、これでは使い魔としては役には立たない。

 

 紫翠は水輝に永遠を約束した。だがそれは永遠に続く幸せを約束した訳ではない。永遠に忘れられないという言わば水輝を壊すための約束だ。そして立城は出来るだけその力から水輝を護ろうとしているのだ。

 

「為すべきことを為しなさい。そして、水輝さんへの想いをきっちり自覚しなさい」

 

 立城のいない今、それが出来るのは優一郎しかいない。祐は真剣に優一郎を見つめてそう言った。すると優一郎が狼狽する。

 

「ぼ、僕は、僕には多輝が……」

 

 呻くように言って優一郎が額を押さえる。優一郎の苦しんでいる原因はそこにあるのだ。だから水輝はあえて優一郎には何も言わなかったのだろう。

 

 多輝はかつて優一郎の元から消え去ろうとした。比喩ではない。本気で死のうとしていたのだ。それを優一郎は必死で阻止した。多輝の使い魔である蒼に激しく抵抗され、肉の器を捨てて優一郎は多輝を護ろうとしたのだ。結果的に多輝は命を取り留めたが、そのことが優一郎の心に強く残っている。

 

「あのバカはもう大丈夫よ。というか、天空の城での話、聞いてたでしょう? あいつはもう大丈夫、きちんと安定してるわ」

 

 祐はそう言って優一郎に頷いてみせた。額を押さえて顔をしかめていた優一郎が不安そうに祐を見る。確かに優一郎にもあの時の多輝との会話は聞こえていたのだろう。だが多輝を失うかも知れないという恐れで今ひとつ信じられないのかも知れない。

 

 多輝は不思議なことに嫉妬と言う感情が薄い。あの時、死のうとしたのは優一郎が斎姫に思いをかけていたことに嫉妬していた訳ではないのだ。優一郎の行こうとしている道に自分が邪魔であると判断して存在を消そうとしていたに過ぎない。

 

「あいつはただ、バカなだけなのよ。でも、あいつは今のあなたよりはずっとマシよ。きちんと想いの折り合いをつけてるもの。認めなさい。あなたは多輝も水輝さんも両方想ってるってことを」

 

 ストレートに言った祐を優一郎がしばし無言で見つめる。それから優一郎は疲れたようにため息を吐いた。だがその顔に先ほどまでの不安の色はない。

 

 水輝と多輝は容姿がとてもよく似ている。特に男性体をとっている時はそれが顕著に表れる。兄弟だと言っても不思議はないほどだ。が、根本的に彼らの本質は全く違うのだ。

 

 自分に近いところに居るものを水輝は全て護ろうとする。自分から手放すことは絶対にない。だが多輝はそこまでのこだわりはない。ある意味では水輝の方が子供に近いのだ。

 

 それは不必要なのだと外から誰が言っても水輝は納得しない。だからこそ強引に剥がし取る必要があるのだ。

 

「お膳立ては出来てるわ。目標は執務室に居る。やるべきことはわかってるわね? 胎を回収して取り込むの」

 

 これで伝えるべきことは伝えただろう。祐は大きく息を吐いてソファにもたれかかった。相性が酷く悪いためだろう。喋ったり動いたりするだけで異様なほどの疲労感がある。疲れてソファにもたれかかった祐を優一郎が静かな眼差しで見る。

 

「自分の始末は自分でつけるわ。とか格好のいい事いいたいけど、この身体のおかげで楽に消滅できそうよ。さあ、早く行きなさい」

 

 それともあたしがオナニー始めるまでいるつもり? 苦笑混じりに言った祐を見つめたままで優一郎が静かに立ち上がる。黙って頷いてから優一郎がその場を離れる。優一郎が静かに部屋を出て行くのを見送って、祐はぼんやりと中空を眺めた。

 

 かつて誓約を残して逝った多くの龍神たちの願っていたことが何となく理解出来る。彼らは誓約を残す代わりに自分達の命を賭けた。中には相手にとって負担にしかなり得ないような誓約もあった。だがそれでも彼らは愛しい人のために祈り、願った末に果てていったのだ。

 

 ほんのささやかな魂のずれが生み出した存在だと祐は自覚していた。優一郎は演技のつもりだっただろうが、本当は水輝が名を呼んだあの時から祐は存在していたのだ。器とは魂の座だ。だが一つの器に別の魂は存在出来ない。どちらにせよ、近いうちに祐は優一郎の器からは弾き出されていただろう。

 

 自然と弾き出されるまで待ってはいられなかった。そんなことになれば水輝は祐の存在に気付いただろう。気付かれればきっと水輝は祐を消さないように動いていた筈だ。

 

「あたしってば格好つけすぎ」

 

 小さく笑った祐の頬に涙が伝う。本当は水輝の傍にずっと居られることを願っていた。だがそれが様々な事柄を歪めてしまうことだと判っていた。それでも祐は夢見ずにはおれなかったのだ。

 

「あー! この身体胸大きい! ちょっと悔しいかも」

 

 泣きながら祐は不服の声を上げた。服越しに乳房をつかんで唇を尖らせる。

 

「優一郎も、人形の子達も真性の変態ね。こんな恥ずかしい身体でよく居られるわ」

 

 泣きたくなればなるほど欲求がこみ上げてくる。祐はため息を吐いて長いスカートをめくり上げた。白い下着に包まれた股間に指を這わせる。既にショーツの底には愛液が染み込んでいた。

 

「んっ、だめっ! 止まらない。ああんっ!」

 

 掠れた声を上げて祐は指を巧みに動かしてショーツ越しに股間を弄った。そうしているうちに次第に意識が薄れていく。誰もいないその部屋にしばしの間、祐の頼りない声が響いていた。




この時の祐の覚悟はすごかったと思います。たぶん。
……まあ、後で色々あるんですけどね……w
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