※この作品はR-18です。

狩りの終焉 一部   作:伊駒辰葉

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エピタイは作者のもの!w
エロシーンはありません。


割り込み失礼というか誰だおまえは 1

 隣にある柔らかいものを抱きすくめていた水輝はぴくりと眉を上げて目をあけた。妙に全身にだるいものを感じながら頭をかく。布団を引っ張り上げようとしたところで手が空振りし、そこで初めて水輝は自分が何もかけずに眠っていたことに気付いた。あれ、と掠れた声で呟いて目を擦る。

 

 見覚えのない光景が目に飛び込んできて水輝は何度か瞬きをした。だがなかなかはっきりと頭が起きてくれない。まどろみながら水輝は腕の中のそれを抱え直した。柔らかな手触りの細い髪に習慣的に唇を落とす。

 

「う……ん。みずき、さん……」

 

 聞き取りにくい呟きに水輝はぴたりと身体の動きを止めた。どうやら寝言らしい。だがその声に水輝は心底驚いた。何故、ここに祐がいるのだろう。呼び声を確かに聞いた気がするのに、当の祐は腕の中にいるのだ。もしかしておれが寝ぼけて跳んだかな、と考えながら水輝は指を軽く鳴らした。水輝に引き寄せられた毛布がベッドに横たわった二人の身体に静かにかかる。

 

 まあいいか、とはっきりしない頭で考えてから水輝は腕の中に祐を抱きすくめた。こうしているだけでほっとした気持ちになる。髪にもう一度口づけをし、額や頬にも唇を落としたところで水輝は祐の名を呼ぼうとした。するとその水輝の唇を何かがぴたりと押さえる。

 

「水輝さん。おはようございます」

「んう?」

 

 いつの間にか目を開けていた祐に唇を指で押さえられた水輝の呼びかけははっきりと言葉にはならなかった。何度か瞬きをしてから水輝は少しだけ眉を寄せた。間近にいるためか、気配がより強く伝わってくる。それを読んだ水輝は絶句して息を飲んだ。

 

「ようやく、仕掛けが外れたみたいですね」

 

 静かな声に水輝はため息を吐いた。手を伸ばして唇を押さえていた指を引き剥がす。目の前に居るのは祐ではない。そのことだけははっきりと水輝にも判った。どうやらこれまで同一だと思っていた優一郎と祐は別の存在だったらしい。水輝は優一郎の身体に回していた腕をそっと退けた。

 

「どういうことだ? 何がどうなってる」

 

 寝起き特有の掠れた声で言いながら水輝は自身の身体を点検した。そうしている内に記憶が戻ってくる。順に嵌められたことを思い出して水輝は鋭く舌打ちをした。

 

「このシナリオを書いたのは茜さんではありませんよ」

 

 穏やかな声で優一郎が言うのを聞いて水輝はぴくりと眉を上げた。だがすぐにごく普通の表情に戻して答える。

 

「そうか」

 

 毛布の中に隠れていた左手を上げて水輝は目を細めた。指輪についていた石が消えている。紫のものと連動していた石の欠落は、あちらの指輪が破壊されたことを意味している。あらかじめ紫につけておいた意識の糸もご丁寧に切られてしまっていて、相手の居る場所すら読むことが出来ない。水輝は頭をかいて深々とため息を吐いた。

 

「でも、手を下したのは僕です」

「そうさせたくなかったんだがな」

 

 真剣な顔つきで言った優一郎に水輝はため息混じりに言った。疲れたものを感じながらベッドに身を起こす。壁に背を預けたところで水輝は宙に手を伸ばした。キッチンに置き去りにしてあった自分の煙草を引き寄せる。

 

「僕もするつもりはありませんでしたから」

 

 煙草に火を点けながら水輝は苦笑した優一郎を見た。優一郎にかなりの負担がかかっていることが見て取れる。深く息を吸い込んでから水輝は煙を天井に向かって吐き出した。

 

「嫌なら出してやるぞ、それ」

 

 淡々と告げて水輝は煙草の先で優一郎の腹部を示した。毛布に隠れたその部分を優一郎がのろのろと押さえる。

 

「嫌ではありませんけど。僕よりも相応しい人物ならいるかもしれません。幸いな事に、彼女の書いたシナリオは完全では無かったみたいですし」

 

 そう言って優一郎が伏せていた目を上げる。水輝は横目にそれをちらりと伺ってから煙草を咥え直した。

 

「お前が拒否するならおれが預かる」

 

 煙草をくゆらせながら水輝は感情の失せた声で話していた。間近にいるだけでそそられてしまうのは最初から判っていたのだ。だからずっと祐には会わないようにしていた。

 

 紫は自分の手を離れた以上、順の元にいるだろう。そちらはほぼ心配はない。例え順が性格的に壊れていようとも、自分と共にいるよりはずっとましだろう。紫をずっと離さなかったのは自分の我がままなのだ。そう考えながら水輝はぼんやりと天井を仰いだ。

 

「保留、してかまいませんか? 僕は彼女の意志を優先したいと思います」

「おれはお前以外に預ける気はないんだがな」

 

 考えるようにゆっくりと言った優一郎に水輝は即座に切り返した。優一郎と祐が別人である以上、祐に預ける訳にはいかない。誓約者はこの世に二人は存在しないのだ。

 

「それではこれは預かります。水輝さん」

 

 判った、と答えて水輝は部屋を見回した。どうやらこの部屋には灰皿はないらしい。仕方ないな、と水輝は手の中に煙草を握り潰した。青白い炎で一瞬で焼き尽くされた煙草が消失する。

 

「それで? どうする? まさかそのまんまにしておくって訳にもいかないだろ。相性が悪すぎる」

 

 顎をしゃくって水輝は呟くように言った。紫から引き取った珠が元々あったそれとぶつかり合っているのが判る。




まだ出てきませんが、このエピソードには変なのが出てきます。
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