エロシーンらしくないので、エロシーンはない、と書いた方がいいかも?
「多輝は機体と生身とどっちの宿体のほうがいいの?」
生身だったらそういう事は出来ないわけだけど。小さく笑いながら優一郎が続ける。多輝は考えを巡らせながら低く唸った。
「おれ、生身でも出来るけど?」
考えた末に多輝は素直に言った。すると優一郎が驚いたように目を見張る。多輝は優一郎の表情を見取って困惑気味に呻いた。どうも優一郎はこれまで気づいていなかったらしい。
「いや、まあ、ほら。こー、入り口んとこをすげえ擦られたいなーとか思った時とか、力いれると余計に擦れて気持ちよかったりとか……」
だから時々やってたんだけど。多輝はそう言いながら恐々と優一郎を見た。
「気づかなかった」
不覚を取ったとでも言わんばかりに悔しそうな顔で優一郎が呟く。あ、と多輝は慌てて首を振った。
「いや! ほら! 最中に気付かれて萎えられても困るし!」
言いながら多輝は切羽詰ったものを感じ始めた。どう言ってもフォローにはならない気がする。
「それにふつー、出来るだろ! 別に珍しいことじゃねえしさ!」
愛想笑いをしつつ多輝はまくし立てるように言った。すると優一郎がうろんな目で多輝を見下ろす。
「統計結果によると、ほとんどの女性が訓練すればできるようになる。逆に言えば普通にできる女性は稀だとなっているけど」
実際はどうなの? 生身の女性を抱いた経験は君の方が多いでしょ? 挑戦的な優一郎の言葉を受けて多輝はあー、と唸りながら頭をかいた。すっかり気分を害してしまったのか、膣内に納まっていた優一郎のペニスは僅かに力を失っている。
「おれは……ほら」
そう言いながら多輝は仕方なく視線を下げて自分の下腹部に手をあてがった。
「緩いなーとか思ったら、ここんとこを手で押さえると、中がへこむから」
そう説明しながら多輝は自分の下腹部を手で強く押さえてみせた。すると力を失いかけていた優一郎のペニスを膣壁が外側から押さえられて強く挟む。
「わざわざ締めろって言ったことはねえし……っていうか、めんどくせえから自分で押さえてるなあ……」
ばつの悪さに頭をかいて多輝はぼそぼそとした声で説明した。興味津々の顔で優一郎がなるほど、と頷く。
「あと、こっちに突っ込んだ状態で後ろにバイブ突っ込むとか、ローター入れるとかするとその分膣の中は狭くなるし」
そこまで言ってから多輝はあー! と声を上げた。
「何でおれが女の抱き方を説明しなきゃなんねんだよ!」
恥ずかしさと情けなさに声を上げて多輝は頭をかきむしった。
「多輝。男性の時と、女性の時のギャップが、けっこう大きくなってるから。あまり気にしないほうがいいよ」
「へ?」
やけに真面目に言われて多輝は間の抜けた声を上げた。驚きに目を見張って優一郎を見る。何度か瞬きしてから多輝は納得して手をぽん、と叩いた。
「あ、そっか。優一郎は出来ないのか? こー、あそこに力入れて締めたりとか」
だから教えて欲しいのか? 多輝は何のためらいもなくそう言った。すると途端に優一郎が言葉を詰まらせる。
「いや。実は例の新人の彼に、本格的な娼婦ヒューマノイドの設計をお願いしてるんだ。そのあたりで、情報や意見があるなら欲しいかなとか」
だがすぐにいつもの笑顔に戻って優一郎は言った。ふうん、と呟いて多輝は何の気なしに呟いた。
「何だ。てっきりあいつとする時にやってみたいから教えてくれってことかと思ったのに」
まあ、あれを相手にするだけでも大変そうだよな。からからと笑って多輝は優一郎の肩を気楽に叩いた。いつの間にか優一郎が笑みを浮かべたまま硬直している。だがそれを一切気にせず、多輝はうんうんと一人で納得して頷いた。
「そもそもさあ。あいつってけっこう鬼畜っぽいじゃん? おれも人のことは言えないけどさー。あんま扱い荒かったら言えよ。おれが文句つけてやるから」
真面目に優一郎の心配をしつつ多輝は頷いた。いつの間にか膣内で優一郎のペニスが萎えている。多輝はごそごそと身体の下から抜け出して気軽に優一郎の肩をぽん、と叩いた。
ぎこちない動きで優一郎が顔を上げる。
「多輝、君、調査イコールセックスって結論になってない?」
強張った顔に笑みのようなものを浮かべて優一郎が言う。調査、と呟いて多輝は眉を寄せて天井を仰いだ。
「優一郎、何か調査してるのか?」
意味を図りかねて多輝はストレートに質問した。ベッドの上に行儀悪く胡座をかいた多輝の横に優一郎が腰を下ろす。
「例のクラスに転入生が来る」
「例のクラスって奈月さんがいるとこか?」
まだ腕に残っていたブラジャーを外しながら多輝はそう訊ねた。すると優一郎が神妙な面持ちで頷く。ふうん、と呟いて多輝は天井を仰いだ。
「なー。何か勘違いしてないか? おれがあいつっつったのは水輝だぞ?」
どうも話がかみ合っていないことに気付いて多輝はそう告げた。多輝の横に腰掛けていた優一郎がぴき、と表情を凍らせる。
「し、知って!」
珍しくどもって優一郎が声を裏返す。多輝は頭をかきながら何の気なしに頷いた。すると見事に優一郎が引く。
「いや、だって変だろ。あいつ、しょっちゅうここに顔出すしよ。んでも要も斎姫も手ぇ出されてる気配ないし、他のヒューマノイドに手ぇ出してる様子もないし」
おれも何かされた訳じゃねえし。指折りながら言って多輝は一人、頷いた。水輝がまさか暇つぶし目的にここに現れるとは思えない。となると、目的がある筈だ。小難しい話をしているのだろうと最初は思っていたが、話をするだけならあんなにしょっちゅう顔を出すはずもない。優一郎と一緒に地下奥深くに引っ込んでしまうところから見ても、結論は一つだろう。
「そういうところは鋭いんだね」
ため息を吐きながら優一郎がしみじみと言う。多輝は頭をかきながら少しだけ俯いた。
「他の奴ならともかく、おれ、あいつそんなに嫌いじゃないし、だからいいかなって思ってんだけど……まずいか?」
消沈した面持ちをする優一郎に多輝は恐る恐る訊ねた。そもそも優一郎が女性になったところを多輝は見たことがない。が、不思議なことに男性体になった時の多輝は優一郎を抱きたいと思わないのだ。それは優一郎も同じらしく、男性体になった時の多輝に行為を迫ったことは一度もない。
多輝は変なところで勘は良いのです。