祐が自慰動作中なので、エロといえばエロ? でしょうか。
機械ですけど!w
手早く桜の治療を終えた渚は急いで優一郎の部屋に戻った。桜はこちらが何か言う前に奈月を追って姿を消してしまった。優一郎の部屋に転移した瞬間、渚は慌ただしく部屋の奥に駆けた。倒れた水輝を抱え起こそうとしていた優一郎を乱暴に押し退ける。
「退いて!」
鋭い声で言ってから渚は血に塗れた水輝を抱き起こした。とりあえず息があることにほっと息を吐く。
「あたし……あたしのせいで……。あはっ! うふっ! あはあんっ!」
台に乗せられた祐は虚ろな眼差しをして自慰をしている。水輝はどうやら間に合ったらしい。そのことを確認してから渚は水輝を両腕に抱え上げた。困惑した面持ちをする優一郎を鋭く睨みつける。
「渚さん。水輝さんは……?」
心配そうな顔をした優一郎がそう訊ねる。渚は腕の中で脱力している水輝を見ながら低い声で言った。
「命に別状はないわ。この程度の傷ならすぐに塞がるだろうし」
だから心配は要らないわ。そう付け足して渚は俯いた。
「あはっ! ほんとう……ほんとに? みずきさん、だい、じょうぶ? んくぅっ!」
股間を弄りながら祐がのろのろと身を起こす。よほどのストレスがかかっているのだろう。自慰を止めることが出来ないらしい。そんな祐を見てから渚は続いて優一郎に目をやった。やはり優一郎はまだ心配そうな顔をしたままだ。
去り際に水輝が言っていたことを思い出す。渚は唇を噛んで俯いた。水輝は青白い顔をしてはいるが辛うじて息はある。受けた表面的なダメージより、内部に食らった攻撃が大きすぎたのだ。
「命は大丈夫だと言っているでしょう」
硬い声で渚は再度、そう二人に告げた。すると優一郎が鋭い目で渚を見る。
「命に別状はなくても、何か弊害があるということですか?」
真剣な眼差しをやはり鋭い目で受け止めながら渚は淡い笑みを浮かべた。そんなことは最初から判っていたのだ。
「あなた、もう水輝に近付くのは止めてくれる?」
優一郎を見つめて渚はきっぱりと言った。優一郎が目を見張って息を飲む。
「わかりました。距離を置こうとは思っていたんです」
しばしの間の後に優一郎が静かに告げる。だがそれを聞いた渚は首を横に振った。
「いいえ。もう二度と、水輝に近付かないで。中途半端に想うくらいなら、最初から触らないで。迷うくらいなら目を合わせないで」
淡々とした声でそこまで言ってから渚は深く息を吸った。
「あなたみたいなのが一番迷惑よ!」
水輝が優一郎を好いていることは判っている。大切に思っているからこそ、水輝は優一郎には決して無理強いはしない。それは水輝が優一郎に好かれたいと思って無意識に行動している証拠なのだ。
「それは、できません。僕も誓約に縛られる身ですから」
静かな応えに渚は目を吊り上げた。両手が空いていたなら即座に優一郎を張り飛ばしていただろう。渚は水輝を抱える腕を震わせて歯を食いしばった。
「じゃああなたはどうするつもりなの」
呻きに近い低い声で渚は問い掛けた。渚の叩きつけた言葉がよほど意外だったのか、祐の自慰の手が止まっている。目を見張っている祐にちらりと視線を向けてから渚は優一郎に目を戻した。
「時が満ちたら水輝さんが、望まれていることを」
そう告げた優一郎の声には何の感情も含まれていない気がする。渚は怒りに眉を吊り上げて優一郎を睨み据えた。
判っているのだ。どんな状況になっても恐らく水輝は優一郎に惹かれるだろう。それ止める術は自分にはない。その先に例え茨の道が待っていると判っていても、だ。渚はしばらく黙って優一郎を睨みつけてからため息を吐いた。
「水輝さんには、僕が必要ですから」
にっこりと笑う優一郎を歯軋りして睨みつけてから渚はそっぽを向いた。こんなものはただの八つ当たりだ。それも十分に判った上で渚は優一郎を怒鳴りつけたのだ。何とか怒りを抑えてから渚は言った。
「あなたといい、立城さんといい、どうしてそう腹立たしいのかしら」
諦めに近い響きの渚の言葉にまた驚いたのだろう。祐が不思議そうに優一郎と渚とを見比べる。
「立城さんは、今はいらっしゃいません」
「判ってるわよ、むかつくわね」
苛々しながら言い返して渚は無造作に両腕を優一郎に突き出した。水輝の身を差し出された優一郎が苦笑して腕を伸ばす。
「奈月さんは、龍宝珠界に?」
脱力した水輝を両腕に抱えながら優一郎が言う。渚はええ、と頷いてからふと眉を寄せた。無防備に優一郎に身を預けている水輝の股間に手を伸ばす。剥き出しのままになっていた水輝のペニスを手早くジーンズの中にしまいこみ、渚は目を上げた。意味ありげに微笑む優一郎とばっちり目があってしまう。
「本当に、損な性分ですね」
何よ、と問い掛ける前にそう言われて渚はふん、とそっぽを向いた。腕組みをして顔を背けた渚に苦笑して優一郎が歩き出す。部屋の壁際に設えられたベッドに静かに水輝を横たえてから優一郎が振り返る。渚は知らん顔でそっぽを向いたままだった。
「それから、祐」
「なによ?」
優一郎に声をかけられた祐が戸惑いの表情で返事をする。渚はそこで組み合わせていた腕を解いてベッドに近づいた。横たわる水輝の外傷については特に問題はないだろう。腹の傷も塞がりつつある。このまま水輝の治癒力に任せていても大丈夫だ。下手に誰かが手を貸せば逆に治癒は遅れるだろう。
「今のきみはヒューマノイドだ。マスターである水輝さんの指示があるまで、そのまま標準動作を行っていてくれないか? 水輝さんにこれ以上迷惑をかけたいなら別だけど」
淡々とした優一郎の言葉に渚は慌てて振り返った。さすがにすぐには反応できなかったのだろう。唖然として祐が優一郎を凝視している。
「ちょ、ちょっと待って。何もそこまでしなくても」
渚は思わずそう言った。どうしても祐の置かれた立場がかつての自分に重なって見えてしまうのだ。
「……わかってるわよ。んっ、あっ!」
渚の思いも空しく、祐が頷いて再び台に身を横たえる。自慰を再開した祐を呆然と見つめてから渚は慌てて首を横に振った。彼女は自分ではないのだと心の中で言い聞かせる。
「あと、変な気も起こさないように。君がいくら死にたがっていても生殺与奪権は水輝さんにあるんだから」
「うっ」
あくまでも優一郎が淡々と言ったことに渚は思わず呻きを漏らした。白衣のポケットに手を突っ込んだ優一郎がにこやかに振り返る。渚は慌てて引きつる頬を手で押さえた。
「渚さん、そうだ。そろそろあのベッドの修理が終わっていますから、彼女を運んでもらえませんか? マスター不在の状況でもあのベッドがあれば維持は容易ですから。操作は大前さんにでもお願いしてください」
きっぱりと言った優一郎に渚は渋々と頷いた。反論する理由はどこにもない。実際、祐に快楽を与え続けるなら、自慰を繰り返すよりあのベッドを用いた方が楽だろう。渚は釈然としないものを感じながら仕方なく祐の横たわる台に近付いた。股間に手を突っ込んで掠れた声を漏らしている祐を抱き上げる。
「……あなた、やっぱり悪趣味ね」
とにかく何か言ってやらなければ気がすまない。そう思った渚は苛立ちをこめて優一郎にそう告げた。悠然と構えた優一郎がにっこりと笑う。
「祐を生き延びさせたのはあなたですよ」
くすくすと笑い出した優一郎に渚はため息を吐いてみせた。他ならぬ水輝の願いでなければそんな真似はしなかった。そう言いたいのを堪えて唇を引き結ぶ。渚自身、祐のことはそれなりに気に入っているのだ。
「じゃあ、私は行くわね」
そう言って渚はその場から転移した。去り際に見た優一郎の白衣についた水輝の血がいやに鮮やかだった。
渚は割と損な役回りになることが多そうに見えますが、実際はそーでもないですw