※この作品はR-18です。

狩りの終焉 一部   作:伊駒辰葉

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エピタイ通りな感じです。
エロシーンはありません。


苺デートからの『疲れる』!? 2

「いや、そのままがいい」

 

 そう言って多輝は近くにあったブラウスを取った。柔らかな綿で作られた大人しいデザインのそれを由梨佳の胸元にあてがってみる。もう少し派手な方がいいかな。そう訊ねた多輝に由梨佳が首を傾げる。

 

「私はもっとシンプルなほうがいいわ」

「飾りの縫い取りとか嫌いか?」

 

 手早くブラウスをたたんで元の位置に戻してから多輝は場所を変えた。すっきりとしたデザインのブラウスの並ぶ棚に手を伸ばす。真っ白なブラウスを手に取ったところで不意に多輝の耳に聞き覚えのある声が入ってきた。

 

「あっれー? 多輝じゃん! どうしたのさ!」

 

 嬉しそうなその声にぎょっとして多輝は慌てて声のした方を向いた。そこでげっ、と呻いて顔を引きつらせる。少し離れた場所で大きく手を振っているのは顔見知りの女性だ。名前はひなた。頼んでもいないのにひなたは嬉しそうに多輝に駆け寄ってきた。飛び込むように抱きつかれた多輝は慌ててひなたと由梨佳とを見比べた。

 

「い、いや、あの」

 

 違うんだ、と呟いて多輝は情けない顔で由梨佳を見つめた。多輝に抱きついたひなたがぱっと顔を上げて妖しい笑みを浮かべる。

 

「ご無沙汰じゃあん。折角会えたんだしさあ」

 

 ひなたは由梨佳とは対照的な顔立ちをしている。とにかく作りが派手なのだ。着ているものも顔立ちと同様、煌びやかだ。落ち着いた雰囲気の漂うこの売り場にいるだけでひなたの存在そのものが違和感をかもし出している。

 

「多輝さま。買い物は私が一人で済ませますから」

 

 にっこりと笑って由梨佳がひなたに会釈をする。ばいばーい、とひなたに手を振られた由梨佳が踵を返す。そこで多輝ははっと我に返って慌てて由梨佳の腕をつかんだ。

 

「待て! 違うんだ!」

 

「なにが違うのさあ。ほらほら、彼女もああ言ってるんだからいいじゃあん」

 

 意地悪く笑いながらひなたが多輝に身を摺り寄せる。服越しにペニスを擦られた多輝は焦ってひなたを引き剥がした。あん、と拗ねた声を漏らしてひなたが唇を尖らせる。

 

「あの、私は使用人ですから、誤解なさらないでくださいね」

 

 由梨佳がごく自然な微笑みを浮かべて言う。そこで多輝は鋭く由梨佳を見た。

 

「違う! 由梨佳はおれの女だ!」

 

 再度、多輝に抱きつこうとしていたひなたが驚いたように目を見張る。しばし表情を凍らせてからひなたはおかしそうに笑い出した。熱でもあるんじゃないのお、と笑って多輝の額に手を伸ばす。だが多輝はひなたの手をやんわりと拒絶した。

 

「多輝……くん?」

 

 か細い声で由梨佳が呼ぶ。多輝はそんな由梨佳の手をしっかりと握ったままひなたを真っ直ぐに見た。ふざけているのだと思っていたのだろう。それまで笑っていたひなたが訝るような表情になる。

 

「なに。どうしたの、一体。何か変だよ? 多輝」

「だから、おれの女は由梨佳だっつってるんだ。もう遊びで女を抱くのはやめたんだよ」

 

 渋い顔をして多輝は小声でそう言った。ひなたはよほど驚いたのか、焦った声を上げる。

 

「ちょっ、ちょっと待って! まさか、嘘でしょ!? だって多輝って言えば、あっちでは有名人だよ!?」

 

 自分の噂が街に流れていることは多輝自身もよく知っていた。多輝はため息を吐いて首を横に振った。これまでにしてきたことは十分に判っている。だからすぐにひなたが多輝の言うことを信用出来ないのも無理はない。

 

「あっちって?」

 

 由梨佳が真っ直ぐにひなたを見て訊ねる。うあ、とうろたえた多輝が止める間もなくひなたがまくし立てた。

 

「すずらん通りって知らない? 買ったり売ったりするトコだよ! 多輝相手ならノーギャラで寝たいってコはいっぱいいてさ! そんなコを端から抱いてて」

「いいから黙れよ、ひなた」

 

 額に手を当てて呻いてから多輝はため息を吐いた。確かにひなたの言っていることは間違いではない。ひなたもそんな商売をしている女の一人だ。歳が若いため、ひなたは客にも人気が高い。

 

「やっぱりもてるのね」

「もてるってモンじゃないよ! もう、多輝以上にもてるヤツはあそこにゃいないね! ヘタすりゃ、プロのウチらが金払ってお願いしようかってくらいでさあ!」

 

 ほうっ、とため息を吐いた由梨佳にひなたが余計なことをまくし立ててくれる。多輝は黙れ、とひなたに鋭い声を飛ばしてからため息を吐いた。

 

「人気者なのね」

 

 くすりと笑いを零した由梨佳を多輝は情けない顔で見た。するとひなたが何故か嬉しそうに笑う。

 

「なんかいいヤツじゃん、あんた。トモダチにならない?」

 

 ひなたがにっこりと笑って由梨佳に言う。なんか気が合いそうだしさ。そう付け足したひなたを由梨佳は驚いたように見つめている。多輝は苦笑して由梨佳に告げた。

 

「いんじゃねえの? 別に。こいつ、いい奴だぞ。……底なしだけどな」

 

 余計なひと言を足してしまってから多輝は慌てて口を手で覆った。するとひなたがあはは、と明るく笑う。

 

 

「あの、あなた。最近夜、へんな夢を見たりしない?」

「ほへ?」

 

 唐突に由梨佳に言われたひなたが間の抜けた声を上げる。多輝は目を見張って由梨佳を見下ろした。由梨佳は額に手を当てて何かを考えるような顔をしている。




この「ひなた」はこの後は出てきていないんですよね……。
あ、ハイキュー!! の登場人物である「日向」を知らない頃に書いたものです。
知ってたら名前を変えてた気がしますw
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