&支配と……りょーじょくはないです。
エロ手前です。
「それでは水輝さん、行きましょう」
立ち上がった水輝の傍らに立ち、優一郎が微笑みを浮かべる。水輝は頷こうとしてふと気になって隣の部屋の方を見た。
「そっちはいいのか?」
何となく呟いた水輝の言葉に優一郎が首を傾げる。
「気になりますか?」
「少しな」
奈月に見覚えはない。が、あれは恐らく人間ではないのだろう。奈月の身体は独特な作りをしていた。
「彼女は先ほどの女のようには役には立たないのではないですか?」
嗤いを浮かべて言った優一郎に水輝はああ、と頷いてみせた。確かに虫を植え付けて夢を啜るには奈月は綺麗過ぎる。
「でもあれは……何かおれに似てるような」
再び頭痛を覚えて水輝は呻くようにそう言った。記憶はない。ないのだが、気にはなるのだ。これまでに優一郎に引き合わされたどんな者より、奈月は自分に近いような気がする。そんなことはある筈がないのに、と水輝は呟いた。
「今のみ……とと。水輝さんとは属性が全く異なっていると思いますけど」
「属性とか言うのは判らないが、確かに違うよな」
人の夢を食らうために自分は作られたのだ。ぼんやりとそのことを思いながら水輝は頷いた。人を玩具にして好きに遊べと言われた。それがいつだったかは判らない。まあいいか、と呟いて水輝は腕を伸ばした。隣に佇んでいた優一郎に唇を寄せる。素早く唇を奪ってから水輝は小さく笑ってみせた。
「地上の王の名代にして青龍姫。それが今の彼女の称号です。あまり関わり合いにならないほうが無難でしょう。水輝さんは使命を果たしてください」
僕も協力しますよ。そう続けた優一郎を水輝はまじまじと見た。
「使命? 協力?」
そう言って水輝はくすくすと笑い出した。使命などということを考えたことはない。それに協力を要請したつもりもない。水輝はつかんでいた優一郎の腕を離して後ろに下がった。
「人の夢を食べろ。そう、指示されているのではないですか?」
少し離れた水輝を見つめながら優一郎が言う。水輝は俯いて口許に嗤いを浮かべた。そう、人の夢を食べて行けと言われたのだ。その末に例えどんな結末が待っていたとしても、だ。
水輝は思い浮かんだことに目を細めて嗤いを納めた。顔を上げて真っ直ぐに優一郎を見つめる。
「じゃあ、おれはもう行く。夢を食べた相手とこんなに長く一緒に居たのは初めてだ」
苦笑して水輝は片手を上げた。
「水輝さん、いえ水輝」
呼ばれた水輝は踵を返そうとしていた足をぴたりと止めた。振り返ってもう一度向き合った優一郎は妙に厳しい顔をしている。
「命を下す。我のために汝が力を用いん」
水輝は目を見張って息を飲んだ。力のある言葉に煽られてぞくりとしたものが背を伝う。思わず熱い息を吐いて水輝はその場によろけた。頭の芯が揺れて身体の力が抜けて行く。
「夢魔、沙耶よ。汝は我がしもべなり」
「……いーい度胸だ……」
言葉が見えない鎖となって水輝の動きを封じていく。水輝は床に膝をついて唇を歪めた。鎖に身体を縛られた水輝は目を上げて優一郎を見つめた。
「後悔しても知らないぞ」
一度きりの邂逅であるからこそ、他者の夢を思うままに啜れる。だが夢を啜った後も優一郎と居たのは単なる気まぐれだった。水輝は薄い嗤いを浮かべて優一郎に囁くように告げた。
「しませんよ」
嗤いを浮かべて優一郎が答える。水輝は小さく笑って身体の力を抜いた。それまで隠れていた羽根が水輝の背に現れる。鎖の隙間から生えた羽根を水輝は一気に広げた。透明な四枚の羽根で空気をかいてその場に浮かび上がる。宙を泳ぐように進んで水輝は優一郎に近づいた。水輝の身体を拘束した鎖の一方を優一郎が手につかむ。水輝は優一郎に唇を寄せて羽ばたきをした。二人を中心に強大な力場が発生する。部屋のものを引き裂く強い力を発しながら水輝はくすくすと笑った。さっきまで紫が眠っていたベッドが真っ二つに割れ、床や壁に亀裂が走る。
「どこに行くんだ? どこにでも連れてってやるぞ」
二枚の羽根で庇うように優一郎の身を包んで水輝はそう囁いた。
「とりあえず、一度僕の城に戻りませんか? そして」
くすりと笑った優一郎に頷いて水輝は天井を仰いだ。二枚の羽根を大きく動かして力場の内の力を優一郎の城に向けて放つ。淡い燐光を帯びた空洞に水輝は身を躍らせた。鎖の先端をつかんだ優一郎と共に空間を越える。煌びやかな光の通路を抜け、水輝は最初に目覚めた場所に落ちた。天井から落下した水輝を優一郎が腕に受け止める。
「それでは最初の命は伽の相手ということで」
腕に抱えられたまま口づけられて水輝は頷いた。不可視の鎖が水輝の身体の内側に染み込んで姿を消す。水輝は口づけたまま、優一郎の腕から降りた。そのまま優一郎の首筋に腕を回して後ろに歩く。足にベッドが当たったところで水輝は腕を解いた。
優一郎の首筋や耳朶に唇を落としてから頭を下げる。水輝は手早く優一郎のシャツのボタンを外して胸に唇を寄せた。指で肌を撫ぜながら唇と舌で愛撫を加えて行く。
「水輝さん……」
うっとりとした面持ちで呼ばれて水輝は顔を上げた。目で訊ねてから優一郎のベルトに手をかける。
寸止めです!w