※この作品はR-18です。

狩りの終焉 一部   作:伊駒辰葉

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説明がかなり入ってます。
エロシーンはありません。


転入したけど凄い席になってしまった 1

 この世には人の形をした人ならぬ存在が多くある。世界の汚濁を清め、バランスを取るべき種族とされるのが龍神と呼ばれる者たちだ。彼らは世界の至るところに存在し、日々、使命を果たすべく生きている。

 

 龍神が生まれながらにして持っているモノ。彼らは力でその器を構成されているが、魂とも呼ぶべきものを内包している。それが龍神たちが持つ八つの宝玉だ。大人の両手に包めるかどうかのその珠を龍宝珠と呼ぶ。青龍神を示す青宝珠、火龍神を示す紅宝珠、金龍神を示す金宝珠、銀龍神を示す銀宝珠、天空の城を示す白宝珠、冥界の門を示す黒宝珠、木龍神を示す紫宝珠、そして時の龍神を示す翠宝珠。龍宝珠の色はその八種類だ。そしてそれらの色に示される龍神は、数多の龍神の中でもトップクラスの力を持つ。

 

 そして龍神の持つ龍宝珠を糧として生きるモノもこの世には存在する。それがハンターと呼ばれる存在だ。だがハンターは龍神を狩るべき存在なのに、個々の力は微弱だ。たった一人きりで龍神に立ち向かって勝利したハンターを克人は一人しか知らない。それが全てのハンターの頂点に立つ順だ。が、今は順はハンターの座を退き、別のモノになったという。だがその詳しい経緯を克人は知らない。知らなくてもいいよ、というのが順の言い分だった。

 

 厳密に言えば克人は他のハンターとは性質が若干異なる。龍宝珠を糧として生きているのは同じなのだが、生まれがまったく違うのだ。ハンターは通常、自然発生する。人の間に生まれる者も稀にはあるようだが、大抵は地面から生えてくるのだ。その時期などは予測不能で、ある時唐突に大量発生することもある。人の目につかない場所を選んでハンターがコロニーを形成する理由もそこにある。彼らには人にあるべき戸籍が存在しない。廃墟と化した場所に隠れるように暮らしているのがハンターなのだ。

 

 ざわめきに満ちていた教室内が水を打ったように静まり返る。自己紹介を、と促されて克人は傍にあった椅子をホワイトボードに寄せ、靴を脱いで上がった。ペンで縦書きに名前を書く。それから克人はペンを戻して靴を履き、教卓の横にたって頭を下げた。

 

「蘇芳克人です。よろしくお願いします」

 

 そう克人が名乗った瞬間、教室内は一気に生徒たちの声に包まれた。男性のクラス担任がおらー、と言いながら教卓を軽く出席簿で叩く。すると生徒たちは渋々といった態で口を噤んだ。どうして生徒全員が端末で授業を受講するのに、古風な出席簿などが使われているのだろう。黒い表紙のそれを何となく眺めてから克人は教室の中に視線を戻した。

 

 一様に生徒たちは興味津々の顔で克人を見つめている。その中に全く別の質の視線を見つけて克人は何気なく窓際のその席に目をやった。その席の周囲だけがまるで別世界のように他の生徒たちと雰囲気を違えている。一番後ろの席、窓際に座る女子生徒はにこやかな笑みを浮かべて克人を見つめている。その前に座る女子生徒は対照的に視線で射殺そうとでも思っているのか、凄まじい目で克人を睨んでいるのだ。どちらの女子生徒も他の生徒に比べると格段に容姿が整っている。ふうん、と胸中で呟きながら克人は担任の話に耳を傾けた。

 

「……という訳で、蘇芳はまだ清陵には不慣れだ。判らない事はクラスの誰かに訊くといい」

 

 そう言いながら担任がぽん、と克人の頭に手を乗せる。どうやらこの容姿のおかげで担任も多少の違和感を覚えているらしい。そのことに苦笑したくなりながら克人はもう一度、よろしくお願いしますと頭を下げた。

 

「それじゃあ蘇芳の席は……」

 

 担任がそう言いながら先ほど克人が見ていた窓際の一番後ろの席に目をやる。その隣にはきっちりと空席が用意されているらしい。が、担任はしばし二人の女子生徒を見てから困ったように頭をかいた。どうやら担任も件の女子生徒の凄まじい視線に気付いたようだ。やれやれと肩を竦めて克人は担任を振り返った。

 

「あそこですか? ボクの席」

「い、いやまあ、そのつもりだったんだが」

 

 頭をかきながら担任が言葉を濁す。克人は鞄を抱え直してにっこりと笑った。

 

「構いません。ボク、目はいいんです」

 

 そう言って克人は身軽に教壇を飛び降りた。好奇の目に晒されながら克人は指定された席に向かった。隣の男子生徒を完全に無視して件の女子生徒がぎらりと克人を睨みつける。克人はにっこりと笑って二人の女子生徒に会釈をした。

 

「はじめまして、吉良瀬奈月と申します」

 

 克人の隣の席の女子生徒が笑顔でそう告げる。克人はよろしくお願いします、と言いながら席につこうとした。鞄を机に乗せて両手で椅子を抱えて引く。出来るだけ音を立てないように背の高い椅子に乗ろうとしたところで克人は動きを止めた。いつの間にか椅子の上に剣山が置かれているのだ。

 

「ええと」

 

 克人は困った顔で笑いながら生け花に使う剣山を取り上げた。鞄にそれを乗せてから改めて腰掛ける。するとちっ、というあからさまな舌打ちが前の席から聞こえてきた。だが舌打ちの主は克人には背を向けたままだ。いちいち気配なんて読まなくても何もしませんよ。克人は小声でそう言ってから腰掛けた状態で椅子を机に寄せようとした。そこで困り果てる。足が床に届かないのだ。




椅子の上に剣山。
一度、書いてみたかった!w
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