直接のエロシーンは……ないんですけども、エロっぽいシーンが入ってます。
あ! ftnr警報です! 百合警報です!
そういえば私はいつまでここにいればいいのかしら。そう考えた渚は道代に電話をかけた。喫茶店は放りっぱなしになっている状態だ。祐の様子見は毎日顔を覗かせるにしても、そろそろ帰らなければならないだろう。
道代は渚の呼びかけに応じてすぐに部屋に現れた。深々と礼をした道代につられて渚も頭を下げる。
「渚さま、少し、お話よろしいでしょうか?」
そろそろ帰る旨を告げようとしていた渚は、意外な道代の言葉に驚いて目を見張った。が、すぐに頷いて部屋の奥に道代を促す。道代はしっかりと部屋の扉を閉じてから静かに渚の傍に近づいた。
「お飲み物は何になさいますか?」
「ああ、じゃあ紅茶をお願い。ストレートで」
渚はそう頼んでからソファに腰掛けた。道代が部屋の電話を用いて二人分の茶を誰かに申し付ける。しばらくしてから部屋には二人分の茶が運ばれてきた。メイドの格好をした少女が二人、がトレイを持って紅茶を運んでくる。それを見止めた渚は思わずあら、と声を零した。
「可愛い」
にっこりと笑って渚はメイド衣装に身を包んだ少女にありがとうと言った。愛らしい顔立ちはどことなく奈月に似ている気もする。メイドの少女は二人の前に茶を置いて会釈をした。
「眞子ちゃん。ケーキもお願い」
そう言った道代に慌てたように少女が頷く。どうやら眞子というのが少女の名らしい。
「はっ、はい」
眞子はちらちらと渚を見ながら頬を赤くしている。渚はどうしたの、と眞子に笑みかけた。一度は落ち着きかけていた股間が急にむず痒くなってくる。渚はもう、と呟いて股間をスカート越しに押さえた。ごめんなさいね、と苦笑してから渚は目を上げた。そこで二人がじっと渚を見つめていることに気付く。
「な、なに?」
渚は困惑しつつ二人にそう問い掛けた。
「な、なんでもありません」
裏返った声で言ってから眞子が慌てて頭を下げる。
「失礼しました!」
そう言ってから眞子はくるりと踵を返して小走りにその場を後にしようとした。が、ドアの手前で何もないのにつまづいて転んでしまう。渚は慌てて立ち上がって急いで眞子に駆け寄った。大丈夫? と声をかけながら眞子を抱き起こす。
「あ、あ、あ、あ、ありがとうございます!」
どもりながら礼を口にした眞子は、ばね仕掛けの人形のように立ち上がるとお辞儀をして急いだように部屋のドアを開けた。そのまま駆け出そうとしたところでまたつまづく。だが、今度は眞子は転ばないように踏ん張ってその場から逃げるように去っていった。慌ただしく立ち去った眞子を見送ってから渚は開きっ放しになっていたドアを静かに閉めた。ソファに戻ったところで瞬きを繰り返す。何故か道代が微笑みを浮かべている。
「なに? 話って」
渚は平静を装ってそう言いながらソファに腰掛けた。
「はい。祐さまの今後を含めて……」
不意にどこからともなくピアノの音色が響く。ドビュッシーの月の光のメロディに渚は目を見張った。どうやらその音は道代の下腹部から鳴っているらしい。
「申し訳有りません。ちょっと緊急の連絡のようです。こちらからお引止めしておいて恐縮ですが、十分ほどお時間いただけますでしょうか?」
そう言って道代が立ち上がる。渚は戸惑いながら頷いた。股間を探りながら歩き出した道代と入れ替わりの形で眞子が部屋に入ってくる。ケーキを乗せたトレイが何故か震えているのを見て取って、渚は自分から受け取ろうと手を伸ばしかけた。その瞬間、眞子が景気よくトレイを引っくり返してしまう。驚きに目を見張った渚のスカートの上とテーブルに二個のケーキが無残に落ちた。
「も、もうしわけありません!」
半泣きで詫びる眞子に渚はにっこりと笑って大丈夫よ、と言った。スカートに引っくり返ったケーキを床に落ちた皿に乗せる。それから渚はテーブルに落ちた方のケーキも皿に戻した。食べることはこれでは出来ないだろう。渚は汚れた手を洗うために席を立った。エプロンのポケットからハンカチを出した眞子が泣きながら渚のスカートを拭おうとする。
「あっ!」
スカート越しにペニスに触れられる格好になった渚は慌てて眞子を引き剥がした。
「ご、ごめんなさいね。スカートは着替えれば大丈夫だから」
驚いた顔をした眞子に早口で言ってから渚はタンスに近づいた。借り物の部屋だが、着替えくらいは勝手に使ってもいいだろう。幸い、タンスの中には幾つかの服が収まっている。その中からスカートを取り上げて渚はバスルームに急いだ。
「渚さま、ごめんなさい。わたくしのような下賎のものに触れられるのおいやですよね」
しゃくりあげながら眞子が言うのを聞いて渚は慌てて振り返った。違うのよ、と思わず引っくり返った声で言う。だがそれでは眞子は納得しなかったらしい。数瞬ほど迷ってから渚は眞子の手をつかんだ。慌てた声を上げる眞子を連れてバスルームに入る。脱衣所で汚れたスカートを落としてから、渚はショーツの中で苦しそうに勃起しているペニスを示してため息を吐いた。
「こ、こういうことだったから、ちょっと見せたくなかったの」
恥ずかしさから早口で言ってから渚は急いで着替えのスカートを身に着けた。渚の股間を凝視していた眞子が慌てたように目を上げる。スカートのホックを留めて顔を上げたところで渚はぎょっとした。眞子が涙に目を潤ませて胸の前に手を組み合わせている。何事かと目を見開いた渚の目の前で眞子の身体が傾ぐ。渚は悲鳴を上げて眞子を抱きとめた。
割とパニックになってる渚です。