※この作品はR-18です。

狩りの終焉 一部   作:伊駒辰葉

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エロシーンはここにはありません。
次くらいに入ります。


エロなんだかクロチャンなんだか 1

 屋敷に戻った順は紫を私室に入れて透の許に向かった。どうやらあれから透は屋敷に帰ったらしい。気配でそのことを悟っていた順は控え目に透の部屋のドアを叩いた。不機嫌そうな応えが返って来る。順は少しだけドアを開けて透の部屋を覗き込んだ。

 

 相変わらず物の散らかった部屋だ。そのことに苦笑して順はドアをもう少しだけ開いた。ベッドに寝転んで携帯端末を操作していた透が不機嫌な面持ちで順を振り返る。

 

「さっきの、ありがとね。助かったよ」

 

 いつものように笑みを浮かべて言った順を睨むように見て透が鼻を鳴らす。

 

「で、今度は何の用だよ?」

 

 機嫌悪く問われて順は困ったように笑って頭をかいた。

 

「ええっとね。お礼を言いたかったのと、ちょっと」

 

 我ながららしくない、と思いつつも順は笑って続けた。

 

「何となく透ちゃんの顔が見たくなってね」

 

 そう告げた順を透がうろんな目で見る。だが不思議といつものようにヘンタイ、という罵り言葉が飛んでこない。

 

「あんたも物好きだよな。ほっときゃいいのに」

「あれえ? 今日は珍しくオレのこと、嫌がらないんだ?」

 

 あはは、と笑って順はドアから離れようとした。じゃあね、とドアを閉めかけた順を何故か透が呼び止める。不思議に思った順はドアの隙間から透になに、と問い掛けた。

 

「あれ、持って帰ったのか?」

「うん。だからちょっと地下、借りるね」

 

 ごめんね、と断ってから順は静かにドアを閉めた。ドアの向こうで透が何かを呟いた気がしたが、順は聞こえない振りをしてその場から離れた。部屋に戻って紫をそっと抱え上げる。

 

 逃げ続けて疲れたのか、紫は熟睡しているようだ。順は紫を抱えたまま、今度は克人のいる部屋に向かった。呼びかけると内側からドアが開く。顔を覗かせた克人に順はベッドの下にある荷物を持ってくるように伝えた。慌ただしく部屋に引っ込んだ克人が大きなアタッシュケースを抱えてドアから顔を覗かせる。

 

「あの、これでいいんですか?」

「うん。それ持って付いて来て」

 

 それだけ言って順は踵を返した。慌てたように克人が順の後を追う。克人の体調はすっかり良くなっている。本当なら明日から学校に通わせてやりたかったところだが、そうも行かないだろう。順はのんびりと広い廊下を進んで正面玄関に続く階段を下りた。赤い絨毯の敷かれた大きな階段を恐々と克人が降りてくる。どうやら夜中で明かりと物音がないのが怖いらしい。仕方ないなあ、と笑って順は意識を研ぎ澄まして家中の明かりを灯した。するとあからさまに克人がほっとした顔になる。

 

 地下に続く階段は屋敷の隅にある。細長い階段をおっかなびっくりで降りる克人のペースに合わせ、順はゆっくりと地下に進んだ。階段の上には定間隔に細い明かりが灯されている。だが蝋燭の明かりほどの細い灯火はささやかな風が吹くたびに不気味に揺れる。どうやら克人はそれが怖いらしい。だいじょぶだよ、と苦笑しては順は克人の様子を見に何度も振り返った。

 

 地下室に続く扉はさび付いている。恐々と首を竦める克人に苦笑を向け、順は分厚い扉を蹴り開けた。格子の嵌った扉が低い軋みを立ててゆっくりと開く。順はのんびりとその中に歩いていった。慌てたようについてきた克人が懸命な面持ちでドアを閉めようとする。が、重くて動かないらしい。

 

「退いて」

 

 順はそう言って克人の代わりにまたドアに足をかけた。軽く膝を折り曲げるともの凄いスピードでドアが閉まる。けたたましい音に悲鳴を上げた克人を促して順は地下室に向かった。

 

 長い廊下を抜けるとそれまでの雰囲気とは一変し、真っ白な部屋に出る。広々とした部屋を抜けて順は奥の扉に向かった。最奥の一番広い部屋に出たところで克人を振り返る。克人は物珍しそうに周辺を見回していた。

 

「ずっと昔にね。オレがまだ子供の頃に使ってたトコだよ」

 

 今はここは透が管理してはいるが、実用には耐えない筈だ。置かれている機材や器具もかなり古いものばかりで、中には埃を被ったままのものもある。水道の蛇口やバーナーのガス口のついた実験台が数台、壁際にはスチール製の棚が並んでいる。放り出されたままのビーカーや試験管の底には変色した薬剤がこびりついている。そんな部屋の様をのんびりと眺めてから、順はゆらりと歩き出した。実験台の並ぶ奥には大きな台がある。二台並ぶその台はベッドにも似ている。が、天井には明かりが幾つも設えられている。今は壊れて点灯しないが、昔はよくこの眩しい明かりの下にくくり付けられたものだ。

 

 順は静かに紫をベッドに乗せた。アタッシュケースを両手に抱えた克人を振り返る。克人は戸惑ったように視線を泳がせてから胸に抱いていたアタッシュケースを順に差し出した。

 

「ホントはねえ。ここまでする気はなかったんだけど」

 

 そう言いながら順はベッドの片隅にアタッシュケースを乗せた。蓋を開くとずらりと並んだアンプルが目に留まる。呉羽に実験を依頼したものから、透が作成したもの、そして優一郎の作成したものがいっぱいに詰まっている。その中から順は目的のアンプルを取り上げた。




今回の話はある意味では順に一番キツいかも……。
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