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新婚旅行中の旦那のはずなんですけどね 1
カンガルーのステーキは二度と食うまい。
そうかたく誓いながら水輝はベッドに倒れこんだ。うつ伏せで倒れた水輝の身体をベッドが大きく揺れて受け止める。ホテルのスイートルームには今は水輝一人だ。共に新婚旅行をしている筈の紫は、なぜか取材陣やファンに取り囲まれてしまい、プールサイドで身動き取れない状態になっているのだ。
まるで動物園の檻に閉じ込められた動物になった気分だ。朝から晩まで外を歩けばとにかく色んな人間に追いかけられる。食事時までそうなると、幾ら食べても食った気がしない。うんざりしながら水輝は深々とため息を吐いた。
なまじ見目が異様に整っているために水輝も紫も人の目があるところではやたらと目立つ。その上、今は話題のヒトとなっているため、どこを歩いていてもすぐに取り囲まれてしまうのだ。水輝は深々とため息を吐きながらふわりと片腕を伸ばした。空間を越えて跳んで来た気配を指先で受け止める。
「お?」
水輝はよく知った気配に顔を上げて慌てて身を起こした。ベッドに座り直して指に挟んだものを見下ろす。星型に畳まれたそれは奈月から跳んで来た手紙だった。水輝はにやにやと笑いながらシャツを探って煙草を咥えると、大事に手紙を開いた。
愛らしい星の模様のついた便箋に可愛らしい文字が並んでいる。挨拶や吉良瀬の屋敷内の出来事が記された部分を水輝は微笑ましく読んだ。
『今日は蘇芳克人さんという方が転校してきました。蘇芳さんはハンターさんだそうです。逢坂さんや千佳さん以外の普通のハンターさんに会ったのは初めてなので、嬉しかったです。』
ふと、その部分を読んで水輝は目を細めた。
「ハンターねえ……」
そう呟いて水輝は手近な灰皿に長く伸びた灰を落とした。のんびりと煙草を咥え直そうとした水輝はそこではたと気付き、慌てて手紙を凝視した。
「克人……?」
覚えのある名前を呟いて水輝はじっと手紙を見下ろした。奈月の文章はいつものように澱みがない。暗い気持ちはどこにもこもっておらず、純粋な力のみで文字が書かれ文章は構成されている。水輝はしばし手紙を見つめてから腰を上げた。寝室を出てリビングの机に寄る。備え付けのレターセットを引っ張り出して水輝は手短に克人というハンターの容姿を教えてくれ、と書き記した。一枚だけ便箋を破って丁寧に畳む。小さく折った便箋を水輝は指で宙に弾いた。宙に浮いた便箋があっという間に消える。
「あ、メールのが速かったかな」
ふとそんなことを呟いて水輝は頭をかいた。奈月が手紙を書いて寄越してくれるので、ついつい返事もオーソドックスな手紙にしてしまうことが多い。だが今のような端的な内容ならメールでも良かったのではないか。奈月の手紙を手にして水輝はベッドに戻った。煙草を灰皿に押し付けてベッドに寝転がる。
不意に天井付近の空気が揺れる。水輝は慌てて身を起こして両腕を伸ばした。間一髪のところで降ってきた奈月を腕に抱きとめる。
「いつも、いつも、すいません」
水輝の腕の中で奈月が泣きそうな顔になる。水輝は笑っていいって、と首を振った。
「おれも大分慣れたし」
そう言いながら水輝はベッドに奈月を静かに下ろした。奈月は清陵高校の制服を身につけたままだ。
「えっと、あの、本人の許可無くお見せしていいものかどうかわからなかったから……」
困惑顔で奈月が言う。水輝は笑いながらベッドを降り、腕を軽く上げた。
「背、このくらい? 童顔でぱっと見、小学生?」
そう言いながら水輝はある高さに保った手をひらひらと振ってみせた。すると奈月がぱっと顔を輝かせる。
「あっ、はい! 水輝さん、蘇芳さんのことご存知だったんですね?」
「そうじゃないかとは思ったが……やっぱり当たりか。んで、左眼が変だったろ?」
奈月の嬉しそうな声に答えながら水輝はベッドの縁に腰掛けた。ぺたんとベッドに座っていた奈月が頬に指を当てて首を傾げる。
「はい。あの目は……」
「あれは順の目だ。あいつ、何を企んでるんだか……」
ぼやくように言って水輝はため息を吐いて肩を落とした。恐らく今、順の目を持つ克人が清陵高校に編入したのは偶然ではない。水輝と紫のいない間に順がわざと送り込んだのだろう。だがその意味が判らない。元々、清陵高校は世間一般的に認知度は高い。校内の様子をインターネットを通じて見ることなど当り前に出来る。わざわざ目を使ってまで見ても特に珍しいものはない筈だ。
「克人さんからは歪んだ意志は感じられませんでした」
真面目な顔で奈月が頷く。だろうな、と呟いてから水輝は頭をかいた。あんな龍神や使い魔のひしめいている場所にハンターが単身で乗り込めば、もしも何らかの目的があったならすぐに露見する筈だ。
「まあ、今のところは放置しておくかな。特に問題はないだろうし」
そう言ってから水輝は立ち上がった。腕に巻いた時計を見下ろしながら訊ねる。
「奈月。昼休憩はあと何分だ?」
「時差は一時間ですから、あと十五分くらいです」
それを聞いた水輝はよし、と頷いた。
「十五分あれば出来るな。奈月ぃ。ささくれたおれを慰めてー」
そう言いながら水輝はベッドに飛び込んだ。小さな悲鳴を上げた奈月がベッドの上で身を弾ませる。
「水輝さん、あっ……だめ、紫さんが戻ってきたら……」
「平気だって。紫は当分は戻ってこない」
手早く奈月の制服を解き、水輝は白い胸元に唇を寄せた。ブラジャーのカップに指を忍ばせて乳首を探る。慣れた手つきで水輝はどんどん奈月の制服を緩めていった。最初は抵抗しようとしていた奈月の力が弱くなる。
まあ、エロから入るよね、こいつは……。