※この作品はR-18です。

狩りの終焉 一部   作:伊駒辰葉

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牛乳を分離させて作るのはなんだっけ? と迷いながら書きました(汗)
エロシーンはありません。


克人の驚きの連続 3

「甘味が足りなかったらメープルシロップあるし、何ならクリームつくろっか?」

「あの、クリームって……?」

 

 メープルシロップというのは聞いたことがある。確か楓という樹から採取される樹液で、糖分が多く含まれる。だがクリームというのは何だろう。克人は難しい顔をして考え込んだ。確か銃器を磨く際に使用する溶剤もクリームという名がついていたような気がする。だがそういった溶剤を口にするというのはいただけない。少なくともあれは食用ではなかった気がする。

 

 唐突に順が笑い声を上げる。思惟を読まれていたことに気付いて克人はうろたえた。もしかしてまた間違っていたのだろうか。

 

「そだね。クリームってだけ聞くと色んなのがあるよね。化粧品なんかにもあるし」

 

 楽しそうに笑って順が頷く。はあ、と克人は戸惑いつつ頷いた。

 

「フレッシュクリーム、サワークリーム……あ、そっか。正式にはバターって言うのか。クリーム状だからクリームって覚えちゃってたよ」

 

 そう呟きながら順が冷蔵庫を開ける。中から取り出されたのは牛乳によく似た、小さいパックだった。表面に生クリームと書かれてある。克人は不思議な気分でパックと順とを見比べた。

 

「ごめん。オレの記憶違いだったわ。フレッシュバターとか作れるんだよん。これで」

「バター……って、確か牛乳を分離させて練り固めたものですよね」

 

 学習済みの内容を思い出しながら克人は告げた。順がそう、と頷く。だがパックの表面には生クリームとしか書かれていない。不思議に思いながら克人は順からそのパックを受け取った。裏面に記された主成分を見て納得する。生クリームというのは牛乳から脂肪分を分離、抽出したものらしい。確かにこれを使えば脂肪分を更に分離するのは牛乳そのものを使うより容易いだろう。

 

「でも今から作るとホットケーキ冷めちゃうなあ」

 

 そう言いながら順がテーブルに乗せられた皿を見る。どうやらそのフレッシュバターなるものを作るには多少、時間がかかるらしい。克人はいいですよ、と笑って手にした生クリームのパックを冷蔵庫に戻した。

 

「美味しそうですし、このまま頂きます」

「せめてこれっくらいはつけようよ。市販品だけど」

 

 克人の笑顔に笑みで応えて順が今度は冷蔵庫から別のものを取り出す。今度は四角い紙の箱に入ったものだ。よく見ると箱の表面にはマーガリンと書いてある。マーガリンというのは確か、植物性油脂などを乳化剤等でバター状に固めたものだ。つまりは牛乳ではないものから作られた、人工のバターの模造品だ。

 

「バターもいいけどね。口当たりがこっちのが軽いし」

 

 何しろ溶けやすいしさ。そう続けて順がテーブルにマーガリンの入れ物を乗せる。それを色んな角度から見て克人は感嘆の声を上げた。なるほど、確かにこの入れ物なら保存も利くし、何よりバターナイフを使いやすい。

 

「紅茶、冷めちゃったけどいっか。じゃ、頂きます」

「いただきます」

 

 手を合わせた順と同様、克人も小さな両手をあわせた。初めて食べたホットケーキはとても美味しかった。順は少し甘いね、と笑っていたが、克人にとっては美味しいばかりで欠点など見出せなかった。それを食べながら克人はふと思い出した奈月のクッキーの話をした。すると順が嬉しそうに笑って頷く。

 

「ああ、カノジョの作るデザートは美味いからねえ。お菓子だけじゃなくてね。料理も上手いらしいよ」

「凄いですね」

 

 心の底から感心して克人は頷いた。順が新たにいれてくれた紅茶を啜って皿からもう一枚、ホットケーキを取り上げる。慣れない克人がフォーク一本でホットケーキを食べているのに対し、順は器用にナイフとフォークを操っている。だがホットケーキにフォークを刺してかぶりつく克人に順は何も言わない。好きに食べればいいよと笑うだけだ。

 

 人々の生活、衣食住に関してのことなどは一応学習はしている。だが実際に目に見えるそれと頭に詰め込まれた知識とを比べると随分と差がある。克人は順の教えてくれる事柄にいちいち驚いた。

 

「楽しそうだねえ。ホントに」

 

 学校でどんなことがあったかを話していた克人に順が微笑む。はい、と力強く頷いて克人はついついテーブルに乗り出していた身体を戻した。どうも興奮して喋りすぎた気がする。少し、自分の行動を反省しつつ克人は落とした声で告げた。

 

「ですが、申し訳ありません。吉良優一郎さんにだけは直接にご挨拶に上がれなくて」

「あー、いいのいいの。カレも忙しいからねん。多輝ちゃんとか斎姫ちゃんには会ったんしょ? おっけーよん」

 

 気軽に笑って順が答える。それを聞いた克人はほっとして胸をなで下ろした。順に命令された以上、無碍にするつもりはなかったのだ。が、当の優一郎だけはどこを探しても見当たらなかったのだ。昼休憩が終わり、放課後になって探してもやはり優一郎はいなかった。クラスが同じだという生徒に訊いたところ、どうやら優一郎は同じクラスでも特Aと呼ばれる別枠のクラスになっているらしく、そのクラスだけは授業などが全く別に行われるのだという。下手をすると学校に来ない日が何日も続いたりするのだそうだ。どうも聞いた話では特Aクラスは外部講師の下で学んだりなどといったこともあるらしい。同じクラスの斎姫に関しては、生徒会役員だからあの場にいたのだろう。そうでなければ斎姫とも会いにくかった筈だ。




学校が初めての克人はウキウキです。
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