※この作品はR-18です。

狩りの終焉 一部   作:伊駒辰葉

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エピタイは作者のため!w
エロシーンはありません。


順がウォームアップを開始しました 1

 二つ折りの携帯電話のボタンを押して順はふふん、と笑った。ベンチの隣に座る克人が困惑した目で順を見る。その手にはとけかけた二つのソフトクリームが握られていた。

 

「あーあ。先に食べちゃえばいいのに」

 

 二人はアーケードの一角にある小さな公園にいた。すみません、と小声で詫びて克人が右手のソフトクリームを順に差し出す。順はとけたクリームが落ちないよう、注意深くコーンカップを受け取った。白く甘いソフトクリームを口に運んでから何気なく克人を伺う。すると克人が目を輝かせているのが見えた。なるほど、どうやら克人はソフトクリームがどういうものか全く判らなかったらしい。食べ方も判らなかったに違いない。見よう見まねで克人がソフトクリームを舐め始める。それを横目に見ていた順は思わず吹き出した。

 

 こうして食べればいいよ、と食べ方のこつを教えながら順はさっさと手にしていたソフトクリームを食べ終えた。それを見た克人が慌てて口の中にソフトクリームを押し込もうとする。

 

「だから急がなくていいってば。ほら、垂れてる」

 

 口いっぱいにクリームを頬張って顔をしかめていた克人に手を伸ばす。順は指で克人の口許についたクリームをすくって口に運んだ。指先についたクリームをきっちり舐め取ってからポケットを探る。ハンカチを出して渡すと克人は消え入りそうな小声で礼を言った。

 

 目的のアイロンを購入したついでに必要そうな日用品を買い込み、二人は克人のマンションに戻った。外で一緒にいても順にとって克人の反応はとても面白かった。身丈の通り、克人と歩いているとまるで子供のように感じられるのだ。純真無垢な反応が楽しくてつい余計に引っ張り回してしまった。そのことを詫びながら順は手早く荷物をテーブルに開けた。

 

「コロッケとサラダと、後はスープくらいあるといいかな」

 

 早速、夕飯の支度に取り掛かろうとした順に克人が慌てた声をかける。

 

「そんな! 食事ならボクが」

「なに。オレの作るメシは嫌とか?」

 

 からかい半分で順はそう返してみた。するともの凄い勢いで克人が首を横に振る。あんまり激しく頭を振りすぎたのか、力いっぱい否定した後にダイニングの床にへたり込んでしまう。そんな克人を軽く笑ってから順はキッチンの入り口を顎でしゃくって示した。

 

「キミはいいからさっさと制服にアイロンをかけておいで。折角、洗濯したんしょ?」

 

 気軽に克人を促して順はさっさと玉ねぎを剥き始めた。克人がアイロンの入った袋を抱えてキッチンを慌てて駆け出していく。それを見送って順は苦笑した。慣れた手つきで玉ねぎの皮を剥いていく。

 

 克人は何故か洗濯の仕方やアイロンのかけ方は判るらしい。どうやらかつて所属していたコロニーで女達に教えてもらったようだ。食事に関して妙に疎いのは、恐らくハンターは人の食事を殆ど摂らないからだろう。余裕がある時に限り、嗜好品として摂取している節がある。どちらにしろ、ハンターの根本的な飢餓感は人と同じ食事程度では解消されない。ハンターの主食は龍神の持つ龍宝珠だからだ。

 

 複数のハンターで形成されたコロニーは今も正常に機能している。だが実質、今のハンターの長を務めているのは順ではない。順は自分の性質が変異した後、その位置に別の者をはめ込んだのだ。今ではコロニーはかつてのように平和ではない。克人がいなくなった頃を境にコロニーは互いに食い合うようになったのだ。

 

 だがそのことを克人は知らない。知ろうにも情報源がないのだ。順は皮を剥いた玉ねぎをフードプロセッサーに放り込み、四個ほどをみじん切りにした。ついでに人参をみじん切りにし、最後に豚肉と牛肉を半分ずつ放り込む。先に仕掛けておいた鍋の様子を覗きながら順はひき肉を炒め始めた。

 

 戻ってきた克人が不器用ながら手伝いを始める。二人でコロッケの具を丸めながら順は思わず笑った。椅子に乗って懸命に取り組む克人の手の中でコロッケの具が潰れてしまっている。どうも手に油を塗るのを忘れたらしい。あーあ、と苦笑しながら順は克人の手にべったりとついた具を指で削ぎとってやった。今度は失敗しません、と妙に気合を込めて言ってから克人が再チャレンジする。

 

 もう少し楽しんでいてもばちは当たらないよねえ。不揃いなコロッケを油に静かに落としながら順は胸中でそう呟いた。まだ克人は学校に行き始めたばかりだ。真相を知らないままの方が楽しく日々を過ごせるだろう。だがその一方で克人は自分の寿命が残り少ないことを知っている。これはどうしようもないことなのだ、と克人本人も自覚しているらしい。

 

 ずっと以前、木村の総帥が順の父親だった頃の話だ。父親は人ではあり得ないモノ……龍神の死体を手に入れて順と都子を人工的に作り出してしまったのだ。そして人工的に作られた龍神、順と都子を用いた様々な実験が行われた。都子は早期段階で優秀な成績を修め、研究員たちにとても大切に扱われた。だがそれとは対照的に順はテストで芳しい結果を出すことが出来なかった。

 

 油の中で気泡を生み出すコロッケをぼんやりと眺めつつ順は昔のことを思い出していた。あの頃の順は妹の都子を溺愛していた。それ故に自分達の正体を知った後、順は何とかして都子を救おうとしたのだ。

 

 結果的に都子は龍神そのものではないことが判明した。だがそれは順が木村の血筋の者を惨殺した後だ。順はとある龍神との出会いをきっかけにハンターとして生きることになり、そして都子はそんな順の道具として生きることになった。




ちょっと説明が入ってます。
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