※この作品はR-18です。

狩りの終焉 一部   作:伊駒辰葉

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エロシーンはありません。


追い回された後でエロい目に遭う 5

「いまの、は」

 

 克人は真っ青になって全身を震わせた。あの時に見た虫に今のそれはとてもよく似ている。サイズはまるで違っていたが、不気味さは同じだ。コロニーを壊滅させた魔のことを思い出し、克人はごくん、と生唾を飲んだ。

 

 平和だとばかり思っていたこの地にもあんなものがいるのか。克人はそう考えてからはっと目を上げた。いつの間にか桜と奈月は床に転がっていた女子生徒たちの着衣を整え始めている。

 

「あ、あの、どうもありがとうございました」

 

 深々と頭を下げて克人は二人に礼を言った。桜がそんな克人を冷たい目で見つめてふん、と鼻を鳴らす。奈月は床に転がった一人に制服を着させながら微笑んだ。

 

「克人さん。不可抗力であったことは知っています」

「え」

 

 意外な奈月の言葉に克人は目をむいた。てっきり信頼を裏切られたと罵られると思っていた。仰天した克人に桜が冷たい目を向ける。

 

「あなたは姫様を見くびりすぎです。それに、本来であればこの地の陣を護るのはわたくしの役目。詫びる必要などどこにもありません」

 

 口早に言って桜がまたそっぽを向く。克人は居たたまれなさに困惑して頭をかいた。どんな状況であれ、逃げようと思えば逃げられたのは事実だ。加減さえ判れば先ほどのような状況には陥らなかっただろう。反省の意をこめて克人はもう一度、ありがとうございますと礼を言った。

 

「自分は違うから、他人とは相容れない存在だから、理解できるはずがない。だから理解などしなくていい。そう思ってらっしゃいませんか?」

 

 優しい声音で奈月に言われて克人は目を見張った。奈月は慣れた手つきで次々に女子生徒たちに制服を着せていく。

 

「で、でも、ボクは」

 

 人ではない。龍神でもない。どちらにも成れない者が成るのがハンターだと幼い頃に克人は教えられた。そして同時に決して彼らとは相容れることはないのだと言われた。だがその教えには相手を理解しなくていいという言葉は含まれてはいなかった。

 

 人にも龍神にも成らなくていいよ。克人は克人、オレはオレ。それでいいじゃん。

 

 幼い克人にそう教えたのは順だ。あの頃、人工のハンターの製作実験は最盛期を迎えていた。次々に生まれるハンターの中で順はまるで選んだように克人に会いに来た。そして克人は目としての役割を与えられて順の手足として働くことになった。

 

 機械的にデータを集める役を負っていた克人に感情は必要なかった。だから誰に言われるでもなく他人との距離を置くようになった。最後に所属していたコロニーは、そんな中でも克人に安らぎを与えてくれた。

 

 だがそのコロニーも消えた。消えていく者なら理解などしても無駄だと最初から諦めていたのかも知れない。克人は俯いて手を握り締めた。

 

「偉そうな事を言ってごめんなさい。わたしが以前、そうだったから。自分しか見ていなかったから」

 

 水輝さんに会うまでは。そう言って奈月がそっと胸に手をあてがって微笑む。克人はいえ、と答えてぎこちない笑みを浮かべた。

 

「その方はとても素敵な方ですね。ボクも前にある方に同じようなことを言われたことがあります」

 

 そう言って克人は照れ隠しついでに自分の耳に指を当てた。小さな白いピアスを外して奈月に見せる。

 

「これをくれた人に励まされたことがあるんです」

 

 コロニーにほんの短い間だけいた青年のことを思い出しながら克人はにっこりと笑った。結局、青年は龍神だったためにコロニーを離れてしまったが、克人は心のどこかでずっと青年に憧れていたのだ。

 

 圧倒的な強さを持つ青年の名は沙耶。まるで海のような美しい青い色をまとう龍神だ。克人は嬉しそうにその話をしてから何気なく目を上げた。そこで不思議に思って首を傾げる。なぜか奈月と桜は手を止めて二人で顔を見合わせていた。

 

「あの? どうしたんですか?」

 

 克人は一人、訳がわからずに首を傾げた。固まっていたらしい二人のうち、桜が先に反応する。深々とため息を吐いた桜は黙々と制服を着せる作業を再開した。克人はしばらく桜を見つめてから奈月に目をやった。すると奈月が慌てたように転がっていた生徒に制服を着させ始める。

 

 克人に悪戯を働いた女子生徒については放置することになった。どうせ何かを言っても覚えていないだろう、と桜が冷ややかな説明をする。どうやら彼女たちは先の虫に操られていたようだ。二人に促されて倉庫を出た克人は思わず声を上げて空を見た。いつの間にかすっかり日が暮れている。暗い空に輝く星を見つめて克人は微笑を浮かべた。

 

「こんな街の中でも星は見えるんですね」

「周囲が暗いのだから当然です」

 

 きっぱりと言って桜が歩き出す。克人は困ったように笑ってそうですね、と同意した。そこで何気なく時計を見て慌てる。うっかり忘れていたが、そろそろ約束の九時だ。

 

「すっ、すみません! ボク、順様との約束があるのでこれで失礼します!」

 

 慌ただしく頭を下げて克人はもう一度、二人に礼を言った。桜が言ったお盛んですね、という意味は理解出来なかったが、克人は急いでいたためその発言は聞き流した。




えーと『魂の座』のあるシーンと、後半部分が繋がっています。
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