※この作品はR-18です。

狩りの終焉 一部   作:伊駒辰葉

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この段落はかなり長いので分けてます。
ヒューマノイドの説明も入ってますが、まだ書き切れてない……です。

エロシーンはありません。


多輝、説明頑張る! 2

 まず、女性でなければならない。これはヒューマノイド化する際にかかる負担に男性では耐えられないからだ。そして同時に機体維持のための基本動作に男性では適合しない。ヒューマノイドは人が呼吸するのと同等のレベルで性的快楽を得なければならないのだ。

 

 広々とした廊下を進んでいくとあちこちの部屋から女性たちの声が聞こえて来る。この地下の施設に集っている者にはヒューマノイドになって間もない者もあれば、優一郎がこの同好会を創設した当時からいる者もある。多輝は今や当り前となってしまった彼女達の声を聞きながら地下二階に行くためのエレベーターに向かった。途中、顔見知りのヒューマノイドたちが会釈をして過ぎる。多輝は適当に挨拶をしてふと足を止めた。

 

 そう言えば新入部員、いるんだっけか。見慣れない男子生徒を見止めて多輝は何気なく頭を下げた。新学期になってから多輝はまともに部活動の時間にここに入ったことがない。大抵は直接、自分の部屋のある地下三階に跳んでしまうからだ。今日はクラスメイトたちに最後までまとわりつかれていたため、仕方なく順当に歩いてここに来たのだ。

 

 多輝の会釈を受けた男子生徒が同じように頭を下げる。何気なく過ぎようとして多輝は訝りに眉を寄せて足を止めた。見た目にはごく普通の男子生徒に見える。多少、容姿も見栄えがするだろうが、優一郎やその他の多輝の知り合いに比べるとそれほどではない。痩せ型で賢そう、という点では優一郎と共通する部分も若干あるように思うが、それだけだ。だが多輝が足を止めた理由は別にあった。

 

「あのさあ。あんた、一年だっけ?」

 

 しばし男子生徒を観察してから多輝はぶっきらぼうに声をかけた。対外用にはきちんと女言葉を話せ、というのが優一郎を始めとする知り合いの言だが、ここでは特に問題ないだろう。その程度の認識で多輝は地を丸出しで男子生徒に話し掛けていた。すると男子生徒が不思議そうに首を傾げる。

 

「はい、そうです。吉良瀬さん、こんにちは」

 

 笑顔で応えて男子生徒がもう一度、頭を下げる。多輝は本格的に顔をしかめて首を振った。

 

「苗字で呼ぶの、ややこしいから止めろ。おれのことは多輝でいい。……って、あんたの名前は?」

 

 多輝は頭をかきながら憮然とした面持ちで男子生徒に顎をしゃくった。鞄を肩にかけて片手に携帯端末を握っていた男子生徒が苦笑する。それを見た多輝はしまった、と胸中で呟いた。もしかしたら前に顔を合わせたことがあるのかも知れない。

 

「宏文。都筑宏文です」

「ふーん……」

 

 少しの間の後、宏文が答える。多輝は間延びした声を返してから再び宏文を眺め回した。ぱっと見には特に珍しいところがある訳ではない。が、多輝の力を通した目に引っかかるものが映っているのだ。

 

 多輝だけではない。この学校に通う者の中には人ではないものが存在する。ヒューマノイドという意味ではなく、最初から人間外の存在だ。その呼び名は龍神というらしい。だが多輝は自身がそうだと言われても今ひとつ実感はしていない。人にはありえない便利な力を使えるモノ。それが今のところの多輝の龍神に対する認識だ。そしてその人を超えた力を介すると、宏文の周囲に奇妙なものが纏わりついているのが見えるのだ。

 

「ええっと、あのさ。凄く変なこと訊くけど」

 

 そう前置きしてから多輝はしばし悩んだ。まさかストレートに妙なものと関わらなかったかと訊くのも変だ。かと言って遠回しにそれとなく訊くのも難しい。多輝はしばし宏文の前で考え込んだ。唸りながら額を押さえて考え込む多輝をどう思ったのか、宏文が不思議そうに首を傾げる。

 

 男の時ならやれば判るんだけどなあ。そんなことを考えながら多輝はちらりと宏文を見た。どんなに優しい顔立ちをしていようが、宏文は男にしか見えない。かと言って女のままで性交渉してください、とも頼めない。

 

「うー」

 

 苦悶の表情で多輝は大きく呻いた。

 

「多輝さん、お体の具合でも?」

 

 心配顔で宏文に問われ、多輝ははっとして顔を上げた。違う違う、と慌てて首を振る。だが宏文は変わらず心配そうな顔をしている。多輝は結局、考えていたことを口にすることも出来ず、そのまま宏文と別れてエレベーターに向かった。地下に向かうエレベーターのボタンを押して扉が開くのを待つ。ほどなく上昇してきたエレベーターに乗り込んで多輝は深々とため息をついた。多輝だけを乗せたエレベーターが静かに地下三階に移動する。

 

 龍神と呼ばれる者たちは基本的に力で身体を構成する。それ故にか性別を自由に変えることが可能な者も中にはいるのだ。普段の多輝は女性体を取っているが、時折男性体に変化する。だが無意識下で切り替わるので、多輝にはその原理が未だによく判らない。だが一つ言えるのは、男であろうが女だろうが性欲がやたらと旺盛になる時が多いということだ。男性体の時にはヒューマノイドに相手をしてもらったり、外に女性を引っ掛けに行くことが出来るが女性体ではそうはいかない。いや、出来ることは出来るのだが、多輝の気持ち的に他の男性とは致したくないのだ。

 

「わがままかー、おれはー」

 

 誰もいないエレベーターでそうぼやいて多輝は壁に額を押し付けた。とりあえず宏文については覚えておくだけでいいだろう。そう判断しつつ多輝は地下三階でエレベーターを降りた。

 

 ロボット研究会の所有するこの研究施設は地下三階層まで作られている。地下一階が通常の研究等を行う施設。二階は倉庫のような役割を持っているスペースとヒューマノイドたちの集う場所がある。一般的なヒューマノイドたちはそこでメンテナンス等を行い、彼女達を統括する役目を持つ仁科保美という女性もそこに待機している。普通は優一郎からの命令を保美が受理し、然るべき者へ通達するというシステムが取られているのだ。

 

 そして地下三階に作られているのが、ヒューマノイドの中でも一部の者が使う私室だ。その他にも多くの部屋があるらしいのだが、多輝は把握はしていない。基本的には優一郎が所有しているスペースだからだ。それ故、エレベーターを降りると地下三階は廊下の先に右と左に分かれるドアが設えられている。多輝は久しぶりにドアの前に立って逡巡した。

 

「えーと、どうするんだっけ」

 

 考えを巡らせて腕を組む。確かここを開くには特殊な方法を使わなければならないと優一郎が言っていたような気がする。しばし記憶を探ってから多輝はドアを開けることを諦めた。

 

「面倒だ」

 

 そう呟いて多輝はドアの向こう側に跳んだ。一瞬だけ視界がぶれ、暗闇に包まれた後に視界が再構成される。多輝は何食わぬ顔で私室の並ぶフロアを歩き出した。




そういえば多輝スタートの話もあるんですよねー(棒
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