フェラシーンですかね!(ばっさり
静かなホテルの部屋の中で紫は一人、ぼんやりとした面持ちで椅子に腰掛けていた。頭を冷やしてくる、と外に出たっきり、水輝は戻ってこない。もう深夜近いのに、と呟いて紫はため息をついた。
ふと、見知った気配が部屋の中に現れる。紫は顔を輝かせて立ち上がり、だがすぐに顔を曇らせた。水輝を抱えた奈月が唐突に部屋の中に現れたのだ。しかも奈月の腕にしっかりと抱えられた水輝は全身がぼろぼろで、その上ぐったりとしてしまっている。紫は急いで二人に駆け寄り、奈月の反対側から水輝を支えた。
「紫さん、水輝さんの介抱を」
お願いします、と続けて奈月がその場にへたり込む。紫は慌てて奈月に大丈夫かと声をかけた。だがすぐに思い直して水輝を抱え直す。とりあえず寝かせた方がいいだろう。紫は苦心しながら何とか一人で水輝をベッドに横たえた。続いてへたり込んだ奈月に駆け寄る。
「大丈夫ですか?」
心配顔で問い掛ける紫に奈月が力なく微笑む。
「大丈夫です。わたしが倒れてしまえば、さらに水輝さんに負担がかかります。ぎりぎりですけど、きちんと計算して力を戻しましたから」
そう言いながら奈月が立ち上がろうとする。紫は慌てて奈月を横から支えた。とにかく休んだ方がいいだろう。そう言って紫は傍の椅子に奈月を腰掛けさせた。
「……ごめんなさい。わたしは何も出来なくて」
小声で言って紫は唇を噛んだ。水輝がどこかで何かと戦ってきたことは様子を見れば何となくは判る。だが今の紫には水輝の気配を正確に読むことは出来なくなっているのだ。それだけではない。治療の力を使ったところで大して役に立たないことも判っている。
「そんな、紫さんが気に病む必要はありません。わたしは水輝さんの道具ですから、水輝さんのために働くのは当然ですけど、紫さんは違いますから」
慌てたように言って奈月が首を横に振る。それを見た紫は顔を曇らせた。お茶をいれますね、と告げて奥にあるテーブルの上で茶をいれ始める。簡易ポットに水を移してわかすまでの間にティポットとカップを準備する。
何故、わたしじゃないんだろう。水輝の横に居るのが、どうして自分ではなく彼女なのだろう。紫はそう思いながらちらりと奈月を振り返った。奈月は心配そうにベッドの水輝を見つめている。
「あの、紫さん」
申し訳なさそうに呼ばれて紫は慌てて返答した。何ですか、と微笑みを浮かべて問い掛ける。
「あの、その、水輝さんに、えっと、その……」
真っ赤な顔をして口ごもった奈月が困ったように目を逸らす。茶をいれていた紫はぴたりと手を止めた。だがすぐにポットを傾けてティカップに紅茶を注ぎいれる。二つのカップを手にして紫は奈月に近付いた。どうぞ、と片方のカップを差し出す。恥ずかしそうに俯いていた奈月が焦った声を上げてティカップをソーサーごと受け取る。
「構いませんよ、わたしは。どうぞ仰ってください」
そう言いながら紫は奈月の向かい側の椅子に腰掛けた。横目に水輝を見やる。水輝は熟睡しているのか二人の話し声にも反応しない。
「その、あの、今から水輝さんにフェラチオします! ごめんなさい」
そうまくし立てて奈月が勢いよく頭を下げる。紫はほんの少しだけ目を細めてから苦笑した。奈月は生身の身体ではない。あくまでも機械仕掛けの身体だ。そして奈月の動力源は水輝の力なのだ。精の形で注ぎ込むのが一番効率が良いように作り上げたのは水輝でも奈月でもない。今はいない立城だ。
「どうぞ。何ならわたしは席を外します」
抑揚のない声で言って紫は静かに立ち上がった。すると焦ったように奈月が紫を引きとめる。
「紫さんは水輝さんの傍にいらしてください。わたしは、ただ、精液を補給するだけですから」
奈月は奈月なりに気を遣っているのだろう。懸命な面持ちで言う。紫はため息をついて手にしていたカップをテーブルに置いた。判りました、と頷いてベッドに近づく。広々としたベッドに横たわる水輝の傍に腰掛けてから紫は奈月を伺った。奈月が茶の入ったカップをテーブルに置いてよろけながらベッドに寄る。
ベッドに這い上がって水輝の腰の辺りに座り込んだ奈月が失礼します、と頭を下げる。水輝の穿いていたジーンズの前が開かれる様を紫はぼんやりと見つめていた。奈月がそっと水輝の下着をずらす。力なく横たわっていた水輝のペニスを大事そうに指ですくい上げ、奈月は頭を下げた。
「んー」
掠れた声で呻いて水輝が身じろぎをする。傍にいた紫はその声にびくりと肩を震わせた。だが水輝が気付いた風はない。どうやら寝ぼけているだけらしい。紫はほっと息をついてちらりと奈月を見た。そこで思わず息を飲む。いつの間にか水輝は腕を伸ばして奈月の頭を撫でていたのだ。
力なく萎えていたペニスが奈月の愛撫によって頭をもたげてくる。それまで唇と舌でペニスの表面をなぞっていた奈月は、そこで口にペニスを含んだ。紫はしばし奈月を見つめてから水輝を見た。水輝は時折、ぴくりと眉を寄せては奈月の頭を撫でる手を止める。どうやら奈月の愛撫に感じているらしい。そのことを知った紫は唇を引き結んで悲しみを堪えた。
見せつけられる側になったらたまったもんではないですよね。