エピタイは作者用!(酷い)
エロシーンはありません。
「苺は気にしないだろうがな。まあ、判らなくもないか」
確かに奈月と別の男が勝手に交わっていたら腹が立つ。水輝はそう考えてため息をついた。だが水輝は絶対に奈月が別の誰かと交わってはいけないとは考えてはいないのだ。
龍神は他者と交わることで力を得たり、また対象に力を分け与えることが出来る。それ故に例え相手に特別の情愛がなくとも交わることもあるのだ。特に力のある龍神ほどその傾向は強い。そして力が強ければ強いほど、性交渉に対する拘りが薄くなり易いのだ。
「かと言って好みがないって訳でもないしなあ」
口の中でぼやきつつ水輝はベッドまで戻った。放り出していたシャツのポケットを探って煙草を取り出す。一本抜いて唇に挟み、残りを着ていたシャツのポケットに突っ込む。顔を上げたところで水輝は横からタイミングよく火を差し出された。いつの間にか蒼がライターの火を灯している。ありがたく火をもらって一息ついてから水輝は告げた。
「それで? 苺はどうなんだ」
再びベッドに腰掛けながら水輝はそう訊ねた。すると蒼が生真面目な顔で言う。
「特に問題はございません。お申し付け通り、封印は一つずつ外れています。ですが、やはり地上の王の不在は痛いですね」
少し考えるような顔になった蒼を水輝は上目遣いに見た。美しい薄青の長い髪を持つこの青年はかつては人間の女だった。それを水輝が力をかけて作り変えたのだ。
「やっぱり勝手に解けだしてるか」
「はい」
きっぱりと返事して蒼が頷く。水輝は煙草を指に挟んでそのまま手を口許にあてがった。思わず漏らした呻きに蒼がぴくりと眉を上げる。その様を見て取ってからああ、と水輝は呟いた。
「天輝に期待するか。あれで一応は立城の術に気付いてやがるしな」
そう言って水輝はため息を吐いた。蒼が静かに水輝を見つめて呟くように言う。
「……かつてご自身であられたお方ですのに」
「だから意地でも何とかするだろう。それくらいの気概はないと困る」
即座に切り返して水輝は鋭い目で蒼を見た。すると蒼が深々とため息を吐く。無慈悲な、と蒼の唇が音もなく刻む。水輝はだがそれについてはコメントしなかった。
立城の力と自分のそれを混ぜたものが生きている。それは水輝にとって掛け替えのない輝きに見えた。だが結局のところはそれもただの夢物語だった訳だ。そのことを天輝も何となく感じてはいるだろう。水輝は考えを巡らせながらしばし黙って煙草を吸い続けた。蒼の差し出した灰皿をありがたく受け取って灰を落とす。
「順の奴にはちょっと釘を刺しておいた方がいいのかな。あいつ、また無茶をしただろう」
多輝が天輝のいる天空の城にたどり着けた経緯を思いながら水輝は苦い顔で言った。すると困ったような顔で蒼が頷く。水輝はそうだな、と呟いて肩を竦めた。一度、順とは徹底的に話をつけておいた方がいいだろう。丁度よく明日には会うことになっているのだ。
「苺の監視は任せた。やばそうなら知らせろ」
そう言って水輝は腰を上げた。灰皿に煙草をねじ込んで机に置く。そんな水輝を目で追っていた蒼が深々とため息を吐く。
「わたくしは一応、多輝様の使い魔だと思うのですが」
「長い目で見れば奴のためだ。おれに使われる程度のことは我慢しろ」
すげなく言って水輝は軽く手を振った。嫌そうに頭を下げた蒼がその場から消える。それを確認してから水輝は部屋を出た。途中、紫の部屋に寄って店に出ることを告げてから屋敷を出る。
奈月はまだ桜と一緒に学校にいる。今日は午後いっぱいまで授業が入っている筈だ。そのことを思い出しながら水輝はのんびりと屋敷に隣接する喫茶店に向かった。小さなこの喫茶店は紫たっての希望で建てたものだ。評判は悪くないらしく、どんな時でもけっこうな客で賑わっている。
硝子張りの窓の内側にいた一人の少女が慌てたように店内のフロアを走るのが見える。水輝は顔をしかめて店の入り口から少し離れた。木で出来た優しい風合いの扉をけたたましく開けて少女が飛び出してくる。
「水輝様ああああ!」
水輝はするりと飛び掛ってきた少女を避けた。長い黒髪をポニーテールにした少女がものの見事にすっ転ぶ。敷地の少し奥に位置する店の入り口に続く小道には淡い色彩の可愛い小石を敷き詰めてある。その道を囲んでいるのは愛らしい花や背の低い観葉植物だ。小道に引っくり返った少女を冷ややかな目で見つめ、水輝は深々とため息をついた。
「何でいつもいつもお前はおれに飛びかかろうとするんだ」
「ふええん、水輝様がいじめたー!」
派手な顔立ちに似合わない子供のようなことを言いながら少女が泣きじゃくる。小道にへたり込む少女を水輝は目で見た。この少女の名は千佳。水輝がかつてハンターから墜ちようとしていた千佳を助けたのがきっかけで、以来千佳は水輝の使い魔のように働いている。
千佳は飛び込み専門です。