※この作品はR-18です。

狩りの終焉 一部   作:伊駒辰葉

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エピソードが長すぎるので分けます。
多輝視点です。風呂入ってますが、エロシーンはありません。


親子? で仲良く? 風呂に入ろう

 リクエストは、と訊いた多輝に天輝がしばし思案して小さく笑う。

 

「そうねえ。折角だから出来るだけ楽しいのがいいかな」

「楽しいの、ねえ」

 

 眉を寄せて言われたことを口の中で言いながら多輝は着ていたシャツを手早く脱いだ。この城は男は最上階までは上がれないらしい。が、男性が全く来ない訳でもないので下三層までなら入れるようにしてあるのだという。その三階のフロアには客用に幾つかの広い部屋と大きな浴室が設えられている。その浴室の手前、脱衣場で二人は服を脱いでいるのだ。とは言っても天輝の方は使用人なのか、それとも付き人なのかは判らないが三人の白い服を着た女に恭しく服を脱がされていたりする。

 

 何だかなあ。そんなことを呟いて多輝は一人で次々に服を脱いだ。最後に下着を取ったところで間近で悲鳴が上がる。驚いた多輝が見ると、それまで天輝の服を脱がせていた三人がいつの間にか脱衣場の隅に固まっていた。

 

「あー、もう。あんたたちはいいから。出て行きなさい。ほら、しっしっ」

 

 呆れたように頭をかいて天輝が三人に手を振る。それを見てから多輝は何となく自分の格好を見下ろした。

 

「もしかしてあいつら男に免疫ないのか」

 

 脱衣場の隅に逃げていた三人が一斉にその場から出て行く。どの女も見た目にはとても若く、高校生くらいの年頃にしか見えなかった。が、彼女たちは人ではないのだ。恥ずかしがるようなことでもないだろうに、と多輝はため息をついた。

 

「もしかしなくてもここにいる女の殆どはそーなの。どうでもいいけど手伝いなさいよ。気が利かないわねっ」

 

 膨れ面で天輝がくるりと背中を向ける。多輝はため息をついて、ずれたワンピースの中にある下着の紐を解き始めた。細いリボン状の紐を解いてビスチェを緩める。桜色のビスチェを取るとふっくらとした柔らかそうな乳房が現れる。それを見た多輝はへえ、と思わず呟いた。

 

「……何よ」

 

 顔をしかめて天輝が肩越しに多輝を見る。多輝は苦笑して緩んだビスチェを引きおろしていった。続いてベルトの先端についた留め具を外してストッキングをずらしていく。ヒューマノイドだから当然なのだが、現れた天輝の肢体は多輝の目から見ても十分に若々しく魅力的に見えた。

 

「子供を産んだとは思えない体だなあとか」

 

 その瞬間、天輝が軽く手を振って多輝の頭を叩く。いてえな、とぼやきつつも多輝は静かに天輝の下着ごとワンピースを引き下げた。

 

「でもこんなの一人じゃ脱ぎ着出来ねえじゃん」

 

 ビスチェだけではない。天輝の着ていたワンピースも作りが複雑でとても一人では着たり脱いだりが難しそうだ。

 

「ったりまえじゃないの。これはあいつらが勝手にあたしに着せたのよっ。大体、あたしだってこんなややこしい服なんて着たくないわよっ」

 

 盛大に文句を言いながら天輝が床に輪になって落ちた服を越える。はいはい、と苦笑しながら多輝は天輝の脱いだ服を集めていった。脱衣場の端に並んでいるかごを二つ取り上げ、片方に天輝の服を、もう片方に自分の服を放り込む。

 

 そもそも天輝が先に風呂に入らないと気持ちが悪い、などと言い出したおかげでこうして付き合う羽目になっているのだ。多輝はやれやれと頭をかいて天輝に促されるままに浴室に進んだ。

 

 大きな扉を開いたところでやたらと広い浴室に絶句する。大理石で形作られた風呂は無駄に大きかった。下手をすれば学校にあるプールなどより広いのではないだろうか。美しい曲線を描く浴槽の端には噴水まで設えてある。

 

「……なー。これってさー……」

「言わないのっ。どうせ無駄に広いとか思ってるんでしょうけど、そういうのは口にしないのが礼儀ってもんでしょうが!」

 

 口早にまくし立てて天輝が片手を宙にかざす。その手の上に現れた物を見止めた多輝は思わず吹き出した。天輝はどこからともなく洗面器とスポンジ、それに玩具のあひるを出したのだ。しかも洗面器はどこぞの銭湯に置いてありそうな安っぽいプラスチック製だ。豪奢な浴室に余りにも不釣合いな気がして多輝は遠慮なく爆笑した。すると天輝が唇を尖らせて多輝の頭をどつく。

 

 シャワーはこっちよ、と言われて多輝は大人しく天輝について歩いた。浴室の一角にシャワーの設えられた洗い場がある。その広さもまた普通ではない。一体、何人が一緒にここで身体を洗うのだろう。シャワーが数十本はある。しかもシャワー一本につき取られているスペースがやたらと広い。天窓から燦々と日の光の入るそこを多輝は珍しさをこめて見回した。斜めに取り付けられた窓の外には青く透き通った空が見えている。覗きの心配がないからこその構造なのだろう。そんなことを考えながら多輝は天輝に言われて洗い場の一角に腰を据えた。

 

 自分の髪を手早く洗ってから多輝は天輝の長い髪を丁寧に洗い始めた。どうやら天輝はいつも人にして貰うからなのか、多輝がそうすることが当然だと思っているらしい。だが多輝も大して気にせず天輝の髪を洗ってやった。この程度のことなら他の女性にもよくせがまれるので多輝も慣れているのだ。

 

「でも祐はほっといていいのかよ? あいつ、絶対怒ってたろ?」

 

 天輝の髪を洗い終えたところで多輝はふとそう訊ねた。さすがの祐も多輝と一緒に風呂に入る気にはならなかったらしい。ちょっと触っただけでセクハラだのと叫んでいたのだから当然の反応だろう。

 

「ちょっとの間だし大丈夫よお」

 

 だからはい、と手渡されたスポンジに多輝は苦笑しつつ石鹸を塗りつけた。ちょっと待ってろ、と言ってからまずは自分の身体を手早く洗う。続いて多輝は一度綺麗にスポンジを洗い流し、石鹸を擦りつけた。細かく滑らかな泡が出来るようにスポンジを何度も揉む。それを見ていた天輝が不思議そうに言った。

 

「……何してるの? もう泡は出てるでしょ」

「あー? ちゃんと泡立てないと肌に傷がつくだのなんだの、うるせえ女がいてな。こうしろって教えられたんだ」

 

 真面目な顔でそう答えて多輝は泡がきめ細かくなったところで天輝に向き直った。変なの、と笑って天輝が多輝に背を向ける。白く傷一つない背中を多輝は丁寧に洗い始めた。相手はヒューマノイドだが、汚れる箇所は生身の者とそう大差はない。特に天輝の場合、優一郎の手がけた高級品であるために汗をかく機能があるのだ。

 

「それにしても不思議ねー。まさかあんたと一緒にお風呂に入る日が来るなんてねえ」

 

 多輝に身体を洗って貰いながら天輝がくすくすと笑う。多輝はそうか、と答えて天輝の背中を洗い終えた。次は前、と言って天輝の前に回りこむ。首から肩、腕、そして胸の膨らみを傷めないように気をつけながらスポンジで擦っていく。それと同時に多輝は出来るだけヒューマノイドの機体が欲情しないよう、手早く洗っていった。優しく擦らないとまずいのは判るが、下手にのんびりと洗っているとかえってストレスが溜まってしまうのだ。

 

「うわー……。あんた、慣れてるわねえ。あの子たちより全然楽だわ」

 

 感心したように言う天輝を多輝はちらりとだけ見た。

 

「そりゃあな。自分が女の時はヒューマノイドだしな、おれは」

 

 だからだろ、と続けて多輝は天輝の腿の間に手を入れた。少し開け、と言うと天輝が大人しく腿を左右に軽く開く。息を深く吸って止めろ、と多輝は続けて注文した。訝る天輝にいいからやれよと急かす。

 

 不服そうに唇を尖らせてから天輝が深呼吸する。その隙に多輝は手早く天輝の股間を洗った。深く息を吸った天輝が息を止める。その時にはもう、多輝は陰部をあらかた洗い終えていた。会陰から肛門までを撫でてからもういいぞ、と声をかける。一気に溜まっていた呼気を吐きながら天輝が苦笑する。

 

「あんた、たまにここに来なさいよ。便利でいいわー」

 

 そう言って天輝が立ち上がる。ばーか、と呟いて多輝はさっさと天輝の足を洗い終えた。泡だらけになった機体に温度を調節した湯をシャワーでかける。はしゃいだ声を上げていた天輝がふと黙り込む。多輝は怪訝に思ってどうしたのかと訊ねた。

 

「何で平気なの?」

 

 言われて多輝は天輝の視線を追って自分の股間に目を落とした。股間で屹立した自分のペニスを見て苦笑する。

 

「ちょっと勃ったからってすぐに突っ込みたくなるって訳でもないんだよ。かと言って生理現象だから女の裸見りゃ勃つしよ」

 

 まあ、我慢してくれ。そう笑って多輝は天輝の身体を流し終えた。張り合わされた大理石の床を滑らないよう気をつけて歩く。天輝は広々とした浴槽に身を浸したところで洗面器からあひるの玩具を取り上げた。子供かよ、と苦笑して多輝もたっぷりとした湯の中に身を滑らせる。入ってみると結構な深さがあり、座ると首まで湯に浸かることが出来る。広々とした風呂の中で多輝は思い切り手足を伸ばした。そういえば手足を好きに伸ばして風呂に入るのは久しぶりだ。

 

「わーい、泳いじゃお」

 

 髪を大きな髪留めで一まとめにした天輝が嬉しそうに言って浴槽に張られた湯に身を躍らせる。多輝は滑らかな浴槽の縁にもたれてぼんやりと天輝を目で追った。広々とした風呂をゆっくりと泳いだ天輝が多輝の傍に戻ってくる。

 

「いつも泳ごうとすると怒られるのよねえ。はしたないとかって」

「何だ。ここってお前の城なんだろ? 別に好きにすりゃいいじゃねえか」

 

 泳いできた天輝に押されて波立った水面で揺らいでいたあひるの玩具を取り上げ、多輝はそう答えた。天輝の手を取ってその上にあひるを押し付ける。手渡されたそれを大事そうに湯に浮かべつつ天輝は唇を尖らせた。

 

「別にあたしのもんって訳でもなくてねえ……。まあ、その辺の話はややこしいからやめときましょ。とにかくあたしは常に見張られてるのよ」

 

 けろりとした顔で言った天輝を多輝は驚きをこめて見た。見張られているということは、始終誰かに見られているということだ。が、当の天輝が気にした様子はない。まじまじと見つめた多輝に天輝が小さく笑ってみせる。




割と仲良しな感じですw
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