※この作品はR-18です。

新米冒険者が、悲惨な人生を送ってきたダークエルフの奴隷少女を買った話。   作:仮面紳士

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お、お久しぶりでーす……(汗)


21 優雅

「では、服を全て脱いで、その台の上で横になれ」

「…………」

 

 学者風の男に命令され、ライラは眉をしかめた。

 昔は裸を晒すくらいなんとも思わなかったのに、今は明確に不快感と抵抗感を感じる。

 

「デリカシー!!」

「痛っ!?」

 

 そんなライラを見て、ノーチェが男にチョップを叩き込んだ。

 

「ハクイ! 女の子にその言い方は無いでしょ!」

「お前はすんなり脱いだだろうが」

「昔は色々壊れてたのよ! というか、そういう子にこそ紳士的に接しなさい! 陛下を見習え!」

 

 ハクイと呼んだ男にギャーギャーと文句を言うノーチェ。

 ライラの扱いに対して本気で怒っている。

 ……彼女のライラに対する態度は、徹頭徹尾、過保護な姉みたいな感じだ。

 そのせいで、そういう扱いをされた経験に乏しいライラは、どうしてもノーチェを嫌いになり切れない。

 ダンを殺しかけた仇だというのに。

 

「ハクイ、せめて下着くらいは着けたままでやれないか?」

「術式は体全体に刻むのですから、下着でも十二分に邪魔です」

「では、二プレスと前張りなら……」

「陛下、それ更にエロくなってます」

 

 加えて、皇帝の方もここにきて天然キャラを発揮してきた。

 反応に困る。

 

「ああ、もうわかった。わかりました。女の術師に頼みましょう。ダークエルフの処置ができるレベルとなると、出張中のユリーカしかいないので、帰ってくるまで待つことになりますが」

 

 というわけで、ライラの治療は後日に回された。

 彼女は知らないことだが、この期間でダンが反逆者の仲間になったり、帝国目指して出発したりと色々あり。

 悲壮な覚悟を抱いて旅に出た彼とは打って変わって、ライラはお城で何不自由ない暮らしを送っていたことになる。

 

「はい、あ~ん」

「むぐっ」

 

 自室として与えられたやたら豪華な部屋で、やたら肌触りの良い服を着せられ、やたら顔の良いノーチェに「あ~ん」される。

 口に突っ込まれた料理もやたら美味しい。

 今までの人生で食べてきた料理が豚の餌に思えるレベルで。

 

「美味しい?」

「………………美味しい、です」

 

 悔しい。でも感じちゃう。美食を。

 

「そっか。良かった」

 

 ノーチェは本当に嬉しそうに笑う。

 ライラはムスッとした顔で、彼女から顔を逸らした。

 

 またある時は。

 

「ラ〜イラ! お散歩に行きましょう!」

 

 ノーチェに連れ出され、国内を歩いたりもした。

 城内では兵士達が厳しい訓練に励むのが見えた。

 上半身裸で武器をぶつけ合う彼らは、一人一人が余裕でダンどころかディオンより強い。

 

 その強さを維持するための地獄の鍛錬に身を捧げているのに、兵士達はノーチェが手を振るとデレデレしながらブンブンと手を振り返し、教官にチョップされるような明るさとユーモアを忘れていない。

 あと、当たり前のようにダークエルフへの差別が無い。

 

「こんにちわ」

「あら、可愛い子ねぇ」

 

 城下町を歩いても、ダークエルフの二人に妙な目を向ける者はいない。

 ヘルメス以上に雑多な種族が交ざり合い、ダークエルフ以上に目を引く存在なんていくらでもいる。

 

 あっちには角と翼と獣耳と尻尾と鱗が生えた身長三メートル越えの爆乳美女が肩で風を切って歩いていてるし。

 向こうでは耳の長い子と、背が低くて横に広い子と、中途半端に両者の特徴を合わせ持った子が仲良く遊んでいる。

 

 かつて冒険者ヘイオースは、このアレキサンド大帝国を、ライラが普通に生きていけるかもしれない国の候補に上げた。

 それは間違ってはいなかったのだと、この光景を見ていればわかる。

 

「どう? ここでの暮らしは?」

「…………」

 

 ライラは黙秘した。

 認めたくなかったからだ。

 ここが良い国に見えることを。

 自分が──幸せを感じ始めてしまっていることを。

 

「…………」

 

 ライラはノーチェの顔を見る。

 彼女は良い人だ。

 少なくとも、身内認定した相手に対しては。

 もっと早く、もっと違う状況で出会えていれば、きっとライラは彼女を本当の姉のように慕っていただろう。

 

「はぁ……」

「た、ため息!? 何か気に触ることしちゃった!?」

 

 アレキサンド大帝国。

 優秀さを尊ぶ実力主義の国。

 積極的に侵略戦争を起こし、そうして奪い取ったリソースを国民に還元して、より強く、より豊かになってきた強国。

 

 他国にとっては悪魔のようで、国民からすれば天国のような国。

 その庇護を受けることは、ある意味、この大陸において最上級に近い『幸福』である。

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