とある汚っさんと野球少女たちの爛れた日々 作:雑食で節操なし
とぼとぼとした足取りで職安を出る男、河川敷を歩きながら先日突如として降りかかった思い出したくもない不運を思い出してしまう。
何時も通り出勤し上司に呼び足されたかと思ったら突然の解雇通知、理由を聞けば特に理由を話されもしなかった。
不幸中の幸いとして妻子が居ない事と、退職金には色を付けてくれた事だろうか。それもこの金額で黙っていろという事なのかと邪推してしまう。
ふと横の河川敷を見ると子供たちがワイワイと元気に野球に興じている。
「子供は良いなぁ、僕もあの頃はただ目の前の白球夢中で追いかけてたっけ。
それが今では草臥れた中年だ、就職も厳しいよなぁ」
と力なく呟くと家に向かって歩き始める。
ボロボロのアパートにたどり着き、誰も迎えてくれないドアを通り、郵便受けを確認する。
今でもあの解雇通知は間違えで戻ってきて来れと連絡がないかとついついあり得ない可能性にすがり付きたくなってしまう。
カサリッと指先に何が触れる、何処かのチラシだろうと思っていたが感触が違うのに気が付く。
「あれ、なんだろうこれ。封筒?まさか、本当に」
僅かな期待を胸に改めて見てみると立派な封筒であり、確かに自分の名前が書かれている。
だが残念ながら元居た会社ではなく、聞いたこともない学校の名前とそこの用務員として雇いたいという内容だった。
何故そんな縁もゆかりもない場所に自分が?と思いつつも、仕事を決めなければ生きていく事すらも儘ならない状況なのを思い出し明日その学校に向かってみようと決め諸々を済ませ寝床に着くのだった。
目の前の建物に圧倒されてしまう男、それもそうだろう。
何せ目の前に有るのは新設とは思えない程大きく立派な校舎だったからだ。
こんな所に勤めるなんて何かの間違えではないのかと疑ってしまいそうになる。
今ここでドッキリの看板を出されても信じてしまうだろう。
事務所を訪ねると応対してくれたのは淡い金の髪の毛にルビーの様に真っ赤な瞳の美少女だった。
「ふむ、やっと来たな」
「?何かおっしゃいましたか?」
「いや、何でもない。私がこの学園の理事長の神良美砂だ。」
理事長というにはあまりにも若い少女の登場に少し困惑するが雇ってもらえるかの大事な場面だ、困惑を顔に出す事が無いように努めて会話をしていこう。
そう思っていたら彼女から「良し、採用だ」と言われてしまった。
「えっ?」
「なんだ、不満か?」
「いえ、不満というか。特に何も話して無いのに採用を決めて良いんですか?」
「疑問は最もだが……これでも人をみる目は有るつもりだ、だから問題無い。それもと何か問題を起こすつもりなのか?」
「い!いいえっ!!」
「なら良し」と頷く彼女にこの先大丈夫なのだろうかと不安になるのだった。