勇者パーティから追放された美人ギャルタンクは嫌そうな顔を浮かべながら、ぼっち獣使いの俺に使役されたがっている 作:猫星人/Mao-lien
休日、ショウマは『獣使い』たちの集まりに顔を出していた
「ショウマ!一年ぶりだなぁ、元気そうで良かったよ!」
「ダイゴこそ、随分と元気そうじゃないか!」
ショウマとショウマの古くからの知り合いのダイゴは顔を合わせると、互いに久しぶりに会えたことを喜び合う
ちょっとした『運動場』を貸し切って開かれたこの集まりは、年に一度くらいの頻度で不定期に開催されるものだ
集まっている人たちは10代〜30代で80人くらいおり、もちろん全て『獣使い』である
その人数にしては広すぎる会場だが、それは各々の使役している『魔物』を表に出しながら『交流』できるようにするためである
「ここの集まりに参加するのも、もう何回目だろうなぁ……」
「俺らが会ったのもこの会のおかげだっけ」
獣使いは『不遇』である
本人が弱い、人間の使役は性行為が必要などのジョブ由来ゆえの不遇もあるが、何より『社会的立場』が不遇だった
そのため、こうして年に一度でも集まって互いの境遇を知り、助け合うための場となっている
「信じられるか?数十年前の日本なら俺らが『犯罪者予備軍』って言われることもなかったらしいぜ。こんな会も必要なかったかもな」
「そうらしいね、本当かどうかはわからないけど……」
ダイゴが染み染みと呟く
獣使いが社会的にそういう風な扱いになったきっかけは、『欧州の価値観』を輸入したからだと言われている
日本とは違い、海外の獣使いは『奴隷商』としての側面が強かったのだ
もちろん、獣使いが『人間を使役』できるからである
今では邪法とされているが、『調薬師』の作成した特別な薬剤と合わせて使役することで、人間に対して『洗脳』や『肉体改造』まで獣使いはすることができた
その様な処置を受けた『奴隷』は、戦地や娼館などに次々に売り飛ばされていったのだ
近代になって奴隷の扱いが問題提起され、そして撤廃になると元奴隷たちの『怒りの矛先』は獣使いに向かうことになった
それが約100年ほど前の話である
そして数十年前に日本の西洋化が急速に進むと、それらの獣使いを差別する価値観も同じくして輸入されてしまったのだ
「ショウマは冒険者育成学校に行ったんだろ?絶対キツイよな、パーティとか組んでもらえないんだろ?」
「まあね、俺ってパーティが組めない奴で有名だったらしいよ。この間まで知らかったけど」
ダイゴも同じ獣使いだからか、ショウマが学校でどういう目に遭っているか容易に想像ができて辛そうな顔をしている
「ダイゴの方はどうなんだ?」
「俺?今働いてるよ、同じ獣使いの下で」
ダイゴが指差す方向にはヒゲの似合う30代のおじさんが人に囲まれて、和かに会話している
「最近さ、海外の富裕層の間で『魔物のペットブーム』があってさ。獣使いの俺らが使役して調教しきった魔物をそいつらに売るんだけど、それがまあ儲かるんだわ」
「去年もダイゴから聞いたわそれ、一過性のものじゃなかったんだなそのブーム」
獣使いによって特殊な調教をされた魔物は、獣使いの管理から離れても人を襲わない
そんな魔物を現代の金持ち層の間では『嗜好品』として扱う様になっていた
その特殊な調教方法自体は昔から存在するものだが、ブームとして流行り出したのは本当にごくごく『最近』である
それも昔は魔物は『災害の象徴』で見る者全てを怯えさせる存在であったが、今は対処できる存在に繰り下げられたのが大きいだろう
「ああ、むしろこれからが本番って感じよ。さっき指差した色んな人に囲まれてるオッサンいるだろ?あの人がいち早くそのブームに乗って日本で会社起こして、海外相手に魔物を売る商売しているんだ。俺はあの人に雇われてるって感じだな」
もちろん、高校行きながらだけどな?、と笑いながら話すダイゴはどこか興奮した様子だ
「正直な話、俺もう貯金すごくてさ」
「へぇ、いくらくらいなんだ?」
すると、ダイゴは内緒話をする様にショウマにひっそりと耳打ちする
「1000万だよ、高校卒業するくらいには下手したら億いくかもしれない」
「ま、マジか……」
一年も会っていない間に1000万を稼いでいたダイゴに、さすがのショウマも驚きを隠せない
「なあ、ショウマ。前も誘ったけどよお、お前もやらないか?俺と一緒に魔物を売り払うのをさ」
「……」
金だけ見れば魅力的だ、同年代でこんなに稼いでいる奴はいないだろう
「俺らずっっっと虐められてきただろ?散々苦しい思いしてきただろ?獣使いってだけで、学校に行けば石投げられて、殴られて、沈められてさ、中には親にまで殴られる奴だっている、『生まれてきてごめんなさい』って公衆の面前で泣きながらな。そんな俺らがもう殴られなくなるチャンスなんだよ、見返せるチャンスさ。俺と一緒に今で俺らを踏み躙ってきたやつ見返さないか?」
ダイゴの顔には今までの苦悩と、そして目の奥には縋るような希望が映し出されている
実は、去年の集まりの時もショウマはダイゴからこの話を持ちかけられた
ショウマがその話を断って、冒険者育成学校に進んだ理由、それは……
「じゃあ聞くが、魔物が獣使いの手から離れても人を襲わなくなる方法、前に聞いたときから変わったのかよ」
「…………変わんないさ、調薬師から取り寄せた薬でまず『自我の破壊』、それから人間を襲わない様に痛みを使ってひたすら『調教』だ。海外の獣使いが長年研究してきた『人間の奴隷を調教する方法』から流用したんだ。一年ちょっとで基本が変わるわけがない」
大昔から獣使いとの『契約』を解除した後の『奴隷の働き』をどう担保するか、は度々研究されてきた
その最終形が薬による徹底的な『人間性の破壊』と、暴力による『機械的な思考の導入』だった
魔物への方法も変わるのは薬の量くらいで大筋はやはり変わらないのだろう
「やっぱ無理だわ俺。そんなことしたらさ、白雪に、白雪に合わせる顔がなくなる。それは嫌だ……」
「……だよな、そう言うと思った。今日、ショウマの顔見て思ったよ。何だかんだ上手くいってるんだろ?」
「実はさ最近、ほんと最近なんだ。パーティ組み始めてさ」
ダイゴは一年ぶりの再会でもショウマの変化に気付いたようだ
ショウマの照れながらの報告にダイゴは驚きながらも喜びの声をあげる
「まじかよ!!良かったなぁ、大切にしろよそいつ!」
「そんなんじゃねぇよ、いわゆる期間限定ってヤツ」
レイラとの関係は弱体化が解消するまで、ずっと続くものではないことをショウマは理解している
「相手がそう言ったのか?お前がそう思ってるだけじゃないのか?」
「いやいや、そんなこと……」
「ショウマはよ、勝手に物事を諦めているフシがあるからな。どうせ学校でも、『冒険者にならなくても白雪と一緒に生活できればいい』とか思ってるんじゃないのか」
「っ!そ、それは……」
ダイゴに図星を突かれたショウマはアワアワとし始める
「だと思った!俺と最初に会ったときもそうだったからな。あーわりぃ、説教したいわけじゃないんだ。俺はさ、何もかも最初から諦めるようなことはして欲しくないんだ、ショウマには」
お前と出会えて俺は本当に救われたんだ、とダイゴは続ける
「だから、そのパーティの人ともしっかり会話した方がいいぜ。本当に期間限定なのかもしれないけど、もしかしたらパーティ一緒に続けてくれるかもしれないだろ?」
「あ、ああ、そうだな。話してみるよ今度」
ダイゴの言葉にショウマは頷くことしかできなかった
その後ダイゴは他の人と話すからと、別の所へ行ってしまった
ショウマも知り合いはそこそこいるが、話す気分でなくなってしまったため、家に帰ることにした
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ショウマは自宅に戻ると、白雪を影から出してやる
「なあ、白雪。俺これでいいんだよな……」
白雪はクゥンと鳴くと、その巨体でショウマの体を包むように身を寄せる
ショウマが白雪に聞いたのは色んなことだ、ダイゴの誘いを断って良かったのか、レイラとのパーティを今後続けるのか、今までのように冒険者になるのを諦めるのか……
ポフっと白雪のしっぽがショウマの頭にのっかると、器用に撫で始める
「白雪、ありがとう。俺さ、ダイゴに言われた通りなんだ。本当に白雪さえいればそれでいいんだよ」
ダイゴが語った辛い過去と同様の経験はショウマにもあった
でもショウマの側にはいつも白雪がいて、その度に慰めてくれたのだ
ショウマにとって白雪は家族で親友で、本当にかけがえのない存在だった
「それにしてもレイラが俺と本当のパーティか、ダイゴには悪いけどそんなのあるわけないんだよなぁ」
『もしかしたら一緒にパーティ続けてくれるかもしれないだろ?』というダイゴの言葉は、普段のレイラを知るショウマからは想像もできなくて思わず笑ってしまうのだった