勇者パーティから追放された美人ギャルタンクは嫌そうな顔を浮かべながら、ぼっち獣使いの俺に使役されたがっている 作:猫星人/Mao-lien
ウタセに連れられた場所、そこはチェーンのハンバーガ屋だった
「おい、なんで話すとこが○ックなんだよ」
「それはね、高校生が大事な話をするのは決まってハンバーガー屋さんだからだよ」
「どこから仕入れたんだその情報は」
ふふんと、得意げな顔をして胸を張るとポインと胸が揺れる
透けた服の下の乳がユサユサと揺れるが、マイクロビキニはズレることなく着用されたままで乳首がポロリすることはない
「SNSさ、JKが○ックで大事な話をよくしてるんだって。しかし、僕はハンバーガーを食べにきたことがなくてね」
「ハンバーガーを食べたことないやつなんているのかよ」
「注文の仕方もわからない、お願いしても良いだろうか」
ため息を吐くショウマ、先ほどまでの緊張感や圧は皆無だ
ウタセには席で待っててもらい、適当なセットを二人分頼む
買ってきたハンバーガーセットをウタセの目の前に置いてやると首を傾げた
「フォークやナイフがないじゃないか、どうやって食べるんだ?」
「手だよ手。本当に食べたことないんだな……」
ショウマも詳しくは知らないが、湯ノ花は『良い家柄』のお嬢様と言うのは聞いたことがあった
と言っても、『あんな良い家柄のお嬢様がなぜ痴女みたいな格好をしているのか』、のような形でだが
「ああ、何となくわかってきたぞ。もしや、ここは俗に言うコンセプトカフェってところだな?」
「手づかみで食うことがコンセプトの店じゃねーよ」
天然なのかボケなのか最後まで分からないまま、二人は本題に移る
「さてでは話そうか」
ウタセの言葉にショウマは喉を鳴らす
「君が知りたいことは、『レイラがなぜ強くなりたいのか』、そして『どのように勇者パーティから脱退したのか』を知ればわかるはずだ」
まずウタセから見せられたのは2枚の『足の写真』だ
その足は指先が『石のよう』になっており、1枚目と比べて2枚目では、石の範囲が広がっている
「この写真に写っているのは『レイラの妹』だ」
「レイラの妹……」
レイラのことを知ろうとしてこなかったショウマは当然、彼女に妹がいたことなど知らない
「これは石の呪い、身体が末端からジワジワと『石化』していくかなり悪意が込められたモノだ。最初は石化された所が部分的に動かせなくなるだけなんだけど、『体の主要箇所』を石化されればすぐに死んでしまう『危険な呪い』だよ。そして呪いを解く方法は一般人には手に入らない『特殊な薬』を使うしかないんだ……」
呪いなどの状態異常は現代医学では解決できず、ジョブのスキルやジョブによって作られた薬でないと解決できない
そしてそういった方法は貴重で高価になり、『プロの冒険者』でないと手に入らないことが多い
「しかもこれは2年も前、レイラが中学の時の話だ。今も着々と石化範囲は広がっている。そのせいでレイラの妹は中学に通うことすら叶わなくなった。レイラが『ギャルのような派手な格好』をしだしたのもこの頃からだな。妹が中学に入学してしたかった事をレイラがしてやってるんだ」
レイラがギャルの格好をしている理由がまさか妹のためとは思わなかったのでショウマはビックリする
「あのギャルの格好も強くならなきゃいけないっていうのも、全て『妹のため』ってことか?」
「そうだ、プロの冒険者になればプロ特権で呪いを解く薬が手に入る。プロになるためには強くなければいけない、そういうことだ」
ショウマはまさかレイラにこんな深刻な背景があるとは思っていなかったので驚いたが、それでもショウマの疑問は尽きない
「なるほどな、レイラの事情は分かった。なら尚更、俺と一緒のパーティで居続けるのは不可解だ。『妹の命』がかかってるなら獣使いの俺なんかと組む余裕なんてないはずだ」
ショウマの言葉にウタセは深く頷いた
「実際、弱体化する前のレイラは余裕なんてなくて形振り構っていなかったよ。中学のときのレイラはプロになる必要があるとわかると、すぐさま幼なじみである僕たちに『頭を下げて』頼んできたんだ。
だから僕たち勇者パーティのメンバーはレイラの妹の事情のことも知っていたし、高校に入学して一年の6月時点で27階層攻略を成し遂げられたんだ」
1年次の3月に25階層を突破できれば優秀とされる中、6月時点で27階層突破は優秀という言葉では表せないくらいの『破格な戦績』である
勇者パーティがなぜこんなにも攻略を進めたのかを知るショウマ
「みんな協力してたんだな、やっぱり幼なじみってのもあって絆が深いのか」
「それがそうじゃなかった、って言うのが話の肝なんだけどね……」
ため息混じりにそう言うウタセは苦渋を噛みつぶした表情をしている
「6月の頭にレイラが弱くなった、次の日だったよ。斥候ジョブの『ミユ』がレイラを『追放』しようと言い出したんだ。彼女は勇者のユウトのことが大好きでね、レイラにずっと『嫉妬』してたんだよ。ユウトは良く『レイラの身体』ばっか見ていたからね」
「ここまでは良かった。何しろユウトは『レイラのことが好き』だから当然脱退させる気はないし、僕も同じだった。だけど他の二人、高位神官ジョブの『栞』と鍛治師の『朱里』がレイラの脱退に『賛成』したんだ」
高位神官と鍛治師が賛成することで、レイラの脱退に賛成する人間が3対2で『多数派』になってしまったのだ
「シオリは自分の家柄のことばかりで幼なじみであろうと弱くなったレイラことなんてどうでも良く、ジュリは金にしか興味がなくて稼ぎが減る要因のレイラの脱退に賛成だった」
三者三様ではあるが、三人はレイラの脱退を望んでいた
「これでもさ、小さい頃はみんなで仲良く遊んでたんだよ。だから僕もレイラもそのときは随分ショックを受けたね……」
ショウマはウタセの話を聞いて確かに酷い話だと思ったが、同時に『よくある話』でもあるなと思っていた
パーティ間の人間関係で揉めたりするのは当然だし、力不足で脱退するなんてのもありふれた話だからだ
「ウタセから聞く限り確かに三人の理由はほとんど私情だし、ここまで酷いのも中々ないけど全く聞かない話じゃないだろう」
「確かに。でも、レイラが抜けた後の僕たちのパーティは今『休止中』なんだ。何せ一緒に28階層を進める代わりのタンク職が見つからないからね」
ウタセの話す通り、同じ学年で勇者パーティと一緒に行動できるタンクを見つけるのは至難の業だろう
「あいつらは『小さい頃』からずっとレイラに散々『助けられてた』というのに、レイラが弱ったと見ればパーティから追い出して、平気な顔で活動休止さ。
パーティの活動を休止をするなら、レイラをすぐに脱退させる必要はないはずなんだ。
けどそうはならなかった、単にレイラが同じパーティにいるのが鼻についただけの奴らなんだよ。
あんな恩知らずたちでも幼なじみだもんな、笑えるよほんと」
ウタセは所属するパーティメンバーを罵倒して、自嘲気味に笑う
「僕はそんな恩知らずな奴らがいるパーティを抜けてレイラと一緒のパーティになろうと思ってね。
でもレイラに止められたんだ、なぜだかわかるかい?
僕が抜けることであいつらが困らないようにって、レイラは最後まで恩知らずなあいつらを『気遣ってた』んだ」
ウタセの拳は痛々しいほど握りしめられて机の上で震えている
「だから僕はレイラの意思を尊重して、せめてレイラの弱体化をどうにかする方法を探すことにしたんだ」
「ん?それって……」
ショウマは何かが頭をよぎったのか、ウタセを見る目を見開く
「ああ、僕が『獣使いが弱体化を解除できる』ってことを見つけたんだ」
「そうか、なるほどな。そういうことだったのか……」
思わぬところでレイラが『使役にエッチな行為が必要なこと』を何故知らなかった理由が発覚する
きっと調べたウタセが伝え忘れたのだろう
「僕が弱体化のことを調べている間にもレイラは傷ついていた。
『友達って関係、こんな怖かったかな』ってレイラの弱音聞いたのは初めてだったよ……
中学からの友達もクラスには結構いたっていうのにね、苦境に立たされたレイラに手を差し伸べる人は誰もいなかった」
ウタセは苦々しい顔をして当時のレイラの様子を語る
ショウマも同じクラスで、レイラのことを見てみぬふりをする友達の様子を目撃していた
笑いながら誤魔化すレイラの顔を思い出すと、ショウマの心臓がキュッとなった
「そんな中、君だよ。レイラは僕が教えた情報によって君とパーティを組んだ。最初こそは何やら僕には『意味不明な君の文句』ばかりだったけどね。次第に楽しかった話題や君のことを褒める話題が増えてきたよ」
真剣な表情でウタセはショウマの方を見つめる
ウタセにとって本当に話したい内容はここからだった
「そして君と君が使役している魔物、白雪と言ったかな?
君たちの繋がり、言葉を交わし合わなくても『信頼し合える関係』を見ていると、人間不信気味になって鉛のように重たくなっていたレイラの心がスッと軽くなったそうだ」
「そ、それは……」
ショウマはてっきりレイラは白雪のことが好きだから、白雪の話をすると喜んでいるのかと思っていたが、実はショウマと白雪の話を聞いてレイラは心に安らぎを得ていたのだった
「君たちの関係に割り込もうとは思わない、その繋がりの1/100でもいい。
レイラは今度こそ信頼し合える仲間になりたかったんだ、僕たち勇者パーティではなく君たちとね」
「そ、そんなこと言われたって、はいそうですかって簡単に信じられるかよ!俺は獣使いだぞ!?しかも弱くて足を引っ張って!冗談にしか聞こえない!」
ショウマはウタセの話を聞いてる中で初めて声を荒げた
ショウマのこれまでの人生でレイラのようにショウマを思ってくれる人間は一人もいなかったため、急にそんなことを言われても信じられずにショウマの脳が話を拒絶しているのだ
「それでも君は出来ないなりに進んで行動を起こしたり、レイラからの特訓も腐らず受けた。
時間はかかってもショウマなら一緒に強くなれるってレイラは言っていた」
「一緒に……」
「ああ、レイラは一緒に合宿に行って『その後』もパーティを続ける気でいたよ」
「そ、そんなわけっ!!!」
『そのパーティの人ともしっかり会話した方がいいぜ。もしかしたらパーティ一緒に続けてくれるかもしれないだろ?』
ショウマがウタセの言葉を否定しようとしたとき、不意に同じ獣使いのダイゴに言われた言葉が今になって思い出されショウマの胸を刺した
(そうだ、ダイゴに言われたのに。そんなわけないって決めつけて、俺は自分が傷つかない楽な方にレイラの気持ちを勝手に推し量ったんだ……)
「レイラともっと話をすれば、もっと早く話を聞けば……」
「まだ間に合うさ、君がそう思うのなら」
ウタセはショウマの隣に立つと肩に手を乗せてそう発破をかける
「行こうレイラの元に、そして君の言葉を伝えるんだ」
10階層突破打ち上げ後の二人の電話
ウタセ「レイラ、パーティをこれからも続けたいのはわかったけど、ちゃんと伝えた方がいいんじゃないか?」
レイラ「つ、伝えるわよ!でも、そうね。15階層に勝って合宿行けるおめでとー!ってときに言ったらさ、なんかおめでとうな気分で良い感じになりそうじゃない?」
ウタセ「うーん、僕はそういう大事なことはもっと早く伝えた方が良いと思うんだけどなぁ……」