※この作品はR-18です。

勇者パーティから追放された美人ギャルタンクは嫌そうな顔を浮かべながら、ぼっち獣使いの俺に使役されたがっている   作:猫星人/Mao-lien

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9話 ボス再挑戦

 翔馬と麗羅のいるセーフエリアの方へ向かってくる足音が着実に近づいてくる

 もし二人が一緒にいることがバレれば、レイラは獣使いと一緒にいるとして、体の関係を噂されて学校に居づらくなってしまうだろう

 

「なんで5階層なのぉ?いつもの9階層でいいじゃん〜」

「ゴブリンリーダーなんて、ウチらならすぐ倒せちゃうって!」

「お前らうるせぇぞ?リーダーの俺が決めたんだから黙って従え!まあせっかくの新装備、早く試したい気持ちはわかるし俺もかったるいんだけどなぁ?慣れてない武器振り回すのは、世話になってる先輩から辞めとけってさっき言われたからよぉ。雑魚だけどゴブリンリーダーで試し切りしようぜぇ」

 

 足音が近づくと次第に喋り声の内容も聞こえてくる

 不満気な様子のぶりっ子のような女たちの声と、オラオラとした男の声だ

 

 どうやら男女のパーティのようで、ワイワイと盛り上がっているのは新装備を手に入れて浮かれているからだろう

 

「あれ、セーフエリアに誰かいるみたい〜」

 

 女の方がショウマたちがいることに気づく

 

「うわぁ、なにあれぇ。魔物と一緒にセーフエリアに入ってるんだけどぉ、もしかして変質者?」

「あいつあれだよっ、ウチの学年で唯一の獣使い君じゃん!パーティ誰にも誘ってもらえてないで有名な奴っ!」

「ああ、通りでこんなとこに一人でいるんだねぇ。今どき5階層に来るやつなんていないもんね〜」

「お前ら、獣使いが性犯罪者予備軍だからってあんま言ってやんなよ。獣使い君がかわいそうだろぉ?」

 

 通りかかった男女のパーティはジロジロとショウマを見ながらわざと聞こえる様に話している

 そしてゲラゲラと大きな声で笑いながらボスが湧く大部屋に入っていった

 

「ふぅ、バレなかったか」

 

 彼らの反応からして、レイラがいるのはバレていなかったようだ

 ショウマは白雪を影の中から表に出すと、その巨体の後ろにレイラの体を隠していたのだ

 

「ありがとな、白雪。本当に助かった!」

 

 ショウマは白雪を撫でてお礼を言うと、こんなことで一々呼び出してくるなと言いたげに鼻を鳴らしてショウマの影の中に戻っていった

 

「レイラ、お前の姿はあいつらには見えてなかったぞ」

「……あっ、ああ、ありがとう」

 

 ぼーっとしていたのか、数秒遅れて返事をするレイラ

 

(レイラにはあいつらが言っていたこと聞こえていただろうか……そりゃ聞こえてただろうな、あんな大声で騒いでたんだからさ)

 

 小さな頃からずっと獣使いのことで『揶揄』されてきたショウマは、ジョブのことで馬鹿にされるのはもう慣れきっていたと思っていた

 実際、あいつらに言われたことは何度も言われていることで何も感じていない

 しかし、レイラに『他人から馬鹿にされている自分を知られてしまった』と思ったとき心臓の辺りがキューッと締め付けられた

 

「なに、ぼーっとしてんのよ」

「えっ……」

「えって何よ、これからボス再戦しに行くんでしょ?何のためにあたしがこんな酷い目にあったと思ってるのよっ!」

 

 レイラは眉をしかめて片頬を膨らませており、如何にも不満気な様子だ

 

「レイラの方がぼーっとしてたじゃないか」

「あたしは良いのよ、あんたはダメ」

 

 レイラの言葉にショウマは辛気臭い顔から一転して、ヤイヤイと日頃のレイラへの不満を爆発させる

 

「……あんたも辛いこと結構言われてたのね」

 

 ボソッとレイラの口から漏れ出た言葉は、騒いでいるショウマには届かなかった

 

「はいはい、今度はこのあ・た・しが直接ボスと対面するっていうんだから、さっきみたいな辛気臭い顔をしてないで大船に乗った気でいなさい?」

「レイラだけに負担はかけないつもりだ、俺だって勝つために全力を尽くすさ」

 

 ショウマの返事にレイラは不適な笑みを浮かべる

 

「上等。勝って二人でうまい飯、食べに行くわよ」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 ボス部屋に入ると、前の戦いと同じように中央に鎮座するゴブリンリーダーの雄叫びによって三匹のゴブリンが現れる

 

「来たっ!」

「ああっ!」

 

 ショウマと白雪はゴブリン一体、レイラがゴブリン二体と対面する

 ここまでは前の戦いと同じだが、今回はレイラがゴブリンリーダーと戦うために三体とも倒さなければいけない

 

「フェイタルハマーっ!」

 

 レイラは片方のゴブリンの顔を小盾で殴りつけて怯ませると、もう一体のゴブリンを剣技によって殴り殺した

 

「怯んだ方お願いっ、あたしはボスの方に行くわ!」

「わかった!」

 

 レイラは怯んだゴブリンを置き去りにすると、ゴブリンリーダーの方へ駆けた

 レイラの指示を受けたショウマは目の前にいるゴブリンを白雪に指示して倒させると、急いで怯んだゴブリンへと向かう

 

(こいつをギリギリまで倒さずに粘れれば、ゴブリンリーダーの攻撃力はこれ以上強くならないっ。レイラの負担は減るけど、俺らで倒さずに耐えられるのか?いや耐えるんだ!)

 

 ショウマは目の前の怯んだゴブリンを前にセーフエリアで話し合った作戦を思い直す

 白雪の攻撃力なら目の前の怯んだゴブリンを倒すだけなら『簡単』だ

 しかしゴブリンを倒してしまえば、ゴブリンリーダーの攻撃力は最大まで上昇してしまう

 白雪はともかく、ショウマはゴブリンから軽い一撃を喰らうだけでも致命傷になりかねない

 ゴブリンとはいえ、倒さずに攻撃を避け続けるのはかなり難しいのはショウマも理解していた

 

「白雪、ギリギリまで耐えるぞ」

 

 喉を鳴らしてショウマの言葉に応える白雪

 頭を強打してイライラした様子のゴブリンとショウマの耐久勝負が始まった

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 Wooooo!!!

 

 当たれば全て致命傷になる棍棒の薙ぎ払いをレイラはギリギリのとこで交わしたり小盾で受け流している

 特に小盾で受け流す際は擦れて火花が散り、ギャリギャリという音が弾ける

 

「スパインブレイクっ!」

 

 大きく空振りしたゴブリンリーダーが向けた背中に向けてレイラは剣技を放つ

 ゴブリンリーダーは悲鳴を上げており一見手応えを感じるように見えるが、レイラは予想よりも剣の刺さり具合が『浅い』ことに額から汗を垂らす

 

(ショウマたちがゴブリンの攻撃を避け続けることを信じて攻撃の方に重きを置くべきだったっ……?)

 

 レイラはゴブリンリーダーの動きを見逃さないように回り込んでショウマたちを視界に映す

 

(いや、やっぱりキツそうね。ショウマも足取りが重くなってるし、白雪もショウマが本来受けるはずの攻撃を庇って傷ついている……)

 

 ゴブリンリーダーの体力が思ったよりも削れないことを危惧したレイラは、攻撃の手数を増やすためにショウマたちをこちら側に参戦させようと考えた

 

「ショウマっ、もうそいつは倒して良い!こっちの方へ加勢してっ!!!」

「っ!いいの……いやっ、わかった!やれっ、白雪!」

 

 ショウマはレイラに聞き返そうと思ったが、彼女の方で何か考えがあるのだろうと察する

 ショウマの指示によって瞬く間に影に入り込んだ白雪はゴブリンを下から真っ二つに切り裂いた

 

「ぐぬぅぅぅ!!!」

 

 その瞬間、力が漲ったゴブリンリーダーの強烈な棍棒のスイングが地面を抉りながらレイラに放たれた

 スピードもパワーも先ほどから数段上がっており、レイラは小盾で受け流しきれずに一撃を盾越しに受けてしまう

 

「はっ、はっ、あぶねぇぇぇ……」

 

 寸前まで地面で踏ん張ってたことで勢いを減じられてたのか、空中に投げ出されるだけで済んだレイラは着地をして冷や汗を拭った

 

「大丈夫か!?」

「平気平気、このために防御値上げたんだからっ」

 

 レイラは若干一撃を受けた盾のついた左腕と踏ん張った足がピリピリと痺れるのを感じたが、まだまだ大丈夫だと自分を心の中で叱咤した

 

「あたしの攻撃が予想よりボスに入ってないの」

「だから、白雪をこっちに呼んだのか」

「そういうこと、あたしが耐えてる間に攻撃お願いしてもらえる?」

「わかったっ!」

 

 二人と白雪はゴブリンリーダーの方へ走る

 白雪の方はゴブリンリーダーを通り過ぎて影の方へ入り込んだ

 

(ヤバいな、昨日の比じゃない。こいつの攻撃をレイラは耐えなきゃいけないのか……)

 

 ショウマは前回でもゴブリンリーダーの巨体と風格に圧倒されていたが、今回はさらに攻撃力が最大まで上がっているため緊張で震えている

 

「何ビビってるのよ、あんたはしっかりあたしの様子を見て白雪に指示しなきゃなんだから。あんたの指示がミスれば白雪の攻撃タイミングもズレて大変なことになるのよ?」

「わかってる、ちゃんとやるさ」

 

 ショウマは両手で自分の顔を叩いて気合いを入れる

 そうこうしてる内にゴブリンリーダーの方が二人の方へ棍棒を振りかぶっている

 

「あんたは下がってなさいっ、白雪の指示頼んだわよ!」

 

 ブワッと部屋中を巻き込むほどの風を纏った棍棒が横から地面を抉り取りとって、とてつも無い勢いでレイラに向かってくる

 

「地面削りながら攻撃すれば受け流されないだろうって魂胆ね、けど!!!」

 

 レイラは正面から棍棒の一撃を受け止めて弾き飛ばされる

 しかし前回のショウマたちのように部屋の壁まで飛ばされる程ではなく、少し浮き上がった程度だ

 

「地面削ったら威力は減るでしょ、お馬鹿さん」

 

 レイラは空中でゴブリンリーダーに対して不敵な笑みを浮かべる

 

「白雪っ、今だっ!!!」

 

 影から飛び出た白雪はゴブリンリーダーの背中に深い一撃を喰らわせる

 今日一番の悲鳴を上げるゴブリンリーダー

 続いて二撃三撃と喰らわせると怒りを露わにしたゴブリンリーダーが棍棒を振り回し始める

 

「白雪っ、もう戻れ!!!」

 

 影に入り込むことで事なきを得た白雪、それとは対照にゴブリンリーダーは深手を負っているが完全に激昂状態だ

 

「レイラっ、ボスが振りかぶっているぞ」

「ああ、問題な……」

 

 ゴブリンリーダーは今までバットを振るかのような横スイングをしていたが、今度は縦に大きく振りかぶっていた

 目標はもちろんレイラだ

 レイラは走って逃げようとするが、足がうまく動かせないことに気づく

 最大火力のゴブリンリーダーの一撃を二回もろに受けてしまったレイラは、どちらも足で踏ん張って威力を殺し、弾き飛ばされた後も地面に着地したりしていたため、足に負担が蓄積していたのだ

 

「レイラっっっ!!!」

 

 レイラの焦りの表情を見逃さなかったショウマは彼女の方へと走り出す

 そしてレイラの体を抱えると、何とかスレスレのところで棍棒の一撃を回避する

 

「ぐっ……」

 

 地面に向かって放たれた棍棒の一撃は破片をそこら中に撒き散らしたため、ショウマの背中には無数の傷が出来ていた

 

「あ、ありがとうっ、でも背中!大丈夫なのっ!?」

「だ、大丈夫っ、痛いけど前喰らった棍棒ほどじゃないさ」

 

(以前の俺なら痛がって喚いてたかもしれないな、さっき棍棒モロに喰らって良かったと思うことになるとは……)

 

 ショウマはレイラに対して何ともなさそうに答える

 

「それより、レイラの方はどうなんだ?」

「ごめん、足が動かなそう……」

 

 レイラの表情には焦りが見える

 それもそのはずで、足が上手く動かなければ攻撃することもままならないからだ

 

「そうすると攻撃は実質白雪だけか……」

 

 レイラの焦りが伝わりショウマも冷や汗が出る

 そんな二人に対して無情なゴブリンリーダーの二撃目が来ようとしていた

 先ほどと同様に縦に大きく振りかぶっており、背中を負傷したショウマと足の動かないレイラでは満足に避けることもできないだろう

 

「この攻撃、受けるしかないわね……」

「受かるのか?」

「正直わかんない、でもやってみるしかないわ」

 

 プルプルと足を震わせながらレイラは何とか立ち上がって、振りかぶられた棍棒を睨みつける

 

「何してんの、早く逃げなさいよ。あたしが耐えきれなかったら、あんたもペチャンコなのよ」

「それでいいよ、どっち道レイラが耐えきれなかったら俺も白雪も終わりなんだ。一連托生、間近で耐えるレイラを見ていることにするよ」

「何よそれっ」

 

 ショウマの言葉にクスッとレイラが笑って、しかしすぐに真面目な表情になると、迫り来る棍棒に向けて盾を構える

 

 ギィィィィンッッッッ

 

 瞬間、鈍い音が二人の近くで響く

 振りかぶられた棍棒と構えたレイラの小盾が接触したのだ

 

「ぐぅぅぅぅぅぅ……!!!!!」

 

 ミシミシとレイラの骨の軋む音、そして血管が破れて腕や足から血が吹き出している

 

「レっ、っ!白雪っ!!!」

 

 ショウマの呼び声で白雪がゴブリンリーダーへの攻撃を再開する

 ゴブリンリーダーの叫び声が上がり始めるが、レイラを押し潰さんとしている棍棒の力が緩む気配は一切ない

 

(レイラや白雪がこんなに懸命に戦っているのに俺は何にも出来ないのか……)

 

 無力感に苛まれそうになるショウマだが、二人が今懸命に戦っている中でそんなことを考えている場合ではないと気を持ち直す

 

「っっっっ!!!」

 

 棍棒に押し潰されつつあるのか、レイラの膝が徐々に曲がり始めている

 すると、レイラの体が『赤いオーラ』で覆われ始めたのをショウマが気づいた

 

(な、何だこれはっ……?)

 

 レイラ自身は攻撃に耐えるのに必死なのか気づいている様子はない

 赤いオーラが現れたレイラは徐々に棍棒を押し返し始めていた

 

 Aaaaaaa!!!

 

 そしてレイラの声にならない叫びが辺り響くと、何とゴブリンリーダーの棍棒を完全に弾き返してしまった

 

 よろめいたゴブリンリーダーはバランスを崩し倒れてしまう

 何が起こったのか全くわからないショウマだったがこれだけはわかった、攻撃のチャンスであると

 

「白雪っ、全力で攻撃だ!!!」

 

 白雪は倒れたゴブリンリーダーに対して影に入って切り裂いての波状攻撃を行う

 

 Guuuuuu...

 

 レイラにバランスを崩されて倒れたゴブリンリーダーは次いぞ起き上がることなく、そのまま白雪の攻撃によって討伐された

 

「やった、やったぞレイラ!!!」

「…………」

 

 ショウマがレイラの方を見ると、レイラは気絶して倒れている

 意識はないようだが、『賢者の塔』によって転移されてないのを見るに『瀕死』ではないようだ

 ショウマは気絶するのも無理はないと理解しているため、レイラが起きるまで今度は自分が膝枕をして待ってやることにした

 

「っ!こ、ここは、セーフエリア?負けたの、あたしたち?」

「いや、勝ったよ。レイラと白雪のおかげだ」

 

 レイラが意識を取り戻すとショウマはどのように倒したかを教えてやる

 

「あたしが棍棒を跳ね除けた?ヤバい、全然覚えてないかも……後、その赤いオーラってのもよくわからない」

 

 ショウマが不思議に思っていたことは、レイラにもよくわからないことだったようだ

 

 

 その後二人はとりあえず勝てたことには変わりないのだから良しとしようということで、帰る支度を始める

 

「ここに学生証をかざすのよ、そうすると『リタイアせずにクリア』したことが保存されるってわけ」

 

 レイラがボス部屋の中心にある先ほどまでなかった台座についての説明をする

 

「へぇ、そうするとどうなるの?」

「やってみればすぐわかるってば」

 

 レイラに言われた通りにショウマは自分の学生証をかざす

 

「あー、冒険者ランクが一個上がった!なるほどね!」

「ボス部屋をクリアするごとに冒険者ランクは上がるのよ、まああたしはクリア済みだからかざしても意味ないけどね」

 

 ショウマは自分のランクが『アイアン5』から『アイアン4』になったことを確認した

 

「ちなみにレイラは、いや聞かなくても分かるか。ボスを5回倒したってこの前聞いたから、ブロンズ5?」

「そうね、あたしはブロンズ5よ。弱体化してランクに見合った強さはないけどね……」

 

 冒険者ランクはアイアン、ブロンズ、シルバー、ゴールド……とあり、行事だったり進級、卒業にも関わってくる大事な要素の一つである

 

「さて、こんなとこかしら。もうあたしお腹ぺこぺこ、早く食べに行きましょ!」

「え、本当に行くのか?」

「あたしが嘘ついたと思ったの?」

「いや、てっきり励ますだけのものかと……」

 

 ショウマはぼっちな自分と飯なんか本気で行く気はないだろうと思っていたのだが、レイラは違ったようだ

 

「そんなわけないでしょ、まああんたがお腹空いてないって言うなら無理には誘わないけど……」

「いやっ!俺もお腹空いてる!行く!飯行こう!」

 

 二人は塔を後にすると、空いた腹を満たしに行くのだった

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「おい、うまい飯ってパフェに使う言葉か???」

「何、二人で牛丼でも食べる気でいたの?これだからあんたは……」

 

 塔から出た後、レイラが食べるものは決まっていると言い切るので、ショウマは素直について行くとそこはパフェをウリにした小洒落たカフェであった

 

「ここ前払い制だから、この紙に書いたやつそのまま読んで2つ頼んでちょうだい。お金は後で払うから、あたしは席取ってくるわね」

「ま、待ってくれ!」

 

 小さなメモ書きをショウマに渡したレイラは席を取りに離れようとする

 そんなレイラを緊張した面持ちでショウマは引き止める

 

「レイラの分のパフェ、俺奢るよ」

 

 ショウマはレイラのおかげでボスに勝てたこと、後セーフエリアで落ち込んでいた自分をレイラなりに気にかけてくれたことへ『お礼』をしようと思っていた

 店の前の案内メニューには大体1000円〜2000円くらいの値段が書かれており、高校生のショウマにとって二人分でMax4000円だ

 やや痛い出費であるが、払えないほどではないと踏んでいた

 

「えー、でも高いよ?あんたここ来たことないでしょ絶対、そんじゃそこらのパフェじゃないんだけど大丈夫なの?」

 

 そんなショウマに対して心配そうな目を向けるレイラ

 

「その、いつも助けてもらってるからさ。そのお礼をさせて欲しいんだよ」

「っ!そんな真剣な目で見られちゃうとこっちが困るっての!わかったよ、ありがたくゴチになるね」

 

 ニコッとレイラが微笑むと、席を取りに向こうへ行った

 何気初めてこんな直接笑顔を向けられたかもしれないと、ショウマは内心ドキドキしていた

 

(ダメだっ、勘違いだけはしちゃダメだっ!レイラとは弱体化の件が終わったら無くなる関係なんだから……)

 

 ギャルの微笑みはぼっちには危険すぎる代物だったようだ

 必死に自分に言い聞かせていると、会計の順番がショウマの方に回ってくる

 レイラから受け取ったメモを辿々しく読みながら二つ分注文をする

 悶々とした気分で浮かれていたショウマに『悲劇』が舞い降りるのはその直後だった

 

「わぁ!甘姫いちごとシャイニングマスカットそれぞれ30個乗せのタ張メロントッピング、ピスタチオの生クリームにモンブラン掛けの『期間限定』パフェ!絶対美味しいよこれ!ね!」

「そ、そうだな……」

 

 いつになくハイテンションで早口のレイラは目をキラキラさせて、若干涎を垂らしている

 

「これクラスの麻里奈に彼氏と一緒に食べたって自慢されてさぁ、ずっと食べてみたかったけどパーティ脱退とか色々バタバタしててようやく食べれるぅ……」

「そうか、それは良かったな……」

「ほら、パフェは鮮度が命よ。早く食べましょ!……あ、奢ってくれてありがとね!」

 

 ショウマにキラキラとした笑顔を向けて、嬉しそうにバクバク食べ始めるレイラ

 そんな彼女を目の前にしてショウマは言えるわけがなかった、『一つ3000円もするからやっぱ払って欲しいな』だなんて

 期間限定メニュー、案内板はいつも売っているメニューしか書かれていないため、値段が全然違ったのだ

 

 二人合わせて6000円、正直奢りの撤回をしたくて堪らないが、ショウマは決して口にしない

 それは美味しそうに食べるレイラに水を刺してしまうから、後自分のレイラへの感謝の気持ちが何だか濁ってしまいそうで、何より男のプライドが許さなかった

 

「あー、うめぇ。人生で食べたパフェの中で一番美味いわ」

「でしょ〜?」

 

 ショウマにとって人生で初めてパフェ、が当然味がしない

 

 ショウマ初めてのボス戦は劇的な勝利と手痛い出費、そしてパフェに対しての苦い思い出を添えて幕を閉じるのだった





7月に苺とマスカットのパフェとか季節感なさすぎますね
夏場ってどんなパフェが売ってるんでしょうか
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