今回、直接的な描写はありませんが、番外編に類する内容が含まれています。
おそらく大丈夫だろうとは思うのですが、念のためご注意ください。
アイシャ編が生理的に無理だった方、苦手だった方は読むのを控えた方がいいかもしれません。
これはストーリーの根幹に関わることなのでどうしても外せませんでした。
物語に集中してくださっているところ邪魔をして申し訳ありませんが、それだけご留意くださいますようお願いします。作者より
――
『――君の母親は神子だ』
『あるいは呪い子と言った方がいいかもね』
『神子はね、本来生まれつき魔力が異常を起こしていて変な能力に目覚めているものなんだ。でも、君の母親は違う。後天的に神子になった珍しい例だ。当然治療法なんて確立されていない』
『――これでもボクは神様だからね。そんな珍しい症例も見たことがある。大丈夫、君のお母さんは治せるよ』
『実例があるんだ、それも二つもね。一つは魔神ラプラスが自分にかかっていた呪いを特殊な槍を通してスペルド族に移した例。スペルド族が嫌われているのはそういうわけさ。つまり、呪いは別のモノに移せる』
『ああ、もちろん、そんなものを作れるのは魔神である彼くらいだろう。そこでもう一人の実例だ。君もよく知る人物だよ。――エリナリーゼさ。彼女も元は呪子、それもかなり君の母親に近い、後天的な呪子だ。さて、そんな彼女はどうやって呪いを克服したと思う?』
『そうだね、エリナリーゼの呪いは厳密には治っていない。だけど彼女は廃人状態から持ち直し、今は普通に生きてるだろ?』
『呪いを克服したのさ。その方法は――子どもさ。赤子を作ること。君はそういうの、得意だろう?』
『人間の女性には運命の境界線が曖昧になる時期がある、それが妊娠しているときさ。それはなぜか。妊娠中、母は子に己の存在を移しているからだ。――つまり、そのとき母体の一部である呪いも移る』
『察したみたいだね。そう! 彼女を治す方法は簡単――彼女を孕ませることさ』
『子を産めば産むほど呪子の力は分散し、軽減される。少なくともエリナリーゼはそうやって神子の力を克服した。副作用は残ってるけどね』
『なんだい。……信じられないのかい?』
『でも、他に方法なんてないと思うけどな。ボクが知らないんだからこの世界の誰も知らないさ。それとも、エリシオンを滅ぼして大犯罪者になってでも神級治癒魔術を手に入れてみせるかい? あれで治せるのはせいぜい不治の病や死にかけの怪我くらいで魔力の異常を治せるほどじゃない』
『それがダメなら三英雄のペルギウスを尋問してみるかい? 残念だけど彼も呪子を治す方法なんて知らないだろうね。それはナナホシって子でもクリフ・グリモルでも一緒さ。どれだけ賢くとも所詮人間だ。魔神を真似て槍を作るには寿命が足りない』
『もう分かっただろう? 君の母親を治す方法は一つだけだ』
『さぁ、君はどうする?』
『――君も本当はそれを望んでいたんじゃないのかい?』
――
眠っているゼニスの部屋に入った。
母さんはベッドに横になっているが、その目は薄く開いている。
「………」
ふと、身に着けている薄着をこれでもかと押し上げている巨峰が目に入った。
下着は付けていないようで、乳首が山の上の小さな丘のようにぷっくり膨らんでいる。
それを何気なく揉んでみた。
「………ぁ」
「―――。」
だが、返ってきたのは何でもない反応だけだった。
触られたことは認識しているのだろう。
揉む。揉む。乳首を捏ねる。
「ぁ……ぁ……」
「―――。」
いたって面白みのない反応だ。
思わず冷静になる。
何をやっているんだオレは。
パウロに看視を替わるように言って休ませて。
眠る母の胸を抱いている。
ふと思う。
ずっとこのままなのだろうか。
死ぬまで、一生、母さんは、ゼニスは寝たきりなのだろうか。
回帰するのは生まれて間もないときの記憶だ。
――オレはこのオンナを犯したいと思った。
そのときは純粋な性欲だったのだと思う。
母親だなんて思っていなかった。
それは彼女のもとで六年過ごしても変わらなかった。
挙句にオレは欲望を押さえられず、実の母親を犯した。
それからは獣欲に歯止めが効かなくなっていった。
シルフィにはじまり、ロキシー、エリス、エリナリーゼと。
魅力的な彼女らをどんどんオレの女にしていった。
ときには獣族の女を犯し、出会ってすぐの女冒険者を犯し、宿のウェイトレスを犯した。
欲望は日に日に強くなっていくばかりだった。
それは義母であるリーリャ、実妹であるアイシャにも向かった。
そうして今、眠る母親を見てオレは欲望が湧き出ていた。
――犯したい。
実の母親を孕ませる。
それは禁忌であり、尊敬していたはずの父に対する不義理である。
パウロに相談するべきだっただろうか。
そんな考えがよぎった
だが、オレはもう欲望を押さえられなかった。
「母さん、綺麗だ」
「………」
眠る母の薄着を捲り、何も身に着けていない下半身をあらわにする。
髪は伸びたが、下の毛はそうでもないようで、薄く綺麗に生えそろっていた。
きっと転移する前も手入れをしていたのだろう。
そっと母の秘所に触れた。
――ねちゃ、と粘着質な音がした。
濡れていた。
まさか、さきほどの愛撫で感じていたのか……?
瞬間、熱がたぎった。
オレの下半身が存在を主張し、ズボンを押し上げる。
今すぐに孕ませたいと我慢汁を迸らせる。
「……挿れるぞ、ゼニス」
「………ぁぁ」
もはや母親だとは思えず、ただ一人のメスを前にしてオレは剛直を彼女の膣へ押しすすめた。
――柔らかく包み込むような感触がちんこを刺激した。
さすが二人の子供を生んだ経産道だ。
他とは熟練度が違う。
オレの平均を逸脱するモノも容易く受け入れてみせた。
そんな殊勝な母のナカは、まるでオレを受け入れてくれているみたいだった。
「ゼニス……母さん……」
「………――ぁ」
腰を振るった。
母を犯しているのか、ただの女を犯しているのか。
ヤりながらに迷う。
「ゼニス……ッ!」
「――ぁっ♡」
その時、彼女は小さく、しかし明確に感情のこもった声を漏らした。
感じている。
ゼニスはオレのちんこで感じている。
腰を振る速度があがった。
「――ッ!」
「ぁっ♡♡ ん……っ♡♡ ぁ……――♡♡ んぅ……♡♡」
子宮を突くと喘ぎ。
胸を吸えば中が締まる。
すると、彼女の手がオレの頭の上に乗る。
乗るだけで、なにもしない。
だが、それはまるでオレの頭を撫でているかのようで。
「ぐッ、
「ああ――………っ♡♡」
膣に射精した。
びゅるびゅると母のナカに子種を植え付けた。
孕んだだろうか。
いいや、そう簡単には孕まないだろう。
………子供を産めば治る。
………本当に?
………オレは、騙されたんじゃないのか。
ふって湧いたそんな予感は――。
「なに、してんだ、ルディ……」
「………父さん」
買ってきた食料を床に落とし、愕然とした表情でオレとゼニスを見るパウロを見て、確信に変わった。
――ああ、オレは間違えた。
己の失敗を悟った。
ころころと、床を転がるリンゴの音がいやに大きく響いた。
――
恐ろしく澱んだ空気が部屋に流れている。
重さすら感じさせる空気を作るのは黙りこくって机に向かい合うオレとパウロによるものだ。
「………」
「………」
互いに一言もしゃべらず、目も合わせない。
手を組んで俯くパウロと、ただ茫然と膝を見ているオレ。
……オレから言い出すべきだろうか。
言ってみるか?
ヒトガミとかいう怪しい奴が夢に現れて、母さんを治し方を教えてくれた。母さんを孕ませれば、子供を産ませれば治るんだってさ。だからヤったんだ、って?
――そんなくだらない言い訳通用するものか。
考えなしだった。
あいつの言葉が本当だろうと嘘だろうと、まず確認を取るべきはエリナリーゼに対してだ。それからでも遅くはなかった。
だいたい、子供を孕ませなきゃならないなら、――それはパウロがやるべきことだ。
まかり間違っても実の息子が母親を犯して孕ませるなど――許されるわけがない。
唆されただの、功を急いただのと言い訳したところで、結局のところオレが母さんを犯したいと望んでいたから犯した。そういうことだ。
終わったな、そう思った。
絶交か、あるいは切り殺されるか。
……――それも、仕方のないことかもしれない。
他所の女を寝取るというのは重罪だ。殺されても文句なんて言えない。
それも実の息子が相手だ。パウロの感じているそれは相当なものだろう。パウロの中に渦巻く言い知れぬ感情は想像を絶するはずだ。
もしも、エリスがパウロに犯されていたら?
もしも、シルフィがパウロに犯されていたら?
もしも、ロキシーがパウロに犯されていたら?
ああ、考えるだけでも反吐が出る。
オレは、きっとパウロを殺すだろう。
そう思えるからこそ、殺されても仕方がないと思った。
「………ルディ」
「………はい」
覚悟が決まった頃、パウロも決断したのか。
オレの名を呼んだ。
ルディ、とそう今でも愛称で呼ぶのは、皮肉か別の思惑があってか。
どちらでもいい。
父の決定を拝聴する。
「なんで、ゼニスを襲ってたんだ」
「………………は?」
パウロは、ひっどい顔で、努めて冷静に、そう聞いてきた。
オレは一瞬、理解できずに硬直した。
「ただ襲いたかったからか? 母親が好きだったのか?」
「それ、は………」
事実だ。そう、その通りだ。
母さんが、ゼニスが女として好きだったから犯した。
「――はい」
「――そうか」
間が空いた。
なるほど、これが最終確認か。
ここで殺すわけだ。
一呼吸おいてくれたのは息子への情ゆえだろうか。
もしくはとんでもない理由でもあれば、許そうとさえしてくれたのだろうか?
………いいや、有り得ないな。
そんなはずない。
オレは死刑を待つ罪人のように頭を垂れた。
――
その光景を見たとき、俺は思った。
思っちまった。
――ああ、やっぱりか、ってな。
想像していた。
今日の朝、ひどい面で『母さんの世話を替わります』と言ってきたあいつはどうも様子がおかしかった。
あいつ自身は気づいてなかったみたいだけどな。
なにか、俺に知られたくないことをするのだろうと思った。
そしてそれはまず間違いなくゼニス関係のことだ。
息子は優秀だ。
俺がゼニスの惨状に意志をくだかれても、立ち上がれなくなっても、あいつは冷静に、淡々と、狂ったように、ゼニスの治療方法を模索していた。
――微塵も諦めていなかった。
それに比べて俺はどうだろうか。
絶望して、――死ぬことさえ考えていた。
気の迷いだ。だが、ゼニスのいない世界で生きる気力がどうしても湧かなかった。
それを止めたのは他の誰でもない、ルーデウスだ。
『間違っても死のうなんて思わないでください。……母さんは、オレが必ず治してみせます』
そう言い切った。あいつが、俺には眩しく見えた。
だから、あいつを信じて、外に出た。
外に出て、陽の日を浴びて、人ごみを歩いて、屋台で飯を買って、そこら辺にいる露出の多い冒険者を見て、目の保養とした。
ゼニスがあんなことになってんのに、何をしてんだとは思ったが、事件の日から今までずぅぅっと溜まり続けていた性欲はそう簡単に消えてなくなるものではなかった。
死にてぇとすら思っていた癖に、体はまだ生きようとしてやがる。
いや、あるいは本気で死にそうだったからこそ、体は子孫を残そうとしたんだろうか。
だが、ああ――いらねぇ。
俺にはもう立派な息子がいる。
俺よりも強く、強かに育った自慢の息子がな。
そう思って、気が楽になった。
俺が親としてしてやれたことはほとんどなかったが、もうあいつには必要ないだろう。
――あいつは大丈夫だ。
なら、せめてあいつに世話をかけないよう俺は俺のことをしっかりやればいい、そう思った。
その矢先、浮足立って少し早く帰った俺を迎えたのがあの光景だった。
驚かなかったと言えば嘘になる。
怒りが湧かなかったと言えば嘘になる。
悔しく思ったし、殺してやりたいとも思った。
息子の顔を見てこのクズを殺してやろうと思った。
そう思った。
だが……眠るゼニスをちらと見た。
すると、ずいぶんと穏やかな顔で寝ていた。
眠っていた。
その様は、ただ寝ているように見えて。
怒りなんか、ふっと消えて、穏やかな気持ちになった。
嬉しかったのか、喜んでたのか。
胸中を満たす感情は混沌を極めた。
ルーデウスは黙ったまま。
罪を認めた罪人のように俺の前に座っている。
どうすればいい。
赦していいのか。
いや、そもそも赦すってなんだ。
それができるのはゼニスだけじゃないのか。
だけど、ゼニスはあのまま寝ている。
治ってはいないんだ。
なら、ルーデウスを殺すか?
あっちに家族を残しているこいつを?
リーリャは怒るだろうな。なんなら俺を殺そうとするだろう。
ノルンは分からんが、アイシャも怒るだろうな。
他の嫁たちにも恨まれるだろう。
本当に、どうしてこうも女癖が悪く育っちまったのか。
――ああ、俺の子だからだろうな。
そう、すとんと胸に落ちた。
自分で言うのもなんだが、俺はクズだ。
アスラの地方領主の貴族に生まれて、同じ道場にいたリーリャを無理やり襲ってから放蕩した。
責任も取ることなくな。
その後はソロの冒険者をやって、適当な女と関係を結んだ。
その後、なんだかんだでエリナリーゼとタルハンドに出会ってパーティーを組むようになり、エリナリーゼと肉体関係を結んだ。呪いを解消する為だけの契約だ。互いに本気にはならないと決めた。
だが、思いのほか相性がよかったからか関係は長く続いた。
それはギレーヌとギースが加わっても変わらなかった。いいや、それどころかギレーヌまで加わってめちゃくちゃになった。しばらくは三人で爛れた生活を続けたものだ。
そんな中で見つけた、俺たちのパーティーに足りなかった治癒術士。
――それがゼニスだった。
惚れた。
一目惚れと言ってもいい。
俺はゼニスを落とすと決めて、エリナリーゼとの契約を一方的に破った。
ギレーヌとの関係もやめた。
ゼニスは純情な女だった。
俺のように俗に染まっておらず、男を知らなかった。
落とすのは簡単だった。
そうして関係を続けていくうちに、――ゼニスが妊娠した。
はじめてだった。俺の子だ。
そのときはじめて――俺はちゃんとしようと思ったんだ。
本気で、
冒険者という危険な仕事をやめて、会いたくもない従弟に頭を下げて地方の騎士にしてもらった。
そうして、ルーデウスが生まれた。
ああ、そうだ。
ずっと前のことで。転移事件だなんだと色々あって忘れかけていた。
俺は、家族を幸せにするって誓ったんじゃないか。
……ルーデウスを見る。
無表情だが、その様子はどこか親に叱られる子供のようにも思える
そうか、俺より強いこいつも、女癖の悪いこいつも、まだ子供なのか。
まだ父親としてできることがあるってことか。
……そうだよ、母親に懸想したからってなんだってんだよ。
そんなもんアスラ貴族の野郎どもの変態趣味に比べればかわいいもんじゃねぇか。
母親が好きだなんて、男なら誰でもあることだ。
ま、行為にまで及んじまったことはアレだけどな。
それはちゃんと叱ってやらなきゃならねぇ。
はぁ……そう思ってみれば、心がすげぇ軽くなった。
さて、反省してるらしい息子をそろそろ許してあげるとするかね。
――
「許す」
「は、ぁ?」
「許すって、そう言ったんだよ」
何を言っているのか、理解できなかった。
疲れた顔で、しかし付き物が取れたような顔をして苦笑しながらパウロは言った。
オレはきっと間抜けな面をしていただろう。
「………」
「なぁ、ルディ」
「………はい」
父の真意が理解できずに生返事を返すしかない。
「何か隠してるだろ、お前」
「………」
さすがにバレているか。
だが、言ってどうなる。
結局はオレは欲に流されただけで……。
「――言ってみろ、聞いてやる」
「―――。」
そう言ったパウロはオレにきちんと目を合わせていた。
パウロと視線が交わり、その父親らしい姿にオレは細かいことを忘れて、事の次第を吐露した。
「……〝ヒトガミ"。そいつがお前を誑かしたわけか」
「……いや、結局はオレが欲に抗えず、甘い話に飛びついてしまっただけです」
「でもよ、そいつの話がなければお前はゼニスを襲わなかった。違うか?」
「それは……わかりません。……オレは、前にも一度、母さんを襲いました」
「……」
「父さん。オレを許す必要はありません。オレを殺したくて仕方がないんでしょう?」
「まぁな。だが、お前は息子だ」
「息子かどうかは関係ありません。オレは貴方の嫁の寝込みを襲った不貞の輩だ。罰が、必要でしょう」
「……そうか。なぁ、ルーデウス。母さんを襲ったことを後悔しているか?」
「……」
後悔、して――ない。
……どこまでも救えない。
オレは選択を誤ったとは思っていても、未だ後悔すらしていない。
素直に処罰を受け入れようとするほどに。
「――していません。オレは、母さんも自分のモノにしたいと、心の底で思っていました。いえ、今も思っています」
「……そりゃ、難儀だな。だが、母親を女として意識するなんざ男なら誰にでもあることだと思うぜ」
「……」
「お前は早熟だったし、母親と離れている時間も長かった。その責任の一端は俺にもある」
「……何を」
何を言っているのか、この人は。
何故、オレを庇うような発言をするのか。
加害者が罰を望み、被害者が弁護する。
これではまるであべこべだ。
「それに、お前の女癖の悪さは俺から受け継いだんだろうしな」
「……違う」
違う。それは間違っている。
――オレは転生者だ。
純粋なパウロの子ではない。
なるほど、理解した。
パウロがオレを許そうとするのはオレがパウロの息子であるからだ。
ならば、それをやめる。
「――父さん。いや、パウロ」
「……ん? 今度はなんだ、改まって」
「オレは……」
言っていいのか?
言わなければ許してもらえるみたいだぞ。
このまま息子のふりをすればいい。
そうすればすべて解決だ。
また元の生活に戻れる。
「どうした、ルディ」
「……オレは――父さんの純粋な息子じゃありません」
言った。
――真摯にオレの目を見つめるパウロに、これ以上嘘を突き通すことはできなかった。
それからオレは前世のこと、記憶をもって生まれたこと、子供をふりをしていたこと。
まるでこれまでの罪を懺悔するようにパウロに話した。
「………そうか」
すべて、ぜんぶ吐き出した。
胸に重くのしかかっていたものがなくなったかのように心が軽かった。
罪を自白するというのは自己満足だ。
相手からすれば気分の悪い話でしかない。
この期に及んでパウロに煩わすのは本位じゃないが、これで分かっただろう。
オレを庇うことの愚かさを。これで、やっと――。
「――許すよ」
「――は?」
ここで、はじめて、オレは正真正銘、理解を放り去った。
何を言っているのか。
パウロは頭がおかしくなったのか?
「転生だのなんだのはよくわかんなかったけどよ」
「……いや」
そこは理解してくれ。
気味悪がってくれ。
そうして正当な罰を――。
「俺が今まで見てきたお前に嘘はねぇんだろ?」
「―――。」
嘘。嘘なら、ある。
すべてが嘘だ。
俺の存在自体が嘘に他ならない。
「俺はむしろお前が理解できない天才じゃなくて安心したよ。それなら、まぁ、ゼニスに興奮するのもわかるってもんか。ゼニスは、イイ女だからな。なんだ、転生ってのは親の趣味も似るもんなのか?」
「……わかりません」
「……まだ理解できないって顔だな。ああ、何を格好つけてたんだか。――お前がぜんぶ話してくれたんだ。俺も、ちゃんと話すよ」
「―――。」
パウロは話し始めた。
自分がクズであること。
ちゃんとしようとしたこと。
「だからま、俺はお前を責められるような人間じゃない」
「――いいえ、それは、違います。父さんは、立派だと、そう思う」
子供が出来てもいろんな女に手を出しまくってる俺とは大違いだ。
「はは、そうか? ありがとな。だが、俺はいろんな女を引っ掛けてきたが、責任を取ることなんざなかったんだぜ」
「……それを言ったらオレは息子と娘が生まれても他の女に手を出すことをやめられていません」
「ああ、ならちゃんと責任は取れよ。それが男の甲斐性だろ? 今まで手を出した女みぃんな囲う。それがお前に相応しい罰なんじゃないのか?」
「……それは、」
「いいじゃねぇか、世にも珍しい大家族だ。お前のことだ、金に困っちゃいないんだろ?」
「……まぁ、はい」
「なら決まりだな! いやぁ、孫の顔を見るのが楽しみだぜ。ノルンやアイシャは元気にしてるか?」
「……それに関しては」
「ぷぅ――!! はぁ? アイシャがお前の息子に手を出しただぁ? へぇ……あー、やっぱり俺の子だからか? つってもまだ十歳とかそこらだろ。まじかよ」
「怒らないのか」
「……ん、いやこれは怒るべきだろうな。お前とアイシャを。だけどまぁ、いいんじゃねぇか? 互いに好き合っていて問題ねぇってんならそれで。ずっとほったらかしにしてた俺に叱られてもしっくりこないだろうしな」
「……パウロ、酔ってるか?」
「酒は少ししか飲んでねぇぞ。ていうか、そうだな、酒でも飲もうぜ。おーい! こっちにエール二つくれ!」
「……良いのか。禁酒してたんだろ」
「今日くらい許せ、――息子とはじめての酒飲みなんだからな」
「――。」
息子。
そう気分よさげに笑うパウロに、オレは自然と口に出していた。
「父さん……すみませんでした」
「おう、次は気を付けろよ」
「……注ぎます」
「お、悪いな! ははっ、俺、こうやって息子と酒酌み交わすの夢だったんだよ。……ああ、悪くねぇな。お前もそう思うだろ?」
「――はい」
「――いい顔で笑うじゃねぇか。こんのモテ男め。誰に似たんだかな」
「多分、父さんに似たんでしょう」
「はは、こいつ!」
パウロが隣に来て、肩を組んで酒を傾ける。
酒にはほとんど酔ったことがなかったが、この時ばかりは気分に酔っていろんな話をした。
獣族の女は締まりが良かっただの。
女冒険者の口説き方だの。
女をヨガらせる手管だの。
そんなくだらない下品な話題で盛り上がった。
そんなくだらない話を朝まで延々を続けていた。
重苦しかった空気は、いつの間にか消えてなくなっていた。